自己破産のデメリットは怖くない?誤解を解くために正しい知識を!
自己破産は、裁判所を通じて借金の返済を免除する手続きです。弁護士を通じて裁判所に申し立てをするのが一般的で、認められれば借金がなくなります。
当然ですが、自己破産はただ借金がなくなる手続きではありません。今後の借り入れが難しくなったり、保証人に迷惑がかかったりなどのデメリットがあります。
事前にデメリットをよく理解したうえで、それでも自己破産するか検討すべきです。
ここでは、自己破産のデメリットやよくある誤解、生活への影響などを解説します。
目次
自己破産のメリットとは
冒頭で説明した通り、自己破産が認められると借金の返済が免除されます。その他、自己破産をすることによるメリットを挙げます。
- 破産手続きがはじまると債権者(貸主)からの取り立てが止まる
- 給与の差し押さえリスクがなくなる
- 生活に最低限必要な財産は残したまま生活を再建できる
- 借金の苦しみから解放される
- 収入があればすぐに生活を立て直せる
- 家族に迷惑をかけずに再スタートできる など
自己破産は、借金をゼロにできる唯一の債務整理であり、経済的・精神的な負担から解放されるメリットがあります。
自己破産の8つのデメリット
ここでは自己破産のデメリットを解説します。
一定期間クレジットカードとローンを使えなくなる
自己破産をすると、信用情報機関に事故情報が登録されます。いわゆるブラックリストに載る状態のことです。
ブラックリストに載ると、一定期間、新たな借入やクレジットカード作成ができなくなります。銀行や消費者金融などは、借入れやカード作成の申込審査時に、信用情報機関の個人信用情報を照会するからです。
事故情報が登録されるのは破産手続終了後5~10年ほどで、この期間が過ぎれば事故情報は削除されます。削除後は、新たな借入やクレジットカードの作成ができるようになります。
不便に感じるかもしれませんが、借金に頼らない生活を取り戻すきっかけになるため、人生の再スタートを切りやすくなります。
一定の財産を処分しなければならない
自己破産をすると、一定の価値のある財産を処分しなければなりません。
マイホームなどの不動産はもちろん、一定額以上の価値のある車や生命保険、預貯金などは手放すことになります。
ただし、生活必需品や一定額以下の財産は、手元に残すことができます。手元に残せる財産の詳細は後述します。
破産手続き中に官報に2回掲載される
自己破産をすると、破産手続き中に官報に氏名や住所などの情報が掲載されます。
掲載されるタイミングは、以下のとおりです。
- 破産手続き開始決定時
- 免責許可決定時
一般の方で日常的に官報を購読・閲覧しているはほとんどいませんので、官報掲載により周囲の人に自己破産がばれることを過度に心配する必要はないでしょう。
管財事件になると破産手続中は住居を自由に変えられなくなる
管財事件になると、破産手続中は住所の移動に裁判所の許可が必要です。許可を得ずに住所を変更する行為は、免責不許可事由にあたります。
住所の変更はもちろん、宿泊を要する旅行や宿泊を要しない遠隔地への旅行も、裁判所の許可を得なければなりません。
なお、裁判所は、以下の事情がある場合を除いて住所の変更を認める傾向にあります。
- 破産手続きの進行に支障を及ぼす場合
- 債権者の利益を損なうような特別の事情がある場合
- 財産隠しや逃亡を目的として居住地を離れる蓋然性が高い場合
免責許可決定確定後は、居住制限が解除されるので、自由に住所を変えられます。
破産手続中は一定の資格を使った仕事ができなくなる
破産手続中は、一定の資格を使った仕事や職業に就けなくなるなどの制限を受けます。
制限を受ける資格や職業の代表例は、以下のとおりです。
- 宅地建物取引士、不動産鑑定士
- 弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士などの士業
- 警備員、警備業
- 生命保険募集人、損害保険の代理店
資格制限は永久的に続くわけではありません。
免責許可決定確定後は、再び資格を使った仕事をしたり、新たに資格を取得したりできます。
管財事件になると郵送物が管財人に転送される
管財事件になると、通信の秘密に制限を受けます。
破産手続中、本人(破産者)宛の郵便物は全て破産管財人に転送され、その内容を破産管財人にチェックされます。
破産管財人による内容物の確認後は、破産者本人に返却されるのでご安心ください。
なお、制限の範囲は郵便物のみであり、宅配便等は含まれません。
携帯やスマホの通信契約を解約される場合がある
