無職でも債務整理できる?収入がない人の借金解決方法とは?
借金があるのに失業し、返済ができなくなるケースは珍しくありません。
無職でも債務整理はできるのでしょうか?
無職でも債務整理できますが、安定した収入を得る見込みがある人でなければ利用できない手続きもあります。
この記事では、無職の方の債務整理について、次のとおり解説します。
- 無職でも債務整理できる?
- 無職で生活保護を受給している場合も債務整理できる?
- 無職の人が債務整理するメリット
- 無職の人が債務整理するデメリット・注意点
- 無職のため債務整理の弁護士費用が払えない場合はどうすればよい?
借金問題にお悩みの無職の方は、ぜひご参考になさってください。
目次
無職でも債務整理できる?
無職でも債務整理できます。ただし、安定した収入を得る見込みがなければ利用できない手続きもあります。
債務整理には、次の4つの手続きがあります。
- 自己破産
- 個人再生
- 任意整理
- 特定調停
ここでは、手続別に無職の方が利用できる条件を解説します。
無職でも自己破産できるケース
自己破産は、裁判所に申立て、免責が認められれば借金の返済義務が免除される手続きです。返済を前提としない手続きであるため、無職の方でも以下の条件を満たせば自己破産できます。
- 自己破産の申立要件・免責要件を満たしている場合
- 破産手続きに必要な費用を準備できる場合
ひとつずつ説明します。
自己破産の申立要件・免責要件を満たしている場合
自己破産して借金の支払義務を免除してもらうためには、次の要件を満たさなければなりません。
- 支払不能の状態にあること
- 免責不許可事由がないこと
自己破産を申立て、破産手続きを開始してもらうためには、裁判所に支払不能と認められなければなりません。支払不能とは、財産・信用・収入のいずれの観点から見ても返済にあてるお金を調達できず、継続的に借金を返済できない状態です。
借金の返済義務を免除してもらうためには、原則として免責不許可事由に該当しないことが必要です。免責不許可事由とは、破産法が定める借金を免除することが相当ではないと判断される一定の事由です。
ただし、免責不許可事由があっても裁判官の裁量により免責が認められることがあります。
破産手続きに必要な費用を準備できる場合
裁判所に納める費用を準備できれば、無職の方でも自己破産できます。
自分でお金を準備できなくても、次のいずれかの方法で工面できるケースもあります。
- 家族・親族から援助を受ける
- 法テラスを利用する
裁判所に納める費用の相場は下記のとおりです。
費用 | 金額 |
申立手数料(収入印紙代) | 1,500円 |
予納郵券(郵便切手代) | 数千円程度(裁判所によって異なる※) |
官報広告費用(予納金) | 1万円~2万円程度(裁判所によって異なる) |
引継予納金(管財人報酬) | 同時廃止の場合:不要 少額管財の場合:20万円~ 通常管財の場合:50万円~ |
※東京地方裁判所の場合、予納郵券の金額は4,950円です(大型合議事件を除く/2024年9月24日~)。

無職でも個人再生できるケース
個人再生は、裁判所に返済計画が認められれば、借金を概ね5分の1に減額できる手続きです。減額後の借金を原則3年間(最長5年間)で返済しなければならないため、安定した収入がなければ利用できません。
以下のケースでは、無職の方でも個人再生できる可能性があります。
- 就職・就労の予定があり継続的に安定した収入を見込める場合
- 年金等の継続的に安定した収入を得る見込みがある場合
詳しく説明します。
就職・就労の予定があり継続的に安定した収入を見込める場合
無職の方でも、裁判所に申立てるまでに仕事に就き定期的な収入を得る見込みがあれば、個人再生を利用できます。
