学生でも自己破産できる?就職や将来の生活・結婚への影響は?
奨学金の返済や、学生ローン・クレジットカードの支払いができなくなり、借金の悩みを抱える学生の方も少なくありません。
アルバイトの少ない収入で返済が追い付かない状況に陥っても、学校や親にバレることや就職への影響が心配で、自己破産踏み切れないこともあるでしょう。
しかし、借金問題の解決を先延ばしにすることは、自己破産する以上のリスクが生じる可能性があります。
この記事では、学生の方の自己破産について、次のとおり解説します。
- 学生でも自己破産できる?
- 学生ローンも自己破産で免除される?
- 日本学生支援機構の奨学金の返還義務も自己破産で免除される?
- 学生が自己破産する場合は親に内緒でできる?
- 学生が自己破産すると就職に影響する?
- 学生が自己破産すると生活に影響はある?
- 学生が自己破産すると将来の結婚に影響はある?
- 学生が自己破産する場合の注意点
借金を抱えている学生の方は、ぜひ参考になさってください。
目次
学生でも自己破産できる?
学生でも自己破産できるのでしょうか?
ここでは、自己破産できる条件を解説します。
自己破産に年齢制限はない
自己破産の申立てに年齢制限はありません。学生の方も条件を満たせば自己破産できます。
自己破産ができる条件
自己破産するためには、次の2つの条件を満たす必要があります。
- 支払不能の状態であること
- 免責不許可事由に該当しないこと
ひとつずつ説明します。
支払不能の状態であること
支払不能とは、借金や収入の額、財産の有無等を総合的かつ客観的に見て、継続して借金を返済できない状態です。
自分で払えないと思うだけでは認められず、借金が返せない状態にあることを裁判所に客観的に認めてもらう必要があります。
免責不許可事由に該当しないこと
借金の支払義務を免除してもらうためには、免責不許可事由に該当していないことが必要です。免責不許可事由とは、借金を帳消しにすることが相当ではないと判断される一定の事由を指します。
免責が不許可となる事由は以下のとおりです。
- 自己破産で財産を没収されるのを避けるために財産を隠すこと
- クレジットカードで購入したものを売却して現金化すること
- 特定の債権者にだけ優先して借金を返済すること
- パチンコや競馬等のギャンブルや収入に見合わない浪費で多額の借金を抱えること
- 返済できる見込みがないのに返済できるふりをしてお金を借りること
- 財産に関する書類や帳簿などを隠したり、改ざんしたりすること
- 債権者名簿に虚偽の記載をしたり、一部の債権者を意図的に外したりすること
- 裁判所が行う調査において、説明を拒んだり虚偽の説明をしたりすること
- 破産管財人の業務を妨害すること
- 2回目以降の自己破産で、前回の免責許可決定から7年以内であること
- その他、破産法に定められている義務に違反すること
ただし、免責不許可事由に該当する場合でも、免責が許可されるケースもあります。
破産に至った経緯その他一切の事情を考慮して、裁判所が免責を認めるのが相当と判断した場合には、免責が許可されます。これを裁量免責といいます。
学生ローンも自己破産で免除される?
ここでは、自己破産すると学生ローンの支払義務も免除されるかどうかを解説します。
学生ローンも借金として取り扱われる
学生ローンも借金の一つです。銀行からの借入れや消費者ローンと同様に債務として扱われます。
条件を満たせば支払義務が免除される
学生ローンの返済が難しくなった場合も、条件を満たせば自己破産できます。
ただし、学生ローンしか借金がない場合は、裁判所に「アルバイトやパート等で頑張って働ければ返せる額だから、支払不能とは認められない」と判断され、申立てが棄却される可能性があります。学生ローンは、借り入れ限度額が低く、最大でも50万円程度が一般的だからです。
そのような場合は、自己破産以外の債務整理を検討しなければなりません。
日本学生支援機構の奨学金の返還義務も自己破産で免除される?
ここでは、日本学生支援機構の奨学金の返還義務も自己破産で免除されるかどうかを解説します。
奨学金も借金として取り扱われる
奨学金も借金の一つです。銀行からの借入れや消費者ローンと同様に、債務として扱われます。
条件を満たせば支払義務が免除される
奨学金の返還が難しくなった場合も、条件を満たせば自己破産できます。
ただし、奨学金を自己破産すると親や親族に迷惑をかける可能性があります。奨学金を借りる際、親や親族が連帯保証人になっているケースが多いからです。奨学金を借りた本人が自己破産すると、日本学生支援機構は、連帯保証人に対して残金を一括請求します。
連帯保証人が返済できない場合は、連帯保証人も自己破産しなければならないこともあります。奨学金の返還が厳しくなったときは、なるべく早い段階で連帯保証人に状況を説明しましょう。
学生が自己破産する場合は親に内緒でできる?
ここでは、親に内緒で自己破産できるかどうかを解説します。
未成年の場合は親(親権者)の同意が必要
自己破産の申立てに年齢制限はありません。未成年でも自己破産できます。
ただし、未成年者は法定代理人(親)の同意がなければ法律行為ができないため、自己破産する場合は、親に打ち明けなければなりません。
無収入・親と同居の場合は親の協力が不可欠
成人している場合でも、収入がない場合や親と同居している場合は、親の協力が不可欠です。
自己破産では、家計全体(同居家族全員)の収支状況を報告しなければならないからです。裁判所によっては、親の通帳や収入証明書の提出を求められることもあります。
学生が自己破産すると就職に影響する?
