飲食店を破産・廃業する際の手続きの流れと注意点を解説 - 債務整理は弁護士に相談【ネクスパート法律事務所】

飲食店を破産・廃業する際の手続きの流れと注意点を解説

新型コロナウイルス感染拡大防止の取り組み(休業・時短営業・酒類提供制限など)により、全国の飲食店が打撃を受けています。

2020年2月から2022年3月11日までに新型コロナウイルスの影響で法的整理または事業停止により倒産した企業は2,980社に上ります(帝国データバンク調べ)。業種別では飲食店が最も多く480件で、全体の16.1%を占めています。

飲食店の経営を続けられなくなり、廃業・破産を検討する方も少なくありません。

実際に飲食店を廃業・破産するにはどのような手続きをすればよいのでしょうか。

この記事では、飲食店の廃業・破産について、次のとおり解説します。

  • 飲食店の廃業手続き
  • 飲食店の破産手続きの流れ
  • 飲食店が破産する場合の注意点
  • 飲食店の破産で弁護士に依頼するメリット

飲食店の廃業・破産の手続きを詳しく知りたい方は、ぜひご参考になさってください。

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飲食店の廃業手続き

ここでは、飲食店の廃業手続きについて解説します。

廃業とは

廃業は、理由の如何を問わず事業をやめることを指します。

一般的に、自主的に事業をやめることを廃業、債務超過により事業をやめざるを得ないことを倒産と呼び分けられています。自主的な廃業の場合も手続きが必要です。

個人事業の廃業手続き

個人事業主が飲食店を廃業する場合、事前の準備と各役所への届出が必要です。

事前準備

廃業日(営業終了日)が決まったら、なるべく早く関係者や取引先に通知しましょう。店舗関連の解約手続きも必要です。

具体的には、以下の通知・解約手続きをします。

  • 取引先への廃業通知
  • 金融機関への事前相談(借入がある場合)
  • 従業員への事前通知(従業員がいる場合は30日以上前の解雇予告通知が必要)
  • 店舗・事務所の賃貸人・管理会社への解約予告(解約予告期間内の予告が必要)
  • 店舗の原状回復工事
  • 電気・ガス・水道等の解約
  • 火災保険等の解約

従業員への解雇予告は、口頭でも通知できますが、後のトラブルを回避するため、書面(解雇予告通知書)で通知しましょう。予告の日数が30日に満たない場合には、不足日数分の平均賃金を解雇予告手当として支払う必要があります。

届出

開業時に次の機関に届出している場合は、廃業時にも手続きが必要です。

  • 公共職業安定所(雇用保険)
  • 年金事務所(健康保険・厚生年金保険)
  • 労働基準監督署(労災保険)
  • 市区町村(住民税の特別徴収)
  • 税務署(開業届・青色申告届等)

ひとつずつ確認しましょう。

提出期限 提出先 備考
雇用保険適用事業所廃止届 廃業日から5日以内 公共職業安定所 雇用保険に加入していた場合
雇用保険被保険者資格喪失届・離職証明書 従業員の退職日から10日以内 公共職業安定所
健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届 廃業日から5日以内 年金事務所 健康保険に加入していた場合
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届 従業員の退職日の翌日から5日以内 年金事務所
労働保険確定保険料申告書 廃業日から50日以内 労働基準監督署 雇用保険・労災保険に加入している場合
給与支払報告に係る給与所得異動届 従業員の退職日の属する月の翌月10日までに 従業員の住所地を管轄する市区町村 住民税を給与から天引きしていた場合
個人事業の廃業等届出書 廃業日から1ヶ月以内 税務署
給与支払事務所廃止届出書 廃業日から1ヶ月以内 税務署 青色事業専従者や使用人に給与を支払っていた場合
事業廃止届出書 廃業後すみやかに 税務署 消費税の課税事業者である場合
所得税の青色申告の取りやめ手続 廃業した翌年の3月15日まで 税務署 青色申告の承認を受けていた場合
事業開始(廃止)等申告書 廃止日から10日以内(都道府県による) 都道府県税事務所 提出先や提出期限は、各都道府県によって異なる

