奨学金は個人再生でどのくらい減額できる?手続きした場合の連帯保証人への影響
奨学金は個人再生でどのくらい減額できる?手続きした場合の連帯保証人への影響
進学の際に奨学金を借りて、社会人になって返済しているけど思うように返済できないという人は、実は少なくありません。
奨学金も個人再生で減額してもらうことは可能ですが、いくつか注意があります。
この記事では、「奨学金は個人再生でどのくらい減額できる?手続きした場合の連帯保証人への影響」について解説していきます。
奨学金は個人再生でどのくらい減額できる?
個人再生は、裁判所に申立てを行い、裁判所に再生計画が認められ、認可決定を受けると借金の金額を概ね5分の1程度減額してもらうことができる手続きです。
原則として毎月払いで3年間(36回払い)で返済していく再生計画案を作成し、計画通りに返済ができれば、残りの借金については支払義務がなくなります。
弁済しなければならない金額は負債額に応じて異なります。奨学金以外にも借金がある場合は、その金額も含め、借金の総額がいくらあるかで確認してみましょう。
負債額 | 最低弁済基準 |
100万円未満 | 全額 |
100万円以上500万円未満 | 100万円 |
500万円以上1500万円未満 | 借金額の5分の1 |
1500万円以上3000万円未満 | 300万円 |
3000万円以上5000万円以下 | 借金額の10分の1 |
例えば、奨学金とその他消費者金融等からの借金の総額が500万円だった場合、最低弁済基準額は100万円です。
ただし、個人再生では「清算価値保障の原則」という原則があります。清算価値保障とは、全財産を清算したときに得られる価値(自己破産手続きを行った場合に弁済される配当額)は、債権者の弁済を受ける利益を保護すべきというものです。
そのため、不動産や自動車、解約返戻金のある生命保険などの一定額以上の価値のある財産を持っている場合には、上記最低弁済基準額か、清算価値の総額の高い方を返済することになります。
もし価値のある財産を持っている場合には、100万円を超える金額を返済することになる可能性があります。
個人再生手続きの中でも、給与所得者等再生手続きを利用する場合には①最低弁済基準額、②清算価値の総額、③2年分の可処分所得(収入から税金や生活費用として認められた費用を除いた金額)の中から一番高い金額を返済することになります。
借金の総額が100万円以下の場合には、全額返済する必要があるため個人再生をするメリットはないでしょう。また、借金の総額が5000万円を超える場合には個人再生の手続きは利用できません。
個人再生の手続きをした場合の連帯保証人への影響
では、連帯保証人への影響はどうなるのでしょうか。
独立行政法人日本学生支援機構では、奨学金を申し込む際には、次のいずれかを選択する必要があります。
- 機関保証に加入する
- 連帯保証人と保証人を選任する(一部奨学金の種類によってはどちらの保証も必要な場合があります)
機関保証を利用しない場合、親族が連帯保証人や保証人になっていることが多いです。
個人再生をすると、連帯保証人や保証人に対して奨学金の返還請求がされることになります。ここで注意しなければならないのは、個人再生を行った本人は奨学金を減額してもらえることになっても、連帯保証人や保証人にはその減額の効力は及びません。
つまり、返済できていない残りの奨学金全額が、一括で連帯保証人や保証人に請求されることになります。
もし連帯保証人や保証人が一括で支払うことができない場合、連帯保証人や保証人も債務整理(自己破産や個人再生)をしなければならないことになってしまいます。
連帯保証人や保証人となっている親族には迷惑をかけたくないということであれば、日本学生支援機構を利用している場合、減額返還や返還期限猶予の申請を検討しましょう。
①減額返還制度
当初の約束通りの返還は困難だが、減額した金額なら返済できる場合には減額返還を申請しましょう。
災害、傷病、経済困難、失業などの返還困難な事情が生じた場合に利用できる制度です。
ただし、すでに延滞している場合には利用できないなど一定の制限がありますので、詳細は日本学生支援機構のホームページをご確認ください。
②返還期限猶予制度
現在一時的に返還が困難であるため、一定期間返還を待ってほしい場合には返還期限猶予を申請しましょう。
こちらも災害、傷病、経済困難、失業などの返還困難な事情が生じた場合に利用できる制度です。
まとめ
個人再生によって奨学金を減額することは可能です。
ただし、連帯保証人や保証人がついている場合には、個人再生をすると連帯保証人や保証人に請求されてしまいますので、事前に相談するなどしておく必要があります。
連帯保証人や保証人に迷惑をかけたくないと手続きをせずに滞納を続けてしまうと、どちらにしても連帯保証人や保証人に請求されてしまう可能性が高まります。
返済が困難になってきた場合には、放置せず、日本学生支援機構であれば、減額返還や返還期限猶予を申請するとよいでしょう。
制度が利用できない場合には、弁護士に相談し債務整理を検討しましょう。個別の事情については弁護士に相談することをおすすめします。