事業再生ADRとは?メリット・デメリットや手続きの流れを徹底解説!

事業再生にはいくつかの方法があります。どの方法で事業再生をするか悩む経営者は少なくありません。

この記事では、事業再生ADRについて主に次の点を解説します。

 

  • 事業再生ADRのメリット・デメリット
  • 手続きの流れ
  • 事業再生ADRの事例

 

事業再生ADRを検討している方は参考になさってください。

 

事業再生ADRとは?

はじめに、事業再生ADRとは何か確認しましょう。

 

ADRとは

ADRとは、「裁判外紛争解決手続(Alternative Dispute Resolution)」 の略称で、法的整理や訴訟手続によらず民事上の紛争を解決する方法です。公正な第三者(法務大臣の認証を受けた認証ADR機関)が関与して、紛争の解決を図ります。

 

事業再生ADRとは

事業再生ADRはADRの一種です。債権者と債務者の合意に基づき債務を猶予・減免することにより、経営困難な状況にある企業を再建する手続きです。認証ADR機関である一般社団法人事業再生実務家協会が手続きを実施します。

事業再生には、裁判手続きを利用する「法的整理」と、裁判手続きを利用せず債権者と債務者との直接の交渉等により行われる「私的整理」があります。事業再生ADRは「私的整理」の手続きのひとつです。

 

事業再生ADRのメリット

事業再生手続きの中でも、事業再生ADRを選択するメリットはどういうものでしょうか。

ここでは事業再生ADRのメリットを解説します。

 

事業再生ADRの主なメリットは次のとおりです。

 

  • 公表されない
  • 信用を保てる
  • 営業を続けられる
  • 上場企業は上場が維持できる
  • 手続きの公平性が担保される
  • 債権者が減額・免除した債権を損金処理できる

 

ひとつずつ見ていきましょう。

 

公表されない

裁判手続きである法的整理を行うと、官報に公告されるため手続きしたことが公表されてしまいます。しかし、事業再生ADRでは手続きが公表されません。もちろん、会社の判断で公表することはありますが、公表するか否かは会社が自由に判断できます。

 

信用を保てる

事業再生ADRは金融機関等を対象とした手続きで、商取引債権は対象にならないので仕入先・取引先を巻き込むことなく手続きができます。

そのため、取引先への信用を保てます。

 

営業を続けられる

前述のとおり、商取引債権は手続きの対象にならないため、営業は継続できます。法的整理の場合には、取引先への支払いも原則禁止されるため、営業に大きな影響が出ることは避けられません。

 

上場企業は上場維持も可能

上場会社の場合、上場の維持も可能です。事業再生ADRの利用自体は上場廃止基準には抵触せず、法的整理のように原則上場廃止とはなりません。

 

手続きの公平性が担保される

利害関係のない中立公正な立場であるADR機関が手続きを実施するため、法的整理に準じた手続きの公平性が担保されます。

 

債権者が減額・免除した債権を損金処理できる

債権者側にも、債務免除に伴う税制上の優遇措置があります。事業再生ADRで債権放棄した場合には、税務上損金算入が認められます。

 

事業再生ADRのデメリット

事業再生ADRにはメリットもありますが、デメリットもあります。

ここでは、事業再生ADRのデメリットについて解説します。

 

事業再生ADRの主なデメリットは次のとおりです。

 

  • 1社でも反対すると法的手続きに移行する
  • 手続費用が高額
  • 私的整理に比べ柔軟性がない

 

ひとつずつ見ていきましょう。

 

1社でも反対すると法的手続きに移行する

事業再生ADRは、債権者全員の同意がなければ手続きが成立しません。事業再生計画案に反対する債権者が1社でもあると、法的手続きに移行します。法的整理の場合、反対する債権者がいても過半数の賛成があれば手続きができるため、この点は事業再生ADRのデメリットです。

 

手続費用が高額

手続きにかかる費用が高額なため、まとまった資金がないと利用できません。

手続きのため協会に支払う費用は以下の4段階です。

 

  • 審査料
  • 業務委託金
  • 業務委託中間金
  • 報酬金

 