法人の廃業手続き

法人の飲食店が廃業する場合、個人事業主の廃業手続きで説明した事前準備・届出のほか、次のとおり、法人の解散と清算の手続きをしなければなりません。

  • 解散手続き
  • 清算手続き
  • 清算決了

ひとつずつ確認しましょう。

解散手続き

廃業の事前準備後、株主総会の決議をもって解散し、清算人を選任します。

解散および清算人選任の決議後、2週間以内にその旨を登記しなければなりません。登記手続きは、本店所在地を管轄する法務局で行います。解散および清算人の選任登記の申請書と必要書類を提出します。

登記手続後、次の手続きに移ります。

  • 解散する旨の官報公告(解散公告)
  • 債権者への個別の催告手続き
  • 解散時の財産目録と貸借対照表の作成・株主総会での承認

上記手続完了後、解散から2ヶ月以内に解散確定申告をします。

清算手続き

次のすべての債務について、必要な支払いを行います。

  • 借入金
  • 買掛金
  • 従業員の給与
  • 社会保険料
  • 税金 等

財産を処分し、債務の弁済も済ませた上でまだ財産が残っている場合には株主に分配します。法人の債権と債務がゼロになれば清算手続きが終了します。

債務が弁済できない場合は、後述の倒産手続きを検討しましょう。

清算手続きが長引く場合は、解散から1年ごとに決算書類を作成・承認を経て確定申告しなければなりません。

清算結了

清算手続終了後、決算報告書を作成し、株主総会で承認を受ければなりません。承認を受けてから2週間以内に清算結了登記を行います。本店所在地を管轄する法務局に登記申請書と必要書類を提出します。

清算決了登記完了後、次の機関に清算結了した旨を届け出ます。

  • 税務署
  • 都道府県税事務所
  • 市区町村

飲食店特有の廃業手続き

飲食店特有の廃業手続きには、次の3つがあります。

  • 保健所への廃業届・飲食店営業許可書の返納
  • 消防署への防火管理者解任届出書の提出
  • 警察署への廃止届(深夜種類提供飲食店の場合)

ひとつずつ確認しましょう。

保健所への廃業届・飲食店営業許可書の返納

概ね廃業日から10日以内に保健所に廃業届を提出し、飲食店営業許可書を返納します。

提出期限は保健所によって異なりますので、事前に確認しましょう。

消防署への防火管理者解任届出書の提出

防火管理者を選任していた場合は、消防署に防火管理者解任届出書を提出します。

提出期限に定めはありませんが、廃業後なるべく早く提出しましょう。

警察署への廃止届(深夜種類提供飲食店の場合)

開業時に深夜酒類提供飲食店営業開始届出書を提出している場合は、警察署に深夜酒類提供飲食店営業廃止届を提出します。

風俗営業許可を受けている場合は、警察署に返納の理由書を提出し、許可書を返納します。

いずれの手続きも廃業日から10日以内にしなければなりません。

飲食店の破産手続きの流れ

債務が残った場合には、倒産手続きをします。倒産手続きには、破産手続きだけでなく、再建を目指す民事再生手続きもあります。

会社の倒産手続きについて、詳しくは「会社・法人の「倒産」の意味とは?破産・廃業・経営破綻との違いも解説」(当事務所会社法務サイトの記事)をご参照ください。

ここでは、飲食店の破産手続きの流れを解説します。

法人の場合

法人経営の飲食店の破産手続きでは、会社の財産をすべて処分し債務の弁済にあてます。弁済しきれなかった債務は会社とともに消滅します。

法人の破産手続きのおおまかな流れは次のとおりです。

弁護士への相談

弁護士に相談します。弁護士が会社の実情を聴取し、破産申立ての要否や破産を回避する方法がないか検討します。破産した場合のメリット・デメリット等も弁護士からご案内します。

