更新日:2024年9月20日 (金)

公開日:2020年12月23日 (水)

自己破産と生活保護は両立可能?受給条件や注意点を弁護士が解説

自己破産と生活保護は両立可能?受給条件や注意点を弁護士が解説 自己破産と生活保護は両立可能?受給条件や注意点を弁護士が解説

サマリー

借金の返済が困難になり生活保護の利用を検討している方や、すでに生活保護を受給している中で借金の整理に悩んでいる方もいるのではないでしょうか。「自己破産をすると生活保護を受けられなくなるのではないか」「手続きはどちらを先行すべきか」といった疑問を抱く場面は少なくありません。自己破産と生活保護は法律上両立が可能です。この記事では、生活保護の受給要件や自己破産との関係性、手続きを進める順序や費用面での支援制度、注意点について解説します。

自己破産と生活保護の基本的な関係と受給要件

自己破産と生活保護の基本的な関係と受給要件

過去に自己破産をした経歴があること自体を理由に、生活保護の受給が制限されることは法律上ありません。

自己破産と生活保護は根拠となる制度が異なっており、自己破産の手続きを終えた後であっても、受給要件を満たしていれば生活保護を受けることが可能です。

生活保護を受給するための4つの基本要件

生活保護は、生活に困窮している方が最低限度の生活を維持し、自立を目指すための公的制度です。受給が認められるためには、原則として以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。

1. 資産の活用

預貯金や不動産、自動車、解約返戻金のある生命保険など、売却や換価が可能な資産を保有していないことが求められます。活用できる資産がある場合は、まずそれを換金して生活費に充てる必要があります。

2. 稼働能力の活用

病気や怪我、障がいなどの事情により、働くことが困難な状態にあることが原則となります。なお、就労収入がある場合でも、自治体が定める最低生活費に収入が届かないときには、不足分が支給される場合があります。

3. あらゆる公的扶助の活用

障害年金や遺族年金、老齢年金、雇用保険の失業手当、各種給付金など、生活保護以外の公的制度が利用できる場合は、それらを優先して申請・活用しなければなりません。それらを利用してもなお生活が困難な場合に生活保護の対象となります。

4. 扶養義務者からの援助の有無

家族や親族など、法律上の扶養義務者からの援助が受けられない状態であることが要件とされます。親族等による金銭的な支援が見込める場合はその援助が優先されますが、援助が期待できない場合や不十分な場合は受給が認められる可能性があります。

生活保護を受けられない一般的なケース

生活保護の要件を満たしていないと判断される主なケースとしては、働く能力があり十分な収入を得られる状態にある場合や、売却可能な財産が残っている場合などが挙げられます。

また、親族から十分な生活支援を受けられる場合や、他の公的給付金を受給することで最低生活費を上回る場合も、生活保護の対象外となります。申請時は世帯単位で生活状況や資産状況が総合的に審査されます。

自己破産と生活保護はどちらを先行すべきか

生活保護費を借金の返済にあてられない理由

生活保護費は、憲法に基づく健康で文化的な最低限度の生活を維持するために国や自治体から支給される公的資金です。そのため、支給された保護費を借金の返済にあてることは制度の趣旨として認められていません。

もし生活保護費から債権者への返済を続けてしまうと、生活保護の支給が停止されたり、すでに支給された保護費の返還や徴収金の支払いを求められたりする可能性があります。

借金がある状態での実務上の対応と自己破産の検討

借金を抱えたまま自治体の福祉窓口に生活保護の相談に行くと、担当ケースワーカーから「まずは自己破産などの債務整理を行ってから申請してください」と指導されるケースが少なくありません。これは、支給した保護費が借金返済に流出することを防ぐための運用です。

生活保護の申請を行うだけでは、貸金業者や債権回収会社からの督促や取り立ては停止しません。返済義務が残ったままでは生活保護の受給後も平穏な生活を送ることが難しいため、実務上は自己破産の手続きを先行、あるいは同時に進めることが検討されます。

