取引先が民事再生したらどうする?民事再生法における債権者の注意点

取引先が民事再生をする場合、売掛金等の債権はどうなるのでしょうか?

この記事では、民事再生法における債権者の注意点として、次の点を解説します。

 

  • 取引先が民事再生をしたら売掛金はどうなる?
  • 再生計画に従った弁済を受ける方法(民事再生手続による弁済)
  • 債権回収する方法(民事再生手続によらない弁済)

 

取引先企業が民事再生すると聞き、今後どうなるのか不安な経営者様はぜひ参考になさってください。

 

【基礎知識】民事再生手続とは

まずは民事再生手続について簡単に確認しておきましょう。

民事再生とは、会社の経営が悪化し債務の返済ができなくなった場合などに、裁判所を利用して事業の再生を図る法的手続きです。

 

具体的には、以下のようなことをします。

 

  • 債務の一部免除を受ける
  • 返済期間の延長や返済開始まで猶予をもらう
  • 不採算事業を廃止する

 

民事再生手続の流れ

民事再生手続の流れは次のとおりです。

 

民事再生手続申立て

民事再生手続の申し立ては、債権者もできますが、ほとんどの場合は債務者が行います。通常は民事再生手続の申立てと同時に保全処分の申立ても行い、弁済禁止の保全処分を求めます。

 

保全処分の決定

保全処分の決定が出ると、申立前に発生している債務の弁済が禁止されます。

これにより、民事再生の申立てを行った債務者である会社は、借入金や買掛金等の返済をいったんストップします。

 

監督委員の選任

民事再生手続を監督する監督委員が選任されます。裁判所は、会社と利害関係のない弁護士を監督委員に選任します。以後、監督委員の同意がなければ、裁判所が指定した行為(会社の財産を処分する等の行為)を債務者(会社)は行えなくなります。

 

債権者説明会

民事再生申立てから1週間程度で債権者説明会が開催されます。

債務者から債権者に対し、民事再生を申し立てるに至った経緯や債務の状況、再建への方針等を説明します。

 

再生手続開始決定

申立に問題がなく、民事再生の要件が認められれば、通常1~2週間程度で再生手続開始決定が出ます。裁判所が、会社に再建の可能性がないと判断した場合などには、再生手続が開始せず申立が棄却されることもあります。その場合には、破産手続に移行する可能性もあります。

 

債権届出

再生手続開始決定時、裁判所は債権者宛にその旨を知らせる通知等を送付します。

債権者に債権届出をするよう求める用紙も同封されており、これに従い債権者は債権届出を行います。債務者である会社に対し売掛金などの債権がある場合には必ず届出をしましょう。

 

再生計画案の提出

民事再生手続を申し立てた会社が、再生計画案を作成し裁判所に提出します。

 

債権者集会・再生計画案決議

債権者集会が開かれ、再生計画案の決議を行います。投票用紙を郵送する方法による書面決議も併用されます。以下の2点の要件を満たせば、再生計画案は可決されます。

  • 債権者の過半数が賛成する
  • 議決権額の2分の1以上が賛成する

なお、どちらかの要件しか満たない場合、再度債権者集会が開かれます。どちらの要件も満たない場合、再生手続は廃止となり破産手続に移行します。

 

再生計画の認可・履行

再生計画が可決され、法律上問題がなければ裁判所が認可します。

認可された再生計画が、不服申立てもなく確定すれば、再生計画に従い返済が履行されます。

 

再生手続の終結

次のどちらかに該当した場合に再生手続は終結し、監督委員による監督も終了します。

  • 再生計画の履行が完了したとき
  • 再生計画認可決定確定後3年が経過

 

ただし、弁済が終わっていない場合にはその後も再生計画に従った弁済は続けられます。

 

取引先が民事再生をしたら売掛金はどうなる?

取引先が民事再生をしたら、売掛金などの債権の取り扱いはどうなるのでしょうか?

