会社を設立する時に押さえておくべきポイント・基礎的知識を解説

「個人事業主としてしばらく仕事をしてきて、売り上げも伸び、人脈も広がり、仕事の依頼も日々舞い込んできている。従業員も増やさないと仕事が追いつかなくなりそうだ。」

 

「他の会社で長年仕事をしてきて、幅広く人脈が築けたし、会社ではできない仕事をしていきたい。周囲の人たちも応援してくれている。」

 

「とても良いアイデアがあり、自分にはそれを実現する力がある。これをなんとか形にしていきたい。」

 

例えばこのような時に「会社を設立しよう!」と思うのではないでしょうか?

 

しかし、会社の設立にはデメリットもあります。会社を設立するのか個人事業主でいくのか、個人事業主と会社それぞれのメリット・デメリットをよく検討して決めましょう。

 

会社を設立するとは

会社を設立するために必要なことは一体何でしょう?実は以下の3つなのです。

・覚悟

・長期計画

・必要性

 

覚悟

まずは、「何があっても会社を存続させていく」という強い覚悟が必要です。会社を設立すると、その会社を信用して資金援助(出資や融資)をしてくれたり、取引(取引先や顧客)をしてくれたり、働いて(従業員)くれたりします。

 

それらの人々の期待を裏切らず、存続し続けることが非常に重要です。万が一期待を裏切ってしまう結果(会社を畳む)になった場合には、信頼を失うという、あなたの人生にとって非常に大きなダメージを残します。

 

長期計画

事前に、数年間にわたる長期的な計画を立てておかなければなりません。金融機関への返済、事業所の家賃や水道光熱費の支払い、従業員への給与、社会保険料の支払い、など、個人事業に比べて支払うべき金額は高くなります。

 

設立当初は赤字に陥ったとしても、2~3カ月、遅くとも半年後には支払うべき金額よりも利益が上回っていなければ会社は立ち行きません。必要経費がいくらくらいになるのかを事前にしっかり把握しましょう。

 

必要性

会社を設立する必要性がない、あるいは会社を設立するメリットが小さいのであれば、あえて会社を設立することにこだわらず、個人事業主として続けていく選択肢もあることを頭の片隅においておいてください。

 

個人事業主と会社-6つの違い-

・責任の違い-有限責任・無限責任-

・社会的信用度の違い

・社会保険強制加入の有無の違い

・赤字の時の税金負担の違い

・給与設定による損金計上(経費)の違い

・交際費の限度額の違い

1つずつ簡単に解説します。

 

責任の違い

個人事業主であれば、事業にかかった費用や借入れなどは、個人の財産で全額返済しなければなりません(無限責任)が、会社であれば、株式や出資金を失うだけですみ(無限責任を除きます)、たとえ会社がそれ以上の赤字だったとしても、その責任を負う必要はありません。

 

社会的信用度の違い

社会的信用度とは、例えば金融機関から融資を受ける際に、どちらが融資を受けやすいかであったり、従業員を募集する際に、どちらに応募者が集まりやすいかであったりをいいます。

 

会社であれば定款に資本金の額の記載があるので、金融機関が融資額を決める時の目安になりますが、個人事業主の場合には、実際にどれだけの売上が見込めるか不透明なので、融資する側も融資がしづらい面があります。

 

また、個人事業主の場合、事業主に何かあった場合には事業はその時点で終わってしまう可能性が高いですが、会社の場合、代表取締役に何かあっても他の取締役が会社を引き継ぎ、事業の継続性が見込まれるため、従業員も安心して仕事ができますし、取引先も安心して取引ができます。

 

社会保険強制加入の有無の違い

会社の場合には、従業員がたとえ社長1人であっても、必ず社会保険に加入しなければなりません。

 

社会保険料は、会社が負担すべき金額が大きいので、収入がそれほど見込めないうちから会社を設立してしまうとどんどん赤字が膨らみ、会社が立ち行かなくなってしまいます。

 

税金負担の違い

個人であれば赤字の場合には住民税を支払わなくて済みますが、会社の場合は、赤字であっても法人住民税(最低でも7万円程度)を必ず支払わなければなりません。

 

