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弁護士法人ネクスパート法律事務所

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英文契約コラム4:英文契約の基本構造

英文契約書は、日本の契約と異なる概念が出てくるため、初めて英文契約を取り扱う際には抵抗感を感じることも珍しくありません。しかし、英文契約には共通の基本構造が存在しており、その基本構造を理解してしまえばその内容を理解するのはそこまで難しくありません。

大まかな英文契約の基本構造は以下のとおり4つに分けることができます。

  1. 契約の導入
  2. 契約の前文
  3. 契約の本文
  4. 契約の結文

本コラムでは、以上のうち「契約の導入」「契約の全文」「契約の結文」について解説します。

佐藤弁護士
佐藤弁護士
契約の本文部分については、次回以降のコラムで解説します。


https://nexpert-law.com/business/columns/1682/

目次

契約の導入部分

契約の導入部分としては、例えば以下のような文例が使われます。

This Manufacturing and Supply Agreement (this “Agreement”) is made and entered on  15 May, 2021 (the “Effective Date”) by and between [Purchaser] and [Manufacturer]:

導入部分では、契約の当事者(「[Purchaser] and [Manufacturer]」が該当)が明記され、また、契約書作成の日付(「15 May, 2021 (the “Effective Date”) 」が該当)について規定されることが多いです。

契約の導入部分に問題が内在するケースは稀ですが、3点チェックする必要があります。

契約当事者に漏れがないか

まず1点目が、契約当事者についてです。契約書は、契約書の当事者として署名したものについてのみ法的拘束力が及びます。例えば、相手方の親会社に遵守させるべき条項が入っていた場合、その親会社が契約書に署名しなければ、いかに契約書でその親会社に重い義務を課したとしても何ら法的拘束力が及ばないことになりかねません。そのため、契約の当事者として漏れがないかという点について確認する必要があります。

相手方が個人事業主である場合

また、2点として、相手方が個人事業主の可能性がないか、個人事業主の場合、誰を署名者とすべきか、という点も国際取引では重要なチェックポイントになります。国際取引では、しばしば対面したことのない相手方と契約を締結するという場合もあります。このとき、相手方か法人としてしっかりと存在しているのであれば良いのですが、問題は相手方が法人ではなく個人事業主(Sole Proprietor )に該当する場合です。契約相手が個人事業主である場合、当該個人事業主を署名者にしなければなりませんが、しばしばその従業員が契約署名者とされているようなケースが散見されます。個人事業主の従業員が署名者となる場合、契約の法的拘束力が個人事業主に及ばないとされる可能性も否定できませんので、相手方が個人事業主であるケースでは当該個人事業主が署名者となっているかという点についてよく確認する必要があります。

契約の日付

3点目は契約の日付です。契約の日付については、バックデートとすることが問題ないかという形で質問を受けることが多いですが、おおよそどの国でも、契約当事者が同意するのであれば契約当事者間ではバックデートされた契約締結日から契約の法的効力が発生するものとして取り扱うことについて許容されています。そのため、多くのケースでは契約日付をバックデートすることに問題はありません。ただし、あくまで契約当事者間でのみ認められるため、税務当局などの第三者との関係ではバックデートを主張できない点については留意する必要があります。

契約の前文部分

契約の前文部分としては、例えば以下のような文例が使われます。

WHEREAS, Purchaser desires Manufacturer to manufacture certain products which Purchaser will purchase and thereafter market, sell and distribute under its own tradename and trademarks; WHEREAS, Manufacturer has represented to Purchaser that it has sufficient and requisite expertise to manufacture such products; WHEREAS, Purchaser and Manufacturer desire to enter into an agreement to record the detailed terms and conditions for the manufacture and supply of products;
NOW THEREFORE, in consideration of the mutual premises and covenants herein, the mutual benefits to be delivered therefrom and other good and valuable consideration, the receipt and sufficiency of which are hereby acknowledged, the Parties hereby agree as follows:

前文部分は、(1)WHEREASという文言に続く部分(WHEREAS条項)と(2)NOW THEREFOREという文言に続く約因に関する部分に分けることができます。

WHEREASという単語は契約英語以外ではあまり目にすることがない古めかしい言い回しになりますが、「という事実からして」といった意味を持つ英単語になり、当事者の事実関係を記載する習わしになっています。

WHEREAS条項

WHEREAS条項には法的拘束力がありませんので、WHEREAS条項において相手方の義務を記載しても意味をなさない可能性がある点について留意が必要です。

約因部分

また、約因部分は、その契約に約因(Consideration)があることを示すことを意図しております。

約因は、英米法上の概念であり、あまり日本では馴染みのない考え方なのですが、簡単に説明すれば、契約に何らかの対価(約因)があることを契約の成立条件とする原理となります。

契約の前文においてその契約に約因があることを確認することで、契約の有効性を担保することをその趣旨としているわけですが、判例上、前文において約因に関する記載があるからといって約因が認められるわけではないと判示されるケースがあるなど形骸化しているのが実情であり、重要性としてはあまり高くないパートとなります。

WHEREAS条項も約因に関する部分も法的拘束力がありませんので、他の部分と比較するとリスクは高くなく、最近では契約の前文が記載されていない契約書も珍しくありません。WHEREAS条項において大きな事実齟齬があれば修正する必要がありますが、それでレビューとしては十分なケースが多いと言えます。

契約の結文部分

契約の結文としては、例えば以下のような文例が使われます。

IN WITNESS WHEREOF, the Parties by their authorized representatives have signed their names and affixed the seals of the Parties to execute this Agreement on the date first above written.

Purchaser

             
Name:
Title:

Seller
            
Name:
Title:

 

 

契約の結文は、契約書の署名欄に相当する部分となります。このうち、IN WITNESS WHEREOFという文言で始まる部分は、「以上の合意を証するため、冒頭記載の日付において契約当事者代表者は本契約を署名押印した。」といった意味になりますが、一種の定形文言であり実務上あまりこの点が交渉対象となることはありません。

契約結文の文言において問題が発生することは通常ありませんが、以下の2点については確認すべき場合があります。

契約書名者の署名権限の有無

金額が大きい契約については契約署名者の署名権限の有無の確認が必要となります。

日本の会社法では、代表権を有する取締役は、会社法や定款で除かれる一部の取引を除き、原則として契約の署名権限を有することとされております。しかし、世界的に見るとむしろ稀な法制度となっており、日常的取引に属さない契約についてはその都度取締役会決議を実施し署名権限を署名者に付与するという取り扱いの方が一般的です。

本来必要な取締役会決議を欠く場合、契約の有効性に影響が及ぶリスクも否定できないため、規模の大きい取引については取締役会決議の実施も含め、署名者の署名権限についてしっかり確認する必要があります。

証人による署名を求められる場合

英文契約では契約署名者のみならずWITNESS(証人)による署名が求められる場合があります。

WITNESSの署名を求める趣旨は、万が一にも署名者が事後的に自分で署名したという事実を否定することを防止する点にあり、特に東南アジアでは重要性の高い契約についてはWITNESSの署名を求められることが珍しくありません。

国によっては不動産譲渡契約など一部の契約についてWITNESSの署名を取得することが法律上の要件とされる場合もありますが、慣習上の求められるにすぎないケースが大半です。

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