自己破産の免責とは?|免責が認められない場合はどうなる? - 債務整理は弁護士に相談【ネクスパート法律事務所】

自己破産の免責とは?|免責が認められない場合はどうなる?

自己破産は、次の2つの手続きから成り立っています。

  • 破産手続:破産者の財産をお金に換えて債権者に公平に分配する手続き
  • 免責手続:法律上の支払義務を免除して破産者の経済的な更生を助ける手続き

自己破産で借金の支払義務の免除されるためには、免責許可を得る必要があります。

では、この免責とはどのようなものなのでしょうか?

この記事では、以下の点を解説します。

  • 自己破産の免責の意味
  • 自己破産で免責が許可されないこともある?
  • 免責が許可されなかった場合の対処法
  • 自己破産で免責されない債権

免責への理解を深めるご参考になれば幸いです。

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自己破産の免責とは

ここでは、免責についての基本的な知識を解説します。

  • 自己破産の免責制度
  • 自己破産の免責の効果
  • 自己破産の免責の手続き

自己破産の免責制度

免責とは、借金返済の責任を免除することです。

破産終結後、破産者は残債務の返済の責任を免除されます。

免責は自然人にのみ認められています。法人破産については免責の制度がありません。

法人破産を検討されている方は、以下の記事をご参照ください。

会社・法人破産手続きのメリットとデメリットとは?

自己破産の免責の効果

裁判所が免責許可を決定すると、非免責債権を除く債務の支払義務が免除されます。

自己破産の免責の手続き

免責の申立て

破産手続き開始の申立てをしただけでは、免責許可決定は得られません。免責許可決定を得るには、免責許可を申立てなければなりません。

免責許可の申立ては、破産手続き開始の申立てがあった日から開始決定が確定した日以後1ヶ月を経過するまでの間にしなければなりません。ただし、破産法は免責のみなし申立てを認めており、債務者が破産手続き開始を申立てた場合は、免責許可の申立てをしたものとみなされます。

免責の手続き

債務者に免責不許可事由がない場合には、常に免責を許可する旨の決定がなされます。免責許可決定が確定すると、破産者は破産債権の支払い義務を免れます。

免責不許可事由があるときは、裁判所は免責不許可決定を行います。

自己破産で免責が許可されないこともある

ここでは、免責不許可事由について解説します。

自己破産の免責不許可事由とは

破産法は、次の11項目の免責不許可事由を定めています。

  • 不当な財産隠しや財産の価値を減少させる行為
  • 不当な債務負担
  • 偏頗弁済(へんぱべんさい)及び非本旨弁済
  • 浪費や賭博その他射幸行為
  • 詐術を用いた取引
  • 書類や帳簿などの隠滅・偽造
  • 虚偽の債権者名簿の提出
  • 裁判所が行う調査において、説明を拒んだり虚偽の説明をしたりすること
  • 破産管財人の業務を妨害すること
  • 前回の免責許可決定から7年以内
  • 破産法で定められた義務に違反すること

ひとつずつ説明します。

不当な財産隠しや財産の価値を減少させる行為

財産を隠したり、わざと財産の価値を減少させたりする行為です(自己破産の前後を問わず)。

具体例は、次のとおりです。

  • 自宅の処分を免れるために名義を家族に変更する
  • 財産を不当に安く処分する

悪質な財産隠しがあった場合には、詐欺破産罪として罪に問われる可能性もあります。

不当な債務負担

次のような行為は、破産手続きの適正な実現を妨害する結果を招く行為として免責が許可されません。

  • 闇金等の高利貸しからお金を借りる
  • クレジットカードで購入した商品を現金化する

偏頗弁済(へんぱべんさい)及び非本旨弁済

以下の行為は、偏頗弁済(へんぱべんさい)と呼ばれ、債権者の利益を害します。

支払不能があることを知りながら…

  • 特定の債権者だけに返済する
  • 特定の債権者に利益を与える目的で担保を提供する

次のような行為は非本旨弁済(債務者の義務に属しない返済)として、債権者の利益を害し、破産手続きの適正な実現を妨げます。

  • 時効にかかった借金を返済する
  • 返済期日前に返済する
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浪費や賭博その他射幸行為(しゃこうこうい)

浪費又は賭博その他の射幸行為により、財産を著しく減少させ、または過大な債務を負担する行為です。具体例は、次のとおりです。

  • 高級レストランでの飲食・高級ブランド品の購入のために借入した
  • パチンコや競馬などのギャンブルにより多額の借金を作った
  • 株・FX・先物取引などの射幸行為が原因で借金をした
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詐術を用いた取引

相手をだまして取引をした場合です。

具体的な行為は、次のとおりです。

  • 年収をごまかしてお金を借りる
  • 偽名を使ってお金を借りる
  • 返済できないと知りながら返済できるふりをしてお金を借りる
  • 複数の借金があることを隠してお金を借りる

