自己破産は離婚前・離婚後どちらのタイミングにすべき? - 債務整理は弁護士に相談【ネクスパート法律事務所】

自己破産は離婚前・離婚後どちらのタイミングにすべき?

自己破産と離婚を同時に検討しなければならない状況にあるとき、どちらを先にすべきか悩む方も少なくありません。

離婚した元配偶者が自己破産すると、養育費や慰謝料が免除されるのではないかと心配する方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、自己破産と離婚について次のとおり解説します。

  • 自己破産は離婚前・離婚後どちらのタイミングにすべき?
  • 離婚前に自己破産した場合の配偶者への影響
  • 離婚後に自己破産した場合の元配偶者への影響
  • 自己破産と離婚の関係
  • 離婚した元配偶者が自己破産したらどうなる?

自己破産と離婚を考えている方、元配偶者が自己破産した方は、ご参考になさってください。

佐藤弁護士
佐藤弁護士
自己破産自体は法律上の離婚理由にはなりません。
ただし、自己破産をすると配偶者に影響はあるので、破産前にきちんと説明をしておくべきです。
自己破産による配偶者への影響を心配されている方は、破産前にご相談ください。

自己破産は離婚前・離婚後のどちらのタイミングにすべき?

ここでは、自己破産は離婚前・離婚後のどちらのタイミングにすべきかを解説します。

自己破産は離婚前にした方が無難

すぐに離婚しなければならない事情がない場合は、自己破産は離婚前にした方が無難です。

自己破産後に離婚を進めた方が、慰謝料や財産分与の支払いで財産隠しを疑われる心配もないからです。

離婚後に自己破産すると、慰謝料・財産分与の相当性を調査するため管財事件として取り扱われる可能性が高くなります。管財事件になると手続きが煩雑になり裁判所に納める費用も高くなります。

ただし、次のケースのように緊急性が高い場合は、早めに弁護士に相談しましょう。

  • 配偶者から家庭内暴力(DV)を受けている
  • 債権者から厳しい取り立てや差し押さえを受けている

離婚前に自己破産した場合の配偶者への影響

ここでは、離婚前に自己破産した場合の配偶者への影響を解説します。

自己破産した本人名義の不動産や車が没収される

自己破産すると原則として20万円以上の価値のある財産が処分されます。本人が不動産や車を所有している場合は、自己破産で没収される可能性があります。自宅からの退去・引っ越しを余儀なくされたり、車が使えなくなったりする点で配偶者にも影響があります。

配偶者が保証人になっている場合

自己破産した本人の借金について、配偶者が保証人になっている場合、配偶者には債権者から残債務を一括請求されるリスクがあります。保証人である配偶者が一括返済できない場合、配偶者自身も債務整理を検討しなければなりません。

別居中の配偶者に婚姻費用を支払っている場合

婚姻費用は自己破産で免責されない

婚姻費用は自己破産しても免責されない非免責債権に該当します。したがって、自己破産しても配偶者への婚姻費用の支払義務は残ります。

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婚姻費用を滞納している場合は配偶者を債権者として申告しなければならない

破産手続開始決定前に婚姻費用の支払を滞納している場合は、配偶者を債権者として申告しなければなりません。

婚姻費用の滞納分は破産手続中に支払ってはいけない

婚姻費用の滞納分は破産手続中に支払うことができません。特定の債権者への返済は偏頗弁済(へんぱべんさい)として免責不許可事由に該当するからです。婚姻費用の滞納分は、破産手続終了後に支払を再開できます。

非免責債権・偏頗弁済の詳細は、下記記事をご参照ください。

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破産手続開始決定後に支払期日が到来する婚姻費用は約束通り支払わなければならない

破産手続開始決定後に支払期日が到来する婚姻費用は、破産手続きの対象となりません。そのため、破産手続中も約束通りに婚姻費用を支払わなければなりません。

別居中でも書類の受け渡しが必要

裁判所によっては、配偶者の収入証明書や通帳の提出が求められることがあります。別居中でも配偶者の協力を得て書類を収集するなどのやり取りが必要です。

自宅が夫婦共有名義になっている場合、破産管財人が任意売却の手続きを進める上で、配偶者に対し、本人の持ち分の買取や配偶者の持ち分の売却を打診することもあります。

離婚後に自己破産した場合の元配偶者への影響

ここでは、離婚後に自己破産した場合の元配偶者への影響を解説します。

元配偶者が保証人になっている場合

自己破産した本人の借金について、元配偶者が保証人になっている場合、元配偶者には債権者から残債務を一括請求されるリスクがあります。保証人である元配偶者が一括返済できない場合、元配偶者も債務整理を検討しなければなりません。

