住宅ローンの金利が上昇して返済できなくなったら|持ち家はどうなる?
2020年以降、日本では新型コロナウイルスの影響で打撃を受けた経済を立て直すために、政策金利を引き下げる等の金融緩和政策がとられてきました。
しかし、資源価格の高騰などが原因でインフレが進んでいることもあり、海外では2022年以降、金利を上げる国が増えています。
世界的に金利が上昇する中、日本だけ金利が低い状態が続くと円安がさらに深刻化して、物価高からインフレが起こりかねません。
日本の住宅ローン金利は今後どうなっていくのでしょうか。
この記事では、住宅ローンの推移や今後の動向とともに、金利上昇により住宅ローンが返済できなくなった場合の対処法を解説します。
目次
住宅ローンの金利の特徴と2つの金利タイプについて
ここでは、住宅ローンの金利の特徴と2つの金利タイプについて解説します。
金利とは?
金利とは、お金を借りた人が借りたお金(元金)に対して支払う利息の割合です。
住宅ローンには、各金融機関が定める基準金利(店頭金利)と、この基準金利(店頭金利)から所定の金利引下げを行って実際に適用される借入金利(適用金利)があります。
引下げ金利とは、各金融機関が定める一定の条件を満たす場合に引下げられる金利です。
一般的に引下げ金利は、基準金利から「マイナス○○%」という金利幅で表示され、住宅ローンの利用者はその引下げ後の金利で借入れられます。
上記をまとめると次の通りとなります。
基準金利(店頭金利)- 引下げ金利 = 借入金利(適用金利) |
住宅ローンの金利タイプ
住宅ローンの金利タイプは大きく分けて固定金利型と変動金利型の2つがあります。
固定金利型
固定金利型は、文字通り金利が固定されています。
全期間固定金利型
全期間固定金利型は、借入当初設定した金利が返済期間の全期間を通して変動しないので、返済期間中に世の中の金利が上がっても返済額は一定で変わりません。
ただし、申込時点では変動金利型より金利が割高になるのが一般的です。
全期間固定金利型の金利は、新発10年国債の流通利回りや金利スワップレートなどの市場金利を基準に各金融機関が独自に決定します。その他フラット35との金利競争力も勘案されます。
固定金利期間選択型
固定金利期間選択型では、借入後一定期間固定金利を適用し、その期間が経過した時点で変動金利にするか、再び固定金利にするかを利用者が選択します。当初の固定金利期間は、1年、3年、5年、10年、30年など各金融機関によって異なります。
固定金利期間選択型の金利は、国債の利回りや金利スワップレートなど当該機関に対応する市場金利を基準に、他行のローン商品との金利競争力を考慮しながら各金融機関が独自に決定します。
変動金利型
変動金利型では、返済期間中に市場金利に連動して金利が見直されます。
借入当初の金利適用基準と借入後の金利適用基準は異なり、一般的には次のとおりです。
借入当初の金利適用基準 | 借入時の金利は、3月1日または9月1日現在のプライムレートに連動して、それぞれ4月1日、10月1日に決定する。 |
借入後の金利適用基準 | 借入後の金利は、毎月4月1日、10月1日現在のプライムレートに連動して、6月、12月の約定返済日の翌日から適用される。 |
変動金利型の借入当初の金利は固定金利型に比べて低く設定されているため、近年では、住宅ローンを組む人の7割が変動金利型を選択しているようです。
住宅ローンの金利推移と今後の動向
ここでは、住宅ローンの金利の推移と今後の動向について解説します。
過去10年間の金利推移
固定金利はわずかに上昇している
住宅金融支援機構の調査によると、過去10年間の民間金融機関の住宅ローン金利(基準金利)は、概ね以下のとおり推移しています。
- 10年固定型:年3.00%~4.00%
- 3年固定型:年2.00%~3.30%
2022年11月時点の金利は以下のとおりで、同年1月時点よりもわずかに上昇しています。
- 10年固定型:年3.580%
- 3年固定型:年3.120%
全期間固定金利型(フラット35・借入期間21年以上、融資比率9割以下)の金利は、過去10年下落を続けていましたが、2022年11月現在の最低金利は1.540%となり、3カ月ぶりに上昇しました。
変動金利は横ばいが続いている
変動金利型は、金融政策の影響もあり2010年以降の金利はほぼ横ばいです。
2022年11月時点の主要都市銀行の金利(基準金利)を集計した中央値は、年2.475%です。
2022年11月以降の金利の動向
日本の住宅ローン金利は、日銀による金融緩和政策と各金融機関の金利競争により低金利の状態が続いています。
しかし、2022年はアメリカをはじめとして世界的に住宅ローン金利を含む金利が上昇しているため、日本も今の状態が長く続くとは限りません。
日銀の現総裁の任期が2023年4月までなので、同年5月以降新総裁のもとで金融緩和から引き締めに転じて金利が引き上げられるのではないかという観測もあります。
将来の金利の動向を正確には予測できませんが、日頃からその動向を把握して金利上昇に備えた返済計画を立てることが重要です。
住宅ローンの金利が上昇すると、返済額はどうなる?