弁護士への依頼による督促停止と手続きの流れ

自己破産の手続きを弁護士へ依頼すると、弁護士から各債権者に向けて代理人に就任した旨を伝える「受任通知」が発送されます。貸金業法などの規定により、受任通知を受け取った貸金業者は債務者本人に対する直接の取り立てや連絡を行うことができなくなります。

督促が一時的に止まることで精神的な負担が軽減され、返済に追われることなく生活保護の申請や家計の立て直しに専念できる環境を整えやすくなります。

受任通知の送付後は、弁護士とともに裁判所へ提出する書類の収集や財産状況の整理を進め、自己破産の申立てと生活保護の受給手続きを適切に連動させていく流れとなります。

生活保護受給中の自己破産手続きと費用面の支援

生活保護受給中における自己破産の申立て

生活保護を受給している状況であっても、裁判所に対して自己破産の申立てを行うことは法律上認められています。自己破産の手続きを進めること自体が生活保護の受給資格に直接悪影響を与えることは基本的にありません。

任意整理や個人再生といった他の債務整理手続きは、手続き後に一定期間にわたって分割返済を継続することが前提となります。生活保護費を借金の返済にあてることは原則として認められていないため、受給中にこれらの手続きを選択することは困難です。これに対して、自己破産は原則として返済義務そのものの免除を目指す手続きであるため、生活保護を受給している方でも利用可能な方法とされています。

自己破産にかかる主な費用の目安

自己破産手続きを進めるためには、裁判所に納付する手続費用と、手続きを代理する弁護士費用の2種類が必要となります。財産状況や手続きの種別によって金額は異なりますが、一般的な目安は次のとおりです。

費用の種類 金額の目安 主な内訳
裁判所費用(手続費用) 約2万円〜50万円程度 申立手数料(1,500円)、予納郵券(数千円程度)、官報公告費(1万数千円程度)、引継予納金(管財事件の場合20万円以上など)
弁護士費用 約30万円〜50万円程度 着手金や報酬金など(申立人の財産状況や債権者数によって変動)

財産がほとんどなく免責不許可事由もない場合は「同時廃止事件」として比較的少額の手続費用で済む傾向にあります。一方で、一定の財産がある場合や調査が必要な場合は「管財事件」となり、裁判所に納める予納金が高額になることがあります。

法テラスによる立替制度と償還免除

生活保護を受給している方は自己資金からまとまった費用を用意することが難しいため、経済的困窮者を支援する公的機関である法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助制度を利用することが一般的です。

法テラスの制度を利用すると、弁護士費用や裁判所に納める予納金などの立替払いを受けることができます。本来であれば立替金は毎月一定額ずつ分割で返還(償還)していく必要があります。

自己破産の手続きが終了した時点でも引き続き生活保護を受給している場合には、申請を行うことで立替金の返還義務が免除される仕組み(償還免除)が設けられています。

法テラスの立替制度を利用するには、法テラスの窓口へ申し込む方法と、法テラスと契約している弁護士に直接依頼して手続きを取り次いでもらう「持ち込み方式」があります。利用には収入や資産に関する一定の要件が定められているため、相談時に制度の利用希望を伝えて確認することが大切です。

生活保護と自己破産における主な注意点

生活保護と自己破産における主な注意点

生活保護と自己破産の双方が関係する場合、破産法上の取り扱いや受給中の行動に関して留意すべき点がいくつか存在します。特に、すべての支払義務が免除されるわけではない点や、借入れの経緯に関する規定について理解を深めておくことが大切です。

不正受給に伴う返還金等は免責されない可能性がある

生活保護費の不正受給などが原因で自治体や福祉事務所から返還や徴収を求められた場合、その返還金等にかかる義務は、破産法上の「非免責債権」に該当すると判断される可能性があります。

自己破産により裁判所から免責許可決定を受けた場合でも、非免責債権にあたる返還義務は免除されず、手続き後も支払いを継続しなければならない点に留意が必要です。

制度の趣旨に反して受給した金員の返還義務などは、公法上の性質や信義則の観点から免責の対象外とされる場合があるため、受給状況や収入の申告は常に適正に行うことが求められます。

