中小企業の事業承継問題4つと解決策を解説

中小企業の多くは、事業承継についての問題をかかえています。

 

問題を放置しておくと、後継者不在のまま社長が倒れたり、後継者が思わぬ税負担に苦しんだりと、予想外のトラブルに巻き込まれることもあります。

 

今から適切な対策をしておけば、予防できるトラブルも少なくありません。

 

ここでは、中小企業の経営者が抱える事業承継の問題点を整理した上で、その解決策について、解説していきます。

 

事業承継の主な問題4つ

事業承継の主な問題は以下4点です。それぞれ詳しく見ていきましょう。

  1. 後継者がいない
  2. 相談者がいない
  3. 負債や借入れが後継者にのしかかる
  4. 税負担が重くなりやすい

 

後継者がいない

2021年2月5日付、帝国データバンクの全国社長年齢分布によれば、2020年の社長の平均年齢は60.1歳で、1990年の調査開始以来、初めて60歳を超えました。

これまで、中小企業は家族経営で承継されてきたものが多く、少子化を原因として、後継者がいないという問題があります。

 

また、子供や親族内で後継者となってくれる人がいたとしても、事業への将来の不安や、経営者としての資質の不安、承継までの時間が十分ではなく、知識やスキルの育成ができないといった問題もあります。

 

後継者が見つからず、長らく社長を続けていると、強いリーダーシップがあるがために、意見を言える社員も少なくなる可能性があります。このような状況で、社長が倒れてしまった場合などは、中心となる社員がいないために、会社の意思決定が遅れてしまい、事業が立ちいかなくなり、廃業の危機となることもあります。

 

相談者がいない

事業承継には、後継者の育成など、するべきことが多く、時間もかかります。

よりスムーズに事業承継を行うために、事業承継計画を立てたいと思ったとき、近くに適した相談者がいるとは限りません。また、どのような相談先があるのかも知らないという問題があります。

 

負債や借入れが後継者にのしかかる

事業承継で後継者が引き継ぐものの中には、設備投資などによる負債もあります。金融機関からの借入の場合は、経営者が個人保証しているものもあるため、この個人保証も引き継がれることになります。負債が大きい場合には、後継者が返済に追われてしまうことがないよう、負担を少しでも減らす工夫が必要です。

 

事業承継で経営者の子供が後継者になるなど、経営者の年齢が若返ることになった場合、前経営者と一緒に経営を支えてきた従業員との世代間のずれがおきることがあります。

経営者が代わることで、事業の方針変更を進めようとした場合、それが間違っていることではなかったとしても、これまでの方針を大切にしたいという従業員との間で対立がおきるリスクがあります。従業員とのトラブルを防ぐために、第三者の意見を取り入れるなど、客観的に判断することが大切です。

 

相続における事業承継の場合、遺言などで特定の人物に後継者として相続させることができますが、複数人の相続人がいるとき、後継者以外の相続人から「遺留分」を求められることがあります。後継者以外の相続人から遺留分を請求された場合、事業の資産が不足し、事業継続が難しくなるリスクがあるため、事前に、各相続人に納得してもらえるよう、しっかりと計画を立て、話し合う必要があります。

 

税負担が重くなりやすい

事業承継は、後継者の問題だけではなく、株式会社の場合は株式も後継者に承継することになります。この問題についてもきちんと対応しないと、のちに、税負担が重くなり、経営の安定が失われることにもなりかねません。

 

株式を渡すには、相続・贈与・譲渡という3つの方法があり、いずれも税金が発生します。例えば、相続による承継の場合は、相続税が発生します。また、株主が疎遠の親族の場合や、病気などで、株主である当事者と直接話ができない事もあります。そうなると、株式の相続がスムーズに進まないこともあるので、株主も確認し、できるだけ早い段階で相続に備えることが大切です。

 

相続・贈与・譲渡、いずれにしても、後継者にこれといった資産がない場合、納税資金が不足し、株式を他人に売却しなければならなくなることがあります。他人に売却するということは、株式の財産権だけでなく、経営権まで失うことになるのです。

 

これらの対策として、株式を自社で買い取るという方法もありますが、それでは、会社の体力を奪ってしまいます。会社の経営状態に合わせて、株価が下がるタイミングで、承継者に渡すことも検討する必要があります。

 

贈与税や相続税の納税を猶予してくれる、事業承継税制という制度があります。詳細は、国税局のホームページに記載がありますので、内容や条件などを確認し、税負担が軽くなる場合もありますので、ぜひ、検討してみましょう。

 

事業承継の問題点への解決策

事業承継問題を解決するために着手したいポイントは以下2つです。

 

  1. 親族・従業員・外部に後継者候補を探す
  2. 事業承継のマイナス部分を洗い出し、具体策を講じる

 

親族・従業員・外部に後継者候補を探す

親族に承継する場合の注意点と対策

後継者が、相続人のうちの1人であった場合、会社としては、できるだけ、後継者へ事業資産などを集中させておきたいところです。ですが、相続には遺留分というデリケートな問題も発生しますので、後継者以外の相続人への配慮が必要です。