取締役会の決議・弁護士への委任

弁護士の方針や弁護士費用等に納得されたら契約を結びます。

なお、法人が破産を申立てるためには、取締役会・理事会の決議を経る必要があります。取締役会や理事会がない場合は、取締役・理事の同意を得ます。

取締役会全員の同意が得られない場合は、取締役の1名が破産を申立てられます。これを準破産申立てといいます。

受任通知の発送

弁護士が各債権者に受任通知を送付します。受任通知を受け取った債権者は、債務者に直接取り立てられなくなります。受任通知送付後は、弁護士が連絡窓口となります。

ただし、受任通知を発送することでかえって混乱するような場合には、受任通知を発送せずに破産申立てを行うこともあります。

飲食店の資産や債務の調査

飲食店の資産や債務の調査を行います。

債権者から届出のあった債権だけでなく、各種帳簿からも未払金などを調査します。

権利義務関係の調査

すべての契約書等を調査し、権利義務関係を把握します。

リース契約解除

設備・什器等や調理器具をリースしている場合、リース契約を解除します。

従業員の解雇

従業員がいる場合、申立前に従業員を解雇するのが一般的です。給料の未払が生じている場合は、未払賃金立替払制度の利用を案内しましょう。

テナントの明渡し

店舗等を賃貸している場合は、原状回復して明け渡さなければなりません。

材料等在庫が多く残っている場合、その保管や移動にも検討しなければなりません。

申立書類の作成・添付資料の収集

裁判所に提出する申立書類を作成し、必要書類を収集します。

申立書類は、適宜経営者の方のご協力を得ながら弁護士が作成します。

裁判所に破産申立

申立書類と添付資料がそろったら裁判所に破産を申立てます。

破産手続開始決定

裁判所は、申立書類・添付資料等を確認し、問題がなければ破産手続を開始します。破産手続開始決定と同時に破産管財人が選任されます。

破産管財人との面談

破産管財人と面談します。破産管財人が行う調査には誠実に協力しなければなりません。破産管財人との面談には申立代理人である弁護士も同席するので安心してください。

債権者集会

裁判所が定めた日程で債権者集会が開かれます。

破産管財人は、財産や負債の調査結果、財産の処分状況等を報告します。

債権者への配当

破産管財人が財産を処分・換金し、債権者に配当します。

破産手続終結決定

配当が終わると手続きは終了します。

法人の代表者も自己破産した場合は、免責許可決定の前に免責審尋が行われることがあります。免責審尋は、債権者集会と同時に行われることが多いです。

免責が認められれば、免責審尋から概ね1週間で免責許可決定がなされます。免責許可決定の確定により、債務の返済義務は免除されます。

個人事業の場合

個人事業の飲食店は、自己破産において一定の財産を換価処分し債務の弁済にあてます。弁済しきれなかった債務の支払義務は免除されます。

ただし、法人の破産手続きと異なり、税金・社会保険料や従業員の給料は自己破産により免除されません。破産手続終了後も支払義務が残ります。

個人事業主の破産手続きは、原則管財事件として取り扱われます。手続きの具体的な流れは次のとおりです。

弁護士への相談

弁護士に相談します。弁護士が実情を聴取し、破産申立ての要否や破産を回避する方法がないか検討します。破産した場合のメリット・デメリット等も弁護士からご案内します。

弁護士への委任

弁護士の方針や弁護士費用等に納得されたら契約を結びます。

受任通知の発送

弁護士が各債権者に受任通知を送付します。受任通知を受け取った債権者は、債務者に直接取り立てられなくなります。受任通知送付後は、弁護士が連絡窓口となります。

ただし、受任通知を発送することでかえって混乱するような場合には、受任通知を発送せずに破産申立を行うこともあります。

飲食店の資産や債務の調査

飲食店の資産や債務の調査を行います。

債権者から届出のあった債権だけでなく、各種帳簿からも未払金などを調査します。

権利義務関係の調査

すべての契約書等を調査し、権利義務関係を把握します。

リース契約解除

設備・什器等や調理器具をリースしている場合、リース契約を解除します。

従業員の解雇

従業員がいる場合、申立前に従業員を解雇するのが一般的です。給料の未払が生じている場合は、未払賃金立替払制度の利用を案内しましょう。

テナントの明渡し

店舗・事務所を賃貸している場合は、原状回復して明け渡さなければなりません。

材料等在庫が多く残っている場合、その保管や移動にも検討しなければなりません。

申立書類の作成・添付資料の収集

裁判所に提出する申立書類を作成し、必要書類を収集します。

申立書類は、適宜経営者の方のご協力を得ながら弁護士が作成します。

裁判所に破産申立

申立書類と添付資料がそろったら裁判所に破産を申立てます。

破産手続開始決定

