会社の「役員の責任」についての弁護士によるコラム記事です。
役員の責任
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持株比率と株主の権利 支配株主となるために必要な議決権数や議決権の関係を解説
持株比率によって行使できる株主の権利が異なることがある 株主が会社に対して行使できる権利は会社法に細かく規定されています。その中には、1株でも持っていれば行使できる権利(単独株主権)と一定の割合や数の株を持っていれば行使できる権利(少数株主権)があります。 少数株主権でも、総議決権のうち1%や3%の議決権を持っていると認められる権利があります。具体的には株主総会への議案の提案権や役員の解任請求権などがあります。 単独株主権には剰余金の配当を請求する権利、株主総会での議決権があります。この中でも株主総会での議決権は重要なもので、株主の持つ権利の中でも中核的なものです。 議決権を行使できる株の過半数を持っていれば支配株主となれる 株主総会の決議は原則として出席した株主の議決権の過半数をもって決定されます。そのため議決権を行使することのできる株の過半数を持っていれば、多くの事項について自らの意向に従った決議をすることができます。 ここで株の過半数ではないのか思われるかもしれません。厳密には株の総数(発行済株式総数)と議決権を行使できる株の総数は一致するわけではありません。 会社法上、議決権を […] -
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【実例付き】株主総会の招集通知と委任状(弁護士解説)
招集通知は早いと株主総会の2週間前までに出さなければいけない 株主が株主総会にできるだけ出席して議決権を行使するために、会社は株主に対して招集通知を出さなければいけません。 ただし「明日株主総会をします」といきなり言われても株主は困ってしまうので、招集通知を出すべき期限が法律で決められています。 会社の機関設計によって招集通知を発すべき期限が異なっているため確認が必要です。まず、会社が公開会社か非公開会社かという区別があります。 これは株式を上場しているか否かという問題ではなく、株式を自由に譲渡できるか否かという点で区別されています。 1株でも自由に譲渡できる株式がある場合は公開会社、全部の株式が自由に譲渡できない場合には非公開会社となります。 日本の多くの中小企業は非公開会社となっています。これは会社の決めごとである定款で確認できます。公開会社であった場合、株主総会の2週間前までに招集通知を発しなければいけません。 一方、非公開会社で書面投票や電子投票について特に定めていなければ、株主総会の1週間前で足ります。 さらに、非公開会社で取締役会を置いておらず、定款で招集通知の期限を1週間 […] -
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【実例付き】株主総会の流れを解説 スムーズな株主総会開催のポイント
株主総会はおおまかに (1)株主総会の招集の決定(2)株主総会に向けた準備(3)招集通知の発出(4)議事録作成・保管 という流れになっています。スムーズに株主総会を開催できるようそれぞれのポイントを確認していきましょう。 株主総会招集は取締役会または取締役が決定する そもそも株主総会は1年に1回は開催しなければならず、それは毎事業年の終了後一定の時期とされています。これを定時株主総会といいます。 日本の会社は3月決算が多く、6月に定時株主総会が開催されるケースが多いです。臨時に株主総会を招集したい時でも手続は変わりません。 取締役会設置会社では取締役会が、取締役会非設置会社の場合は各取締役が、株主総会の日時・場所・株主総会で決議する事項などを決定します。 日時があまりに離れている場合、あるいは場所が著しく遠い場合などは説明を要するので注意しましょう。株主総会で決議する事項は役員の選任や役員報酬など定期的に決議すべき事項があるため、事前に確認が必要です。 株主総会への準備 想定問答などを考えておく 株主総会では会社の事業についての質問がなされることがあります。来年度の予算が増えていたり、 […] -
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【弁護士解説】横領が発覚! 業務上横領で返還請求や解雇はできるのか?