 

また、後継者へ集中できたとしても、相続税・贈与税などの税負担の問題もあります。

後継者が引き継ぐ負債をなるべく軽減できるように、承継の前に、できるだけ負債を軽くしておく、相続人全員と会社の経営状況などを話し合っておくなどの検討が必要です。

 

後継者などに株式等を集中させる方法として、「会社法」の各種制度を活用することが可能ですので、こちらについても、検討してみても良いでしょう。

 

従業員に承継する場合の注意点と対策

従業員への事業承継の場合、役員など社内の人物への承継と、取引先や金融機関など、外部から後継者を招く場合があります。

 

社内の人物が後継者となる場合は、共同創業者・役員・優秀な社員などが考えられます。自社の役員などが後継者になれば、これまでの事業についても把握しているので、比較的スムーズに承継を進めることができますが、前経営者やその親族が保有している株式を買い取るための資力がないというリスクもあるので、注意が必要です。

 

外部から後継者を招いた場合は、より優秀な後継者に引き継げるというメリットもありますが、社内のことを把握していないことが多いので、従業員などから反発があるリスクや、個人保証の引継ぎが難しいというリスクもあります。

 

外部に事業承継する場合の注意点と対策

M&Aによって外部に事業承継する場合、事業承継が完了するまでに時間が比較的短く済むというメリットがあります。また、資金力が大きく、ノウハウを多く持っている会社に買収されれば、事業そのものが成長できる可能性があります。そして、現在働いている従業員も安心して働けるということが、従業員達の安心にもつながります。ただし、譲渡先を慎重に選ぶ必要があります。

 

事業承継のマイナス部分を洗い出し、対策を講じる

後継者が見つかった場合、承継をスムーズに行うために、まずは、何か問題を抱えていないか、マイナスの事業資産はないかなど、引継ぎにあたっては、マイナスの部分も含めて把握しておくことが大切です。また、取引先や金融機関などへ事業承継計画を公表し、関係者への理解を得ることが必要です。

 

特に相続における事業継承の場合、株式や財産については、後継者へ事業用資産が集中していないか、などについても検討が必要です。後継者がこれまでに会社へ貢献していたのであれば、その人事的配慮は、個人間の贈与ではなく、他の相続人の遺留分の問題が起きないよう、会社から報酬を与えるようすることが望ましいといえます。

 

事業承継相談先5つ

事業承継の主な相談先は以下の通りです。

  1. 弁護士などの士業
  2. 中小企業庁が設置した公的窓口
  3. 商工会議所
  4. 金融機関
  5. M&A仲介会社

 

弁護士などの士業

弁護士は、法律や契約の専門家です。弁護士であれば、相続や遺言証書などの、解決しておくべき法的課題についても相談可能です。

その他にも、専門的な書類や契約書の作成のサポートであれば司法書士や行政書士へ、事業承継により発生する税務については公認会計士や税理士へ、経営に関するコンサルティングは中小企業診断士などへ相談するのも良いでしょう。

ただし、M&Aなどに関しては、その他の専門家への相談が必要になる場合もあります。

 

中小企業庁が設置した公的窓口

中小企業庁では、相談や情報提供の窓口として、中小企業支援センターが各地に設けられています。公的機関であるため、公平なアドバイスを受けることができ、余計な営業がない点がメリットですが、その他の専門家の支援を受ける場合は、その報酬がかかることがあります。

 

商工会議所

商工会議所は、中小事業者に向けてさまざまなサポートを提供しています。例えば、東京商工会議所では、23区内の小規模事業者に対して、相談拠点を設けています。ただし、登録には入会金が必要なところもあるので、確認が必要です。

 

金融機関

取引先の金融機関に、事業承継についての相談窓口があれば、まずは、そこに相談するのが良いでしょう。取引先であれば決算内容などを把握してくれているので、融資を絡めた相談ができます。ただし、その他の専門家については別に依頼をする必要があります。

 

M&A仲介会社

買い手と売り手との間を仲介し、両者のサポートを専門とする業者です。業者にはいくつかの種類があり、アドバイスに加えてコンサルティングも行う事業コンサルティング系、銀行や証券会社系列の金融系M&A専門会社、中小企業をメインとした仲介系M&A専門会社という3つのタイプがあります。

 

M&Aをすると決めているのであれば、経験が豊富であり、弁護士などの他の専門家とも連携している業者も多いのがメリットです。ただし、料金体系が業者ごとに異なり、高額になることがあります。

 

まとめ

中小企業の事業承継問題は、多くの問題を抱えており、その問題を解決していくには、かなりの時間がかかります。問題をそのままにしておくと、対応が遅れ、廃業に追い込まれるという事態にもなりかねません。現時点で抱えている問題を把握し、適切に対応していくために、早めに弁護士などへの相談をすることをお勧めいたします。

 

この記事を書いた人

ネクスパート法律事務所