給与差し押さえ|手続きの概要・流れ・回避方法を解説 - 債務整理は弁護士に相談【ネクスパート法律事務所】

給与差し押さえ|手続きの概要・流れ・回避方法を解説

「ある日突然、裁判所から通知が届き、給与が差し押さえられてしまった!」

何の前触れもなく給与を差し押さえられるイメージを持っている方もいらっしゃいます。

しかし、実際は、差し押さえまでの間にいくつかのステップがあります。給与差し押さえの流れを把握していれば、差し押さえを回避できるかもしれません。

この記事では、主に次の点を解説します。

  • 給与差し押さえ手続きの概要・流れ
  • 差し押さえによる影響
  • 差し押さえを回避する方法

給与が差し押さえられるかもしれない方は、ぜひ参考になさってください。

寺垣弁護士
寺垣弁護士
借金滞納をしていると、給与を差押えられることもあります。

借金返済の目処が立たない場合は債務整理をするのも一つです。

借金を返せない方は一度ご状況をお聞かせください。

給与の差し押さえとは?

給与が差し押さえられると給与の一部を受け取れなくなります。給与の差し押さえは、強制執行の一つです。強制執行は、債務名義(裁判の判決)で認められた権利の内容を裁判所によって強制的に実現する手続きです。

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では、手続きの概要や流れを詳しく見ていきましょう。

給与差し押さえの流れ・差し押さえられる理由

借金の滞納を理由に、給与が差し押さえられるケースを見てみましょう。

①電話や郵便での支払の督促

返済期日に返済をしないと、債権者は、以下の対応を取ります。

  • 本人の自宅や携帯電話に連絡する
  • 自宅あてに請求書を郵送する

債権者によっては自宅に訪問する場合もあります。

②督促状や催告書による催告

電話連絡に応じず、請求書を放置すると、督促状や催告書が送付されます。督促状と催告書の違いは以下のとおりです。

督促状

滞納金額と返済期限が記載され、特定記録や簡易書留で送付される。

催告書

滞納金額と返済期限に加え期限の利益の喪失が予告される。通常は内容証明郵便で送付される。

期限の利益の喪失とは、分割で返済できる利益を失うことです。催告書の内容は、一括請求を予告するものが一般的です。

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③一括返済の請求

催告書で指定された期日に返済せず、債権者への連絡を怠ると、残金の一括返済を求められます。一括請求時には、応じない場合は法的措置に移行すると書かれるのが一般的です。

一括返済を請求する通知書は次のような表題で届くことが多いです。

  • 期限の利益喪失通知
  • 訴訟予告通知
  • 法的予告通知

通知書の表題は様々ですが、これらは債権者からの最終通告だと認識しましょう。

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④訴状の送付/支払督促正本の送付

債権者からの通知に対処しないでいると、債権者に、裁判手続き(例:貸金返還請求訴訟や支払督促)を起こされます。債権者が提訴・申立をし、裁判所が受理すると、債務者に以下の書類が送達されます。

  • 裁判の場合:訴状、期日呼出状、答弁書
  • 支払督促の場合:支払督促正本、異議申立書

裁判所から書類が届いた後も適切な対応をしなければ、次のとおり進行します。

【裁判の場合】

裁判期日に出頭せず、答弁書も提出しなければ、債権者の請求どおりの内容で裁判所が判決を出します。判決正本を受け取った後、控訴しないまま2週間経過すると判決が確定します。

【支払督促の場合】

支払督促正本受領後、2週間以内に異議申立書を提出しないと、支払督促に仮執行宣言が付されます。仮執行宣言が付くと、債権者は、直ちに差し押さえ手続きができます。

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⑤差押命令の申立

債権者は、④の裁判・支払督促を経て差し押さえの申し立てを行います。

ただし、次の場合は、裁判や支払督促の手続きを経ず、給与の差し押さえが可能です。

  • 税金を滞納した場合
  • 調停・審判、裁判等で決められた養育費や慰謝料を滞納した場合
  • 強制執行認諾文言のついた公正証書(執行証書)で定められた金銭債務を滞納した場合