給与設定による損金計上(経費)の違い

個人事業主の場合には、自分の給与を決めてそれを経費にすることはできませんが、会社の場合には、社長の給与を設定し、それを経費(人件費)として計上することが可能です。

 

また、個人事業主の場合には、自分の家族を従業員とする場合には、専従であることが必要ですが、会社の社長がその家族を従業員として雇用し、給与を支払う場合には、個人事業主の場合と違い、専従であることなどの制約等はありません。

 

交際費の限度額の違い

経営においては、何がどこまで経費として認められるかは大変重要な問題ですが、個人事業主と会社では特に「交際費」に大きな違いがあります。

 

個人事業主の場合には、交際費に限度額がありません。つまり、全額経費として認められます。一方で、会社の場合には、計上できる交際費には上限があります。

 

会社を設立するメリット・デメリット-比較-

個人事業主でいくか、それとも会社を設立するか、メリット・デメリットを押さえたうえでどちらにするか決めましょう。

 

以下、簡単に表にしましたので参考にしてください。

 

 

個人事業主

会社

責任 無限責任 有限責任(会社形態によって無限責任社員がいる場合は無限責任)
社会的信用度 低い 高い
社会保険 条件によって加入義務発生 加入義務あり(金銭的負担大)
税金面

赤字の場合には所得に対する所得税・住民税の負担無し

利益が800万円を超えるあたりから税負担が重い

赤字でも法人住民税が最低7万円程度

必要経費の幅が広いので節税のメリットが大きい

所得税と法人税

コスト面 手続きが簡単なので低コストで済む 専門家への相談費用等、事業関係以外のコストが高額になる
資金調達のしやすさ 個人の信用だけだと難しい 信用度が上がるほど資金調達がしやすくなる
採用面 集まりにくい 個人事業に比べて集まりやすい
設立手続き 開業届提出 定款作成・登記手続き等
会社を畳むとき 手間も費用もほとんどかからない(廃止届) 様々な処理・登記が必要なので手間と費用がかかる

 

会社設立の流れ

個人事業主と比べてみて、やはり「会社を設立する!」と決めた場合には、以下の流れに沿って設立準備をしましょう。

 

会社設立前の準備

会社を設立するということは、「法務局で登記をする」ということですが、登記をする前にしなければならない、あるいはしたほうがよい準備がたくさんあります。

 

<しなければならない準備・打ち合わせ>

・会社の種類を選ぶ(株式会社か合同会社にする場合が多いでしょう)

・会社名

・事業目的

・事業所

・資本金

・事業年度

<しておいた方がよい準備>

・印鑑

・広告宣伝

・利用出来る助成金・補助金の確認

・相談先の確認

・書類提出先の確認

 

以下、簡単に見ていきましょう。

会社を設立するときに決めなければならない事項(定款記載事項等)について、打ち合わせをして決めます。

 

会社の種類は4つありますが、今後の事業展開を考慮に入れてどれにするか選びましょう。基本的には「株式会社」か「合同会社」を選ぶとよいでしょう。

会社の種類についてはこちらをご参照ください。

会社設立方法-設立前から設立後までの手続きと流れ- | 企業法務、DD、会社法に強い【弁護士法人ネクスパート法律事務所】 (nexpert-law.com)

 

会社の種類を決めたら会社名にその種類を明記します(株式会社〇〇、合同会社□□等)。ちなみに、株式会社〇〇としても、〇〇株式会社としても、どちらでも構いません。つける人の好み(センス)です。

 

事業目的は、具体的に何をする会社なのかを設定するものです。「取引の安定性」を確保するため、定款に記載しなければならないと決められています。

 

事業目的を決定するときのポイントは次の3つあります。

・適法性

・営利性

・明確性

会社の目的が適法であることは当然のことで、違法目的の会社の設立は認められません。

 

会社は利益を追求することを目的としなければなりません。そのため、ボランティア活動や寄付活動などの非営利を目的とする会社の設立は認められません。

 

「取引の安定性」確保のために、誰が見てもわかるように目的を設定しなければなりません。

 

事業目的数の制限はありませんが、多すぎると何をやっている会社かわからない、信用できない、とみなされてしまいます。

 

将来の事業展開を考慮に入れて、主たる目的を決め、それに関連する目的を数個並べて記載しましょう。

 

