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弁護士法人ネクスパート法律事務所

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新型コロナを理由に出社を拒否する従業員への対応と懲戒処分の可否

新型コロナウイルスの感染リスクを理由に、従業員が出社を拒否する場合、使用者はどのような対応をとればよいのでしょうか。

出社を拒否する従業員について、懲戒処分や解雇を検討している使用者の方もいるかもしれません。

この記事では、コロナを理由に出社拒否する従業員への企業の対応について、以下のとおり解説します。

  • コロナを理由に出社を拒否する従業員は解雇できる?
  • コロナを理由に出社を拒否する従業員に給与を支払う必要はある?
  • コロナを理由に出社を拒否する従業員への対応

従業員の出社拒否にお悩みの使用者の方は、ぜひご参考になさってください。

目次

コロナを理由に出社を拒否する従業員は解雇できる?

ここでは、新型コロナウイルスの感染リスクを理由に出社を拒否する従業員を解雇できるかどうかについて解説します。

解雇しても無効となる可能性が高い

新型コロナウイルス感染拡大という未曾有の状況下において、感染リスクを理由に出社を拒否する従業員に対し、他の手立てを講じることなく解雇した場合には、無効となる可能性があります。

従業員は、労働契約の合意内容の範囲内で、会社に対して誠実に労務を提供する義務を負います。従業員が出社命令に従わない場合、労働契約上の債務不履行にあたり、解雇事由や就業規則に定めた懲戒事由に該当すれば、解雇や懲戒処分の対象となり得ます。

しかし、その場合でも解雇が認められるケースは裁判例上、非常に限定的な場合に限られます。

他の従業員が出勤する状況であっても、解雇に値するかどうかは個々の事情を勘案し判断しなければなりません。特に、本人に基礎疾患があったり、感染リスクを懸念するあまりメンタルの不調が生じていたりするケースでは、解雇が無効となる可能性が高いです。

まずは従業員とよく話し合い、出社を拒否する理由や原因を明確にし、改善策を講じたり、妥協案を提案したりする必要があります。

戒告やけん責などの懲戒処分は有効となる可能性がある

会社が必要な感染対策を行い、従業員との話し合いや改善策を講じたのにも関わらず、感染リスクの低い健常な従業員が、正当な理由なく出社命令に違反して無断欠勤を続ける場合には、戒告やけん責などの懲戒処分が有効となる可能性があります。

コロナを理由に出社を拒否する従業員に給与を支払う必要はある?

ここでは、新型コロナウイルスの感染リスクを理由に出社を拒否する従業員に対し、使用者が給与の支払義務を負うかどうかについて解説します。

自主的に欠勤した場合|給与は支払わなくていい

労働者が、自主的な判断で欠勤した場合は、ノーワークノーペイの原則により、賃金を支払う必要はありません。

一般に、使用者には、業務遂行全般について労働者に対して必要な指示・命令をする権限(業務命令権)があります。業務命令が、労働契約や就業規則に基づく相当な命令で、業務の遂行に必要かつ相当である場合には、労働者はこれに従わなければなりません。

以下の条件を満たす場合は、使用者の出社命令が合理的なものであると考えられます。

  • 出社命令を出す時点で緊急事態宣言が解除されている
  • 使用者が必要な感染対策・環境整備を講じている
  • 出社命令を出す時点で社内に感染者が発生していない
  • 出社を命じることが業務の遂行に必要かつ相当である
  • 出社を命じる従業員が高齢ではない・基礎疾患がない
  • 家庭内に感染者や預け先のない子がいない

したがって、従業員が正当な理由なく出社命令に違反した場合は、欠勤扱いとし、給与も欠勤控除して差支えないでしょう。

在宅勤務の要請を拒否した場合|給与の支払い義務が生じる可能性がある

労働者から在宅勤務の要請があっても、原則として会社は従業員に出社を命じられます。

しかし、市中感染が広がり出勤による感染リスクが高まっている場合や、緊急事態宣言が発令された場合に、在宅勤務の要請を拒否して出社を命じることは、使用者の安全配慮義務に反する可能性があります。

安全配慮義務違反があったと判断されると、出社拒否中の従業員に対し給与の支払い義務が生じる可能性があります。

在宅勤務が可能な業態であれば、感染リスクが高い時期に在宅勤務で仕事をさせることは、一定の合理性があると考えられます。出社を拒否する従業員から在宅勤務の要請があった場合には、頭なごなしに退けず、在宅勤務または一部在宅勤務の導入が可能か検討しましょう。

在宅勤務が業務に与える影響の程度や在宅勤務の必要性等を考慮して、使用者としてできる限りの職場環境の改善策を考えることが大切です。

感染予防対策を講じていない場合|給与の支払い義務が生じる可能性がある

使用者の責めに帰すべき休業には、給与の支払い義務が生じます。

会社の感染対策が不十分であるケースなど、使用者が安全配慮義務を果たさないために出社による感染リスクがある場合には、従業員の休業は会社に責任があると判断される可能性があります。

