第三者弁済を利用した支払代行の法的整理――「貸付け」と評価されないための実務ポイント

第三者弁済を利用した支払代行の法的整理――「貸付け」と評価されないための実務ポイント
「取引先への支払いをグループ会社に任せたい」「支払サイクルを短くして取引先との関係を強化したい」。 こうしたニーズへの対応策として、グループ会社を介した支払代行の仕組みを検討する企業は少なくありません。 この仕組みは、法律上は「第三者弁済」(債務者本人ではなく別の者が代わりに支払うこと。民法第474条)として整理できます。 しかし、運用を誤ると貸金業法上の「貸付け」に該当するリスクがあります。 本記事を読むと、この仕組みが「貸付け」と評価されないための3つの要件と、関係者間で取り交わす合意書に何を書くべきかがわかります。
支払代行の基本構造
ここでは、第三者弁済を利用した支払代行がどのような仕組みかを整理します。
登場人物は3者です。
- A社(支払義務を負う会社):取引先に報酬を支払う義務がある
- B社(支払代行を行うグループ会社):A社に代わって取引先に支払う
- C社(取引先):A社から報酬を受け取る権利を持つ
B社は、A社の支払期日よりも早いタイミングでC社に支払います。 A社は、本来の支払期日にB社に対して立替分を精算します。
法律上、B社からC社への支払いは「第三者弁済」にあたります。 A社の支払期日より前に支払うのは、A社が持つ「期日まで待ってもらえる権利」(期限の利益)を放棄する行為として説明できます。
なお、第三者弁済自体は三者の事前合意がなくても法律上可能です。 ただし、後述する返金処理や免責条項は法律の規定だけではカバーされないため、合意書を作成して定めておく必要があります。
「貸付け」に該当しないための3つの要件
ここでは、この仕組みが貸金業法上の「貸付け」と評価されないために押さえるべき3つの要件を説明します。
第1に、C社に返済義務がないことです。 「貸付け」は、お金を受け取った側に返す義務があることが前提です。 この仕組みでは、C社が受け取るのはA社から本来支払われるべき報酬であり、C社がB社にそのお金を返す必要はありません。 仮に、顧客の中途解約などで報酬の返還が発生する場合は、B社を経由せずC社からA社に直接返金する運用にしておけば、B社が「貸したお金を回収する」構造にはなりません。
第2に、A社のC社に対する支払義務が既に確定していることです。 B社がC社に支払える金額は、A社のC社に対する報酬支払義務が既に発生・確定している範囲内に限ります。 確定額を超えて支払った場合、超過分はA社の債務の弁済とはいえず、B社からC社への実質的な貸付けと評価されるおそれがあります。 次のセクションで、この点を具体例で説明します。
第3に、手数料を徴収しないことです。 B社がC社に支払う際に手数料を差し引くと、その手数料が「利息」と実質的に同じだと評価されるリスクがあります。 手数料を取らない(0%)のであれば、営利目的がないため「貸付け」とは評価されにくくなります。 なお、手数料を徴収する場合のリスクについては、「早期支払割引は貸金業法違反?弁護士がリスクと対策を解説」(【内部リンク】)で詳しく解説しています。
まだ確定していない報酬を先に払った場合のリスク
ここでは、第2の要件に違反した場合にどうなるかを具体的に説明します。
A社とC社の間に、月額報酬が毎月の実績に応じて確定する契約があるとします。 4月末時点で確定しているのは4月分の報酬30万円だけです。
この段階で、B社が「5月分・6月分も含めて90万円をC社に支払う」としたらどうなるでしょうか。 5月分・6月分の合計60万円は、まだA社の支払義務として確定していません。 この60万円は「A社の借金を代わりに払った」とはいえず、B社が自分のお金をC社に渡しただけの状態です。 後日A社からB社に精算があるとしても、経済的には「B社がC社に60万円を貸して、A社を通じて回収する」のと変わりません。
こうしたリスクを防ぐために、以下の運用を行ってください。
- A社のC社に対する確定額を月次等で管理し、B社の支払額が確定額を超えないように統制する
- 支払いを実行する前に、A社の債務額が確定していることを確認するフローを設ける
- 確定額と実際の支払額の対応関係を記録に残す
三者間合意書に盛り込むべき事項
ここでは、この仕組みを安全に運用するための合意書の記載事項を整理します。
- B社の支払いの法的性質:A社のC社に対する債務の第三者弁済(A社に代わる支払い)であること
- C社の返済義務の不存在:C社がB社に対して受け取った金額を返す義務がないこと
- 返金の処理方法:顧客の解約等で報酬の返還が発生した場合は、B社を経由せずC社からA社に直接返金すること
- B社の免責:返金の回収業務やそれに伴うリスクにB社が関与しないこと
- 支払いの範囲:B社の支払額はA社のC社に対する確定債務の範囲内に限ること
まとめ
- この仕組みは、C社に返済義務がなく、A社の確定債務の範囲内で行い、手数料を取らなければ「貸付け」に該当するリスクは低い
- まだ確定していない債務について先行して支払うと「貸付け」と評価されるおそれがあるため、確定額の管理は厳密に行う
- 三者間合意書では、第三者弁済としての法的性質、返済義務の不存在、返金処理の方法、B社の免責を明確に定める
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