【弁護士解説】個人情報の売買について

- 会社代表者の氏名と住所を商業登記簿謄本から集め、それをリスト化し販売している業者があります。かかる業者から、それらのリストを買い取ろうと考えておりますが、何か法的な問題はありますか?
-
個人情報保護法上問題が生じる可能性があります。
具体的には以下のとおりです。
解説
個人情報とは
個人情報保護法上、「個人情報」とは、生存する個人に関する情報で、氏名、生年月日等の記述により特定の個人を識別することができるもの等をいいます(法2条1項)。
また、登記簿等で公開されている情報であっても、その利用目的や他の個人情報との照合など取扱いの態様によっては個人の権利利益の侵害につながるおそれがあることから、そのような公開情報も、個人情報保護法の保護対象となります(新聞やインターネットなどで既に公表されている個人情報は、個人情報保護法で保護されるのですか。|個人情報保護委員会)。
そのため、商業登記簿の代表者氏名及びその住所等の情報は、当該個人を識別することができるものといえ、個人情報保護法上の「個人情報」に該当します。
個人情報保護法上の問題点
本件における「個人情報」を売却している名簿業者は、個人情報を検索することができるようにデータベース化しているものと考えられるため、「個人情報取扱事業者」に該当します(法16条2項)。
個人情報取扱事業者は、第三者に個人情報を記載した名簿を売却する際(以下「第三者提供」といいます。)、あらかじめ本人の同意を得ていない限り、原則としてこれを行うことができません(法27条1項)。
もっとも、名簿業者は、ホームページ等において、本人の求めに応じて第三者提供を停止できること(以下「オプトアウト」)を記載し、かつ個人情報保護委員会にその旨届出を行っている場合には、第三者提供を行うことができます(法27条2項、規則11条4項)。
オプトアウト届出を行っている業者か否かは、下記サイトで会社名を検索し、確認することができます。
オプトアウト届出書検索(改正個人情報保護法)|個人情報保護委員会
仮に、オプトアウトの届出を行っているか確認せずに名簿業者から、個人情報を買い取った場合、法第27条1項に規定する第三者提供制限違反がされようとしていることを容易に知ることができるにもかかわらず、個人情報を取得したものとして、「不正の手段により個人情報を取得」したとされ、当該買取行為は、法20条1項に違反するものといえます(個人情報保護法通則ガイドラインp42事例(5))。
買取時のその他注意点
その他注意点
業者から名簿を買い取る際には、上記のとおり、名簿業者がオプトアウト届出を行っていることをご確認いただく他、①確認義務、記録作成・保存義務、②プライバシーポリシーの確認・訂正等をする必要があります。
確認義務、記録作成・保存義務について
まず、名簿業者から、名簿を買い取る際には、
- 名簿業者の名称、住所、代表者の氏名
- 当該第三者による当該個人データの取得の経緯
を聞き取る必要があります(法30条1項)。
次に、名簿買取業者は、
- 当該個人データの提供を受けた年月日
- 当該個人データによって識別される本人の氏名その他の当該本人を特定するに足りる事項
- 当該個人データの項目
- 当該事業者が第三者保護委員会に届出ており、これが公表されていること
に関する記録を作成する必要があります(法30条2項及び3項、規則27条1号)。
さらに貴社において、当該記録を、作成した日から3年間保存しなければなりません(法30条4項、規則25条3号)。
利用目的の確認
個人情報は、企業内で特定された利用目的の達成に必要な範囲内でこれを利用する必要があります(法18条1項)。
そのため、買い取った個人情報を、例えば販促目的で使用しようと考えている場合には、プライバシーポリシー等に個人情報の利用目的の欄に「販促目的」であることが記載されているかをご確認下さい。
まとめ
名簿業者から個人情報を買い取る際には、上記のように気をつけるべき点が多数あります。
個人情報保護法に違反した場合、個人情報保護委員会より勧告が出され、また違反事実が公表される可能性があります(法148条1項)。
個人情報保護の重要性が高まる昨今、企業としてはそのような違反事実が公表されることで、企業価値が大きく損なわれる可能性もあるため、より一注意して個人情報を取り扱う必要があるでしょう。
ネクスパート法律事務所ではこのような個人情報に関する問題について専門チームで対応させていただいています。
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弁護士 尾又比呂人 (第一東京弁護士会所属)