裁判所は、申立書類・添付資料等を確認し、問題がなければ破産手続きを開始します。破産手続開始決定と同時に破産管財人が選任されます。

破産管財人との面談

破産管財人と面談します。破産管財人が行う調査には、誠実に協力しなければなりません。破産管財人との面談には申立代理人である弁護士も同席するので安心してください。

債権者集会

裁判所が定めた日程で債権者集会が開かれます。

破産管財人は、財産や負債の調査結果、財産の処分状況等を報告します。

債権者への配当

破産管財人が財産を処分・換金し、債権者に配当します。

破産手続終結決定

配当が終わると手続きは終了します。

法人の代表者も自己破産した場合は、免責許可決定の前に免責審尋が行われることがあります。免責審尋は、債権者集会と同時に行われることが多いです。

免責が認められれば、免責審尋から概ね1週間で免責許可決定がなされます。免責許可決定の確定により、債務の返済義務は免除されます(非免責債権を除く)。

飲食店が破産する場合の注意点

ここでは、飲食店が破産する場合の注意点について解説します。

飲食店の債務

飲食店の債務は、金融機関からの借入金だけではありません。飲食店の債務には次のようなものがあります。

  • 借入金
  • 買掛金
  • 什器や調理器具のリース代金
  • 未払の家賃
  • 営業車等のローン残高
  • 未払の従業員の給与
  • 未払の社会保険料

すべての債務を正確に把握する必要があります。

偏頗弁済(へんぱべんさい)

破産手続きでは、すべての債権者を平等に扱わなければならないため、一部の債権者にのみ返済をすること(偏頗弁済)は許されていません。

お世話になった仕入先にだけ買掛金を支払ったり、親族からの借入金だけ返済したりすると、免責されない可能性があるので注意しましょう。

連帯保証人への影響

自己破産すると、連帯保証人への影響は避けられません。

親族や友人が連帯保証人になっている場合、主債務者である会社や事業主が破産すると、連帯保証人に請求がいきます。連帯保証人が返済できない場合は、連帯保証人も債務整理を検討しなければなりません。

代表者への影響

法人経営の場合、代表者が借入の連帯保証人になっているケースがほとんどです。代表者が連帯保証人になっている場合は、代表者個人も自己破産を検討する必要があります。

在庫の管理

飲食店は多く食材の在庫を抱えています。廃業を決意した時点から、在庫量を必要最小限に抑えなければなりません。保管や廃棄に費用が発生しないようコントロールしましょう。

キャッシュレス決済端末の返却

キャッシュレス決済用の端末をクレジットカード会社等からレンタルしている場合は、返却が必要です。事前にレンタル先に連絡し、返却の方法を確認しましょう。

賃貸物件の明渡し

明渡しスケジュールの確認

賃貸物件は、通常、明渡しまで賃料が発生します。廃業後できるだけ早く賃貸物件を早く明け渡し、空家賃を負担せずに済むよう日程調整しましょう。

従業員からの鍵の回収

飲食店では、店舗物件の鍵を従業員に預けているケースが多いでしょう。最終営業日前に従業員から店舗の鍵を回収しましょう。

飲食店の破産で弁護士に依頼するメリット

ここでは、飲食店の破産で弁護士に依頼するメリットを紹介します。

複雑な手続きをすべて任せられる

煩雑な破産手続き進めるためには、専門知識が不可欠です。手続きが失敗すると、債務が免除されない可能性もあります。

弁護士に依頼すれば、面倒な手続きを任せられるので、本来の業務や残務処理に専念できます。

従業員や仕入先を含む債権者対応も任せられる

破産に伴い、従業員や仕入先に迷惑をかけることを心配される方もいるでしょう。弁護士に依頼すれば、従業員の解雇や退職後のフォローについても適切なアドバイスを受けられます。

債権者の対応もすべて弁護士が行いますので、安心して手続きを進められます。

少額管財事件の制度を利用できる

弁護士に依頼すると、少額管財制度を利用できる可能性があります(事案による)。

通常の管財事件では、債権者数や債権額に応じて予納金が決定します。通常管財の最低予納金が50万円であるのに対し、少額管財事件の最低予納金は20万円です。

ただし、少額管財制度の運用がない裁判所もあります。

まとめ

新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、飲食店を取り巻く環境は厳しさを増しています。

取引先や従業員に迷惑をかけることを懸念して、破産手続きに踏みきれない経営者も少なくありません。しかし、手続きを先延ばしにするほど、事態が悪化することもあります。

早期に対応すれば、破産以外の方法で解決できるかもしれません。

飲食店の廃業・破産にお悩みの方は、なるべく早く弁護士に相談することをおすすめします。

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