ここでは、住宅ローンの金利が上昇すると返済額はどうなるのかについて解説します。
全期間固定金利型は借入時の金利が維持される
全期間固定金利型では借入時の金利が維持されるので、世の中の金利が上昇しても返済額は増えません。
固定金利期間選択型は固定金利期間終了後の返済額が増えるおそれがある
3年、10年等の固定金利期間選択型では、固定期間終了時の返済額について、変動金利型のような返済額の増加率の上限がないため、月々の負担が急増するおそれがあります。
例えば、35年ローン・10年固定金利(当初金利1.450%)で3000万円を借入れ、固定期間終了後に再び固定金利型を選択した場合、その時点の金利が当初より3%上昇していたら、返済額は以下のとおり増加します。
借入期間 | 借入金利 | 月々の返済額 | 年間返済額 |
1年~10年目 | 1.450% | 91,121円 | 1,093,452円 |
11年~20年目 | 3.450% | 114,120円 | 1,369,440円 |
固定金利期間終了後、再び固定金利型を選択する場合には別途手数料がかかります。
変動金利型は返済額が増えるおそれがある
変動金利型の場合、借入当初から世の中の金利が低いまま変動がなければ固定金利型より支払総額を低く抑えられます。
しかし、世の中の金利が上昇すれば月々の返済額が増えるので元本の減りも遅くなります。
変動金利型では、半年毎に金利の見直しが行われ、5年毎に月々の返済額が見直されますが、前回の見直し時の返済額の125%以上になることはありません。
返済額の増加率が125%に上限されても、本来支払うべき金額を先送りにしているだけなので、先送りにした金利上昇分は最終的に支払わなければなりません。
金利が上昇すると、月々の返済額だけでなく返済総額も増えます。
例えば、3,000万円を35年ローン(借入当初の金利0.625%)で借入れた後、5年毎に金利が年1%増加した場合の月々の返済額は以下のとおりです。
借入期間 | 借入金利 | 月々の返済額 | 年間返済額 |
1年~5年目 | 0.625% | 79,543円 | 954,516円 |
6年~10年目 | 1.625% | 91,666円 | 1,099,992円 |
11年~15年目 | 2.625% | 102,757円 | 1,233,084円 |
16年~20年目 | 3.625% | 112,416円 | 1,348,992円 |
21年~35年目 | 4.625% | 120,267円 | 1,443,204円 |
借入当初の金利(0.625%)と変わらないまま35年間経過した場合の返済総額は33,408,060円ですが、上記例のように金利が5年毎に1%ずつ上がった場合の返済総額は44,830,980円に上ります。
住宅ローンの金利上昇への備え
ここでは、住宅ローンの金利上昇への備え方について解説します。
繰上げ返済の資金を確保しておく
繰上げ返済には、残債務の全額を返済する一括繰上げ返済と、残債務のうち一部だけを返済する一部繰上げ返済があります。
一部繰上げ返済の方式には、期間短縮型と返済額軽減額の2つの方式があります。
期間短縮型は完済時期が繰り上がるので、以下のようなメリットがあります。
- 老後の生活が安定する
- 返済額軽減型より大きな利息軽減が得られる
繰上げ返済をすれば、その繰上げ返済額に応じた利息を減らせるので、返済総額を少なくできます。
繰上げ返済により借入残高を小さくできれば、金利が上昇した局面でも利息の増加額が少なくなるため、繰上げ返済の資金を確保しておくことが重要です。
金利上昇時を想定してキャッシュフロー表を作成する
金利が上昇した場合の家計収支を予測するためにキャッシュフロー表を作成しましょう。
金利上昇時にどれだけ収支が悪化するかを把握し、今後のライフプランの計画が大切です。
住宅ローンシミュレーションを活用する
住宅ローンを取り扱っている各金融機関の多くは、ウェブサイトで住宅ローンのシミュレーションを提供しています。
シミュレーションを利用すれば、金利が上昇時にどのくらい返済額が増加するのかを試算できます。
繰上げ返済や借り換えによる経済効果も試算できるので、シミュレーションを活用して金利上昇時に備えた具体的なプランを立てると良いでしょう。
住宅ローンの金利が上昇して、返済ができなくなったら?
