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新株予約権付融資と転換社債の違い 弁護士が解説

新株予約権付融資と転換社債の違い 弁護士が解説

スタートアップの資金調達では、株式の希薄化を抑えながら資金を確保できる手段として「新株予約権付融資」と「転換社債(CB)」が選択肢になります。両者は、いずれもエクイティ(出資)とデット(融資)の中間的な性質を持つ「ベンチャーデット」と呼ばれる資金調達手法です。
ただし、契約構造や返済義務、希薄化の発生時期に違いがあるため、目的や状況に応じた使い分けが重要です。本記事では、両者の違いと選び方を、法律に詳しくない方向けに弁護士の視点でわかりやすく解説します。

目次

新株予約権付融資と転換社債の基本構造

ここでは、両者の基本的な仕組みについて説明します。

新株予約権付融資の基本構造

新株予約権付融資は、金融機関等からの融資契約と、貸し手に株式取得権を与える新株予約権割当契約を、別々の契約として同時に締結する仕組みです。
融資と新株予約権は独立しており、融資を完済しても新株予約権は残ります。貸し手は、上場やM&Aといった行使条件を満たした時点で新株予約権を行使し、株式を取得することが想定されています。詳細は別記事【新株予約権付融資とは?仕組みとメリットを弁護士がわかりやすく解説】で解説しています。

転換社債の基本構造

「転換社債」は、平成13年(2001年)の商法改正により正式な制度としては廃止されました。同改正で、それまで別々に規定されていた転換社債と新株予約権付社債が「新株予約権付社債」として統合され、旧転換社債に相当するものは現在「転換社債型新株予約権付社債」として位置づけられています(会社法第236条第1項3号、会社法第254条参照)。
実務上は、慣例として現在も「転換社債」または「CB(Convertible Bond)」と呼ばれることが一般的です。本記事でも、わかりやすさを優先して以下「転換社債」と表記します。
転換社債型新株予約権付社債は、社債と新株予約権が一体となった有価証券で、投資家は社債を取得します。一定期間内に「転換」を選択すれば、社債そのものを出資の目的として株式に転換できます。
スタートアップ実務では、次のラウンド(次回のエクイティ調達)までのつなぎ資金として、株価を確定させずに発行するケースが典型的です。

両者の主な違い

ここでは、新株予約権付融資と転換社債の違いを整理します。

契約構造

新株予約権付融資は、融資と新株予約権が別個の契約として独立して存在します。一方、転換社債は、社債と新株予約権が一体となった一つの有価証券として発行されます。
この違いは、後述する返済義務や希薄化の発生時期に影響します。

返済義務

新株予約権付融資では、融資部分は通常どおり現金で返済することが前提です。新株予約権が行使されるかどうかにかかわらず、元本と利息の返済義務があります。
転換社債では、投資家が転換を選択すれば、社債は株式に転換されるため、現金での償還義務は消滅します。転換されなかった部分のみ、満期に現金で償還する形となります。実務上は、次回ラウンドでの転換を前提に設計されることが多く、設計次第では現金返済が想定されないケースもあります。

希薄化の発生時期と程度

両者とも、契約締結の時点では株式は発行されないため、即時の希薄化は生じません。希薄化の発生時期と程度には次の違いがあります。
新株予約権付融資では、新株予約権が行使された分のみ株式が発行されます。融資金額が大きくても、新株予約権の規模は融資金額の数十パーセント程度に設計されることが多く、希薄化は限定的です。
転換社債では、社債全額が株式に転換され得るため、潜在的な希薄化規模は大きくなる傾向があります。次回ラウンドで一定の割引率(ディスカウント)を適用したうえで転換することが多く、結果として転換時の希薄化が想定より大きくなる場合もあります。

貸し手・投資家のリターン構造

新株予約権付融資では、貸し手は金利による利息収入と、新株予約権の行使によるキャピタルゲインの両方からリターンを得る構造です。
転換社債では、投資家は転換するかどうかを選択でき、株価が上がれば株式に転換してキャピタルゲインを得て、上がらなければ社債として償還を受けます。投資家にとっては選択肢が広い反面、発行体にとっては設計の自由度が低くなる傾向があります。

比較表

両者の主な違いは次のとおりです。

項目新株予約権付融資転換社債(転換社債型新株予約権付社債)
契約構造融資契約と新株予約権割当契約が別個社債と新株予約権が一体
返済義務融資部分は現金で返済が原則転換されれば償還義務は消滅
希薄化の規模融資額の数十パーセント程度に限定されることが多い社債全額の転換により希薄化規模が大きくなり得る
貸し手のリターン金利+キャピタルゲイン償還または転換による株価差益
主な利用場面成長資金、ランウェイ延長次回ラウンドまでのブリッジ

場面ごとの使い分け

ここでは、それぞれが向いている場面を整理します。

新株予約権付融資が向いている場面

新株予約権付融資が適している典型的な場面は、次のとおりです。

  • 株式の希薄化を抑えつつ、まとまった成長資金を確保したい
  • 売上や事業計画にもとづいて返済原資を見込める
  • 次回エクイティ調達までのランウェイを延長したい

転換社債が向いている場面

転換社債が適している典型的な場面は、次のとおりです。

  • 次回ラウンドまでのつなぎ資金(ブリッジファイナンス)を機動的に調達したい
  • 現時点で企業価値の評価(バリュエーション)を確定させたくない
  • 短期間で資金を確保し、次回ラウンドで株式へ転換することが想定できる

検討時の留意点

ここでは、両者を比較検討する際に押さえるべき点を整理します。

既存投資家との関係

いずれの手法も、既存投資家との投資契約上、事前承諾が必要となるケースが少なくありません。新株予約権の発行や社債の発行は、投資契約上の事前承諾事項として規定されていることが一般的です。検討の早い段階で既存投資家と協議を行うことが必要です。

法的論点

新株予約権付融資には、利息制限法や出資法、会社法上の発行手続といった法的論点があります。転換社債にも、新株予約権部分の有利発行該当性、社債発行手続、利息制限法との関係などの論点があります。
新株予約権付融資の法的論点については、別記事【新株予約権付融資の法的論点|2026年銀行協会報告書を弁護士が解説】で詳しく解説します。

会計・税務上の取扱い

両者は会計上の取扱いが異なります。新株予約権付融資は、融資と新株予約権を区分して処理する複合金融商品として扱われるのが一般的です。転換社債は、転換社債型新株予約権付社債として、一体処理または区分処理が選択されます。
具体的な処理は監査法人や顧問税理士との協議が必要です。

まとめ

新株予約権付融資と転換社債の違いを整理すると、次のとおりです。

  • 契約構造
    新株予約権付融資は「融資+新株予約権」が別個、転換社債は「社債+新株予約権」が一体
  • 返済義務
    新株予約権付融資は現金返済が原則、転換社債は株式転換により償還義務が消滅し得る
  • 希薄化
    新株予約権付融資は限定的、転換社債は社債全額の転換により規模が大きくなり得る
  • 利用場面
    成長資金やランウェイ延長には新株予約権付融資、次回ラウンドまでのブリッジには転換社債が向く

両者にはそれぞれの長所と注意点があり、自社の事業計画と資金調達戦略に照らした検討が必要です。具体的な設計や契約書の検討については、企業法務に精通した弁護士へのご相談をおすすめいたします。

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