生活保護受給中であることを隠した借入れのリスク

生活保護を受給している事実や実際の収入状況を伏せたり、虚偽の申告を行ったりして金融機関等から新たな借入れを行う行為は、破産法に定められている「免責不許可事由」に該当すると判断される恐れがあります。

信用情報を偽るなどの不当な手段で借入れをしたとみなされた場合、裁判所から免責の許可が得られず、借金の返済義務がそのまま残ってしまうリスクが生じます。

生活困窮の状況にある場合であっても、受給実態を偽って新たな借入れを申し込むことは避け、担当のケースワーカーや弁護士などの相談先に状況を共有しながら適切に対処していくことが重要です。

生活再建に向けた弁護士への相談

借金の問題と生活困窮が重なっている場合、どのような順序で手続きを進めるべきかは、個々の状況によって大きく異なります。負債の総額や債権者の数、現在の収入や資産の有無、健康状態などにより、選択すべき対応策は一様ではありません。

自身の判断だけで進めようとすると、手続きの不備や思わぬ不利益が生じる可能性もあります。そのため、生活再建に向けた全体的な見通しを立てた上で、法的な手続きを適切に選択することが重要です。

個別の事情や生活状況に応じた適切な生活再建の進め方を把握するためには、債務整理を取り扱う弁護士への相談が有用です。

弁護士への相談と手続きの流れ

自己破産や生活保護に関連して弁護士へ相談する場合、一般的に以下のような流れで手続きの検討が進められます。

  1. 相談の予約と必要資料の準備(借入先の一覧、借金の残高がわかる書類、生活保護受給証明書や収入関係書類などを整理します)
  2. 法律相談と方針の検討(生活状況や債務内容をもとに自己破産の適否を検討し、法テラスの立替制度などの利用可否を確認します)
  3. 委任契約の締結と受任通知の送付(弁護士へ依頼後、債権者宛てに受任通知が送付され、督促や返済請求が一時的に停止します)
  4. 裁判所への申立準備(必要書類の収集や家計表の作成を行い、破産申立ての手続きを進めます)

相談時における法テラス利用の確認

費用の支払いに不安がある場合や生活保護を受給している場合は、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助制度を利用できる可能性があります。相談を申し込む段階で、法テラスを利用したい旨を伝えておくと対応が円滑になります。

なお、法律事務所によって法テラス契約弁護士としての受任に対応しているかどうかが異なるため、事前に窓口や公式ウェブサイト等で取り扱い状況を確認しておくと安心です。

返済の負担や生活の困窮に悩んでいる場合は、ひとりで抱え込まずに相談窓口や弁護士の助言を活用しながら、安定した生活の再建に向けた手続きを進めていくことが望まれます。

コラム監修者

Shunsuke Teragaki

Shunsuke Teragaki

所属:代表(東京オフィス)

広島県広島市出身。修道高校、慶應義塾大学商学部、青山学院大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所の代表弁護士として、依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。

弁護士詳細を見る

関連記事を見る

自己破産と債務整理の違いとは?どっちがいいか選ぶ基準を解説

2025.04.08

自己破産と債務整理の違いとは?どっちがいいか選ぶ基準を解説

自己破産で家族の貯金はどうなる?妻の収入チェックや家族への影響

2024.05.22

自己破産で家族の貯金はどうなる?妻の収入チェックや家族への影響

個人再生で裁判所はどこまで調べる?通帳やギャンブルの影響を解説

2025.04.11

個人再生で裁判所はどこまで調べる?通帳やギャンブルの影響を解説

アイフルのおまとめローンで一括請求された場合の対処法と注意点

2024.09.27

アイフルのおまとめローンで一括請求された場合の対処法と注意点

自己破産とは?条件や注意点・流れをわかりやすく解説

2024.03.28

自己破産とは?条件や注意点・流れをわかりやすく解説

PREV
NEXT