雇用形態に制限はないので、再生計画認可後3~5年間、継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあれば、正社員はもちろん、アルバイトやパートでも申立てできます。
年金等の継続的に安定した収入を得る見込みがある場合
無職でも公的年金等を受給している場合は、個人再生できる可能性があります。
年金は継続的に安定した収入と言えるからです。ただし、年金だけでは減額後の借金を返済できる見込みがなければ、裁判所に再生計画を認可してもらえません。
年金だけでは収入が足りない場合は、アルバイトやパートをして収入を増やすことで、再生計画が認可される可能性があります。
無職でも任意整理できるケース
任意整理は、債権者との交渉により借金の返済方法を変更する手続きです。収入源は問われないため、債権者の合意さえ得られれば、本人に収入がなくても利用できます。
無職の方が任意整理できるのは、次のようなケースです。
- 就職・就労の予定があり継続的に安定した収入を見込める場合
- 年金等の継続的に安定した収入を得る見込みがある場合
- 家族や親族の援助を受けられる場合
ひとつずつ説明します。
就職・就労の予定があり継続的に安定した収入を見込める場合
弁護士への相談時に無職で収入がなくても、就職・就労の予定があり継続的に安定した収入が見込める場合は、任意整理できます。
弁護士に任意整理を依頼しても、すぐに債権者への返済が始まるわけではありません。
事案によって異なりますが、依頼から返済開始まで3~6ヶ月程度かかります。弁護士に手続きを依頼すると、債権者からの取り立てもストップしますので、手続きの間に就職活動に専念できます。
年金等の継続的に安定した収入を得る見込みがある場合
無職でも、公的年金等の受給により継続的に安定した収入を得る見込みがあれば、任意整理できます。ただし、年金収入の範囲内で返済できなければ、アルバイトやパート就労が必要になることもあります。
家族や親族の援助を受けられる場合
任意整理では、収入源は問われませんので、本人に収入がなくても家族からの援助が受けられる場合は、利用できる可能性があります。
たとえば、専業主婦(主夫)で収入がなくても、配偶者に安定した収入があれば、任意整理できることがあります。
無職でも特定調停できるケース
特定調停とは、簡易裁判所の仲裁により、債権者との話し合い(調停)により返済方法を変更する手続きです。収入源は問われないため、債権者の合意さえ得られれば、本人に収入がなくても利用できます。
無職の方が特定調停できるのは、次のようなケースです。
- 就職・就労の予定があり継続的に安定した収入を見込める場合
- 年金等の継続的に安定した収入を得る見込みがある場合
- 家族や親族の援助を受けられる場合
ひとつずつ説明します。
就職・就労の予定があり継続的に今後安定的したな収入を見込める場合
無職の方でも、裁判所に申立てるまでに仕事に就き定期的な収入を得る見込みがあれば、特定調停できます。
調停成立後3~5年間、継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあれば、正社員はもちろん、アルバイトやパートでも利用できます。
年金等の継続的に安定した収入を得る見込みがある場合
無職でも、公的年金等の受給により継続的に安定した収入を得る見込みがあれば、特定調停できます。ただし、年金収入の範囲内で返済できなければ、アルバイトやパート就労が必要になる可能性もあります。
家族や親族の援助を受けられる場合
特定調停では、収入源は問われませんので、本人に収入がなくても家族からの援助が受けられる場合は、利用できる可能性があります。
無職で生活保護を受給している場合も債務整理できる?
