会社・法人の倒産手続きを弁護士に相談した際のサポート内容・費用

取引先や従業員に迷惑をかけたくない気持ちが強く、会社の倒産を躊躇する方もいらっしゃるでしょう。
しかし、解決を先延ばしにすると、さらに事態が悪化するおそれがあるため、なるべく早い段階で決断することも重要です。
倒産手続きは大変複雑ですが、弁護士に依頼すると手続きのほとんどを任せられます。
経営者は、倒産処理ばかりに追われることなく、通常業務や再出発のための新しい事業への構想に時間を使えます。
この記事では、倒産手続きを弁護士に依頼すべきかどうかについて、以下の点を踏まえて解説します。
- 倒産手続きを弁護士に依頼するメリット・デメリット
- 倒産を弁護士に相談してから再出発するまでの流れ・期間
- 会社・法人倒産手続きの弁護士費用
会社を倒産させるべきかどうか迷っている経営者様は、ぜひ最後までご覧ください。
倒産手続きを弁護士に依頼するメリット
ここでは、倒産手続きを弁護士に依頼するメリットを解説します。
倒産するべきかどうかも相談できる
事業の継続が可能か、清算型の倒産手続きを取らざるを得ないか等、今後の対応を相談できます。
事業の継続が可能な場合も、自助努力による事業改善が可能かどうか、再建型の倒産手続きにより再建を図るべきか等のアドバイスを受けられるでしょう。
督促を止められる
倒産手続きを弁護士に依頼すると、弁護士は債権者に対し、受任通知を送付します。受任通知には、債権者から債務者への直接の督促を停止させる効果があります。
債権者からの督促が止まることで、精神的な平穏を得ることができ、通常業務や再出発への準備に専念できます。
ただし、受任通知発送による口座凍結のおそれや、取引先・従業員の混乱を招く可能性がある場合は、受任通知を送付せずに手続きに移るケースもあります。
どの手続きが適しているか判断できる
倒産手続きには、裁判所を利用する法的整理と、裁判所を利用しない私的整理があります。それぞれに、事業を消滅させる清算型の手続きと、事業を存続させる再建型の手続きがあります。具体的には、以下のとおりです。
私的整理 | 再建型 | 任意整理 | 債権者(主に銀行などの金融機関)との交渉により債務の免除・返済猶予を図る手続き |
清算型 | |||
法的整理 | 再建型 | 民事再生 | 事業を継続しながら、債務を減額して、経営を再建する手続き |
会社更生 | |||
特定調停 | 裁判所の調停委員を仲介役として、債権者との間で債務の免除・返済猶予を図る手続き | ||
清算型 | 法人破産 | 支払不能または債務超過となった会社を消滅させる手続き | |
特別清算 |
どの方法が適しているかは、会社存続の希望の有無、負債・財産の状況等によって異なります。弁護士に依頼すれば、会社の状況に応じて適切な手続きを選択できるようアドバイスしてもらえます。
それぞれの手続きの詳細は、下記関連記事をご参照ください。

複雑な手続きを任せられる
会社・法人の倒産手続きは、各種法律やガイドラインで詳細に定められており、その内容は非常に複雑で専門知識が必要です。
選択する手続きによって必要な対応は異なりますが、通常業務を継続しながら自身でこなすことは困難なことが多いです。弁護士に依頼すれば、複雑な手続きを任せられます。
従業員や取引先とのトラブルを回避しやすい
倒産手続きの中でも、特に経営者を悩ませるのが、従業員や取引先の対応です。
選択する手続きによっては、従業員の解雇が必要になる場合もあります。従業員や取引先には、誠実に対応する必要があります。トラブルが生じた場合、後の手続きや再建計画に支障を及ぼす可能性があるからです。
弁護士に手続きを依頼すると、従業員解雇についての説明や対応、取引先からの質問やクレームの対応も安心して任せられます。
再出発までの見通しを立てられる
会社・法人の倒産手続きにあたっては、初動の段階で、会社の状況に応じて必要な作業の見通しを立て、スケジュールを調整することが重要です。
弁護士に依頼すれば、経験に基づいて具体的な見通しを立てながら、手続きを進められるため、スムーズな再出発を図れます。
倒産手続きを弁護士に依頼するデメリット
倒産手続きを弁護士に依頼するデメリットは費用がかかる点です。
倒産手続きは専門知識が不可欠で、手続きも複雑です。そのため、弁護士費用もある程度まとまった金額が必要です。
法的整理を利用する場合は、裁判所へ納める費用も必要になります。倒産手続きにかかる費用は、状況が深刻な事案ほど高くなる傾向にあります。費用を節約するためには、会社の経営が行き詰まったと感じたときに、1日も早く弁護士に相談することが重要です。
現預金がなく費用が確保できない場合は、売掛金を回収するなどして弁護士費用にあてることも可能です。まずは無料相談などを活用して弁護士に相談してみましょう。
倒産手続きにおける弁護士一任とは?