離婚時に慰謝料を支払っている場合

支払った慰謝料の額が不当に過大な場合

離婚に伴う慰謝料は、原則として否認権の対象となりません。ただし、支払った慰謝料の額が不当に過大であった場合、不当に財産を減少させる行為として否認権行使の対象となる可能性があります。破産管財人が否認権を行使すると、元配偶者は受け取った慰謝料を返還しなければなりません。

慰謝料の一部または全部が未払の場合

慰謝料の請求があっても支払っていない場合は、自己破産により支払義務が免除される可能性があります。

ただし、身体的な暴力(DV)による慰謝料は、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権として非免責債権に該当しうるため、免責されないこともあります。

なお、自己破産で慰謝料が免責された場合も、破産手続終了後、任意で支払うことは可能です。

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離婚時に財産分与した場合

離婚時の財産分与が不相当に過大である場合は、相当な範囲を超える部分について無効とされる可能性があります。無効となった部分は破産管財人に回収され、債権者への配当にあてられます。

不相当に過大な財産分与が意図的に(財産隠しのために)なされたものではなくても、事実関係の調査のため、管財事件として取り扱われるのが原則です。管財事件になると手続きが煩雑になり、裁判所に納付する費用も高くなります。

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財産隠しのための離婚・財産分与と判断された場合は、免責が認められない可能性があります。財産隠しの態様が悪質な場合、詐欺破産罪として処罰されることもあります。

余計な疑いをかけられないよう、自己破産は離婚後にするのも一つの選択肢です。

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元配偶者に子の養育費を支払っている場合

養育費は非免責債権に該当するため、自己破産しても支払義務は免除されません。

ただし、破産手続開始決定前に養育費の滞納が生じている場合、滞納分は破産手続きが終了してからでなければ支払えません。

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元配偶者に自宅を賃貸している場合

自己破産すると破産者名義の不動産は原則として没収されます。元配偶者に自宅を賃貸している場合は、自宅から退去してもらわなければなりません。

自己破産する前に、元配偶者に連絡して新たな住居を探してもらうよう伝えましょう。なお、

競売や任意売却の手続きには半年から1年程度を要するため、一定期間は居住を継続できます。

元配偶者に収入や財産がある場合は、自宅を買い取ってもらう方法もあります。ただし、申立前の名義変更は財産隠しとみなされる可能性があります。元配偶者に自宅を買い取ってもらう場合は、破産管財人に引き継ぎ、破産手続きにおいて処理することをおすすめします。

自己破産と離婚の関係

自己破産を理由に離婚を切り出されたら、応じなければならないのでしょうか。

ここでは、自己破産と離婚の関係について解説します。

自己破産は法律上の離婚原因とならない

夫婦間の協議(協議離婚または離婚調停)において、双方が納得して離婚する場合は、理由は問われません。しかし、夫婦の一方が離婚を拒否している場合、自己破産そのものは法律上の離婚原因とならないため、離婚できません。

ただし、配偶者が収入の全てをギャンブルや浪費につぎ込み、借金を抱えて家族の生活が破綻しているケースでは、悪意の遺棄と評価されて離婚できる可能性もあります。

離婚した元配偶者が自己破産したらどうなる?

離婚した元配偶者が自己破産すると、養育費や慰謝料は請求できないのでしょうか?

ここでは、自己破産した元配偶者への養育費・慰謝料の請求の可否を解説します。

自己破産した相手にも養育費は請求できる

養育費の支払義務は、自己破産によって免除されません。自己破産した相手にも養育費は請求できます。

自己破産した相手にも慰謝料を請求できる

身体的な暴力(DV)による慰謝料は、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権として非免責債権に該当しうるため、自己破産後も請求できます。

ただし、自己破産後に慰謝料を請求した場合も、免責の効果が及ぶケースがあります。例えば、破産手続開始決定前に不貞行為が判明している場合、慰謝料請求権はすでに生じているため、破産債権として取り扱われる可能性があります。この場合は、自己破産後に慰謝料を請求しても認められないことがあります。

まとめ

離婚に伴い配偶者に不相当に過大な財産分与をしたり、財産を隠すために離婚を偽装したりした場合は、自己破産で免責されない可能性があります。財産隠しと判断されると、財産分与は取り消され、分与した財産は元配偶者から回収され債権者の配当にあてられます。

離婚を先行する場合は、財産隠しを疑われなくて済むよう、事前に弁護士に相談することをおすすめします。

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