ここでは、生活保護受給者が債務整理できるかどうかを解説します。
生活保護受給者の債務整理の選択肢は自己破産のみ
生活保護受給者が利用できる債務整理の方法は、自己破産のみです。
生活保護費を返済にあてることは禁止されているため、返済を前提とする他の債務整理は利用できません。
無職の人が債務整理するメリット
ここでは、無職の方が債務整理するメリットを手続別に紹介します。
自己破産のメリット
無職の方が自己破産するメリットは以下のとおりです。
- 支払不能と判断されやすい
- 就職・就労の予定がなくても利用できる
ひとつずつ説明します。
支払不能と判断されやすい
自己破産するためには、支払不能の状態であることが必要です。無職・無収入の場合は、この前提条件が認められやすくなります。
ただし、無職・無収入でも、財産を処分してお金に換えて借金を完済できる場合は、支払不能と認められません。
就職・就労の予定がなくても利用できる
自己破産で免責が認められれば借金の返済義務が免除されます。返済を前提としない手続きであるため、就職・就労の予定がなくても利用できます。

個人再生のメリット
無職の方が個人再生するメリットは以下のとおりです。
- 借金を大幅に減額できる
- 資格制限を受けない
ひとつずつ説明します。
借金を大幅に減額できる
個人再生では、借金の額を概ね5分の1~10分の1に減額できるため(下限100万円)、毎月の負担が軽くなります。申立てまでに仕事に就き、減額後の借金を返済できるだけの収入を継続的かつ安定的に得る見込みがあれば、無理なく返済を続けられます。
資格制限を受けない
個人再生には、自己破産のような資格制限はありません。そのため、資格を用いた仕事に就くことができます。手続き中に資格を取得して収入アップを試みることも可能です。
任意整理のメリット
無職の方が任意整理するメリットは以下のとおりです。
- 比較的費用が安く済む
- 毎月の負担額を軽減できる
- 資格制限を受けない
- 家族にバレにくい
ひとつずつ説明します。
比較的費用が安く済む
任意整理は、自己破産や個人再生に比べて弁護士費用が安く済みます。
費用を分割払いできる法律事務所であれば、まとまった資金をすぐに用意できない方でも安心して利用できます。
毎月の負担額を軽減できる
任意整理は、債権者の合意が得られれば、将来利息のカットや返済期間の延長により、毎月の負担額が軽減できます。
資格制限を受けない
任意整理では資格制限を受けないため、再就職に影響がありません。
例えば、自己破産で制限を受ける士業や生命保険外交員、警備員などの職業にも就けます。
家族にバレにくい
任意整理は、裁判所が関与しない手続きであるため、裁判所からの郵便や呼び出しがくることもありません。
交渉先も自由に選べるため、返済中の車のローンや保証人がいる借金を対象から外せば、家族にバレる可能性が低くなります。
特定調停のメリット
無職の方が特定調停するメリットは以下のとおりです。
- 比較的費用が安く済む
- 毎月の負担額を軽減できる
- 資格制限を受けない
ひとつずつ説明します。
比較的費用が安く済む
特定調停の申立時に必要な費用は、債権者1社につき数千円程度です。
他の債務整理より比較的簡易な手続きなので、弁護士に依頼することなく自分で申立てられるため、費用が安く済みます。
毎月の負担額を軽減できる
特定調停で債権者の合意が得られれば、将来利息のカットや返済期間の延長により、毎月の負担額が軽減できます。
資格制限を受けない
特定調停では資格制限を受けないため、再就職に影響がありません。
例えば、自己破産で制限を受ける士業や生命保険外交員、警備員などの職業にも就けます。
無職の人が債務整理するデメリット・注意点
ここでは、無職の方が債務整理するデメリット・注意点を手続別に紹介します。
自己破産のデメリット・注意点
無職の方が自己破産するデメリット・注意点は以下のとおりです。
- 手続きに費用がかかる
- 一定の財産が処分される
- 資格制限を受けることがある
- 5~10年間は新たな借入やクレジットカード作成ができない
ひとつずつ説明します。
手続きに費用がかかる
自己破産は、裁判所に免責を認めてもらう手続きで、手続費用がかかります。
管財事件となれば、予納金が20万円以上かかることもあります。手続きを弁護士に依頼すれば、弁護士費用(相場30万円~)も発生します。
一定の財産が処分される
自己破産すると、一定の価値のある財産が処分されます。
例えば、前職の退職時に退職金を受給している場合は、破産手続きで没収される可能性があります。