事業所を決めるときに考慮すべき点は、まずは、「毎日通う場所である」ということです。自分あるいは従業員が毎日出勤するのに大変な場所では困ります。

 

次に、来訪する予定の人がいるかどうかも考慮すべき点になります。つまり、取引先あるいは顧客が来社する可能性がある場合、わかりにくい場所や、交通の便が悪くて時間がかかるのであまり行きたくないな、と思うような場所は避けた方がよいでしょう。

 

なお、事業所の場所によって管轄する公証役場や法務局が決まります。税務署・都道府県税事務所等、設立後に届出をすることも考慮に入れ、なるべく行きやすい場所を選んだ方がよいでしょう。

 

資本金は会社の体力です。会社を運営し、支えていくことができるだけの金額を資本金として設定しましょう。

 

事業年度は会社が赤字に陥らないようにするためにも大変重要です。会社の業務内容や繁忙期、節税面などを考慮した上で会社に最も適した事業年度を設定しましょう。

事業年度については弊所の別記事をご参照ください。

会社設立方法-設立前から設立後までの手続きと流れ- | 企業法務、DD、会社法に強い【弁護士法人ネクスパート法律事務所】 (nexpert-law.com)

 

会社の名称を決めたら会社の印鑑を作成したり、宣伝広告したり、HPの作成の準備をしたり、こまごまとやることがあります。

 

設立前に申請しなければもらえない補助金や助成金もあるので、会社を設立すると決めたら、なるべく早めに利用できる補助金や助成金の確認をします。

 

補助金や助成金は返済しなくてすむお金なので、助成対象になっているかどうか設立前に確認し、貰えるお金はもらいましょう。

 

補助金・助成金の申請には様々な書類が必要となるので、しっかり準備しなければなりません。

 

補助金や助成金をすべて確認し、書類を準備することは大変です。会社の設立だけでも大変なのにそれ以上は・・・と思った場合には、専門家に相談しましょう。

どの専門家に相談すべきか等については、弊所の別記事をご参照ください。

【目的別】会社設立に関する相談先まとめ | 企業法務、DD、会社法に強い【弁護士法人ネクスパート法律事務所】 (nexpert-law.com)

 

会社設立

会社を設立するときには定款を作成しなければなりません。株式会社の場合には、公証役場での「認証」も必要です。

 

定款作成

「定款」は、いわゆる会社の憲法です。絶対的記載事項・相対的記載事項・任意記載事項というものがあり、非常に重要な書類なので、少しでも不安がある場合には専門家に相談することをお勧めします。

 

公証役場での認証

公証役場はどこでもよいわけではありません。登記と同じく、「管轄」が決まっていますので、本店所在地を管轄する公証役場で認証してもらわなければなりません。

 

資本金の提出

会社はまだ設立されていないので、資本金は個人名義の口座に入金します。資本金の入金であること、誰が入金したのか、がわかるように入金します。

 

設立登記

定款を作成(認証)し、資本金の払い込みが完了したらいよいよ設立登記です。管轄の法務局で登記をします。

 

設立後の届出

登記が完了すると、会社の設立は完了しますが、設立後にもまだやらなければならないこと、「役所等への届出」が残っています。

 

各役所への届出期限は決まっていますので、なるべく早く届出をしましょう。なお、計算が必要な書類や保険料の納付等もありますので、登記前にできる限りの書類を準備しておくことをお勧めします。

 

・税務署:法人税に関する届出等

・都道府県税事務所・市区町村役場:法人住民税・法人事業税に関する届出

・労働基準監督署:労働保険に関する届出

・ハローワーク:雇用保険に関する届出

・年金事務所:社会保険に関する届出

 

これらの手続きも書類の準備や、各役所への届出に、手間暇がかかります。会社設立直後はこれらの手続きに時間をかけることが難しいことが多々あります。

 

手続きに関しては設立当初から専門家に任せてしまうことも検討しましょう。

 

まとめ

会社を設立するということについての意味や流れを簡単にご説明しました。詳細については弊所コラムに別途説明している記事がありますので、参考にしていただきますと幸いです。

この記事を書いた人

ネクスパート法律事務所