ここでは、以下の点について解説いたします。

 

  • 債権(売掛金等)の取り扱い
  • 例外:少額債権の取り扱い

 

債権(売掛金等)の取り扱い

民事再生手続申立前に発生した売掛金等の債権を再生債権といいます。再生債権は、原則として再生計画に従った弁済によらなければ弁済を受けられません

民事再生手続申立後に弁済禁止の保全処分が出ると、債務者は債権者に対し弁済が禁止されます。その後、再生計画が認可され履行が始まるまでの間、債権者は売掛金等の債権を回収できません。

また、弁済を受けられる金額も通常大幅にカットされ、弁済の猶予(支払いの先送り)や分割での返済となります。

 

例外:少額債権の取り扱い

例外として、裁判所は少額債権については弁済を許可できます。裁判所により運用は異なりますが、申立人からの要望がない限り、10万円以下の少額債権は弁済禁止の保全処分の対象から外し、支払いを可能にしている裁判所もあります。

債権額が少額な場合には、自社がこの例外の対象となるのか確認するとよいでしょう。

 

【債権者の対策1】再生計画に従った弁済を受ける(民事再生手続による弁済)

再生債権である売掛金等の債権について、原則再生計画に従った弁済を受けるのは先述のとおりです。では、再生計画に従った弁済を受けるにはどのようにすればよいのでしょうか?

ここでは、民事再生法において債権者側が弁済を受ける方法について解説します。やるべきことは次の2つです。

 

  1. 債権届出
  2. 再生計画案の決議(債権者集会)

 

ひとつずつ確認しましょう。

 

債権届出

まずは債権届出です。債権者が再生計画に従った弁済を受ける場合、必ず届出期間内に債権届出を行わなければなりません

債務者が再生手続開始決定を受けた際、裁判所から債権者宛にその旨の通知が送付されます。通常その通知とともに債権届出に関する書面も入っているので確認しましょう。

 

再生計画案の決議(債権者集会)

債権者集会で再生計画案の決議が行われます。債権者集会に出席せず投票用紙を郵送する方法による書面決議を利用しても構いません。再生計画案が可決され、裁判所から認可を受けると再生計画案に従った支払いが始まります。

 

【債権者の対策2】債権回収する(民事再生手続によらない弁済)

取引先が民事再生をすると、原則として再生計画に従った弁済を受けるしかありません。しかし、民事再生手続によらずに債権回収する方法もあります。

ここでは次の4つの債権回収方法について解説します。

  1. 担保権の実行
  2. 相殺
  3. 保証人からの回収
  4. 共益債権

 

ひとつずつ確認していきましょう。

 

担保権の実行

担保権は民事再生法において別除権といい、民事再生手続とは関係なく担保権を実行できます(民事再生法53条)。担保権者は自由に担保権を実行し、担保権の範囲内で弁済を受けられます。

ただし、担保権実行手続の中止命令(民事再生法31条)が出ている場合には担保権の実行が制限されますので注意が必要です。

 

相殺

民事再生を申し立てた取引先企業に対して売掛金等の債権があり、その企業に対して買掛金もあるという場合があります。相互に売買取引をしているようなケースです。このようなケースでは、債権債務を相殺して債権回収することも可能です。

相殺をするには、債務者に対して相殺の意思表示をすれば足ります。内容証明郵便で通知するのが一般的です。相殺の意思表示をしなかった場合、売掛金等の債権は再生計画によって減額された金額しか弁済されず、弁済も分割となることがほとんどです。

相殺ができるのは、債権届出期間内だけなので注意が必要です。

 

保証人からの回収

主債務者である取引先企業が民事再生手続を開始しても、連帯保証人等には手続は影響しません。再生計画によって債権額が減額されても、連帯保証人等の責任は変わらないため、元々の債権額を請求できます。

 

共益債権

民事再生手続申立後に発生した債権で無担保のものを共益債権といいます。共益債権は民事再生手続における再生計画とは関係なく、全額弁済を受けられます。

再生手続開始決定後、債務者が裁判所の許可を得て取引した場合などに発生した売掛金等がこれに該当します。

 

まとめ

取引先が民事再生をすると、原則売掛金等の債権は民事再生手続によって弁済を受けます。

しかし、次のような場合には民事再生手続きによらずに回収できる可能性があります。

 

  • 債権額が数万円など少額である
  • 担保権がある
  • こちらも買掛金等の債務がある
  • 債権に連帯保証人がいる

 

取引先が民事再生をして債権回収に困ったら、弁護士に相談することをおすすめします。

この記事を書いた人

ネクスパート法律事務所