資格制限を受けることがある
自己破産すると、一時的に資格を使った仕事ができなくなったり、新たな資格を取得しても登録できなくなったりすることがあります。
5~10年間は新たな借入やクレジットカード作成ができない
自己破産すると、信用情報機関に事故情報が登録されます。そのため、5~10年間は新たな借入やクレジットカードの作成ができなくなります。
個人再生のデメリット
注意点
無職の方が個人再生するデメリット・注意点は以下のとおりです。
- 手続きに費用がかかる
- 継続的に安定した収入を得る見込みがなければ利用できない
- 5~10年間は新たな借入やクレジットカード作成ができない
ひとつずつ説明します。
手続きに費用がかかる
個人再生を申立てると、以下の費用を裁判所に納めなければなりません。
- 収入印紙代 1万円
- 切手代 約2,000円
- 官報掲載費 約2万円
- 個人再生委員の報酬 15~25万円(個人再生委員が選任される場合)
弁護士に手続きを依頼した場合は、30万円~60万円程度の費用がかかります。
継続的に安定した収入を得る見込みがなければ利用できない
個人再生の手続きを開始してもらうためには、継続的に安定した収入を得る見込みがなければなりません。収入を得ていても、継続性がなければ利用できません。
5~10年間は新たな借入やクレジットカード作成ができない
個人再生すると、信用情報機関に事故情報が登録されます。そのため、5~10年間は新たな借入やクレジットカードの作成ができなくなります。
任意整理のデメリット
注意点
無職の方が任意整理するデメリット・注意点は以下のとおりです。
- 債権者が交渉に応じなければ借金を減額できない
- 5年間は新たな借入やクレジットカード作成ができない
ひとつずつ説明します。
債権者が交渉に応じなければ借金を減額できない
債権者が返済条件の変更に合意しなければ、任意整理で借金を減額できません。
任意整理は、裁判所が関与しない手続きのため、借金を減額する法的な強制力がないからです。
5年間は新たな借入やクレジットカード作成ができない
任意整理すると、信用情報機関に事故情報が登録されます。概ね5年間は新たな借入やクレジットカード作成ができません。
特定調停のデメリット
注意点
無職の方が特定調停するデメリット・注意点は以下のとおりです。
- 調停が成立しなければ借金を減額できない
- 5年間は新たな借入やクレジットカード作成ができない
- 調停成立後、返済を怠ると強制執行のおそれがある
ひとつずつ説明します。
調停が成立しなければ借金を減額できない
債権者が返済条件の変更に合意しなければ、特定調停で借金を減額できません。
特定調停は、裁判所の調停委員が当事者の話し合いを支援する手続きに過ぎず、借金を減額する法的な強制力がないからです。
5年間は新たな借入やクレジットカード作成ができない
特定調停すると、信用情報機関に事故情報が登録されます。概ね5年間は新たな借入やクレジットカード作成ができません。
調停成立後、返済を怠ると強制執行のおそれがある
特定調停が成立すると調停調書が作成されますが、この調停調書には判決と同じ状な法的強制力があります。そのため、債務者が調停で合意した内容に違反した場合、債権者はすぐに強制執行できます。
無職のため債務整理の弁護士費用が払えない場合はどうすればよい?
ここでは、債務整理の弁護士費用が払えない場合の対処法を解説します。
弁護士に分割払いを相談する
弁護士事務所によっては、費用の分割払いに応じている事務所があります。
弁護士に債務整理を依頼すれば、毎月の借金返済を手続きが終わるまで一時的にストップするため、その間に弁護士費用を積み立てられます。
法テラスを利用する
法テラスの民事法律扶助を利用すれば、費用を立て替えてもらえる可能性があります。
立て替えてもらった費用は、毎月5,000円からの分割返済が可能です。
※なお、当事務所では法テラスの民事法律扶助制度の利用を希望される方からのご相談は現在受け付けておりません。
まとめ
無職でも、再就職の予定があれば、債務整理の選択肢の幅が広がります。
家族の援助を受けられる場合は、本人の収入がなくても任意整理できます。
家族からの援助も期待できず、仕事がなかなか見つからない場合には、自己破産を検討しましょう。
借金の返済に困ったら、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
当事務所では、借金問題に関するご相談は初回30分無料です。無職の方にも安心してご相談いただけます。お気軽にごお問合せください。