ここでは、住宅ローンの金利上昇により返済が困難になった場合の対応方法について解説します。
ローンの条件変更を検討する
家計収支の見直し等だけで解決できない場合は、ローンの条件変更を検討しましょう。
条件変更は、子供の教育資金と負担が重なった場合などで一定期間を乗り切れば、以後の返済の目途が立っている場合などに有効です。
例えば、借入先の金融機関に相談して、元金の返済猶予や返済期間を延長して月々の返済額を減らす方法です。一定期間経過後、資金的に余裕ができた段階で期間短縮型の繰上げ返済ができれば、老後に影響を及ぼさずに済みます。
しかし、元金の返済猶予や返済期間の延長をすると、その分利息負担が増大するので慎重な検討が必要です。
借り換えを検討する
高金利の住宅ローンから低金利の住宅ローンへの借り換えは、総返済額を減らす効果があります。ただし、借り換え時には、保証料や登録免許税などの諸費用を差し引いても経済的効果があるかどうかを慎重に検討しなければなりません。
ご自身での計算が難しければ、オンライン相談を利用するのもおすすめです。
弁護士に相談して個人再生・自己破産を検討する
金利上昇により返済が行き詰まり、条件変更や借り換え等による打開策を講じる余地がない場合には、弁護士に相談して個人再生や自己破産を検討しましょう。
個人再生
個人再生とは、法律で定められた基準以上の額を3年(最長5年)で支払う再生計画案を作成して、裁判所に認可してもらうことによって残りの債務を免除される手続きです。
住宅ローン以外にも借金があり、その返済負担を減らせれば住宅ローンの返済を継続できる見込みがある場合には、個人再生を検討すると良いでしょう。
住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を利用すれば、住宅ローンの返済を従前どおり(またはリスケジュールして)続けながら、他の借金を概ね5分の1に減額できます。
住宅ローン特則を含む再生計画案が認められ、減額後の借金と住宅ローンの返済を継続できればマイホームを手放さずに済みます。
自己破産
自己破産は、債務者が持っている財産を裁判所が強制的にお金に換えて債権者に公平に分配して清算する手続きです。
免責が許可されれば住宅ローンを含む全ての借金の返済義務がなくなります(非免責債権を除く)。
マイホームを含めた一定の財産を失いますが、住宅ローンを含む借金の返済から解放され、新たな生活をスタートできます。
ネクスパート法律事務所の自己破産・個人再生の費用について
ここでは、当事務所の自己破産・個人再生の費用を紹介します。
個人再生
当事務所の個人再生をご依頼いただいた場合の弁護士費用は以下のとおりです。
着手金 | 報酬金 | |
住宅資金特別条項あり | 44万円(税込)~ | 0円 |
住宅資金特別条項なし | 55万円(税込)~ | 0円 |
自己破産
当事務所に自己破産をご依頼いただいた場合の弁護士費用は以下のとおりです。
- 着手金:44万円(税込)~
- 報酬金:0円
弁護士費用の分割払いに対応
当事務所では、弁護士費用が一括で払えない方にも安心してご依頼いただけるよう、分割払いにも対応しています。
お客様の収入・資産・借入の状況等によって異なりますが、毎月3万円~の分割払いに対応しています。
費用面のご不安があれば、ぜひ一度無料相談にてご状況をお聞かせください。
まとめ|住宅ローンがある方の債務整理はネクスパート法律事務所にご相談ください。
日本では、住宅ローンが低金利な状態が長い間続いてきました。
しかし、世界的なインフレ傾向から米国金利の引き上げもあり、日本でも住宅ローンの金利が上昇する可能性があります。
住宅ローンの金利上昇により返済が苦しくなった場合は、借り換えや任意売却を検討する前に弁護士に相談すると良いでしょう。
弁護士に相談すれば、後の手続きを見据えた適切な対応をアドバイスしてもらえます。
住宅ローンを含む借金にお悩みの方は、ぜひ一度ネクスパート法律事務所にご相談ください。