個人再生手続きの流れと期間|申立後の注意点
個人再生は、裁判所の認可を受け借金の一部を免除してもらい、減額後の借金を3~5年間で返済する制度です。
個人再生は、他の債務整理と比べて手続きが複雑でスケジュールも細かく定められています。
この記事では、次の点を解説します。
- 個人再生申立てまでの流れ
- 個人再生申立後の流れ
- 個人再生の返済スケジュール
- 個人再生申立
- 後の注意点
個人再生を検討している方は、是非ご参考になさってください。

個人再生の手続きは複雑なので、弁護士に依頼するのが一般的です。
本文でご紹介するスケジュールに沿って手続きを進めますので、個人再生の手続きに不安がある方はご連絡ください。
目次
個人再生申立てまでの流れ【期間目安:3~6ヶ月】
ここでは、個人再生の申立前の準備期間について説明します。
全体の流れを以下の表で確認してみましょう。
ひとつずつ具体的に説明します。
弁護士への依頼~個人再生申立てまでの流れ
①弁護士への相談・依頼
個人再生は、他の債務整理に比べ、手続きがとても複雑です。
自分で申立てることも可能ですが、法律の知識が必要なため、弁護士に依頼した方がよいでしょう。
予約した面談日時に、次の書類を持っていきましょう。
- 本人確認書類(免許証、マイナンバーカードなど)
- 印鑑(シャチハタ以外の認印可)
- 借金の内容や内訳がわかるもの
依頼することが決まれば、弁護士と委任契約を結びます。
②弁護士から各債権者へ受任通知の発送
弁護士に依頼すると、弁護士が各債権者に対し、受任したことを知らせる通知(受任通知)を発送します。
債権者は、この受任通知を受領すると、本人への直接の取り立てや連絡ができなくなります。
個人再生の場合、すべての債権者を対象としなければなりません。特定の人(家族・友人、会社等)を手続きの対象から外せません。
③住宅ローンの債権者との事前協議(住宅資金特別条項を利用する場合)
個人再生では、住宅ローンの支払方法を変更する制度(これを住宅資金特別条項といいます。)を利用して、マイホームを残すことができます。
住宅資金特別条項を利用して返済計画を変更する場合、申立前に住宅ローン債権者と協議します。ほとんどの住宅ローン債権者は、契約変更に協力的に応じてくれます。
事前協議の際に住宅ローン債権者から提供された契約変更の同意書や償還予定表は、住宅資金特別条項の内容として利用できます。
④債権の調査/取引履歴の引き直し計算
債権者は、受任通知受領後1~2ヶ月で債権届や取引履歴を弁護士に送付します。
弁護士は開示された取引履歴をもとに、すべての債権の調査を行います。
利息制限法の上限を超える金利での取引があった場合には引き直し計算を行い、過払金があれば返還請求を行います。
⑤財産・収支の調査
弁護士が、依頼者の財産と収支状況を調査します。
財産の内容や価値によって、個人再生で減額される借金の額が異なります。そして、個人再生で減額した借金を返済する能力があるかを確かめるために収入状況を確認します。
調査にあたり、次の書類の提出を求める場合があります。
- 預金通帳
- 保険証券
- 不動産登記事項証明書
- 自動車検査証(車検証)
- 財産の査定書
- 家計収支表
⑥申立書類の準備
上記④・⑤の調査が済んだら(着手金を分割払いしているときは着手金の支払いが終わった後)、申立書類の作成・提出書類の準備に移ります。
依頼者本人が自ら収集する書類もあります。弁護士が、申立書作成のために必要な情報を聴き取りながら準備します。
個人再生申立後の流れ【期間目安:6ヶ月~1年】
ここでは、個人再生申立後の流れを説明します。
申立て〜個人再生手続き開始決定までの流れ
①裁判所に個人再生申立て/弁済許可申立て(住宅資金特別条項を利用する場合)
弁護士が、管轄の裁判所に個人再生申立書類を提出します。住宅資金特別条項を利用する場合は、通常、申立てと同時に(住宅ローンの)弁済許可申立てを行います。
裁判所の運用によって異なりますが、個人再生委員が選任されることがあります。
②個人再生委員の選任・手続開始に関する意見書の提出
東京地方裁判所の運用では、個人再生委員が選任され開始決定の前に個人再生委員との面接が行われます。面接には申立代理人弁護士も同席します。個人再生委員は、面談後、裁判所に手続開始に関する意見書を提出します。
③個人再生手続開始決定
裁判所は申立書類を審査し、その内容に問題がなければ(個人再生委員が選任されている場合は個人再生委員の意見を聞いた上で)、再生手続開始決定を出します。
個人再生手続き開始決定〜認可決定までの流れ
①再生債権の届出
個人再生手続きが開始されると、裁判所が各債権者に開始決定通知書と債権届出書を送付します。債権者は、債権届出期間内に裁判所に債権届出書を提出します。
債権届出書には、以下の内容が記載されています。
- 債権者の氏名・住所・連絡先
- 債権の内容・種類
- 債権の金額
②債権認否一覧表の提出
債務者は、①で提出された債権届出書を確認し、債権を認めるか認めないかを判断します。具体的には、債権認否一覧表を裁判所に提出します。
債権を認めない場合、裁判所に異議を述べられるので弁護士に相談しましょう。なお、債権認否において異議を述べられるのは、申立書に添付する債権者一覧表で異議を留保した債権者に限られます。
③再生計画案の提出
債権額が確定したら、提出期限までに再生計画案を作成して裁判所に提出します。再生計画案には、以下の内容を記載します。
- 返済総額(減額後の借金の総額)
- 返済の開始時期・返済期間
- 返済の方法
- 住宅資金特別条項の利用の有無
