自己破産で自宅は残せる?自己破産後も住宅ローンは組める?
自己破産は、裁判所に免責が許可されると、借金の返済義務を免除してもらえる手続きです(一部、税金や養育費の支払いなど免除されないものもあります)。
借金が免除される代わりに一定額以上の価値のある財産は処分・換金され、債権者に配当されます。マイホームも例外ではありません。
この記事では、以下の点を解説します。
- 住宅ローン破綻による自己破産について
- 自己破産しても自宅を残す方法はある?
- 自己破産後に住宅ローンは組める?
住宅ローンの返済が困難になった方、マイホームをお持ちで自己破産を検討されている方は是非ご参考になさってください。
目次
住宅ローン破綻による自己破産について
ここでは、自己破産による自宅・住宅ローンへの影響を説明します。
自己破産すると住宅ローンはどうなる?
住宅ローンが残っている場合、自己破産により免責が認められれば、住宅ローンの返済義務もなくなります。
自己破産すると自宅はどうなる?
自己破産すると、住宅ローンが残っているかどうかに関わらず、自宅は原則手放さなければいけません。
住宅ローンが残っている場合
住宅ローンが残っている場合、通常、裁判所から選ばれた破産管財人が任意売却を進めます。債権者が競売にかけることもあります。
住宅ローン契約では、ローンの返済ができなくなった場合に備え、債権者が住宅を売却して代金を優先的に回収する権利を設定します(これを抵当権といいます。)自己破産を申し立てると、債権者はその抵当権に基づいて競売を申立て、その代金で債権を回収します。
住宅ローンが残っていない場合
住宅ローンを完済している場合も、不動産は価値ある財産のため、破産管財人が売却し債権者への配当にあてられます。ただし、売却が困難な不動産である場合や売値がほとんど付かない不動産である場合、破産管財人により破産財団から放棄されることもあります。
自宅から退去する時期
自宅が競売にかけられると、住宅を購入する人(買受人といいます)が現れるまで半年~1年程度かかります。その間は自宅に住み続けられます。
買受人が代金を支払ってから引き渡しまで2ヵ月程度かかるため、破産者は買受人による代金納付後、長くても2ヵ月以内に自宅から退去しなければなりません。
ただし、次の場合には、競売が取り消されるため、自宅にそのまま住める場合もあります。
- 競売を3回行っても買受人がいない
- 競売を申立てた債権者も買受人にならない
破産管財人が裁判所の許可を受けて任意売却をする場合は、管財人と購入希望者との契約に従い、不動産の引渡日までに退去しなければいけません。
住宅ローンの共有名義人が自己破産するとどうなる?
住宅ローンの取扱い
マイホームを購入する際、夫婦の収入を合算してローンを組むことがあります。この場合、夫婦のひとりが自己破産をすると、もうひとりが債務を負担しなければなりません。
夫婦で住宅ローンを組む方法には、以下の3通りの方法があります。
- 夫婦のひとりが債務者、もうひとりが連帯保証人になる(連帯保証型)
- 夫婦がそれぞれ債務者になる(連帯債務型)
- 夫婦がそれぞれ単独でローンを組み互いに保証人になる(ペアローン型)
いずれの場合も、配偶者に支払能力がなければ、同時に債務整理をしなければなりません。
自宅の取扱い
自己破産は、破産者本人の財産を処分します。自宅が共有名義の場合、破産者の持ち分だけが換価の対象となります。
しかし、自宅(不動産)は物理的に分割できません。このため、共有名義人全員の合意を得て自宅を売却し、破産者以外の共有名義人に持ち分に応じた売却代金を返金するケースもあります。
共有名義人(破産者の配偶者)に資力がある場合、競売手続きで共有名義人が自宅を買い取ることもできます。
自己破産しても自宅を残す方法はある?
どうしても自宅を手放したくない場合にはどうしたらよいのでしょうか?
