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弁護士法人ネクスパート法律事務所

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取引先がコロナで倒産した場合の対応と取引先の倒産への備えの重要性

帝国データバンクの調査によると、2022年7月13日現在、新型コロナウイルスの影響を受けて倒産した事業者(個人事業主を含む)は、全国に3679件(法的整理3422件、事業停止27件)確認されています。

ある日突然、取引先が倒産したら、未回収の売掛金はどうなるのでしょうか?

倒産前に売掛金を回収できれば良いですが、そもそも取引先の倒産の予兆を捉える方法はあるのでしょうか?

この記事では、取引先がコロナで倒産した場合の対応と事前対策について、以下のとおり解説します。

  • 取引先のコロナ倒産の予兆・前兆を見抜くポイント
  • 取引先がコロナで倒産しそうな場合の初動対応
  • 取引先がコロナで倒産した場合の対応
  • コロナ禍における取引先の倒産への備え

取引先の倒産や債権回収にお悩みの方は、ぜひご参考になさってください。

目次

取引先のコロナ倒産の予兆・前兆を見抜くポイント

一般に、倒産手続きは、従業員等の関係者や取引先の混乱を避けるため、水面下で進められます。そのため、予期せぬタイミングで、取引先が倒産することも少なくありません。

ここでは、取引先の倒産の予兆・前兆を見抜くポイントを解説します。

入金の遅れや支払方法変更の申し出がある

取引先の経営状態が悪化している場合、入金が遅れたり、以下のような申し出を受けたりすることがあります。

  • 支払期日を遅らせて欲しい
  • 一部払いとし、残額は後日払いにして欲しい
  • 売掛金の支払い期日を早めて欲しい
  • 現金払いを手形払いに変更して欲しい
  • 支払手形の支払期日を延長して欲しい

このような申し出を受けた場合は、取引先の資金繰りの悪化が疑われます。

役員や従業員の動きに変化がある

以下のような場合も、取引先の経営状況の悪化が疑われます。

  • 経営者が不在がちである
  • 従業員の給料の遅配が噂になっている
  • 従業員や役員の退職が目立つ
  • 社員旅行や忘年会など社内行事がなくなる
  • 経理担当者が頻繁に金融機関に行っている
  • 顧問税理士が月1回以上のペースで来訪している

上記に複数該当する場合は、倒産の危険度が高い状況にあると考えられます。

登記簿上にネガティブな情報がある

取引先が所有する不動産の登記簿謄本・登記事項証明書の記載から、倒産の危険度を把握できることもあります。

具体的には、以下のような場合に、取引先の経営状況の悪化が疑われます。

  • 税金滞納による差し押さえ登記が入っている
  • 金融機関以外の会社や個人が抵当権を設定している

後者の場合は、一概に倒産の予兆と捉えられませんが、他の企業が、取引先の信用悪化の状況を知って、債権を保全する目的で抵当権を設定したとも考えられます。

取引銀行との関係に変化がある

以下のような場合には、取引先の金融取引上の信用低下が疑われます。

  • メインバンクが変わった
  • 取引先の規模に対して取引銀行が多い

金融機関との有効な関係・信用を維持していれば、突発的な資金不足も借入金で補填できます。しかし、既に複数の金融機関から多額の借金をしていたり、信用低下によりメインバンクが撤退して取引銀行を変更したりしている場合には、運転資金の融資が受けられず資金ショートする可能性があります。

取引先がコロナで倒産しそうな場合の初動対応

ここでは、取引先がコロナで倒産しそうな場合に、自社がとるべき初動対応について解説します。

代金未納の商品・製品を回収する

取引先に既に納品した商品・製品の代金が期日までに支払われない場合は、当該商品・製品の返還を求めましょう。

売買契約において所有権留保を定めている場合には、契約に基づいて商品・製品を引き揚げます。所有権留保特約がない場合でも、代金未納を理由に契約を解除して、商品・製品の返還を求められます。