ここでは、倒産手続きにおける弁護士一任について解説します。
弁護士が連絡窓口になること
弁護士一任とは、倒産手続きを弁護士に委任して受任通知を送付してもらい、取引先や債権者への対応窓口を、弁護士に一本化することです。
弁護士に対応や手続きを一任すると、手続きにかかる手間や経営者の精神的負担が軽減されるメリットがあります。
弁護士への一任はタイミングが重要
会社・法人の倒産手続きでは、受任通知送付よるデメリットも念頭に置き、営業状況、費用の確保状況、手続きの準備が滞りなく行なえるかどうかを考慮して、ケースバイケースで弁護士に一任するタイミングを検討する必要があります。
受任通知送付によるデメリット
貸金業法の適用を受けない個人債権者や取引先については、受任通知によって必ずしも催促を止められるとは限りません。受任通知の送付により、会社が倒産手続きを取ることを知らせてしまうことで、取引先からの強引な取立て行為を誘引し、偏頗弁済が起きてしまうことにもなりかねません。
口座を開設している銀行から借入れがある場合は、受任通知送付により口座が凍結される可能性があります。
税金に滞納がある場合は、公租公課庁に受任通知を送付すると、滞納処分により財産が差し押さえられるおそれもあります。
倒産を弁護士に相談するタイミング
ここでは、倒産を弁護士に相談するタイミングについて解説します。
資金ショートや手形不渡りのリスクを事前に把握しているとき
数ヶ月後に、手形の不渡りを出したり、資金ショートが発生したりすることを把握したときは、なるべく早く弁護士に相談しましょう。
特に、手形については、1回目の不渡りから6ヶ月以内に2回目の不渡りを出すと、銀行取引が停止されてしまいます。
自社で資金繰り表を作成しておらず、数カ月先の見通しがつかない場合は、税理士等に状況を確認して、資金繰りを把握しておくことが重要です。
営業利益が出ず業績が悪化しているとき
売上よりも経費が多く業績が悪化している場合など、経営改善の手を打たずに赤字経営を容認していると、現預金残高の減少に歯止めがかからず、倒産の危機に陥るおそれがあります。
早い段階で倒産の前兆を見抜ければ、適切な対策を講じることができ、倒産を回避できる可能性があります。少しでも経営状況が厳しくなったら、なるべく早く弁護士に相談しましょう。
実質的に債務超過と判断されるとき
帳簿上は黒字でも、手元資金が足らず、経常運転資金が支払えない場合は、一日でも早く弁護士に相談しましょう。
売掛金の回収ができなかったり、在庫商品の相場が急落したりすると、必要な資金調達ができなくなり、黒字でも倒産の危機に追い込まれることがあります。手元のキャッシュが不足すれば、借入金の返済や税金の納付ができず、事業の存続が困難になる可能性があるからです。
後継者がおらず事業の継続が難しいとき
後継者がおらず事業を承継できないことが判明したときは、経営者が元気なうちに弁護士に相談することをおすすめします。
会社の業績が先細りする前に、早めに会社をたたむ決断をすること重要です。

会社・法人の倒産手続きでよくある質問
ここでは、会社・法人の倒産手続きに関するよくある質問について解説します。
自分で手続きできますか?
弁護士費用を節約するため、「自分で手続きできますか?」という質問がよく寄せられます。 弁護士に依頼せず、法人の代表者が自ら手続きを行うことはもちろん可能です。
ただし、次の理由から自分で手続するよりも弁護士に依頼することをおすすめします。
- 手続きは大変複雑であること
- 専門知識が不可欠であること
- 法律の要件を満たさなければ手続きは成功しないこと
- 手続きに必要な作業は多岐にわたること
- 裁判所や管財人等とのやりとりに負担がかかること
手続きにはどのくらいの期間がかかりますか?
