奨学金は債務整理できる?注意点・債務整理以外の救済制度も解説 - 債務整理は弁護士に相談【ネクスパート法律事務所】

奨学金は債務整理できる?注意点・債務整理以外の救済制度も解説

奨学金の返還が困難となり延滞している方は少なくありません。独立行政法人日本学生支援機構の調査によると、2019年度末で奨学金の返還を3か月以上滞納している人は約15万人にも上ります。

滞納している人の約6割が本人の低所得を理由に挙げています。奨学金以外の借金返済により奨学金の返還が滞っている人は約3割です。

令和元年度奨学金の返還者に関する属性調査結果 | JASSO

奨学金を滞納すると、延滞金が課されます。延滞金は、奨学金の種類等により異なりますが、延滞している割賦金(利息を除く)の額に対して年1.5~10%の割合を乗じて計算されます。

延滞金 | JASSO

延滞額の増加により、約4割の人が滞納を継続しています。

債務整理は借金の減額・猶予・免除する手続きです。奨学金も債務整理できるのでしょうか?

この記事では、奨学金と債務整理について次のとおり解説します。

  • 奨学金は債務整理できる?
  • 奨学金を債務整理する場合の注意点
  • 奨学金を任意整理する場合の注意点
  • 奨学金を個人再生する場合の注意点
  • 奨学金を自己破産する場合の注意点
  • 債務整理以外の3つの制度

奨学金の返還が困難な方は、ご参考になさってください。

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奨学金は債務整理できる?

ここでは、奨学金を債務整理できるかどうかについて、手続別・ケース別に解説します。

奨学金も債務整理の対象となる

奨学金も、その他の借金と同様に債務整理の対象となります。

奨学金以外の借金がない場合

奨学金以外の借金がないケースを手続別に解説します。

任意整理

奨学金実施団体にもよりますが、多くの場合、任意整理に応じてもらえません。奨学金を任意整理するメリットが低いからです。

任意整理は、債権者との交渉において将来利息や遅延損害金をカットしてもらい、元本のみを分割返済する方法です。返済期間を3~5年に延ばしてもらい毎月の返済額を減らすこともできます。

一般の借金の金利(上限年利15~20%)に比べて、奨学金は無利息又は低金利(年利0.5%~1.5%程度)なので、利息をカットしても返済額がほとんど変わりません。奨学金の返済期間も初めから長く設定されるため、任意整理で期間を延長するのも困難です。

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個人再生

奨学金は、個人再生の対象となります。ただし、奨学金以外の借金がない場合は、個人再生しても認可されない可能性があります。

個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生の2つの手続があります。小規模個人再生では、債権者の過半数の反対がある場合、再生計画案は認可されません。奨学金実施団体が反対意見を出せば、不認可となります。

自己破産

自己破産を裁判所に申立て、支払不能と認められ免責の許可が下りれば、奨学金の返還義務も免除されます。ただし、奨学金以外の借金がない場合、支払不能と認められない可能性があります。

多くの奨学金実施団体が返還困難時のセーフティネットを用意しているため、これを利用すれば返済を継続できる可能性があるからです。セーフティネットの詳細は後述します。

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奨学金以外の借金がある場合

奨学金以外の借金があるケースを手続別に解説します。

任意整理

奨学金以外の借金を任意整理すれば、全体的な返済額が抑えられるため、奨学金の返還を継続できる可能性が高まります。

任意整理では交渉先を自由に選べるので、奨学金を任意整理の対象から外せます。奨学金は実施団体のセーフティネットを利用すれば、より生活が楽になるでしょう。

個人再生

個人再生を利用すれば、奨学金を含む借金を概ね5分の1に減額できます。任意整理と異なり奨学金を対象から外すことはできません。

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自己破産

自己破産を裁判所に申立て、支払不能と認められ免責の許可が下りれば、奨学金を含む全ての借金が免除されます(非免責債権を除く)。

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奨学金を債務整理する場合の注意点

奨学金を債務整理することは可能ですが、いくつか注意点があります。

ここでは、全ての手続に共通する注意点を解説します。

保証人への影響

奨学金を債務整理しても、連帯保証人・保証人の返還義務は消えません。よって、奨学金の返還残額は連帯保証人である親や保証人である親族に請求されます。奨学金を債務整理する場合は、あらかじめ連帯保証人・保証人に相談しましょう。

機関保証制度を利用した場合は、保証機関が返還義務を負いますので、親や親族に迷惑をかけることはありません。

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信用情報機関への登録

奨学金を債務整理すると、信用情報機関に事故情報が登録されます(ブラックリストに載る)。このため、事故情報が抹消されるまでの5~10年間は借入やクレジットカードの発行が困難になります。

