借金を踏み倒したい人が知っておきたい3つのこと
「借金を踏み倒すことはできないか」
「借金が時効で消えたらいいな」
借金の返済が苦しくなると、このような考えが頭をよぎるかもしれません。
借金の踏み倒しは不可能ではありませんが、借金滞納で生じるリスクを更に増加させます。
この記事では、次の点を踏まえ、借金問題の解決方法を1つずつ検討していきましょう。
- 借金の踏み倒しは現実的?
- 借金の踏み倒しによるリスク
- 借金を踏み倒さずに解決する方法
借金に悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
借金の踏み倒しは現実的?
借金を踏み倒すのは現実的に可能なのでしょうか?
「闇金には返済義務がないから返済しない!」はありなのか?
闇金からの借金は、法律上返済義務がありません。しかし、闇金からの借金を踏み倒すことは以下のとおり現実的ではありません。
闇金とは
闇金とは、次に該当する者を差します。
- 貸金業登録をせず貸金業を営む者
- 出資法の上限を超える高利での融資を行う者
闇金からの借入金は返済不要
次のとおり、闇金からの借入金には返済義務がありません。
不法原因給付
民法708条は次のとおり規定しています。
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない
引用:民法708条
闇金の貸付は、不法原因給付に該当します。そのため、闇金は貸付金の元本の返還を請求できず、借主には返済義務はありません。
最高裁判所平成20年6月10日判決は、闇金の貸付について、次のように判示しました。
- 闇金の貸付は利息のみならず元本の返済義務もない
- 闇金に支払った元本・利息の全額を損害として請求することができる
ヤミ金融業者に係る最高裁判決の概要について:金融庁 (fsa.go.jp)
闇金を踏み倒そうとした場合のリスク
闇金からの借入金は返済不要という法的根拠があることをいいことに、返済するつもりがないのに闇金から借り入れすることは詐欺罪に該当する可能性もありますので絶対にやめましょう。少なくとも、返済不要であることを知りながら借入をした場合については、上記の根拠による保護をうけられない可能性が高くなります。
闇金は反社会的勢力を背景とするものが少なくなく、貸付金の回収のためには手段を選ばない傾向にありますので、ご自身での交渉には危険が伴います。
夜逃げをした後はどうなるのか?
闇金から逃げるために夜逃げしても、闇金は住民票を調査し執拗に追いかけてきます。
夜逃げをするとどのようなリスクがあるでしょうか。
住民票を移動しないリスク
住民票を移さなければ次のとおり生活に様々なリスクが生じます。
- 住民基本台帳法違反により5万円以下の罰金が科せられることがある
- 現住所で身分証明書及びパスポートの発行・国民健康保険の加入・選挙の参加ができない
- 税申告や免許更新時に旧住所の所轄署にいく必要がある
- 公的サービスが受けられない
- 携帯電話の新規契約ができない
家族への影響
夜逃げのリスクは次のとおり家族にも及びます。
- 次のとおり、家族に負担をかけ生活にも様々な支障をきたします。
- 子供が転校を余儀なくされる
- 配偶者が退職を余儀なくされる
- 親戚や友人に会えなくなる
- 転職や再就職が困難となる
- 一定の場所に住めなくなる
時効を待つのは現実的か?
借金を踏み倒すために時効を待つのは現実的ではありません。
時効を待って借金を踏み倒すためには、次の2点を満たす必要があります。
- 最終取引日から5年又は10年経過している
- 時効の更新や完成猶予となる事由がない
時効を待つのが難しい理由は、上記2点を満たすのが難しいからです。
詳しく説明します。
借金が時効になる2つの要件
借金の時効成立要件は次のとおりです。
- 時効期間の満了
- 時効期間の援用
①時効期間の満了
借金の時効期間は5年又は10年です。
時効期間の満了とは、借金を一切返済しない状態を継続して時効期間を経過することです。
民法の改正により、消滅時効の期間は2020年3月31日までと2020年4月1日からでは取り扱いが異なります。時効期間に関する詳細は下記関連記事をご参照ください。
②消滅時効の援用
消滅時効の援用とは、債権者に時効の成立を主張することです。消滅時効とは、債権者が権利を行使できる状態であるにもかかわらず権利を一定期間行使しなかった場合、権利を失うことを定めた制度です。
借金を時効により消滅させる場合は、上記2点を満たす必要があります。
時効の更新(中断)と完成猶予(停止)
借金の時効について注意すべき点は、時効の更新と完成猶予です。改正前の民法では、時効の中断と時効の停止と呼ばれていました。ここでは、改正民法に基づき説明します。
①時効の更新
時効の更新とは、次の事由により、時効の進行がリセットされ時効期間がゼロから進むことです。
- 債務者の承認
- 支払督促
- 強制執行、担保権の実行
- 確定判決による権利の確定
すなわち、次の一つでも当てはまると、時効がリセットされてしまいます。