手続きにかかる期間は、会社の状況や選択する手続きによって異なります。
法的整理にかかる期間は、6ヶ月~1年程度が一応の目安ですが、債権者が多い事案などでは1年以上かかるケースもあります。
倒産手続きの弁護士費用が払えない場合はどうすればいい?
ここでは、倒産手続きの弁護士費用が払えない場合の対処法を解説します。
前提|倒産手続きは余力のあるうちに着手するのが鉄則
一般的に、経営者の方は、会社の資金繰りができなくなったときに、倒産を検討する場合が多いため、倒産を決意したときには、すでに会社に現預金等が全くないケースもあります。
しかし、倒産手続きには、弁護士費用のほか、裁判所に納付する手続費用や予納金の準備が必要です。
予納金の金額は、事件ごとに裁判所が決定しますが、会社の規模や状況により、数十万円~数百万円と高額になることもあります。これらの費用を準備できなければ、申立てすらできません。
そのため、倒産を検討する場合は、会社にある程度資金の余裕があるうちに、弁護士に相談することをおすすめします。

売掛金の回収・財産の換価を検討する
未回収の売掛金や換価可能な資産がある場合は、後の手続きに影響しない範囲で資産を売却したり、売掛金を回収したりして弁護士費用にあてる方法があります。
ただし、資産の売却については、管財人の否認権行使の対象となる(行為を取り消される)可能性があります。資産を売却する場合は、必ず弁護士のアドバイスを受け、自己判断で実行しないよう注意しましょう。
親族の援助を受ける
倒産手続きの弁護士費用は、親族の援助等を受けて支払うことも可能です。
ただし、借入ではなくあくまでも援助(贈与)であることを、裁判所に証明できるようにしましょう。
弁護士に費用の分割払いを相談する
弁護士事務所によっては、費用の分割払いに対応している事務所もあります。一括払いが困難な場合は、弁護士に費用の分割払いを相談してみましょう。
法テラスを利用する(個人事業主または法人代表者のみ)
清算型倒産手続きのうち、法人破産を申立てるにあたって、代表者個人も同時に自己破産を申立てる場合は、代表者個人の破産申立てにかかる弁護士費用を援助してもらえる可能性があります。
ただし、あくまでも代表者個人に限られるため、法人破産にかかる費用は立て替えてもらえません。詳しくは下記をご確認ください。
弁護士・司法書士費用等の立替制度のご利用の流れ | 無料法律相談・弁護士等費用の立替 | 法テラス (houterasu.or.jp)
※なお、当事務所では法テラスの民事法律扶助制度の利用を希望される方からのご相談は現在受け付けておりません。
倒産を弁護士に相談してから再出発するまでの流れ・期間
ここでは、倒産を弁護士に相談してから再出発するまでの流れや期間を解説します。
民事再生の場合
民事再生手続きは、概ね以下のとおり進められます。
- 弁護士への相談・方針決定・依頼
- 民事再生手続き開始申立て
- 保全処分・監督命令の発令
- 債権者説明会
- 民事再生手続き開始決定(申立てから1~2週間程度)
- 債権届出及び債権認否の手続き
- 財産の評定書・報告書・再生計画案原案の提出
- 再生計画案の提出(申立てから3ヶ月程度)
- 債権者集会
- 認可決定(申立てから6ヶ月程度)
- 再生計画の履行~履行の終了(弁済期間は最長10年)
申立てから認可決定までの期間は、6ヶ月程度です。弁済期間は、最長10年とされていますうが、実務上は、5~7年とされるのが一般的です。

法人破産の場合
法人破産手続きは、概ね以下のとおり進められます。
- 弁護士への相談・方針決定・依頼
- 破産手続き開始の申立て
- 債務者審尋
- 破産手続き開始決定・破産管財人の選任(申立てから2週間~1ヶ月)
- 債権者集会(開始決定から3ヶ月程度)
- 債権確定・配当
- 破産終結決定(申立てから6ヶ月~1年程度)
- 免責審尋
- 免責許可決定・免責不許可決定
法人破産の申立てから終了までの期間は、法人の規模や負債額・債権者数等によって異なりますが、概ね6ヶ月~1年です。複雑な事案では1年以上かかることもあります。