ここでは、自己破産しても自宅を残せる方法を説明します。
親族に購入してもらう
家族・親族に自宅を購入してもらえば、住み続けられる可能性があります。
ただし、親族間での売買ではローンが組めないことが多く、一括払いで購入してもらう必要があります。
適正価格(市場の相場)よりも安い価格で売却した場合、次のリスクが生じます。
- 破産管財人によって売買契約が取り消される可能性がある
- 悪質な財産隠しとみなされ免責されない可能性がある
破産管財人には、名義変更をなかったことにする権限(否認権)があります。申立て直前の名義変更が問題視されると、名義変更を否認される可能性もあります。
自宅をリースバックする
不動産会社等に自宅を買い取ってもらい、家賃を支払い住み続ける方法をリースバックと呼びます。これには住宅ローン債権者の同意が必要です。
ただし、リースバックには次のとおり注意点があります。
家賃が相場よりも高くなりやすい
リースバックの家賃は、不動産会社等が買い取った金額に応じて決まります。このため、相場よりも家賃が高いケースも多く、自己破産後の生活がひっ迫してしまう可能性もあります。
将来的に自宅を買い戻す必要がある
通常、リースバック契約は将来的に自宅を買い戻すことを前提に契約します。買い戻しまでの期間は2~5年程度が一般的です。
買い戻し期限までにお金を準備できなければ、結局自宅から出ていくことになります。
自分で買い取る
破産管財人の許可があれば、自宅を自分で買い取れます。
具体的には、破産管財人が破産者に対し、競売により得られる金額(見込み額)の積立を指示し、その積立金を債権者への配当にあてます。
買受人が多く現れる物件では、破産管財人は少しでも配当を増やすため高額で売却することもあります。そのため、破産者の希望が必ずしも受け入れられるとは限りません。
自己破産以外の債務整理を検討する
自己破産以外の債務整理をすれば、自宅を手放さなくてよい可能性があります。
個人再生
個人再生は、裁判所に再生計画の認可をもらい、減額した借金を3~5年で分割返済する手続きです。小規模個人再生を利用した場合、借金は概ね5分の1程度に減額してもらえます。
個人再生では、住宅資金特別条項(通称:住宅ローン特則)を利用し、住宅ローンは支払い続けることで自宅に住み続けられます。
任意整理
債権者と債務者の交渉により合意した内容で返済する手続きです。
自己破産や個人再生のように、すべての債権者を対象としなくてもよいため、住宅ローン以外の借金のみ任意整理できます。
特定調停
特定調停も、任意整理と同様に債権者との話し合いで返済方法を変更する手続きです。任意整理と異なる点は簡易裁判所の調停委員が仲介役として介入する点です。
任意整理では交渉に応じなかった債権者が、裁判所が介入することで協力的になるケースもあります。
自己破産後に住宅ローンは組める?
ここでは、自己破産後の住宅ローンは組めるかについて解説します。
自己破産後、原則5〜10年は住宅ローンが組めない
自己破産後5~10年間は、住宅ローンの審査に通りにくくなります。
自己破産すると信用情報機関に事故情報が登録されるからです。いわゆるブラックリストに載ると言われる状態です。ブラックリストの登録期間は次のとおりです。
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC):5年間
- 株式会社日本信用情報機構(JICC):5年間
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC):10年間
住宅ローンの審査では、通常ローン会社が信用情報を照会し、貸付を行ってよいか審査しています。信用情報に事故情報が登録されていると、住宅ローンを組めません。
破産債権者であった金融機関では、事故情報の登録抹消後も、社内独自の情報として自己破産の情報が残っている(いわゆる社内ブラックである)可能性が高く、ローンを組むのは難しいでしょう。
自己破産後に住宅ローンの審査に通りやすくする方法
頭金を貯める
住宅ローンを申込前に、可能な限り頭金を貯めることが重要です。ブラックリスト登録期間(5~10年)でコツコツ頭金を貯めれば、融資の際に金融機関の信頼が得られます。
頭金を多くつぎ込むことで、住宅ローンの借入額も減らせるので審査に通る可能性も高くなります。
低価格の住宅を買う
安めの住宅を購入すれば、その分、住宅ローンの金額は少なくなります。ローン金額が少なければ金融機関としても貸し倒れのリスクが低くなるため、審査が通りやすくなります。
破産債権者には申し込まない
自己破産後、新たに住宅ローンを申込む場合は、過去に取引をしたことがない債権者を選びましょう。地方銀行などできるだけ審査が通りやすい金融機関を選びましょう。
自己破産で免責された金融機関からの新たな借入は住宅ローンに限らずほぼ不可能です。信用情報機関から事故情報が抹消された後も社内ブラックの状態にある可能性が高く、審査に通ることはまずないでしょう。
家族にローンを組んでもらう
家族の名義あれば、ブラックリストの登録期間内でもローンが組める可能性があります。
家族のローン申込時、自己破産した人の個人信用情報が確認されることはありません。ただし、以下の理由で家族の協力が得られにくい場合があります。
- 自己破産後5~10年は連帯保証人になれない
- 返済が滞ると住宅ローンの名義人に請求される
家族の名義で住宅ローンを組む場合は、返済が滞らないよう十分注意しましょう。
良い信用情報を作る
信用情報機関の事故情報が抹消された後、その人の信用情報は真っ白な状態です。個人信用情報は、自己破産などの事故情報だけでなく、確実な返済ができていることも利用情報として残されます。
このため、事故情報の抹消後は次のように少しずつ良い信用情報(クレジットヒストリー)を残すことも重要です。
- スマートフォン等の機種代金を分割返済する
- 割賦払いでパソコンを購入する
- 公共料金をクレジットカード払いにする
この場合、当然に収入に見合った利用に抑え、支払期日を厳守することが前提です。
まとめ
自己破産をすると、住宅ローンが残っている・残っていないに関わらず自宅を手放さなければならない可能性が高くなります。新たに自宅を購入する場合も、自己破産後5年~10年は信用情報に事故情報が登録されているため、住宅ローンは組めません。
自己破産しなくても、借金の返済が滞っている場合は信用情報機関に遅延情報が登録されます。借金の返済に困ったら、なるべく早く弁護士に相談することをおすすめします。
どうしても自宅を残したい方は、他の債務整理の検討も含め弁護士のサポートを受けましょう。