自己破産を決断すべきタイミングとは|その他重要なタイミングも解説
借金の返済が苦しいのに、デメリットが不安で自己破産をためらったり、決断すべきタイミングが分からず解決を先延ばしにしたりしていませんか?
一歩踏み出して弁護士に相談することで、借金問題を理想的な形で解決できるかもしれません。
この記事では、自己破産に関するさまざまなタイミングついて、次のとおり解説します。
- 自己破産を決断すべきタイミングとは?
- 自己破産を自ら決断すべきではないタイミングとは?
- 自己破産と離婚のタイミングと注意点
- 自己破産と生活保護申請のタイミングと注意点
- 任意売却と自己破産のタイミングと注意点
- 自己破産申立前のタイミングで自宅が競売にかけられることはある?
- 自己破産で車が引き上げられるタイミングは?
- 自己破産で官報に載るタイミングは?
- 自己破産するとどのタイミングでブラックリストに載る?
自己破産に踏み切るタイミングが分からない方や、他の手続きとのタイミングが気になる方は、ぜひご参考になさってください。
目次
自己破産を決断すべきタイミングとは?
ここでは、自己破産を決断すべきタイミングについて解説します。
返済が滞っている場合
借金の返済が滞っている場合は、できるだけ早く自己破産を決断しましょう。
借金を滞納し続けると次のようなリスクが生じます。
- 債権者から残債務を一括請求される
- 債権者に訴訟や支払督促を申立てられる
- 債権者に財産を差し押さえられる
既に差し押さえを受けている場合は、これを止める必要があります。自己破産を申立てて破産手続開始決定が出されると、既になされた差し押さえは中止されます(執行裁判所への報告が必要)。
利息の支払いしかできていない場合
次のような場合、毎月の返済額を増額できなければ、自己破産を検討しましょう。
- 毎月返済しているのに一向に元本が減らない
- 借入金と同額程度の利息を支払っている
借金の元本が減らない理由は、毎月の返済の多くが利息の返済にあてられているからです。
元本を減らすためには、返済額を増やすしかありません。返済額を増やせなければ完済できる見込みがありません。
収入がなく、今後も収入を得られる見込みがない場合
次のような理由で収入が途絶え、かつ、今後も収入を得られる見込みがない場合は、自己破産を検討しましょう。
- 病気や事故による療養のため収入を得られない場合
- 勤務先に解雇され収入を得られなくなった場合
ただし、財産を処分すれば借金を返済できる場合は、自己破産が認められません。
収入がなく、家族や親族の援助を受けられなければ、自己破産以外の債務整理(任意整理や個人再生)を利用することはできません。
生活保護を受けている
生活保護受給者で借金を抱えている方は、すぐにでも自己破産を検討しましょう。
本来、生活保護費を借金の返済にあてることは禁止されています。
生活保護受給中に自己破産を申立てれば、法テラスの民事扶助制度を利用することで自己破産にかかる費用を立て替えてもらえることがあります。自己破産終了時も生活保護を受給していれば、法テラスへの立替金の返還が免除されます。
※なお、当事務所では法テラスの民事法律扶助制度の利用を希望される方からのご相談は現在受け付けておりません。
自己破産を自ら決断すべきではないタイミングとは?