コロナを理由に出社を拒否する従業員への対応

ここでは、新型コロナウイルスの感染リスクを理由に出社を拒否する従業員に対し、使用者がどのように対応すべきかについて解説します。

話し合いの機会を設ける

まずは従業員との話し合いの機会を設けて、出社を拒否する理由や原因を聴き取りましょう。従業員の声に耳を傾けることで、解決策が見えることもあります。

会社側の感染対策が不十分であると指摘された場合には、可能な限り改善策を講じて、安心して出社できると感じてもらえる対応が必要です。

未曾有の感染症への不安から、メンタルに不調を抱えている場合には、出社拒否を労務提供の債務不履行と捉えず、従業員からのヘルプサインとして、慎重に対応しましょう。

在宅勤務・一部在宅勤務の導入を検討する

従業員の年齢、健康状態や家庭環境によっては、出社拒否に正当性が認められることもあります。具体的には、以下のような場合です。

  • 高齢・基礎疾患などにより感染・重症化リスクが高い
  • 保育園・幼稚園の休園により子の預け先が確保できない
  • 家庭内に感染者がいる

そのような場合には、在宅勤務や一部在宅勤務の導入を検討しましょう。

在宅勤務の導入が難しい業種であれば、時差出勤やオンライン会議を導入など、可能な範囲で柔軟な対応を心がけるとよいでしょう。

従業員との合意により有給休暇の取得や欠勤扱いとする

従業員が、正当な理由なく出社を拒否し、かつ在宅勤務にも応じない場合には、欠勤扱いとして差支えありません。従業員と話し合い、合意により有給休暇を消化してもらい、その後を欠勤とするのも一つの手段です。

出社命令を出す

会社として、さまざまな解決策・改善策を提案しても、従業員が説得に応じない場合には、出社命令を出します。

出社命令は、文書やメールなど記録に残る形で行うことをおすすめします。

軽度の懲戒処分を検討する

従業員が出社命令に従わないときは、戒告やけん責などの軽度の懲戒処分を検討します。

戒告やけん責により反省と態度の改善を求めても、従業員がこれに応じない場合には、減給処分を検討します。

ただし、就業規則に定めていない懲戒処分は違法となります。就業規則の作成義務がない会社(常時雇用する従業員が10人未満)でも、懲戒処分を行うためには、就業規則を作成して懲戒処分に関する規定を定めなければなりません。

退職勧奨を検討する

社内の感染対策も十分で、話し合いによりできる限りの対策を講じているのに、従業員が出社命令や在宅勤務の指示に応じず、長期間欠勤している場合は、労働契約の合意解約を求めて退職勧奨を検討します。

退職勧奨とは、使用者が労働者に対し、自発的な退職を促すことです。退職勧奨を受け入れるかどうかは、従業員の自由であるため、話し合いに際しては、会社の考えを一方的に伝えたり、高圧的に退職を促したりしてはいけません。

退職勧奨に応じずに、出社命令に応じて勤務を継続した方がメリットになることの説明も忘れずに行いましょう。

会社としてできる限りの対策・改善策を講じたことを伝え、出社または在宅勤務、退職のいずれを希望するのか、従業員の意見や回答をしっかり聴き取りましょう。

退職勧奨を行う場合は、以下の行為を控えるよう心がけてください。

  • 退職勧奨に応じなければ解雇すると述べること
  • 人格を否定したり恫喝的な発言をしたりすること
  • 長時間・複数回にわたって執拗に退職を求めること
  • 従業員が退職勧奨を拒否したのに引き続き説得すること
  • 面談時に会社側の担当者を多人数同席させること

解雇は最終手段

従業員が退職勧奨に応じず、かつ、出社命令にも従わない場合は、最終手段として解雇を検討します。

解雇を検討する場合には、会社として取るべき対策を全て講じられたかを、今一度見直しましょう。

解雇を行うべきかどうかについては、労働者の個々の事情を勘案して慎重に判断しなければなりません。配慮すべき事情がある従業員には、会社としてできる限りの対策を講じて、勤務を継続できるよう柔軟に対応する必要があります。

十分な検討の結果、解雇することを決定した場合には、少なくとも30日前に解雇を予告するか、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。

まとめ

コロナを理由に出社を拒否する従業員には、慎重に対応しなければなりません。

懲戒処分や解雇を検討する前に、まずは従業員との話し合いの場を設けて、出社拒否の理由や原因を明確化しましょう。従業員の気持ちに寄り添うことで解決策が見えることもあります。

やむなく退職勧奨や、懲戒処分・解雇を検討する場合には、対応によっては、従業員から事後的に損害賠償を請求されるリスクを伴うため、事前に弁護士に相談することをおすすめします。

コロナを理由に出社を拒否する従業員にお悩みの使用者の方は、ぜひ一度ネクスパート法律事務所にご相談ください。

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