携帯電話やスマートフォンの利用料金を滞納していたり、機種代金の分割払いが残っていたりすると、通信契約を解約されることがあります。
滞納額や割賦残高が少額である場合には、裁判所の許可を得て使用を続けられることもあります。
なお、契約を解約された場合も、原則として携帯・スマホ本体の返還は求められません。
保証人に迷惑をかける
主債務者が自己破産をすると、連帯保証人や保証人に残りの借金を返済する義務が生じます。
通常は、債権者が受任通知を受領した時に、連帯保証人や保証人に一括請求するケースが多いです。
連帯保証人や保証人が一括返済できない場合は、連帯保証人・保証人自身も債務整理を検討しなければならないことがあります。
破産してもなくならない借金がある
自己破産をしても、税金や罰金などの支払義務は免除されません。
下表で非免責と表示されているものは、自己破産後も払い続ける必要があります。
具体的な事例 | 免責・非免責 |
---|---|
滞納している税金・社会保険料 | 非免責 |
滞納している罰金 | 非免責 |
重過失の交通事故損害賠償請求 | 非免責 |
一般的な過失の交通事故損害賠償請求 | 免責 |
浮気をした配偶者に対する慰謝料請求 | 免責 |
配偶者に対してのDVに対する慰謝料請求 | 非免責 |
配偶者に対して求める養育費の請求 | 非免責 |
デメリットがあっても自己破産を検討すべき理由とは
自己破産のメリット・デメリットを紹介しました。
中には、自己破産をせざるを得ない人や、デメリットがあっても自己破産を検討すべき人もいます。
ここでは、デメリットを踏まえたうえで自己破産を検討すべき理由を紹介します。
遅かれ早かれ自己破産することになるから
借金の返済が困難な状況が続く場合、先延ばしにしても最終的には自己破産を選ばざるを得ないケースが多いです。
収入が増えたり、一括返済できるような資産が手に入る見込みがない限り、状況を改善することができません。
借金の返済を無理に続けることで生活がさらに苦しくなり、自己破産を決断したときにはすでに貯金もない、などの状況もありえます。
早めに決断することで、精神的にも経済的にも負担を減らすことができます。
返済できなければどちらにしろ財産を失うから
自己破産をすると持ち家や車などの高額な財産を失う可能性があります。
しかし、借金の返済ができない状態が続けば、いずれにしても債権者から差し押さえを受けることになります。
例えば、住宅ローンを滞納すれば、自宅は競売にかけられ、売れた分のお金は債権者に配当されます。
それでもローン返済にいたらなければ、別の財産を差し押さえられる可能性もあります。
自己破産をすれば、給与の差し押さえは回避できますので、債権者から法的措置を取られる前に自己破産をする方が合理的です。
早く手続きした方が生活の再建が早いから
自力で完済できないのであれば、自己破産を先延ばしにしてもあまりいいことはありません。生活の再建が遅れてしまいます。
自己破産をすれば、一時的に信用情報に傷がつくものの、借金の支払いから解放され、収入を生活費や将来の貯蓄に回せるようになります。
早めに手続きをすれば、その分安定した生活を取り戻すまでの時間も短くなるでしょう。
自己破産後も信用回復は可能だから
自己破産をすると信用情報に事故情報が記録され、一定期間はローンやクレジットカードの利用が難しくなります。
ブラックリストに登録される、などと表現されることもありますが、これは永久的なものではありません。
一般的に5~10年経過すれば信用情報が回復し、再びローンを組んだりできるようになります。
つまり、一度傷ついた信用情報もやがて回復しますので、過度に自己破産をおそれる必要はありません。
自己破産のデメリットの影響を受けにくい人の特徴
ここまで、自己破産にデメリットがあることを説明してきましたが、デメリットの影響を受けにくい人もいます。
以下のような人は、自己破産のハードルが比較的低いといえるでしょう。
車や家などの財産を所有していない人
自己破産で一番気になるのが、財産の差し押さえです。車や家や特に、差し押さえの対象になりやすいです。
しかし、もともと持ち家がなく賃貸に住んでいる人や、車を所有していない人であれば、このデメリットの影響を受けません。
特に都市部で公共交通機関を利用している人は、車がなくても生活に困らないため、自己破産後もスムーズに生活を続けることができます。
家族と暮らしていない・一人暮らしの人
自己破産をすることで、家や車がなくなったりすると、家族の生活にも影響がおよびます。