ここでは、自己破産を自ら決断すべきではないタイミングについて解説します。
7年以内に自己破産をしているまたはハードシップ免責を受けている場合
過去に免責許可決定やハードシップ免責を受けている場合は、その確定日から7年経過していなければ、原則として免責許可の申立てが認められません。
ただし、例外的に裁量免責を得られる可能性もありますので、免責決定から7年経過するまでは絶対に自己破産できないわけではありません。
会社を退職した場合または近々退職する予定がある場合
退職金受領後に自己破産すると、原則として退職金の全額が処分の対象となります。
自己破産で退職金が処分される範囲(割合)は、次のとおり退職の時期によって異なります。
すでに退職しているが、退職金を受け取っていない場合 | 退職金支給見込額の4分の1 |
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近々退職する予定がある場合 | 退職金支給見込額の4分の1 |
退職する予定がない場合 | 退職金支給見込額の8分の1 |
すでに退職し、退職金を受領している場合 | 現金保管されていれば現金として、銀行口座に預け入れしている場合は預貯金として扱われます。
現金は、99万円を超える額が没収されます。 預貯金は、その残高が20万円を超える場合は全額没収されます(ただし、他の財産との合計が99万円以内であれば手元に残せるのが一般的です)。 |
勤務先からの退職と自己破産を同時に検討している方は、弁護士に相談することをおすすめします。
自己破産と離婚のタイミングと注意点
自己破産と離婚を同時に検討している場合、どちらを先行すればよいのでしょうか。
離婚の手続きに緊急性を要しない限り、自己破産を先行することをおすすめします。自己破産後に離婚した方が、慰謝料や財産分与の支払いで財産隠しを疑われる心配がないからです。
ここでは、自己破産と離婚のタイミングと注意点を解説します。
離婚を先行する場合
離婚を先行する場合は、次の点に注意しましょう。
- 慰謝料の支払いや財産分与を行う場合は相当かつ適正な金額に留める
- 自己破産では養育費の支払義務は免除されない
- 離婚しても連帯保証契約は解除されない
ひとつずつ説明します。
慰謝料の支払いや財産分与を行う場合は相当かつ適正な金額に留める
離婚後に自己破産すると、慰謝料・財産分与の相当性を調査するため管財事件として取り扱われる可能性が高くなります。自己破産直前の離婚は、財産分与に名を借りた財産隠しの手段として利用されることがあるからです。
離婚に伴う財産分与を行う場合は、相当かつ適正な金額(夫婦共有財産の2分の1相当)に留めましょう。慰謝料や財産分与が不相当に過大な場合、財産隠しとみなされ免責許可を得られない可能性があります。
自己破産では養育費の支払義務は免除されない
自己破産しても、養育費の支払義務は免除されません。養育費等の子の監護に関する義務に係る請求権は、破産法上、免責の効果が及ばない債権(非免責債権)と定められているからです。
離婚しても連帯保証契約は解除されない
元配偶者が連帯保証人になっている場合、主債務者が自己破産すると、債権者は連帯保証人に残債務を一括請求します。
離婚しても、自動的に連帯保証契約が解除されることはありません。連帯保証人を外すためには、債権者の同意を得て代わりの連帯保証人として立てる等の手続きが必要です。
自己破産を先行する場合
自己破産を先行する場合は、次の点に注意しましょう。
- 自己破産で財産が処分されるため財産分与ができなくなる可能性もある
- 自己破産前に発生した慰謝料請求権は免責される可能性がある
ひとつずつ説明します。
自己破産で財産が処分されるため財産分与ができなくなる可能性もある
自己破産では、借金を帳消しにしてもらう代わりに、一定の価値のある財産が処分されます。夫婦の相互協力で築いた財産であっても、破産者名義の財産はすべて処分されます(自由財産を除く)。
そのため、離婚に伴う財産分与ができなくなる可能性があります。
自己破産前に発生した慰謝料請求権は免責される可能性がある
自己破産後の離婚に際して配偶者から慰謝料を請求されたとしても、自己破産の免責の効果が及ぶことがあります。不貞行為に基づく慰謝料は、原則として非免責債権とならず支払義務が免除されます。
自己破産後は、免責効果が及んだ慰謝料も任意に支払えますが、請求された側が免責を主張した場合、慰謝料の支払いを受けられなくなる可能性があります。
ただし、悪質なDV行為に基づく慰謝料は免責されません。
自己破産と生活保護申請のタイミングと注意点
自己破産と生活保護申請を同時に検討している場合、どちらを先行すべきでしょうか。
借金がある場合は、自己破産を先行すべきです。
ここでは、自己破産と生活保護申請のタイミングと注意点を解説します。
生活保護申請を先行する場合
生活保護申請を先行する場合は次の点に注意しましょう。
- 債権者からの取り立てが止まらない
- 生活保護費で借金の返済はできない
ひとつずつ説明します。
債権者からの取り立てが止まらない
生活保護を申請しても債権者からの督促は止まりません。自己破産を弁護士に依頼し、弁護士が債権者に受任通知を送付するまでは、債権者からの督促が続きます。
生活保護費で借金の返済はできない
生活保護費は借金の返済にあててはいけません。
不正受給とみなされた場合、生活保護費の支給が打ち切られたり、または借金返済額と同等の金額を生活保護費から一括徴収されたりする可能性があります。
自己破産を先行する場合
自己破産を先行する場合は、次の点に注意しましょう。
生活保護を受けるまでは税金が免除されない
自己破産では、税金や社会保険料の支払義務が免除されません。
生活保護の受給決定を受ければ、原則として税金が免除されます。滞納分も執行停止扱いとなり、生活保護受給中は請求されません。執行停止期間が3年経過すると納付義務は消滅します。
任意売却と自己破産のタイミングと注意点
ここでは、任意売却と自己破産のタイミングと注意点について解説します。
任意売却を先行すれば同時廃止になる可能性がある
任意売却を先行すれば、同時廃止になる可能性があります。
自宅不動産以外に換価価値のある財産がなければ、任意売却により保有財産がほとんどなくなるからです。
任意売却では、引っ越し費用を負担してもらえることもあります(債権者や買主による)。
自己破産を先行すれば管財事件になる可能性が高い
自宅不動産を所有したまま自己破産すると、原則として管財事件になります。
管財事件になれば、破産管財人の報酬(引継予納金)として、最低50万円(少額管財の場合は最低20万円)の費用を負担しなければなりません。
自己破産申立前のタイミングで自宅が競売にかけられることはある?