免責決定確定すれば、法人格の消滅とともにすべての債務が消滅します。

任意整理の場合
私的整理の場合は、法律で定められた明確なルールがあるわけではありませんが、主に次の流れで進められます。
- 弁護士への相談・方針決定・依頼
- 交渉する債権者を決めて交渉を開始する
- 債務免除・返済猶予等の新たな条件に関する合意書を締結
- 合意書に基づく返済の開始
もっとも、手続きと深い関係にある機関が定める一定の指針(ガイドライン、準則)に則り私的整理を行うケースもあります。
弁護士に任意整理を依頼してから、債権者に返済計画の合意を得るまでに必要な期間は、債権者の数や対応にもよりますが、4ヶ月~1年程度が一応の目安です。
会社・法人の倒産手続きならネクスパート法律事務所
会社・法人の倒産手続きについて相談する弁護士を迷っている経営者様には、ネクスパート法律事務所をおすすめします。
弁護士が複数名のチームで対応
ネクスパート法律事務所では、案件により複数の弁護士がチームで対応致します。
法人の倒産事件は時にスピードが重要です。チームで対応することで、必要な処理を同時進行で進めることが可能です。
法人の倒産手続きに慣れた弁護士が対応
ネクスパート法律事務所には、法人の倒産手続きに多く携わっている弁護士が複数名在籍しています。法人の倒産事件では知識だけでは解決できない問題も発生します。経験豊富な弁護士によって経営者様の再出発をサポートします。
代表者様個人の債務整理にも対応
法人の倒産事件を得意とする法律事務所でも、個人の債務整理には詳しくない弁護士も少なくありません。ネクスパート法律事務所では、個人の債務整理も数多く取り扱っています。代表者様個人の債務整理が必要な場合にも、安心してお任せいただけます。
全国11箇所の支店で対応
ネクスパート法律事務所は、全国10箇所に支店があり30名以上の弁護士が在籍しています。
- 東京本店
- 横浜支店
- 立川支店
- 大宮支店
- 西船橋支店
- 高崎支店
- 仙台支店
- 那覇支店
- 名古屋支店
- 福岡支店
お近くの支店でご相談を承ります。
ネクスパートの会社・法人倒産手続きの弁護士費用
最後に、ネクスパート法律事務所にご依頼いただく場合の弁護士費用についてご紹介します。
相談料:無料
初回相談料は無料です。
着手金:66万円(税込)~
たとえば、法人破産と代表者個人の自己破産をご依頼いただいた場合、合計で66万円(税込)~となります。
事業が現在も動いているか、従業員がいるか、処分すべき財産があるか等により異なるため、具体的な金額は弁護士がご相談をうかがい見積りを致します。
成功報酬:0円
成功報酬としていただく金額はありません。すべて着手金としていただいております。
その他にかかる費用
その他にかかる費用は、債権者や裁判所とのやり取りに必要な郵便代金等の実費です。数千円~数万円程度になることがほとんどです。
法人の資産等により必要な実費は異なりますので、詳しくは弁護士にご相談ください。
弁護士費用以外にかかる費用
その他、弁護士費用以外にかかる費用として裁判所に納める費用があります(法的整理を利用する場合)。
申立てを行う裁判所や手続きにより異なりますが、概ね以下のとおりです。
- 予納金:数十万円~数百万円
- 申立手数料:数千円~数万円
- 官報公告費:1~2万円程度
まとめ
会社を倒産させる決断は、なかなかすぐにできることではないでしょう。
しかし、倒産手続きをする場合、早めにご相談いただいた方が手続きの選択肢が増えます。法人破産を避けられない場合でも、早い段階で申立てに移ることで債権者に少しでも多く配当できたり、従業員へ少しでも給与を払えたりする可能性があります。
倒産手続きを迅速かつ適切に進めることは、取引先や従業員にとっても、メリットとなります。債権者は債権を損金として計上でき、従業員は国の未払賃金の立替払制度を利用できる可能性があるからです。
なるべく早く決断し誠実に対応することで、経営者個人も早期に再出発を図れます。
会社を倒産させるべきかどうか迷っている経営者様は、まずは弁護士に相談することをおすすめします。