自己破産時には、世帯の収入にもチェックが入るため、給与明細や確定申告書の提出なども提出もお願いしなければならない可能性があります。
同居家族には迷惑がかかるかもしれませんが、一人暮らしであれば、そのような心配はいりません。
自分の経済状況だけを考えればよいため、自己破産のハードルは低くなるでしょう。
クレカやローンがなくても困らない人
自己破産をすると、5~10年の間、信用情報の悪化により、借り入れやクレジットカードの作成などが困難になります。
しかし、今後借入をする予定のない人や、クレカを元々使用しない人は、これを気にする必要がありません。
クレジットカードを利用したい人でも、デビットカードで利用すれば、日常生活に支障をきたすことはほとんどありません。
保証人をつけた借金がない人
自己破産をすると、自分の借金の支払い義務がなくなりますが、保証人は別です。保証人がいる場合、自己破産後は保証人が返済を引き継ぐことになります。
そのため、保証人をつけた借金がある場合、自己破産をすると保証人に大きな負担がかかり、トラブルの原因になることもあります。
一方で、借金に保証人がいない人であれば、自己破産をしても他人に迷惑をかける心配がなく、スムーズに手続きを進めることができます。
家族の協力が得られる人
自己破産をすると、自分名義のクレジットカードが使えなくなったり、住宅ローンを組めなくなったりします。
しかし、家族がクレジットカードを持っていて、家族名義で契約できる場合などは、それほど困ることはありません。
その他、家族が住居を用意してくれたり、金銭的な援助をしてくれたりする場合、自己破産後の生活再建もスムーズに進みます。
すでに生活保護を受けている人
生活保護を受けている人は、もともと財産を持っておらず、クレジットカードやローンも利用できないため、自己破産をしても生活が大きく変わることはありません。
生活保護を申請する際は、借金の有無を聞かれ、借金がある場合には、自己破産を勧められることが多いです。
その場合、自己破産に必要な費用も法テラスに負担してもらえるため、自己負担なしで破産できる可能性があります。
自己破産後の生活や人生はどうなる?
ここでは、自己破産後の生活について解説します。
家族への影響
自己破産をしても、基本的に家族への影響はありません。
家族の信用情報に傷がついたり、子供の進学や就職に直接的な影響を及ぼしたりすることもありません。
ただし、破産した本人がブラックリストに載ることで、間接的に、以下のような影響が一定期間家族に及ぶことがあります。
- 破産した本人名義で住宅ローンを組めない
- 破産した本人に奨学金の保証人になってもらえない
なお、家族が保証人になっている借金があると、債権者は保証人である家族に借金の残額を一括請求するため、家族も債務整理が必要になるケースがあります。
就職や転職への影響
自己破産しても、就職や転職に直接的な影響が及ぶことは基本的にはありません。
ただし、金融機関への就職や転職を考えている場合は、信用情報機関に登録された事故情報が、採用過程で影響を及ぼす可能性があります。
免責許可決定確定後は、資格制限を受ける職業への就職・転職にも大きな影響はないでしょう。
結婚への影響
自己破産をしたことで、法的に結婚の制限を受けることはありません。
自己破産をしたことが戸籍や住民票に載ることはないため、戸籍の取得によって婚約者や配偶者に自己破産をしたことがバレる可能性もないでしょう。
ただし、何らかの理由により、借金を抱えていることや自己破産をしたことが婚約者に知られた場合は、婚約者やその家族の意向によっては、破談になってしまうことがあるかもしれません。
日常生活への影響
自己破産後の日常生活に不安を抱える方もいらっしゃるでしょう。
しかし、世間一般で囁かれるほど、自己破産のデメリットはその後の生活に大きな影響を及ぼしません。
一定期間は借入れに頼れない生活が続きますが、収入の範囲で生活がまわっていくように家計の健全化を図れば、平穏な生活が確保できます。

まとめ
自己破産の目的は、単に借金をなくすだけではなく、健全な生活を取り戻すことにあります。
そのため、自己破産には復権制度が用意されており、免責許可決定が確定すれば、ほとんどの制限が解除されます。
信用情報機関への事故情報の登録も、一定期間が経過すれば削除されます。
自己破産のデメリットは、その後の人生に永久的に影響を及ぼすようなものではありません。
自己破産のデメリットが気になる方は、ぜひ一度当事務所の無料相談をご利用いただき、ご不安をお聞かせください。