契約書締結までの流れと確認事項を解説

企業間でのビジネスや個人間での取引において、日常的に契約書を目にすることがあると思いますが、どのような流れを経て契約書を締結しているのでしょうか?
ここでは契約書締結までの流れと、契約書締結までに確認すべき事項を解説します。
契約書締結までの流れ
契約書締結までの流れは以下の通りです。
1.契約内容の確認
2.契約書(案)の作成
3.契約書(案)の修正
4.契約書の作成・取り交わし
契約内容の確認
契約書を作成する前に、契約書に記載する項目・合意事項(具体的な契約内容・金額・条件など)を当事者間で入念に確認します。
契約書(案)の作成
契約内容の確認後、当事者のどちらかが契約書(案)を作成します。当事者が保有している契約書のひな形などをベースとして、契約内容に沿ったものに変更しても良いでしょう。
契約書(案)の修正
作成した契約書(案)を当事者間で確認し、必要に応じて加筆・修正します。契約締結後に契約書の修正がある場合、当事者間の合意により契約書を直接修正、場合によっては変更契約書の取り交わしも必要となるため、記載事項に誤りが無いかを入念に確認します。
万が一、合意内容と異なる記載や記載漏れがあると、後のトラブルに繋がります。
契約書の作成・取り交わし
契約書(案)の内容に当事者が合意したら、いよいよ契約書の作成・取り交わしになります。
- 契約書(案)を作成した側が契約書を2部印刷し、内容に誤りがないか最終的な確認をします。
- 契約年月日をいつにするのか、当事者間で確認をします。
- 複数ページにわたる契約書の場合、左端2カ所をホチキスで留めるかテープ等で製本し、契印を押印します。
- 契約書が1枚の場合、2部にまたいで割印を押印します。当事者が3者以上の場合、全ての契約書にまたいで割印を押印します。
- 契約書2部ともに日付の記入・署名・押印をします。
- 押印等が完了した契約書2部をもう一方の当事者に郵送します。返信用封筒を同封すると親切です。
- 契約書2部を受け取った側は、同様に契印・割印・日付の記入・署名・押印をします。
- 契約書1部を郵送で返送し、当事者がそれぞれ1部を保管します。これで契約書の取り交わしが完了です。
なお、契約書の種類によっては収入印紙の貼付及び消印が必要です。収入印紙については下記の「契約書締結までに確認すべきこと」で解説しています。
契約書締結までに確認すべきこと
契約書の作成から締結までに一般的に確認すべき事項は以下の5点です。
1.契印・割印
2.印紙
3.契約の当事者
4.内容に見落としが無いか
5.双方の権利と義務の内容
契印・割印
複数ページにわたる契約書の場合は「契印」、1枚の契約書の場合は当事者分の契約書全てにまたがる「割印」が必要です。
「契印」は契約書のページが連続していることを証明するもので、契約書の抜き取りや差し替え・改ざんを防ぎます。
「割印」は押された契約書の関連性・同一性を示すためのもので、こちらも契約書の改ざんを防ぐ効果があります。
どちらも押印が無い場合、当事者の片方により勝手に契約書を改ざんされる可能性があり、大きな損害を被るリスクがあります。
なお、「割印」は署名・押印に使用した印鑑を使う必要はありませんが、「契印」は同じ印鑑を使用しなければなりません。ただし、一般的には「割印」についても署名・押印に使用した印鑑を使います。
印紙
収入印紙貼付の対象となる契約書の種類と必要な収入印紙については、国税庁のHP(印紙税額の一覧表(その1)、印紙税額の一覧表(その2))に記載されています。
収入印紙を貼付する場合、収入印紙代は原則契約書を作成した側が負担しますが、当事者間がそれぞれ負担する場合も多く、負担方法については事前に当事者間で打ち合わせしておくべきでしょう。
収入印紙は課税文書に対して貼付するもので、もし収入印紙を貼付していないことが発覚すると、脱税とみなされ本来納付すべき収入印紙代の3倍の過怠税を支払うことになるので注意が必要です。
契約の当事者
契約を締結する際に、誰が当事者なのか・契約を締結できる権限を本当に有しているのかどうかを確認する必要があります。
会社間での契約であれば、相手が会社の代表取締役や支配人、委任を受けた取締役等は契約を締結できますが、委任を受けていない社員は権限が無いため契約締結ができません。
代表取締役や支配人は商業登記簿謄本で確認ができますが、それら以外の場合は権限を有しているどうかを外部から確認するのは難しいため、会社に対し委任状などの権限を有していることが分かる資料の提出を求めるとよいでしょう。
個人の場合でも、未成年や成年被後見人などと直接契約する場合、契約が取り消される可能性があるので注意が必要です。
内容に見落としが無いか
当事者間で合意した内容が、契約書の中に漏れなく記載されているかの確認は非常に重要です。記載しなければならない項目が抜けていたことで、後のトラブルに発展する可能性もあります。
当事者が契約書のひな形を持っていない場合、インターネットなどで入手できるひな形を利用するのも良いですが、必ずしも契約内容に合致した内容になっていることはないため、契約内容に沿って修正する必要があります。
作成した契約書は、弁護士などの専門家による確認を受けたほうが良いでしょう。
当事者の権利と義務の内容
当事者の権利義務について曖昧な文言で契約書に記載してしまうと、交渉段階で契約書の内容について合意したとしても、正確に契約書に記載されていなければ、「言った言わない」の紛争につながりかねません。
例えば、「AがBに対し、Cというものを●円で売却する。Cが契約の内容に適合しないものであった場合の賠償はAが行う。」という契約を取り交わす際に、口頭では約束していたものの契約書には「AがBに対し、Cというものを●円で売却する。」としか記載しなかったとします。
実際にCが契約の内容に適合しないものであり、BがAに対し対応を求めたところ、Aから「そのような対応をする契約にはなっていないのでBで対応してください。」と反論されかねません。
このようなトラブルを避けるため、当事者の権利と義務の内容については、正確に契約書に記載する必要があります。
まとめ
契約書締結の流れと、契約書締結までに確認すべき事項を解説しました。契約というのは口頭でも成立する契約が多いですが、それでは「言った言わない」のトラブルに発展しかねません。契約書を取り交わすことでそういったトラブルを回避できますし、いつでも契約内容の確認ができます。
また、一度契約書を取り交わすと、後で契約内容を変更するのが難しくなる場合もあるため、契約書に記載する内容は慎重に検討しましょう。