自己破産の相談|弁護士に依頼するメリット・流れを徹底解説
借金の返済が厳しくなってきて、もう全額返済するのは難しいだろうと思ったら、どこに相談すればよいのでしょうか。
この記事では、自己破産の相談について、主に以下の点を解説します。
- 自己破産の相談先
- 自己破産を弁護士に相談するメリット
- 自己破産のご相談から解決までの流れ
- 自己破産のご相談でよくある質問
自己破産を検討している方はぜひ参考になさってください。
自己破産の相談先5つ
自己破産を検討しているとき、どこに相談すればよいのでしょうか?
自己破産を相談できるのは主に以下の専門家や機関です。
- 弁護士
- 司法書士
- 法テラス
- 市区町村の法律相談窓口
- 民間団体
ひとつずつ見ていきましょう。
弁護士に相談する
自己破産の相談は、弁護士にするのが一般的です。申立代理人として、裁判所への申立てなど本人を代理できるのは弁護士だけだからです。
2017年の日本弁護士連合会の調査によると、弁護士が代理人として申立てを行った破産事件は86.91%、司法書士に依頼して申立てを行った人は10.66%、申立代理人なしが1.29%、不明が1.13%でした。
司法書士に相談する
司法書士に依頼することも可能です。しかし、司法書士は申立書の作成はしてくれますが、申立人本人の代理人になることはできないため、本人が裁判所に行き、申立書を提出し、手続きをすることになります。
弁護士であれば対応できる即日面接も利用できないため、本人が裁判所で破産審尋を受けることになります。
裁判所によって運用は異なりますが、東京地方裁判所の場合、債権者集会や免責審尋に司法書士は出席できないので、本人がひとりで裁判官の質問に答えるなど対応する必要があります。
司法書士に依頼するメリットは、弁護士事務所に依頼する場合に比べて費用が少なくて済む場合があるということです。
ただし、管財事件になる場合には申立代理人が弁護士の場合にのみ利用できる少額管財事件の制度を利用することができないため、裁判所に支払う費用が高額になります。
申立人の財産によって異なりますが、通常管財事件では最低50万円支払わなければならないところ、弁護士が代理人となり申立てを行い少額管財事件になると20万円の支払いで済みます。
法テラスに相談する
経済的に余裕がない場合などには法テラス(日本司法支援センター)に相談できます。
収入や資産が一定額以下でないと相談できないなどの条件があるので、詳細はお住まいの地域の法テラスに確認してみるとよいでしょう。
市区町村の法律相談窓口に相談する
市区町村でも法律の無料相談を実施している場合があります。
お住まいの市区町村のホームページなどを確認してみてください。
民間団体に相談する
NPO法人など民間団体が相談を受け付けていることもあります。
ただし、信用できる団体かどうか(非弁提携でないか)の判断を慎重にする必要があります。
不安な場合には法テラスや市区町村の無料相談を活用することをおすすめします。
自己破産の相談を弁護士にするメリット
自己破産手続きを弁護士に依頼すると、次のようなメリットがあります。
- 申立書の作成を任せ、書類収集のサポートをしてもらえる
- 裁判所への申立て・その後の裁判所とのやり取りもすべて弁護士に任せられる
- 少額管財事件や即日面接制度など弁護士でないと利用できない制度がある
- 管財人面接の際も同席できる
- 債権者集会や免責審尋などにも同行できる
- 申立準備中に債権者から裁判を起こされた場合などにも、すぐに対応できる
弁護士に依頼をすれば、弁護士から各債権者に受任通知を発送した時点で債権者からの請求が止まります。自己破産手続きでは各債権者を平等に扱わなければならないため、返済もストップします。
今まで返済に充てていたお金を弁護士費用として積み立てることもできますので、費用の面でご不安だった方も、弁護士への依頼を検討されるとよいでしょう。
自己破産のご相談から解決までの流れ
自己破産のご相談から解決までの流れは以下のとおりです。
相談・依頼
まずはご相談いただき、弁護士費用や弁護士の提案する方針にご納得いただけたらご依頼ください。
受任通知の発送
ご依頼後、弁護士から各債権者へ受任通知を発送します。これにより、各債権者からの連絡はすべて弁護士が窓口となり、返済の請求をされなくなります。
自己破産申立準備
自己破産申立に必要な書類を集め、申立書を作成します。
裁判所へ申立
準備が整ったら、弁護士が裁判所に申立てを行います。
破産手続開始決定
申立が要件を満たし、裁判所に認められたら、破産手続開始決定が出ます。
破産管財人との面談
管財事件の場合、管財人との面談があります。
債権者集会・債権者への配当
債権者集会までに、管財人が財産の調査を行い、換価処分をします。債権者集会ではその報告等を行います。
免責審尋
管財事件の場合、債権者集会と同時に行われることが一般的です。免責許可を出してもよいか裁判所が判断します。
免責許可決定または免責不許可決定
免責審尋を受けて、免責許可決定または免責不許可決定が出ます。
免責許可決定が確定すると、債権者一覧表に記載した借金の返済義務が免除されます。
自己破産のご相談でよくあるご質問
ここでは、自己破産についてよくあるご質問をご紹介します。
弁護士と司法書士どちらに相談するといいですか?