従業員の不正の中でも横領は多く、横領への対処は重要なものとなります。業務上横領が発生した場合の対処の仕方について確認しておきましょう。 横領された物は返してもらえる! 物がなくてもお金で返してもらえる 従業員が横領した物については、お金か商品かなどを問わず横領した物の返還を請求することができます。なぜなら従業員がその物を持つ権限などないからです。簡単にいってしまえば万引きされた場合に犯人に商品を返してもらえるのと同じことです。 もし商品などが横領後、売却され従業員の手元にない場合、会社は従業員に対して商品の代わりにお金を請求することができます。 しかし横領された金額が大きい場合、従業員が持っている財産だけでは補填することが難しいケースもあるのが現実です。 補填できなくても給料から即天引きは待った! 天引きは慎重に 従業員が払えないならば、まだ支払っていない給料から天引きしてしまえばいいと思ってしまいがちですが、そう簡単にはいかないのです。 「悪いことをしたのだから給料から天引きして何が悪い」と思われるかもしれませんが、給料は従業員の生活を支えているものである以上気軽に天引きするというこ […] -
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種類株式を徹底活用! 創業者の会社支配権を守る方法
支配権:持つ株式によって会社への影響力が変わる 株を多く持っていれば会社の方針について、大きな影響力を持つことができるというのは想像がつくと思います。 具体的には、過半数の株を持っていれば、株主総会で経営に関する事項を、単独で自らの意向に従った決定をすることができます。 取締役の選任・解任や株の配当金額の決定などです。過半数を持つだけでも会社に強い影響力を持っているということができます。 しかし、会社にとって重要とされる事項については、株主総会でも過半数では足りず3分の2の賛成が必要となります。 定款を変更したり、事業譲渡をしたりする場合など、会社の根幹に関わってくる事項がこれにあたります。 M&Aを実行する場合にも、3分の2の賛成が必要となってくる場合が多々あります。 3分の2の株を持てば、会社に関する事項をほぼ自らだけで決定することができ、支配しているといえる状況です。 常に多くの株式を持つことができれば問題ありませんが、資金調達をするなどの目的で創業者以外に対して株を発行することがあるかと思います。 そうなれば、創業者の持つ株式比率が下がり、会社に対する会社支配権を維持で […] -
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【弁護士解説】新株発行無効の訴えはいつまでできるのか。訴えに必要な事由は?
新株発行の効力を争うには新株発行無効の訴えによる必要がある 新株の発行は、資金調達の手段として資金の借り入れと同様に利用されることの多い方法です。 利用される頻度は高いですが、新株発行に問題があった場合には発行自体を無かったことにして問題を是正しなければなりません。新株発行が無効となれば、発行された株式が無意味なものとなってしまうというのは字面から分かると思います。 株式は売買されて様々な人の手に渡る可能性があるため、株式が無意味になるという影響は非常に大きいものになってきます。 そこで、裁判によってのみ新株発行の効力を否定できるという仕組みになり、それが新株発行無効確認の訴えとなっています。 新株発行の効力が発生してから6ヶ月または1年以内に提訴しなければならない 新株発行無効の訴えは、訴えを提起できる人、訴えを提起できる期間が会社法828条に規定されています。 まず、訴えを提起できる人は、株主、取締役、監査役等に限定されています。会社と何ら関係の無い人や債権者などは訴えを提起することができません。 新株発行無効の訴えを提起できる期間は、株式の発行の効力発生日から6ヶ月または1年以内 […] -
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株主総会決議の不存在、無効、取り消しはいつ認められるのか。その方法とは?
株主総会に問題があれば裁判で是正できる 株主総会は、会社の意思決定機関として重要な機関です。 取締役などの役員選任、配当の決定、新株発行など、会社の業務を行う上で重要な事項については、会社法で株主総会の決議が必要となっています。このような株主総会ですが、開催方法や決議の内容に問題があった場合には是正しなければなりません。 問題がある=瑕疵といいますが、瑕疵があるときに是正する手段として、株主総会決議不存在確認の訴え、株主総会決議無効確認の訴え、株主総会決議取消しの訴えが用意されています。 瑕疵の内容、程度によって争う手段が異なり、争える期間も異なってくるのでそれぞれ確認しましょう。 株主総会決議不存在確認の訴え 瑕疵が著しい場合にいつでも提訴できる 株主総会が不存在とはどういうことでしょうか。実際に株主総会が開催されていないにもかかわらず、開催されて決議された旨の議事録が作成されたケースは、一番想像が付きやすいと思います。 これだけでなく株主総会決議をする上で、手続上瑕疵が著しい場合も株主総会決議が不存在となります。 株主総会を開催するには、会社法により様々な手続きをする必要があります […] -
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【株主権争い】株主権の帰属が問題となるケース〜内部紛争時の防衛策〜