自己破産申立前のタイミングで自宅が競売にかけられることはあるのでしょうか。
ここでは、住宅ローンの滞納による競売の流れを解説します。
住宅ローンの滞納により競売にかけられることがある
住宅ローンを滞納し続けていると、最終的に自宅が競売にかけられることがあります。
住宅ローン滞納~競売までの流れ
住宅ローンを滞納してから競売手続きが開始されるまでの流れは次のとおりです。
- 滞納1~3ヶ月:銀行からの督促
- 滞納3~6ヶ月:期限の利益喪失
- 滞納6~7ヶ月:保証会社による代位弁済
- 滞納7~10ヶ月:競売申立て・競売開始決定
滞納から1年半程度で自宅から強制退去させられます。
自己破産で車が引き上げられるタイミングは?
ここでは、自己破産で車が引き上げられるタイミングを解説します。
所有権留保付きの車ローンが残っている場合
所有権留保付きの車のローンが残っている場合、自己破産の申立てに先立ち、弁護士が受任通知を送付した後に車が引き上げられます。
車が引き上げられるタイミングは、債権者によって異なりますが、通常は日程調整の上、引き上げ期日を決めます。
車のローンが残っていない場合
次のケースでは、車の時価が20万円以上の場合、破産手続きにおいて破産管財人が車を処分(換価)します。
- 現金で一括購入した場合
- 車のローンが残っていない場合
- 所有権留保がつかないローンで購入した場合
処分(換価)の時期は、管財業務の進行状況によりますが、原則として破産手続開始決定後は車を使用できません。
自己破産で官報に載るタイミングは?
ここでは、自己破産で官報に載るタイミングを解説します。
自己破産で官報に掲載されるタイミングは、次の2回です。
- 破産手続開始決定
- 免責許可決定
ひとつずつ説明します。
破産手続開始決定時
裁判所が破産手続開始の決定をした日から概ね1週間経過したタイミングで官報に載ります。
免責決定時
裁判所が免責許可の決定をした日から概ね2週間経過したタイミングで官報に載ります。
自己破産するとどのタイミングでブラックリストに載る?
ここでは、自己破産で信用情報に事故情報が登録されるタイミングを解説します。
現在、日本には次の3つの信用情報機関があります。
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
- 株式会社日本信用情報機構(JICC)
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
各信用情報機関によって、事故情報に登録される時期が異なります。
破産手続開始決定時の官報掲載後
全国銀行個人信用情報センター(KSG)においては、官報情報として自己破産した事実が破産手続開始決定から10年間登録されます。
借金を滞納している場合は自己破産前でもブラックリストに載る
株式会社シー・アイ・シー(CIC)及び株式会社日本信用情報機構(JICC)では遅延情報として事実発生の日から5年間事故情報が登録されます。
まとめ
自己破産のデメリットが気になり、手続きの利用を躊躇する人は珍しくありません。
しかし、早期に決断できずに借金を放置すると、自己破産以外の債務整理を利用できなくなる可能性があります。
自己破産を決断するタイミングが分からない方や、自己破産と同時に離婚や任意売却を検討している方は、当事務所の無料相談をご利用ください。
債務整理の実務に精通した弁護士が、個別の事情に応じて借金問題の解決を全面的にサポートします。