強制執行認諾文言とは、債務を履行しない場合、直ちに強制執行に服する旨の債務者の陳述のことです。

⑥差押命令正本の送付

裁判所は、申立書を審査し、問題がなければ債務者本人と勤務先に債権差押命令正本を送達します。

勤務先は、裁判所から同封される陳述書に、債務者に支払う給与の有無、金額その他必要事項を記入して返送します。

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⑦給与の差し押さえ(強制執行)の実行

給与の差し押さえを受けると、債務者は満額の給与を受け取れません。給与の手取額から、差押金額(法律で定められた金額)を差し引いた残額のみ支給されます。

差し押さえられた給与は、次の方法で債権者に支払われます。

  • 債権者の取立に応じて、勤務先が債権者に支払う
  • 供託所へ供託する

差し押さえられる金額は?

実際に差し押さえられる金額を説明します。

法律では給与の手取のうち、生活に必要な部分の差し押さえを禁止しています。差押禁止額は、給与(通勤手当を除く諸手当と基本給の合計額)から、所得税、住民税、社会保険料を控除した残額の4分の3です。但し、前記残額が44万円を超える場合は、33万円の差し押さえが禁止されます。

よって、差し押さえられる金額は、以下のとおりです。

【給与から所得税等を控除した残額】

20万円の場合:20万円×4分の1=5万円
50万円の場合:50万円-33万円=17万円

差し押さえはどのくらい続く?

給与が差し押さえられると、差押命令が届いた月だけ差し押さえられるわけではありません。差押命令に記載された請求金額(借金の場合は残額の総額+遅延損害金+執行費用)の全額が回収できるまで毎月続きます。ボーナスや退職金がある場合は、それらも差し押さえの対象となります。

なお、以下のケースでは、全額回収できなくても債権者が申立てを取下げる場合もあります。この場合、差し押さえは解除されます。

  • 債務者が勤務先を退職したとき
  • 給与が低額で手間や時間に比して回収可能な金額が少ないとき
  • 債務者が他の方法で全額支払ったとき

給与が差し押さえられる理由

給与が差し押さえられる代表的なケースを説明します。

借金の返済が滞っている

借金やクレジットカードの返済が滞ると、債権者は、貸したお金を回収するために、給与の差し押さえを検討します。

給与が差し押さえされると困る場合は、返済を滞納しないことが大切です。滞納した場合は、債権者からの連絡を無視せず、債権者に事情を説明して滞納を解消する努力をしましょう。

税金を滞納している

税金を滞納した場合も、給与差し押さえの原因になります。税金滞納の場合は、裁判や支払督促の手続きを経ることなく、差し押さえが可能です。

税金を期限までに払えない場合は、なるべく早く役所に相談しましょう。事情によっては、分割払いや支払猶予に応じてもらえることがあります。

養育費や慰謝料を払っていない

離婚により養育費や慰謝料の支払いの取り決めをしたのに払っていない場合も、給与を差し押さえられる可能性がります。

夫婦間で任意に取り決めた場合

給与の差し押さえをする前に、裁判手続きを経なければなりません。

調停調書・審判・執行証書がある場合

給与差し押さえに必要な書面を準備すれば、裁判や支払督促を経ずに給与差し押さえを申し立てられます。

なお、養育費の回収を目的とする場合、差し押さえられる金額は給与の2分の1です。子供の養育が重視されるためです。

給与の差し押さえによる影響

給与が差し押さえられるとどうなるのでしょうか。ここでは、給与差し押さえによる影響を解説します。

生活への影響

給与を全額差し押さえられるわけではありません。手取収入の4分の3は受け取れますが、いつもより少ない金額でやり繰りしなければなりません。

保証人への影響

差し押さえの原因となる借金に保証人についている場合は、保証人に対して一括請求される可能性があります。場合によっては保証人の給与も差し押さえられるおそれがあります。生計を一つにする家族が保証人の場合は、家計全体として4分の2(4分の1×2人分)の収入減少となるケースもあるでしょう。