再生計画案は実現可能な内容でなければなりません。実効性のない再生計画案は認可されない可能性があるため、弁護士と綿密に相談して計画を立てる必要があります。
④書面による決議に付する旨の決定/再生計画案の書面による決議(小規模個人再生)
給与所得者等再生では、意見聴取のために再生計画案が送付されます。
小規模個人再生の場合、給与者所得再生の場合よりも大きな減額となるため、債権者の意思を確認します。具体的には、債権者に再生計画案を送付し、同意するかどうか書面による決議をとります。
同意しない債権者が、債権者の数の2分の1未満かつ債権額総額の2分の1以下である場合には、再生計画案が可決されたものとみなされます。
⑤再生計画の認可・不認可決定
裁判所が、再生計画案のとおりに返済ができると判断したら、再生計画認可決定が出ます。
再生計画案の認可決定(又は不認可決定)がされると、約2週間後にその旨が官報公告されます。その後約2週間が経過すると、再生計画が確定します。
認可決定後の例外的な流れ
再生計画の認可決定後の例外的な流れを3つ説明します。
再生計画の変更
認可決定後、怪我や病気で収入が減ったときなど一定の要件を満たす場合、債務者の申立てによって再生計画を変更(最長2年の期間延長のみ)することができます。
再生計画の変更を申立てた場合、再生計画案提出時と同様の手続きが行われ、再生計画変更決定の確定によりその効力が生じます。
ハードシップ免責
次の5つ要件をすべて満たした場合、債務者は裁判所にハードシップ免責を申立てられます。免責決定を得ることで、残りの残債務が免除されます。
- 再生計画の履行が極めて困難であること
- やむを得ない特別の事情がある(失業、病気による入院、交通事故による負傷など)
- 再生計画案による返済総額の4分の3以上を既に返済していること
- 清算価値保障の原則を満たしていること(債権者の一般の利益に反していないこと)
- 再生計画を変更して最長2年の期限を延長しても返済が困難になった場合
債権者による再生計画の取消
以下に該当する場合、債権者の申立てにより、裁判所は再生計画を取り消せます。取消の申立ては債権額の10分の1以上にあたる債権者が共同して申立てる必要があります。
- 再生計画の履行を怠ったこと
- 再生計画が不正の方法で認められたこと
- 裁判所の許可が必要な行為(財産の処分・譲り受け等)を裁判所の許可なく行った場合
- 小規模個人再生において弁済総額が清算価値を下回ることが明らかになった場合
再生計画が取り消されると、個人再生の申立前の債権に戻ります。
個人再生の返済スケジュール【期間目安:3~5年】
ここでは、再生計画案に基づく返済スケジュールについて説明します。
履行トレーニング期間【期間目安:6ヶ月】
東京地方裁判所の運用では、再生計画認可決定後に弁済を継続していけるかどうかを判断するため履行可能性テスト(履行トレーニング)を行います。
具体的には、申立後1週間以内に個人再生委員が指定した口座に、1ヶ月あたりの返済予定額を振込み、これを毎月1回ずつ6ヶ月間行います。積立金は、認可決定の確定後、個人再生委員の報酬を差し引いて返還されます。
他の裁判所でも、個人再生の申立後、専用口座を作成して毎月積み立てを行い、通帳のコピーを添付して裁判所に報告する運用が多いです。
再生計画に基づく弁済の開始
再生計画認可決定の確定後、再生計画に基づく弁済が開始します。通常、振込で返済しますので、認可決定確定後、各債権者に振込口座を指定してもらいます。弁済の開始時期は、再生計画案によって定めます。具体的には、次のとおりです。
毎月払いの場合
再生計画認可決定が確定した日の属する月の翌月から弁済を開始します。
3ヶ月ごとの支払いの場合
再生計画認可決定が確定した日の属する月の3ヶ月後から弁済を開始します。3ヶ月ごとの支払いの場合も、履行トレーニングと同様に1ヶ月ごとに積立ておくことが重要です。
個人再生申立後の注意点
ここでは、個人再生申立後の注意点を説明します。
偏頗弁済(へんぱべんさい)をしない
個人再生では、すべての債権者を平等に扱わなければならないという債権者平等の原則があります。
特定の債権者(家族や友人など)だけに返済することを偏頗弁済(へんぱべんさい)といいます。偏波弁済は債権者平等の原則に違反する行為として禁止されています。
偏頗弁済をしてしまった場合には、その金額を上乗せして再生計画案を作成することになります。
偏頗弁済を隠したり、再生計画案にその金額を上乗せしていなかったりした場合は、再生計画が認められない可能性が高くなります。
偏頗弁済をしてしまった場合は、すぐに申立代理人に相談しましょう。
収支を見直して経済的な再建を図る
借金を返せなくなったとき、経済的な立て直しを図るため、借金を圧縮して返済し、残りは免除してもらうのが個人再生の手続きです。
借金の原因となったギャンブルや身の丈に合わない浪費などは控えなければなりません。
認可決定後、裁判所や個人再生委員は積立をチェックしません。債務者自身で管理し再生計画に従って確実な返済を続けることが必要です。
収入に見合った生活をするようにしましょう。
裁判所・個人再生委員・申立代理人の指示には誠実に対応する
個人再生申立後、裁判所や個人再生委員から、追加書類の提出や事情の説明を求められる場合があります。
これらは認可決定を得るため必要なことなので、弁護士のサポートを受けながら誠実に対応しましょう。
まとめ
個人再生は、上記の流れで進みます。申立後も6ヶ月~1年程度かかり、裁判所が定めた期間内の書類提出が求められます。提出期限が過ぎた場合、再生計画が認められないこともあります。
手続きをスムーズに進めるため、個人再生手続きに精通した弁護士に依頼することをおすすめします。