- 返済の意思を示した
- 催告書が送られてきた
- 差し押さえされた
- 裁判を起こされ、かつ、判決が確定した
②時効の完成猶予
時効の完成猶予とは、時効期間の満了日が先延ばしになることです。
時効の完成が猶予される事由は次のとおりです。
- 裁判上の請求
- 仮差し押さえ、仮処分
- 裁判外の催告
- 協議を行う旨の書面による合意
- 天災等
それぞれの時効の完成が猶予される期間を説明します。
⑴裁判上の請求
訴えの提起により時効の完成が猶予されます。判決確定後に時効期間が更新され、その後10年間時効が完成しません。
裁判が訴えの却下や取下げにより終了した場合は、却下・取下げの時から6ヶ月間時効の完成が猶予されます。
⑵仮差し押さえ、仮処分
手続きが終了したときから6か月間時効の完成が猶予されます。
⑶裁判外の催告
裁判外の催告とは、債権者からの口頭又は書面による直接の催告(請求)です。一般に、内容証明郵便で送付されます。この場合、6か月間時効の完成が猶予されます。
⑷協議を行う旨の書面による合意
当事者で協議を行う旨の合意を書面でした場合、原則1年間時効の完成が猶予されます。
猶予される期間は当事者の合意により短縮することもできます。
債務者が協議を拒絶した場合は、その旨を書面で通知した時から6ヶ月を経過するまで猶予されます。
⑸天災等
天災等により、裁判上の請求や強制執行等の手続きができないときは、天災等が消滅したときから3か月を経過するまでは時効の完成が猶予されます。
借金の踏み倒しによるリスク
借金を踏み倒した場合に生じるリスクを紹介します。
遅延損害金の発生
契約で定められた期限までに返済をしないと、遅延損害金が発生します。
貸金業者は、遅延損害金の利率を年14〜20%(上限26.28%)に設定するのが一般的です。滞納期間が長くなればその分遅延損害金も膨らみます。
ブラックリストに載る
借金を2ヶ月分以上滞納すると、債権者は信用情報機関に事故情報(遅延情報)を登録します。いわゆるブラックリストに載ることです。
ブラックリストに載ると、新たな借入やカード発行が困難になります。既存のカードの利用代金を支払っている場合でも、限度額の減額や利用を停止される可能性があります。
裁判や差し押さえを受ける
借金の滞納を継続すると、債権者が法的手続きに移ることがあります。給与や預金が差し押さえられると、生活に様々な影響を及ぼします。
連帯保証人に迷惑をかける
債務者が返済を滞納すると、債権者は保証人に対し残金の一括払いを請求します。保証人が支払えない場合、保証人の財産が差し押さえられるおそれもあります。
家族や会社に借金がバレる
家族や会社に借金がバレるきっかけには、以下のようなものがあります。
- 債権者からの督促
- 裁判所からの通知
- 口座の凍結
- その他滞納により生じる事由
借金を踏み倒したら詐欺罪になる?
借金には返済の義務があります(闇金の貸付を除く)。返済義務は民法上の責任であるため、踏み倒しても原則刑罰はありません。
ただし、次のようなケースでは、その事実が裁判で立証されると懲役10年以下の詐欺罪に該当する可能性があります。
- 返すつもりがないのに借りた
- 与信を得るために、収入を過大に、または、借入額を過小に申告して借りた
返すつもりもなくお金もないのに借金をして意図的に踏み倒す行為は、自己破産する場合も問題となります。
借金を踏み倒さずに解決する方法
債務整理をすれば合法的に借金を解決することができます。種類ごとに説明します。
債務整理を検討する
①任意整理
任意整理は、利息をカットし返済額を減額する手続きです。債権者と交渉をして返済の条件を決めます。
元金は減額されないため、借金額が大きい人には向きませんが、債権者の合意さえ得られれば最小限のリスクで借金を減額できます。
②特定調停
特定調停は、簡易裁判所の調停委員会が債務者と債権者との間に立って、返済方法を調整する制度です。調停を成立させるためには、債権者の理解と協力が不可欠です。
③自己破産
自己破産は、裁判所の手続きにより、すべての借金(非免責債権を除く)返済義務を免除してもらう制度です。ただし、一定の財産以外は処分されることがあります。

④個人再生
個人再生は、裁判所を利用して借金を減額する手続きです。
減額率は任意整理に比して高く、概ね5分の1に圧縮した借金を原則3年間(最長5年間)で支払います。
マイホームを残したい方も利用できます。
借金を踏み倒す前に弁護士に相談する
もし夜逃げを考えるほど悩んでいるのであれば、一刻も早く弁護士にご相談ください。
弁護士に相談することで最適な解決方法が見え、借金踏み倒しによる様々なリスクを回避できます。ご自身で時効期間がいつ満了するか分からない場合も、弁護士に相談すれば消滅時効の援用の可否を含めたアドバイスを得られるでしょう。
まとめ
借金を根本的に解決し、安定した生活を確保するためには、借金から逃げることよりも債務整理を検討しましょう。
借金を踏み倒すと、ご自身のみならずご家族の生活にも多大な影響を及ぼします。
弁護士に依頼することで、経済的な負担はもちろん心理的な負担も軽減できます。