更新日:2024年9月20日 (金)
公開日:2022年2月14日 (月)
自己破産申立ての方法・流れ・注意点を解説
サマリー
多額の借金に悩み、自己破産の申立てを検討しているものの、どのような手順で手続きが進むのか、どの程度の費用や書類が必要なのかが分からず不安を感じている方も多いのではないでしょうか。自己破産には主に同時廃止事件と管財事件の2種類があり、個々の状況によって手続きの流れや準備すべき事項が異なります。この記事では、自己破産申立ての基本的な流れや必要書類、裁判所費用の目安、手続きを進める上での注意点などを分かりやすく解説します。
自己破産申立て手続きの主な流れ
自己破産の手続きは、申立人の財産状況や免責不許可事由の有無などに応じて、大きく「同時廃止事件」と「管財事件」の2つに分類されます。
配当に充てられるような目ぼしい財産がなく、免責調査の必要性も低い場合は同時廃止事件となり、一定の財産を保有している場合や免責不許可事由の調査が必要な場合は管財事件として処理されます。
同時廃止事件の一般的な流れ
同時廃止事件とは、裁判所が破産手続開始決定を出すと同時に破産手続きを終了(廃止)させる手続きです。財産の換価や配当の手続きが省略されるため、比較的短期間で終了する傾向にあります。
- 弁護士への相談・依頼(受任通知により債権者からの直接の督促が停止)
- 必要書類の収集・申立書の作成
- 管轄の地方裁判所へ破産・免責の申立て
- 破産手続開始決定および同時廃止決定
- 免責審尋(裁判官との面接など)の実施
- 免責許可決定および確定
免責許可決定が確定すると法律上の支払義務が免除されます。また、破産手続開始決定によって一定の職業や資格に制限がかかっていた場合も、免責の確定により復権し制限が解除されます。
管財事件の一般的な流れ
管財事件は、裁判所から破産管財人(主に弁護士)が選任され、申立人の財産の調査・換価処分や免責不許可事由の有無などを精査する手続きです。
- 申立てから破産手続開始決定・破産管財人の選任
- 破産管財人との面談および財産・生活状況の調査
- 自由財産を超える財産の換価・処分
- 債権者集会への出席および管財人による状況報告
- 配当手続き(債権者に配当可能な財産がある場合)
- 免責についての意見申述および免責許可決定
管財事件においては、申立人は破産管財人の行う調査に誠実に協力する義務があります。
破産管財人による調査結果や申立人の生活態度の改善状況などを踏まえ、裁判所が免責を許可するかどうかの最終的な判断を下します。免責許可決定が出された後、官報への掲載を経て異議申立て期間が経過すると正式に免責が確定します。
自己破産の申し立てに必要な書類
自己破産を申し立てる際は、裁判所に現在の債務状況や生活状況、保有財産などを正確に把握してもらうため、多岐にわたる書類を準備する必要があります。
提出書類は、裁判所が免責の可否や破産手続きの種別(同時廃止または管財事件)を適切に判断するための重要な基礎資料となります。
裁判所に提出する主な基本書類
申立て手続きにおいて中核となるのが、破産申立書や債権者一覧表といった基本的な書面です。申立書には、支払不能に陥った事情や申立てに至る経緯などを記載します。
債権者一覧表には、すべての借入先の名称や借入残高などを正確に記載します。また、世帯全体の収支を記録した家計全体の状況(2か月分)や、世帯全員が記載された住民票なども必要とされます。
収入や財産状況を証明する資料
申立人の経済的な支払能力や保有している資産を客観的に証明するため、収入や財産に関する公的証明書や各種裏付け資料を提出します。
収入に関する書類としては、直近の給与明細書や源泉徴収票、個人事業主の場合は確定申告書の控え、市区町村が発行する課税証明書(非課税証明書)などが挙げられます。勤務先の退職金規定に関する資料を求められることもあります。
財産に関する書類としては、預貯金通帳のコピーに加え、現在加入しているすべての保険の保険証書、有価証券やゴルフ会員権に関する資料、不動産の登記簿および査定書、賃貸住宅の場合は賃貸借契約書などが必要です。
その他にも、購入金額または売却金額が20万円以上となる財産に関する資料など、資産価値の把握に必要な各種書類を揃えることになります。
裁判所や個別の状況による必要書類の違い