未納の商品・製品等があれば納入を停止する

契約上、未納の商品がある場合には、取引先の合意を得て納品を停止します。

取引先が納品を求める場合には、前払い現金決済等の条件を提案すると良いでしょう。

売掛金と買掛金を相殺する

取引先に対する売掛金と、取引先に対して負担する買掛金債務を対等額で相殺することで、債権を回収することも可能です。

相殺するときは、後日の紛争を回避するため、取引先に対し、内容証明郵便等で相殺通知書を送付するとよいでしょう。

担保がある場合は担保権を実行する

売掛金債権を保全するために、取引先の不動産に抵当権を設定していたり、保証人を確保したりしている場合は、担保権を実行して債権回収を図ります。

取引先がコロナで倒産した場合の対応

ここでは、取引先がコロナで倒産した場合の対応について解説します。

裁判所へ債権を届け出る

取引先が破産や民事再生等の法的整理を行った場合には、裁判所から届く債権届出書に所定の事項を記入し、提出期限内に返送します。

債権届出書には、自社が有する債権を正確に記載しましょう。少しでも回収額を上げられるよう利息や遅延損害金も漏らさず記入します。

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配当を受けられなかった部分を貸倒損失として計上する

取引先の倒産手続きにおいて、配当を受けられなかった部分は、会計上、貸倒損失として計上できます。

貸倒損失は、債権が回収不能となった事実が発生した事業年度に計上する必要があります。計上時期は、取引先の選択した倒産手続きの種類によって異なるため、貸倒損失計上の機会を失わないよう、あらかじめ顧問税理士等に相談しましょう。

セーフティネット貸付制度の利用を検討する

公的金融機関や信用保証協会には、取引先の倒産等により経営の安定に支障が生じている中小企業や小規模事業者向けの保証制度が用意されています。

取引先の倒産等により、自社の経営や資金繰りに支障が生じた場合、連鎖倒産を回避するために、セーフティネット貸付・保証制度の利用を検討しましょう。

参考:セーフティネット保証制度|中小企業庁 (meti.go.jp)

参考:経営セーフティ共済|中小機構 (smrj.go.jp)

参考:経営安定関連保証 |一般社団法人全国信用保証協会連合会 (zenshinhoren.or.jp)

コロナ禍における取引先の倒産への備え

取引先が倒産してから慌てて債権を回収しようとしても、取引先には回収可能な資金が残されていないケースがほとんどです。債権を確実に回収するためには、平常時から予防的な債権の保全・管理が重要です。

ここでは、取引先の倒産に備えた事前対策について解説します。

取引開始時の信用調査の必要性

これから取引を開始する場合には、取引相手の支払能力の裏付けとなる資料や情報の収集を行い、慎重に見極めることが重要です。

信用調査の方法には、直接的な調査方法と間接的な調査方法があります。

直接的な調査方法

直接的な調査方法としては、取引先の代表者や担当者との面談です。客観的資料と面談した際の説明が食い違う場合には、その食い違いが意図的なものかどうかなどを面談の際の質問で明らかにできます。

ホームページでは規模の大きい企業に見せかけていても、実態は異なるという例もあります。店舗や事務所に実際に訪問し、面談を行うことで取引先としての資質や信用性を判断することが大切です。

間接的な調査方法

間接的な調査方法としては、相手方の商業登記や不動産登記(登記事項証明書)を確認する方法が挙げられます。

商業登記では、以下の点をチェックし、相手方の事業の運営に不安要素がないか確認します。

  • これから開始する取引が事業の目的の範囲か
  • 資本金の変動の有無およびその理由
  • 役員の就任時期や重任の時期
  • 任期途中での辞任・解任の有無

不動産登記では、以下の点をチェックし、相手方の信用力を確認します。

  • 担保権設定の有無
  • 担保権の設定時期
  • 借入先金融機関・債権者

証拠書類の確保

債権の回収・保全の前提として、自社が相手方企業に対して債権を行使できるだけの裏付けが必要です。

他社との取引にあたり、契約書を作成することは自社の債権の存在を明確に立証するための重要な資料です。契約書がない場合には、以下のような方法で証拠書類を確保する必要があります。

  • 発注書や請書をFAX・メール添付で送信してもらう
  • 送信した書面に代表者印を押印して返信してもらう
  • 取引内容を確認する旨のメールを送信し、その回答をメールで返信してもらう