自己破産すると、将来の就職にどのような影響があるのでしょうか。
ここでは、自己破産による就職への影響について解説します。
自己破産が就職に影響することはほとんどない
自己破産したことが就職に影響することはほとんどありません。学生時代に自己破産したことを履歴書に書く必要もありません。
ただし、金融機関への就職を検討している場合は、自己破産したことがバレる可能性があります。
自己破産すると信用情報機関に事故情報が登録されます。いわゆるブラックリストに載ると言われる状態です。金融機関は信用情報を閲覧できるため、採用過程において、応募者の過去の金融事故を調査する可能性があります。
資格制限を受ける職種への就職はどうなる?
自己破産で資格制限を受ける職種への就職を希望している場合は、注意が必要です。
破産手続中は、一部の資格を使った仕事に就けなかったり、資格試験に受かっても登録できなかったりすることがあるからです。
資格制限を受ける資格や職業の例は、以下のとおりです。
- 士業(弁護士・司法書士・税理士・行政書士・社会保険労務士等)
- 警備員
- 生命保険募集人
- 旅行業者
- 宅地建物取引士
免責許可決定が確定すれば資格制限は解除されますので、自己破産後は問題なく資格を使った仕事ができます。
制限を受ける資格や職業は多岐にわたりますので、希望する職種や取得を目指している資格がある場合は、自己破産するタイミング等を弁護士に相談するとよいでしょう。
学生が自己破産すると生活に影響はある?
ここでは、自己破産による生活への影響について解説します。
原則として賃貸物件から追い出されることはない
賃貸物件を借りて一人暮らしをしている場合でも、家賃を滞納していなければ、自己破産しても追い出されることはありません。
家賃を長期間滞納している場合は、自己破産してもしなくても、賃貸借契約が解除され追い出される可能性があります。1〜2ヶ月分の滞納で契約が解除されるケースはほとんどありませんが、半年~1年以上滞納が続いている場合は、契約が解除される可能性が高いです。
本来、家賃の滞納分は破産手続きにおいて支払義務が免除される債権に該当しますが、居住の継続を希望する場合は、裁判所の許可を得て滞納家賃を支払えることがあります。
自己破産前に家賃を滞納している場合は、なるべく早く弁護士に相談しましょう。
新居の入居審査に通らない可能性がある
自己破産後は、賃貸物件の入居審査に通らない可能性があります。
自己破産するとブラックリストに載るため、保証会社の審査に通りづらくなるからです。
ただし、すべての物件を借りられなくなるわけではありません。信販系以外の保証会社を選んだり、連帯保証人を立てたりすることで入居審査に通る可能性もあります。
友人や学校に知られることはほとんどない
友人や学校に自己破産したことがバレる可能性はほとんどありません。もし学校に知られても、自己破産したことを理由に退学させられることもありません。
未成年者の場合は、親に内緒で自己破産できません。自己破産の申立てに親権者の同意が必要だからです。
バイクや車が没収される可能性がある
自己破産すると、一定の価値のある財産は処分されます。自己名義のバイクや車の価値が20万円を超える場合は、破産管財人に売却され、その代金が債権者の配当にあてられます。
自分でローンを組んで購入したバイクや車がある場合は、自己破産の申立てを依頼した弁護士が受任通知を送付した後に、債権者に引き上げられます。
学生が自己破産すると将来の結婚に影響はある?
ここでは、自己破産が将来の結婚に影響をおよぼすかどうかを解説します。
戸籍等に自己破産した事実が載ることはない
自己破産しても戸籍にその事実が載ることはありません。将来の結婚相手に自己破産したことがバレる可能性はほとんどないでしょう。
一定期間住宅ローンやクレジットカード契約を組めなくなる
自己破産するとブラックリストに載るため、5~10年間はローン契約やクレジットカードの作成ができません。
そのため、ブラックリストの登録が抹消されるまでは、住宅ローンでマイホームを購入することを我慢しなければなりません。

学生が自己破産する場合の注意点
ここでは、学生の方が自己破産する場合の注意点を解説します。
未成年で親権者の同意を得ずにした借金は取り消せる可能性がある
未成年者が親の同意を得ずにした借金は、借金の契約そのものを取り消せる可能性があります。未成年者は、原則として、親権者の同意が無ければ、契約などの法律的な行為ができないからです。
親権者の同意を得ずにした借金が取り消された場合、借りたお金や借りたお金で買った物のうち、手元に残っているものだけ債権者に返せば、それ以外を返す必要はありません。
ただし、未成年のうちに一度でも結婚したことがある場合は、法律上は成人したものとみなされますので、親権者の同意がないことを理由に取り消せません。
未成年でも嘘をついて借金した場合は取り消せない
親権者の同意を得ていなくても、債権者に積極的に嘘をついて借金した場合は、借金の契約を取り消せません。
具体的には、次のようなケースです。
- 身分証明書を偽造して成人のふりをして借金した場合
- 親権者の同意書を偽造した場合
自己破産以外の解決方法を検討する
学生の方が抱える借金は、社会人よりも少額であることが多く、自己破産しなくても任意整理で解決できるケースが多くあります。
奨学金の返済が困難な場合は、債務整理以外にも日本学生支援機構が用意した救済制度を利用することで解決できる可能性があります。
自分で判断せず、弁護士に相談して借金の解決方法をアドバイスしてもらうことをおすすめします。
まとめ
学生でも自己破産できますが、未成年の場合は親権者の同意が必要です。
金融機関への就職や士業などの資格を使った仕事を予定している場合は、自己破産を申立てるタイミングを慎重に検討すべきです。
借金問題は、それぞれの事情に合った方法で解決することが重要です。自分では自己破産しかないと思う場合も、他の手続きで解決できることもあります。
当事務所では借金に関する相談は初回30分無料ですので、学生の方も安心してご相談いただけます。お気軽にお問合せください。