自己破産の申立てに必要な書類の書式や細かな提出基準は、申立てを行う各地の地方裁判所によって運用が異なる場合があります。
また、給与所得者であるか個人事業主であるか、あるいは所有財産の種類や家族構成など、申立人の個別の状況に応じて裁判所から追加の資料提出を求められるケースも少なくありません。
必要書類は申立人の生活・財産状況や申立先の裁判所によって異なるため、個別の指示や案内を確認しながら正確に準備を進めることが大切です。
自己破産の申立てにかかる費用の目安
自己破産を裁判所に申し立てる際には、手続きの種類(同時廃止事件、管財事件、少額管財事件)に応じて裁判所へ納める費用が必要となります。これらは申立手数料や官報公告費用、郵送費などの実費であり、事前に金額の目安を把握しておくことが重要です。
同時廃止事件で必要となる費用の目安
財産処分や免責不許可事由の調査が不要と判断された場合に適用される同時廃止事件では、裁判所に支払う費用を比較的低く抑えることができます。
主な内訳としては、申立手数料としての収入印紙代が1,500円、官報公告代としての予納金が1万円前後、裁判所が債権者への通知等で使用する予納郵券(郵便切手代)が数千円程度かかります。
予納郵券の金額や組み合わせは裁判所ごとに定められており、例えば東京地方裁判所では4,950円分を所定の金種で納める運用となっています。このほか、住民票や課税証明書などの添付書類を取得するための発行手数料が別途実費として発生します。
管財事件における破産管財人への予納金
破産管財人が選任される管財事件では、申立手数料や郵便切手代、官報公告代に加えて、破産管財人の報酬や調査費用に充てられる予納金(引継予納金)を裁判所に納める必要があります。
この予納金の額は、債務者の負債総額や事件の規模などに応じて裁判所ごとに基準が設けられており、まとまった金額を納付しなければなりません。
| 負債総額の規模 | 予納金の目安(東京地方裁判所基準) |
|---|---|
| 5,000万円未満 | 70万円 |
| 5,000万円以上1億円未満 | 100万円 |
| 1億円以上5億円未満 | 200万円 |
| 5億円以上10億円未満 | 300万円 |
| 10億円以上50億円未満 | 400万円 |
| 50億円以上100億円未満 | 500万円 |
少額管財事件が適用された場合の費用負担
管財事件のなかでも、弁護士が代理人として申立てを行い、一定の要件を満たす場合には「少額管財事件」として取り扱われる運用を実施している裁判所があります。
少額管財事件が適用された場合、申立手数料(1,500円)、郵便切手代(数千円程度)、官報公告代(1万円前後)のほか、引継予納金は原則として最低20万円から設定されます。通常の管財事件と比べて予納金の額が大幅に抑えられる点が特徴です。
ただし、管財業務が複雑・困難であると見込まれる事案では20万円を超える予納金が指定される場合もあります。また、裁判所に納める実費のほかに代理人を務める弁護士への報酬等も発生するため、総額での資金計画を立てておくことが大切です。
自己破産を申し立てる際の注意点
自己破産の申立て手続きを進める際には、裁判所に対して正確な情報を提供し、定められたルールに従って誠実に対応することが求められます。
申立書類の正確な記載と虚偽申告のリスク
裁判所に提出する申立書や添付資料には、すべての項目において正確な事実を記載しなければなりません。財産を少なく見せようとして隠したり、借入れの理由や使途について虚偽の説明を行ったりすることは厳に慎む必要があります。
虚偽の申告や財産隠しが発覚した場合、免責不許可事由に該当し、最終的に借金の免除が認められなくなるおそれがあります。
債権者の記載漏れとその対処法
債権者一覧表には、金融機関だけでなく、知人や親族からの借入れも含め、すべての債権者を漏れなく記載する必要があります。特定の債権者だけを除外して返済を続けようとする行為は、手続き上認められていません。
| 記載漏れに気付いたタイミング | 一般的な取扱い |
|---|---|
| 申立てから破産手続開始決定までの間 | 速やかに追加の上申書などを提出して訂正します。ただし、故意に隠していた場合は免責不許可事由に該当する可能性があります。 |