新規カード発行や借入ができなくなる

借金を2~3カ月程度滞納するとブラックリストに載り(信用情報機関に事故情報として登録され)ます。ブラックリストに載ると、新規カード発行や借入ができません。利用中のカードの利用限度額が減額されることもあるでしょう。

勤務先に知られる可能性は高い

給与が差し押さえられると、勤務先に債権差押命令が送付されます。勤務先の代表者や給与支払担当者には、借金の存在や滞納の事実を知られるでしょう。

家族に知られる

裁判所からの書面が家族の不在時に届けば、すぐに知られることはないでしょう。しかし、受給できる給与が少なくなるため、同居の家族に知られるのも時間の問題です。

給与の差し押さえを回避・解除する方法

給与の差し押えを止めるためには、その原因となる借金滞納を解決する必要があります。ここでは、給与差し押さえを回避・解除する方法を説明します。

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給与差し押さえを回避する方法

差し押さえを回避する方法を3つご紹介します。

任意整理

任意整理は、債権者と交渉して、支払い方法を決める手続きです。

差し押さえ前であれば、任意整理で給与の差し押さえを回避できます。しかし、任意整理には強制力がありませんので、すでに給与の差し押さえを受けている場合、取り下げてもらえる可能性は低いでしょう。

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自己破産

自己破産は、裁判所の許可を得て借金を免除してもらう手続きです(非免責債権を除く)。借金が原則全額免除される代わりに、一定額以上の財産を処分しなければなりません。

自己破産(破産手続き)の開始には、強制執行を中止・禁止・失効させる効果があります。差し押さえ前・差し押さえ後のいずれの段階でも回避に有効な手段です。

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個人再生

個人再生は、裁判手続きにより、借金を大幅(概ね5分の1)に減額し、収入の範囲内で返済できる計画を立てます。返済期間は原則3年(最大5年)です。その計画が認められると、計画に沿って借金を返済します。

個人再生手続きの開始も強制執行を中止・禁止・失効させる効果があります。自己破産と同様に差し押さえの回避に有効な手段です。

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給与差し押さえを解除する方法

差し押さえを解除する方法を2つご紹介します。

一括返済

給与差し押さえの対象となる借金を、一括返済すれば、債権者が差し押さえを取り下げてくれます。しかし、借金の返済が困難だったから給与が差し押さえられているので、自力での一括返済は現実的ではないでしょう。

家族や親族の援助により一括返済が可能な場合は、差し押さえを解除する手段となります。

異議申し立て

次のような場合には、請求異議の訴え(裁判)を行う方法があります。

  • 身に覚えがないのに給与が差し押さえられた場合
  • 債務は身に覚えがあるが、差し押さえを受けるはずがない場合

請求異議の訴えは、強制執行停止申立を同時に行うことで、一時的に給与の差し押さえが中止されます(執行停止)。裁判で勝訴判決を得れば、差し押さえが解除されます。

差し押さえの原因が税金滞納の場合の留意点

ここでは、給与差し押さえの原因が税金滞納の場合の留意点について解説します。

裁判や支払督促の手続きを経ず差押が可能

税金滞納の場合は、裁判手続きを経ず、直ちに差し押さえができます。これを避けるためには、役所等が督促状を発送した日から10日を経過するまでに滞納税の納付が必要です。

差し押さえられる金額の範囲が異なる

税金滞納の場合は、借金滞納の場合と差し押さえられる金額の範囲も異なります。

一般債権(借金滞納の場合等)による差押禁止額は民事執行法に定められていますが、税金は国税徴収法のルールが適用されます。

税金滞納の場合は、差し押さえられる金額が大きくなる場合があります。

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まとめ

借金を滞納した場合、給与が差し押さえられるまでには、いくつものステップがあります。

給与が差し押さえられると、受け取れる金額が減る以外にも多方面に影響が及びます。

借金の返済が順調でなくなったときは、早い段階で債務整理を行うことが有効です。

借金の返済ができず、債権者からの督促や催告にお悩みの方は、一人で悩まず、お気軽に当事務所にご相談ください。

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