ただし、次のいずれかに該当する方が、奨学金の返還開始後6か月経過時点で延滞が3か月以上に及ぶ場合は、債務整理しなくてもブラックリストに載ります。

  • 2009年度以前の奨学金申込時に個人信用情報の取扱いに関する同意書を提出した方
  • 2009年度以降に奨学金を申込んだ方
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奨学金を任意整理する場合の注意点

ここでは、奨学金を任意整理する場合の注意点を解説します。

奨学金自体の任意整理は困難

奨学金の実施団体のほとんどは、任意整理に応じてくれません。特に、日本学生支援機構は利息・延滞金のカットには一切応じない厳しい姿勢を示しています。

任意整理が向いているのはこんな人

任意整理は次のような方に向いています。

  • 奨学金以外の借金がある
  • 保証人に迷惑をかけたくない

奨学金を個人再生する場合の注意点

ここでは、奨学金を任意整理する場合の注意点を解説します。

官報への掲載

個人再生では、次の3回の決定後、官報に住所・氏名などが掲載されます。

  • 再生手続開始決定
  • 書面付議決定
  • 計画案の認可決定

官報掲載により周りの人に個人再生したことがバレる確率は低いですが、闇金からDMが届く可能性があります。

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個人再生が向いているのはこんな人

個人再生は次のような方に向いています。

  • 奨学金以外の借金を減額するだけでは生活を立て直せない
  • マイホームを残したい
  • 財産を残したい

奨学金を自己破産する場合の注意点

ここでは、奨学金を自己破産する場合の注意点を解説します。

官報への掲載

自己破産では、次の2回の決定後、官報に住所・氏名などが掲載されます。

  • 破産手続開始決定
  • 免責許可決定

官報掲載により周りの人に自己破産したことがバレる確率は低いですが、闇金からDMが届く可能性があります。

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一定の財産の没収

自己破産すると、原則として価値が20万円以上の財産は没収されます。

生活必需品や99万円以下の現金は手元に残せます。

資格制限

一定の資格・職業に就いている方は、破産手続開始決定後、免責許可決定が確定するまでの間、その資格を使用した仕事や職業に就けません。

制限を受ける代表的な資格・職業は次のとおりです。

  • 士業(弁護士・司法書士・税理士等)
  • 生命保険募集人
  • 警備員・警備会社
  • 旅行業者
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自己破産が向いているのはこんな人

自己破産は次のような方に向いています。

  • 借金が多すぎて減額しても払えない
  • 奨学金を含む借金の返済にあてられる財産がない
  • 失業により収入がなく再就職の見込みがない
  • 病気や怪我で長期療養が必要である

債務整理以外の3つの制度

奨学金実施団体は、奨学金の返還が困難な方にセーフティネットを用意しています。

ここでは、独立行政法人日本学生支援機構の3つの制度を紹介します。

減額返還制度

減額返還制度は、災害・傷病・失業その他経済的理由により奨学金の返還が困難な方を対象とした制度です。

月々の返還金を2分の1~3分の1に減額できます。月々の返還金が減額される分、返済期間は2~3倍に伸びます(最長15年)。返済総額が減額されるわけではありません。

減額返還を願い出る場合の収入・所得金額の目安は次のとおりです。

  • 給与所得者 年収325万円以下
  • 自営業者  年収225万円以下

減額返還制度は、既に延滞が生じている場合は利用できません。

月々の返還額を少なくする(減額返還制度) | JASSO

返還期間猶予制度

返還期限猶予制度は、最長10年間、奨学金の返還を一時停止して期限を先送りできる制度です。返済期間が延長されるだけで、元金や利息は免除されません。

返還期間猶予を願い出る場合の収入・所得金額の目安は次のとおりです。

  • 給与所得者 年収300万円以下
  • 自営業者  年収200万円以下

延滞が生じている場合も利用できます。

返還を待ってもらう(返還期限猶予) | JASSO

返還免除

返還免除は、本人が死亡した場合や障害を負った場合に、残っている奨学金の全部又は一部の返還が免除される制度です。

返還が免除となる場合(返還免除) | JASSO

まとめ

この記事では、奨学金を返還が困難な場合の解決方法をご説明しました。

奨学金を返還できない場合には、次の方法で解決できる可能性があります。

  • 任意整理|奨学金以外の借金の将来利息・遅延損害金をカットする
  • 個人再生|奨学金を含む借金を概ね5分の1に減額する
  • 自己破産|奨学金を含む借金を免除する
  • 債務整理以外の解決方法|実施団体の返還減額制度・返還期間猶予制度を利用する

個人再生・自己破産する場合は、保証人・連帯保証人にあらかじめ相談しましょう。

機関保証制度を利用している場合は、各手続きのメリット・デメリットを踏まえて方針を検討しましょう。

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