| 免責確定後 | 原則として免責の効果が及ぶ場合もありますが、債権者の存在を知りながら過失や故意で記載しなかった場合は非免責債権として扱われる可能性があります。 |
万が一記載漏れに気付いた場合は、放置せずに速やかに対処方法を確認することが重要です。
書類作成や手続き対応に要する時間の確保
自己破産の手続きは、申立てを行えば直ちに終了するものではありません。申立て前の書類収集や家計収支表の作成には相応の時間を要します。
また、管財事件となった場合には、破産管財人との面談や債権者集会への期日出席などが必要となります。手続きを滞りなく進めるためにも、事前にスケジュールや生活環境を整え、必要な時間を確保しておくことが大切です。
自己破産の申し立て手続きを弁護士に依頼するメリット
自己破産の申立てはご自身で行うことも可能ですが、弁護士へ依頼することで手続き面や精神面において多くの負担を軽減できるメリットがあります。
受任通知の送付により債権者からの督促が止まる
弁護士が自己破産の依頼を受けると、各債権者に対して代理人に就任したことを知らせる「受任通知」を送付します。
貸金業法などの規定により、受任通知を受け取った貸金業者や債権回収会社は、正当な理由がない限り債務者本人へ直接連絡や取立てを行うことが制限されます。
督促のプレッシャーから解放されることで、生活の立て直しや申立準備に専念しやすくなる点は大きな利点です。
複雑な書類作成の負担軽減と不備の防止
自己破産の申立てには、申立書や陳述書、財産目録や家計収支表など、多岐にわたる書類を正確に作成する必要があります。また、過去の通帳履歴や給与明細など集めるべき添付資料も膨大です。
弁護士に依頼すれば、法律の知識をもとに書類作成や資料収集のアドバイスを受けられるため、書類の不備による修正や手続きの遅延を防ぎ、円滑な進行が期待できます。
少額管財事件の利用や裁量免責への対応
財産がある場合や免責調査が必要な管財事件において、裁判所によっては弁護士が代理人に就いていることを要件として「少額管財事件」が適用される運用があります。少額管財が認められれば、通常の管財事件よりも裁判所に納める予納金の負担を抑えられる場合があります。
さらに、浪費やギャンブルなどの免責不許可事由が疑われるケースでも、反省の状況や経済的更生に向けた具体的な取り組みを裁判所に説得的に説明することで、裁量免責の獲得に向けた支援を受けられます。
自己破産の申立てに関する弁護士への相談
借金問題の解決方法には、自己破産だけでなく任意整理や個人再生といった複数の選択肢が存在します。どの手続きを選択すべきかは、債務の総額だけでなく、現在の収入状況や保有している財産、借入れに至った経緯などによって一人ひとり異なります。
自己破産の申立てを検討している場合であっても、状況を詳しく整理してみると他の債務整理手続きの方が適しているケースもあります。そのため、自身の生活状況や今後の希望を踏まえた上で、適切な方針を慎重に判断することが重要です。
ご自身の状況に応じた適切な解決手段を見極めることが、生活再建への確実な第一歩となります。
申立て手続きや生活への影響について不安を抱えている場合は、早い段階で弁護士に相談することが推奨されます。返済のために新たな借入れを重ねてしまうと、債務状況がさらに悪化し、手続きの選択肢が狭まってしまうおそれがあります。
早期に相談を行うことで、申立てに必要な書類の準備や手続き全体のスケジュールについて具体的な見通しを立てることができます。また、裁判所や破産管財人への対応に関する疑問点も事前に解消できるため、落ち着いて準備を進めやすくなります。
自己破産の申立ては、経済的な更生を図り新たな生活を踏み出すための法的な手続きです。借金の返済に悩み続けている場合は、一人で抱え込まずに弁護士への相談を検討してみてはいかがでしょうか。
コラム監修者
YUKA SAITO
所属:札幌オフィス 支店長
埼玉県出身。青山学院大学法学部、獨協大学法科大学院を卒業後、司法試験に合格し、最高裁判所司法研修所を修了。都内法律事務所勤務を経て、ネクスパート法律事務所に入所し、一般民事全般の業務に取り組む。大宮オフィス所長就任を経て、現在の札幌オフィスを開設、所長に就任。法人破産、個人破産、離婚・慰謝料等の男女問題に関する紛争が注力分野である。