当事務所では、弁護士に相談することをおすすめしております。主な理由は以下のとおりです。
- 弁護士は申立代理人として本人を代理することができる
- 即日面接や少額管財事件など弁護士でないと利用できない制度がある
- 管財人面接・債権者集会・免責審尋にも同行できる
弁護士は申立代理人として本人を代理できる
申立代理人となれるのは弁護士だけです。司法書士に書類を作成してもらうこともできますが、司法書士は申立人を代理することができません。申立てを行う本人が裁判所に申立てを行い、裁判所の対応もすべて自分で行わなければなりません。
即日面接や少額管財事件など弁護士でないと利用できない制度がある
即日面接は弁護士が代理人でないと利用できません。
司法書士に依頼した場合には、申立人本人が裁判所で破産審尋を受けることになります。
少額管財事件も申立代理人が弁護士でないと利用できません。管財事件になる場合は、裁判所に支払う費用は司法書士に依頼した方が高くなる可能性があります。
管財人面接・債権者集会・免責審尋にも同行できる
管財人や裁判所により異なりますが、管財人面接・債権者集会・免責審尋には司法書士の同行が認められない場合が多いです。
弁護士に相談すると取り立てが来なくなりますか?
自己破産の依頼を受けると、弁護士は各債権者に受任通知を発送します。債権者は受任通知受領後、債務者に借金の取り立てができません。すべての窓口が弁護士になるので、取り立ての電話や手紙等はなくなります。
周りの人に知られずに自己破産できますか?
自己破産をすると、官報という国の機関紙に掲載されます。
官報を日常的に購読している人はあまりいないため、官報に掲載されたことで回りの人に知られてしまうリスクは低いでしょう。
自己破産するデメリットはなんですか?
自己破産をするデメリットは、主に以下のとおりです。
- 自宅不動産や車など、価値のある財産は処分されてしまう
- 自己破産したことが官報に掲載される
- 破産手続き中の引っ越しや旅行は裁判所の許可を得なければならない
- 職業の資格制限がある場合、破産手続き中はその職業には就けない
- 信用情報機関に事故情報が登録され、新たにクレジットカードを作ったりローンを組んだりできない
自己破産をしない方がいいのはどのようなケースですか?
自己破産をしない方がいいのは、主に以下のようなケースが考えられます。
- 不動産や車を手放したくない
- 警備員や生命保険募集人など、自己破産手続中には就けない職業で働いている
- 親族・知人・会社等からの借金があり、自己破産するのを知られたくない
ただし、どのケースでも他の債務整理手続きをしても借金返済が難しい場合には、自己破産を選択するしかない可能性もあります。詳しくは弁護士にご相談ください。
自己破産のご相談に必要な書類はなんですか?
自己破産のご相談時に必要な書類は以下のとおりです。
- 債権者・どこから借りているかがわかるもの(カードや請求書など)
- 身分証明書
最低限これだけあれば大丈夫です。
自己破産を裁判所に申し立てる際に必要になる以下の書類も、もし用意できればご相談時にお持ちください。
- 住民票
- 家計全体の状況2か月分
- 預貯金口座の通帳過去2年分
- 公的扶助の受給資格証
- 給与明細・賞与明細・源泉徴収票・確定申告書など収入に関する書類または課税証明書・非課税証明書
- 退職金に関する規定
- 加入している保険の保険証券
- 有価証券・ゴルフ会員権に関する資料
- 自動車検査証または登録事項証明書の写し及び査定書
- 購入金額が20万円以上の財産に関する資料
- 売却したものが20万円以上の財産に関する資料
- 不動産の登記簿及び査定書または賃貸借契約書など
自己破産にかかる費用はいくらですか?
自己破産にかかる費用は以下のとおりです。
- 弁護士費用
- 申立費用
- 官報公告費
- 予納郵券
- 予納金(管財人報酬)
弁護士費用
弁護士費用は事務所によって異なりますが、30~60万円程度の事務所が多いです。
当事務所にご依頼いただく場合の弁護士費用は、「債務整理の弁護士費用」をご参照ください。
申立費用:1,500円
裁判所に申立てを行う際に必要な費用です。収入印紙で納めます。
官報公告費:1~2万円程度
自己破産をすると官報に掲載されますが、その費用も支払わなければならなりません。管財事件か同時廃止事件かで費用が異なります。
予納郵券:数千円程度
申立時裁判所に郵便切手を納めます。裁判所によって金額や内訳が異なります。
※東京地方裁判所の場合、予納郵券の金額・内訳は以下のとおりです(2024年9月24日~)。
金額 | 内訳 |
4,950円 | ・500円×4枚 ・180円×1枚 ・110円×22枚 ・50円×4枚 ・10円×15枚 |
予納金(管財人報酬):20万円以上
管財事件の場合、管財人報酬として予納金を納めます。
弁護士が申立代理人となり少額管財事件として扱われる場合には、最低20万円です。自分で申立てをするか、司法書士に書類作成を依頼する場合は少額管財事件の制度は利用できません。その場合、管財人費用は最低でも50万円です。
まとめ
弁護士に相談するには緊張する、費用が高そうなどの理由から相談を躊躇されている方も少なくありません。
借金が返せない状態が続いてしまうと、裁判を起こされ、財産を差し押さえられてしまう可能性もあります。
自分で申し立てることや、司法書士に書類を作成してもらうことも可能ですが、自己破産を考えている場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
※なお、当事務所では法テラスの民事法律扶助制度の利用を希望される方からのご相談は現在受け付けておりません。