相続対策で株式の名義を子どもにしているケース 株式にも名義というものがあり、株式総会で議決権を行使するといった会社との関係で重要な意味を有しています。 実際の権利を持っている人と名義人が異なるケースは、株式に限らず土地や建物などでも見られますが、両者が一致しているのが望ましい状態ではあります。 実体は親が権利を持っていたとしても、相続税が莫大になることを避けるために「最初から名義を子どもにしておく」というのは株でもよくみられます。これが思わぬ争いを生むことがあります。 株式の名義は重要な意味を有するといいましたが、会社は株式の権利を誰が持っているか逐一把握していられません。そのため、会社は株式の名義人となっている人を株主として扱えば十分なのです。 そうなると、実際の権利者が親・名義人が子どもの場合と、実際の権利者・名義人ともに子どもの場合では外観が同じになってしまいます。 前者の場合には本当は誰が株式を有しているか判然としないケースが出てきてしまいます。これが争いを生んでしまうのです。 会社設立のためなどでとりあえず名義だけ借りた名義株があるケース 1990年以前、会社を設立するには7 […] -
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【弁護士解説】取締役の暴走を止めるには? 取締役の職務執行停止
株主総会で取締役を解任することができる 取締役が余計な支出をし、あるいは会社の信用を傷つけるような行為をしている場合、会社の利益を守るために取締役を解任する必要があります。株主総会で議決権の過半数の賛成を得ることができれば、取締役を解任することができます。 株主総会が適正に機能していれば暴走する取締役を解任することができますが、現実にはそうでない場合も多くあります。 暴走する取締役と友好的な株主が、過半数の議決権を持っているということもよくあります。そうなると、いくら取締役が暴走しているからといって、株主総会で取締役を解任することはできません。 訴訟で取締役の地位を失わせることができる ただし時間がかかる 取締役が不正行為をしたり、法令違反をしたりしているにもかかわらず、株主総会で取締役を解任できなかった場合、議決権の制限はあるものの、株主は取締役を解任することができます。 解任という手段でなくとも、そもそも取締役としての地位が無いことが確定すれば、その取締役は地位を失うため、解任したのと同じ効果を得ることができます。 取締役は株主総会決議で選任されるため、この株主総会決議に問題があっ […] -
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【弁護士解説】社外取締役及び社外監査役の要件 会社法の改正内容も解説
社外取締役は会社・取締役から独立していなければならない コーポレートガバナンス(企業統治)の観点から社外取締役を入れることを考えている、又は株主からそのような提案があった場合、社外取締役にどのような人を選ばなければいけないのでしょうか。 社外取締役の要件は会社法2条15号に定められています。 会社や子会社の業務執行取締役・従業員でなく、かつ就任前の10年間その会社や子会社の業務執行取締役・従業員でないこと 就任前の10年間のどこかでその会社や子会社の取締役・会計参与・監査役であった場合、取締役・会計参与・監査役への就任前10年間でその会社や子会社の業務執行取締役・従業員でないこと 会社の経営を支配している者でないこと 親会社の取締役・従業員でないこと 兄弟会社の業務執行取締役・従業員でないこと 取締役・重要な従業員・会社の経営を支配している者の配偶者・二親等内の親族でないこと 業務執行取締役とは業務について個別に委託された取締役のことをいい、専務・常務といった呼び方をされる人は業務執行取締役にあたります。 会社法改正で社外取締役の要件が厳しくなった 2014年の会社法改正で社外取締役の […] -
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【弁護士解説】取締役の第三者に対する責任 責任を軽減する方法は?
取締役は第三者からも責任追及される 取締役は任務を懈怠、すなわち取締役としての任務を怠り会社に損害を与えた場合には会社に対して損害賠償責任を負います(会社法423条)。この点については別の記事を参照してください。 これだけでなく取締役の任務懈怠によって第三者が損害を被った場合には、取締役は第三者に対しても損害賠償責任を負うことがあります(会社法429条)。 どのような場合に第三者にも責任を負うことになるのか見ていきましょう。 取締役が責任追及されるのは対会社責任より限定的 取締役が責任を負うのは以下の場合です。 取締役としての任務を怠った(任務懈怠)第三者に損害が生じた任務懈怠と損害との間に因果関係がある任務懈怠につき悪意又は重過失があった 最後の「悪意」は日常用語とは異なる意味で使われ、あることを知っていることを意味します。すなわち、任務懈怠について取締役が知っていた、又は知らなかったことが重大な不注意によるものであったことを意味します。 対会社責任では単なる不注意でも責任を負いますが、対第三者では単なる不注意では責任を負わないため、若干限定的といえます。 取締役でなくても責任を負う […] -
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【弁護士解説】取締役の競業避止義務とは? 退職後の扱いは?
競業避止義務は会社法上現職の取締役に課されている 会社法では取締役が会社の事業の部類に属する取引をすることを禁止しています。これを競業避止義務といっています。 取締役は会社の経営に関与する立場にあることから、会社の利益を犠牲にして自らの利益を図ることが容易であり、会社を保護するためにこのような規制が設けられています。 会社法ではこの競業避止義務は現在の取締役に課されています。そのため退職後の取締役には会社法でいう競業避止義務は課されません。 競業取引にあたるかは現在だけでなく将来も含めて考える 「会社の事業の部類に属する取引」とは具体的にはどのようなものをいうのでしょうか。 一般的には、現在だけでなく将来も含めて、会社の実際に行う事業と市場において取引先が競合し、会社と取締役との間に利益衝突のおそれのある取引をいうと考えられています。 実際の裁判例では、関東で製パン業を営んでいた会社が関西への進出を計画し市場調査などを行っていた段階で、代表取締役が別会社を作り関西で製パン業を営んだというケースがあります。 このケースでは代表取締役の行為は競業取引にあたると認定されました。このように現在 […]