債権保全のために有効な契約条項

契約書を作成する際には、債権保全のために有効な契約条項を盛り込むことを検討しましょう。具体的には、以下のような条項を設けます。

  • 期限の利益喪失条項
  • 無催告解除条項
  • 相殺予約条項
  • 所有権留保条項
  • 合意管轄条項

ひとつずつ説明します。

期限の利益喪失条項

契約において支払時期を定めた場合、本来はその時期が到来しなければ、相手方に支払いを求められません。これを債務者側の利益とみて期限の利益といいます。

民法は、債務者が期限の利益を失う場合を定めていますが、より迅速な債権回収の観点から、契約書において、債務者に一定の事由が発生した場合には、期限の利益を喪失させ、直ちに支払いを受けられるよう条項を設けます。

無催告解除条項

債務が履行されない場合、催告をして履行を促すことが原則です。しかし、相手方に経済的な信用不安が生じても発注があれば商品を引き渡さなければならないとなると、損害が拡大するおそれがあります。

このような事態を防止するため、契約書には、相手方が一定の義務に違反した場合、自社が何らの催告を要することなく、直ちに契約を解除できる旨の条項を設けておくのが望ましいでしょう。

相殺予約条項

売掛先が債務を履行しない場合や、信用状態が悪化して任意の履行が期待できない場合に、債権回収方法として相殺を利用できます。

契約書にあらかじめ特約を設け、当事者がそれぞれ相手方に債権債務を有している場合には、いつでも対等額で相殺できる旨を定めることによって、債権回収の効果を発揮できます。

所有権留保条項

所有権留保条項とは、売買等により、商品や製品を引き渡した場合でも、その代金が完済されるまでは、所有権は売主に留保される旨の約定です。

所有権留保条項を設けておくと、買主が破産手続開始決定を受けた場合でも、別除権行使により商品の引き揚げが可能となります。

合意管轄条項

合意管轄条項とは、取引先とのトラブルにより裁判になる場合、どこの裁判所で裁判をするかを決めておく条項のことです。

民事訴訟は、以下の裁判所に訴訟を提起するのが原則です。

  • 相手方が法人の場合:主たる事務所または営業所を管轄する裁判所
  • 相手方が個人の場合:その住所を管轄する裁判所

ただし、第1審に限り、一定の法律関係に基づく訴えに関し、自社にとって便利な裁判所で訴訟を提起できるよう、法定管轄と異なる管轄を合意できます。

合意管轄条項を設けておけば、わざわざ遠方の裁判所へ出廷するなどせずに済むため訴訟に要する費用を抑えられたり、訴訟審理の準備や証人の出廷の負担を軽減できたりします。

担保の設定

取引先に支払遅延が生じている場合、自社以外にも債権者が存在し、債権回収を図っているケースが多いです。担保がなければ、他の一般債権者と同じ立場で債権回収を図らなければなりません。担保を設定していれば、担保を設定していない一般債権者よりも優先的に弁済を受けられます。

取引先が不動産を有している場合は、不動産への抵当権の設定を検討します。不動産がない場合や、不動産があっても金融機関からの借入金に関して先順位の抵当権が設定されている場合には、他の実効性のある担保設定を検討します。

具体的には、日常的に事業を継続している相手方であれば、他社に対する売掛金債権について、債権譲渡担保の設定を検討します。相手方の商品の保管状況等が把握できる場合は、その種類や所在地(倉庫等)および範囲を特定して、集合物譲渡担保の設定を検討します。

債務名義の確保

法律上の手続きに基づいて強制的に債権を回収するためには、債務名義を取得しなければなりません。債務名義には、さまざまな種類がありますが、裁判手続きによらずに取得できるのが強制執行認諾文言付き公正証書です。

強制執行認諾文言付き公正証書があれば、取引先に債務不履行が生じた場合に、直ちに強制執行に移れます。

取引先に信用不安の予兆が見られたら、なるべく早く相手方に公正証書の作成を交渉するのもよいでしょう。

まとめ

取引先が倒産してしまってからでは、債権回収を試みても回収可能な資金が残されていないことが多いです。

債権を確実に回収するためには、平常時から予防的な債権の保全・管理が重要となります。

取引先に倒産の予兆が見られる場合には、なるべく早く弁護士に相談しましょう。

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