手続きが進んでいくごとに段階的に発生します。申請料は一律50万円(税別)ですが、その後の費用は債権者数や債務額に応じて金額が変わります。数千万円程度になることが多く、事実上大企業でないと利用できないと言われています。

 

他の私的整理に比べ柔軟性がない

事業再生ADRでは、認証ADR機関が手続きを実施するため手続きは厳格です。他の私的整理に比べると手続きの柔軟性に欠けるデメリットがあります。

 

事業再生ADR手続きの流れ

では、事業再生ADRを行う場合、どのような流れで手続きが進むのでしょうか。ここでは事業再生ADRの流れを解説します。

 

おおまかな流れは、次の図のとおりです。

申請

認証ADR機関である一般社団法人事業再生実務家協会に申請します。

事前相談をし、利用申請をすると事前審査が行われます。事前審査によって事業再生の可能性があると判断されたら、正式な申し込みを行います。

 

一時停止の通知

正式な申し込み後、対象となる債権者へ一時停止の通知を発送します。これは、債務者と協会の連名で、債権者に債権回収や担保設定等の停止を要請するものです。

 

第1回債権者会議

一時停止の通知を発送してから原則2週間以内に第1回債権者会議を開催します。

第1回目の債権者会議では、主に次の説明や決議が行われます。

 

  • 事業再生計画案の概要説明
  • 資産・負債の状況の説明
  • 議長・手続実施者(弁護士等)の選任
  • 一時停止の具体的内容と期間の説明
  • 次回以降の債権者会議の開催日時と開催場所の決議

 

第2回債権者会議

第2回債権者会議は、事業再生計画案の協議のために開きます。事業再生計画案が公正かつ妥当で経済的合理性を有するか、手続実施者が意見を述べます。

 

第3回債権者会議

第3回債権者会議は、事業再生計画案決議のために開きます。

 

債権者全員の同意が得られれば事業再生ADRは成立します。

1人でも同意しない債権者がいる場合には、法的整理に移行します。

 

事業再生ADRの事例

事業再生ADRは私たちがよく知っている企業も利用しています。ここでは事業再生ADRの事例を紹介します。

 

株式会社エドウィン

ジーンズ大手の株式会社エドウィンも事業再生ADRを利用しています。証券取引による多額の損失の発生などを理由に、2013年に事業再生ADRを申請しました。約230億円の債権放棄を受け、伊藤忠商事の完全子会社となり再建する計画が了承され、事業再生ADRが成立しました。

 

株式会社コスモスイニシア(旧リクルートコスモス)

株式会社コスモスイニシアは、事業再生ADRを初めて適用された企業として知られています。

リクルートの不動産会社として設立されたのち、リクルートグループから独立し社名をリクルートコスモスからコスモスイニシアに変更しました。

サブプライムローン問題などを契機とした不動産価格下落等により業績が悪化し、2009年に事業再生ADRを申請しました。

住宅大手のダイワハウスが支援し、コスモスイニシアの子会社の買収などを経て、手続きが成立しました。2013年には事業再生計画に基づいた債務を完済し、事業再生計画期間が終了しました。

 

ワタベウェディング株式会社

最近では、新型コロナウイルスの影響を受け事業再生ADRを利用した企業もあります。婚礼サービス大手のワタベウェディング株式会社です。

新型コロナウイルスの影響で結婚式のキャンセルが相次ぎ、2020年12月期の損益は117億円の赤字となりました。希望退職の実施・国内外の拠点の閉鎖などしたものの、2020年12月末時点で8億円の債務超過に陥り、2021年3月に事業再生ADRを申請しました。2021年3月末時点では64億円まで債務超過額が膨らんでいました。同年5月27日に3回目の債権者会議が終了、事業再生計画が成立し、「キャベジン」や「三次元マスク」などで知られる興和株式会社の傘下に入ることが決まりました。

金融機関6社の約90億円の債権放棄、債権放棄後の残債務はスポンサーの興和が連帯保証することなどが再生計画の内容です。

 

まとめ

自社の再生を目指し、事業再生を選択する経営者も多くいます。

事業再生にはあらゆる手法があり、事業再生ADRはそのひとつの方法です。事業再生ADRを利用するには、専門知識が不可欠です。事業再生ADRを検討している場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

この記事を書いた人

ネクスパート法律事務所