書類や帳簿などの隠滅・偽造

財産に関する書類や帳簿などを隠したり、改ざんしたりする行為です。

虚偽の債権者名簿の提出

自己破産の申立てをする際、裁判所に提出する債権者名簿に虚偽の記載をしたり、一部の債権者を隠して記載しなかったりする行為です。

裁判所が行う調査において、説明を拒んだり虚偽の説明をしたりすること

裁判所の調査に対し、嘘をついたり説明を拒んだりする行為です。

破産管財人の業務を妨害すること

破産管財人の業務を妨害する行為です。具体的には次のような行為です。

  • 破産管財人に嘘をつく
  • 破産管財人に財産を引き渡さない
  • 財産を隠す
  • 債権者集会を無断欠席する

前回の免責許可決定から7年以内

自己破産申立て以前の7年間の間に次の事実がある場合、原則として免責が許可されません。

  • 免責許可の決定が確定した場合
  • 給与所得者等再生による再生計画の認可決定が確定した場合

破産法で定められた義務に違反すること

破産法に定められている義務に違反することも免責不許可事由となります。具体的には次のような場合です。

  • 債権者集会で必要な説明をしない
  • 裁判所に財産に関する書類等を提出しない
  • 裁判所・破産管財人の調査に協力しない

免責が許可されなかった場合の対処法

免責不許可事由に該当する場合でも、裁判所の裁量により免責が許可される場合があります(裁量免責)。裁量免責も得られなかった場合はどうすればよいのでしょうか。

ここでは、免責不許可決定がなされた場合の対処法を紹介します。

即時抗告をする

債務者は、裁判所の免責不許可決定に対して不服を申し立てることができます。

免責不許可決定の通知を受領してから1週間以内に即時抗告を申立てれば、再度免責の許否を審査してもらえます。

ただし、即時抗告をしたからといって必ず免責不許可決定が覆されるわけではありません。

個人再生や任意整理などを検討する

免責が不許可になると、借金の支払義務は免除されないまま全額残ります。個人再生や任意整理など、他の債務整理を検討するのも一つの手段です。

個人再生は、借金をおおむね5分の1程度に減額できます。自己破産では免責不許可事由に該当する場合でも個人再生を利用できる可能性があります。

任意整理は、原則として元金は減額できませんが、将来利息はカットすることで債務総額を圧縮できます。

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時効になるのを待つ

裁判所は債権者に対し、免責不許可を通知しません。したがって、債権者がその後請求しないまま時間だけが経過する場合があります。このような場合は消滅時効が成立する可能性があります。

しかし、時効消滅までの期間(5年又は10年)、債権者から問い合わせや請求が全くないことは考えにくいので、現実的ではありません。

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自己破産で免責されない債権

ここでは、自己破産で免責許可決定がなされても、免責されない債権について解説します。

非免責債権とは

自己破産で支払義務が免除されない債権を非免責債権といいます。免責されない債権は、次のとおりです。

  • 租税等の請求権
  • 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
  • 故意又は重大な過失による人の生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
  • 夫婦間の相互協力扶助義務に基づく請求権
  • 子の監護に基づく請求権
  • 親族間の扶養義務に基づく請求権
  • 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金返還請求権
  • 破産者が故意に債権者名簿に記載しなかった請求権
  • 罰金等の請求権

ひとつずつ説明します。

租税等の請求権

税金は免責されません。

具体的には、次のものがあります。

  • 所得税
  • 贈与税
  • 相続税
  • 市町村民税
  • 固定資産税
  • 自動車税
  • 事業税
  • 国民年金保険料
  • 国民健康保険料
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悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権

具体的には、次のような行為に基づく損害賠償請求権です。

  • 相手方に傷害を負わせる悪意をもって暴力行為に及んだ場合
  • 他人の物を盗んだり騙し取ったりした場合
  • 会社のお金を横領した場合
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故意又は重大な過失による人の生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権

悪意がない場合でも、人の生命・身体を害する次のような行為に基づく損害賠償請求権は免責されません。

  • 人を殴って怪我をさせた場合
  • 危険運転により交通事故を起こし被害者を死亡させた場合

夫婦間の相互協力扶助義務に基づく請求権

婚姻生活を維持するために必要な費用の請求権は免責されません

例えば…

  • 生活費
  • 医療費
  • 婚姻費用 など

子の監護に基づく請求権

子の監護に関する義務とは子どもの生活費・医療費・教育費を支払う義務です。これらの請求権は、いわゆる養育費請求権です。

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親族間の扶養義務に基づく請求権

扶養義務とは、生活に困っている人を経済的に援助する義務です。

親族の扶養義務を負う場合、その請求権は免除されません。

雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金返還請求権

個人事業主が自己破産した場合における従業員の給料などです。

次に挙げる債権のほか名目の如何に関わらず、雇用契約に基づいて生じた請求権は非免責債権となります。

  • 給与債権
  • 賞与債権
  • 退職金債権

破産者が故意に債権者名簿に記載しなかった請求権

破産者が意図的に債権者一覧表に記載しなかった債権は非免責債権となります。

ただし、債権者名簿に記載されなかった債権者が、破産手続開始の決定があったことを知っていた場合は、破産者があえて名簿に記載しなかった場合でも非免責債権とはなりません。

罰金等の請求権

罰金等の請求権とは、次のものを総称した請求権です。

  • 罰金・科料の請求権:犯罪の罰として課されるお金
  • 刑事訴訟費用の請求権:刑事訴訟の訴訟費用として課されるお金
  • 過料の請求権:行政上の違反により課されるお金
  • 追徴金の請求権:犯罪により得た利益の相当額として課されるお金

まとめ

自己破産において免責許可決定が出ると、非免責債権を除く全ての借金の支払義務が免除されます。免責不許可事由に該当する場合でも、裁判所の裁量によって免責を得られる可能性もあります。

免責不許可事由がある場合、裁量免責を得るためには、弁護士に相談することをおすすめします。自力で裁判官を説得することはハードルが高いでしょう。

弁護士に依頼すれば、裁量免責を得るために万全の対策を取れます。免責が許可されない場合も個々の事情に応じた的確な対処法を教えてもらえるでしょう。

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