【弁護士解説】取締役の辞任や解任に必要な手続きと注意点

取締役はいつでも辞任可能だが書面に残すことが重要
取締役は、会社から会社の経営について委任された立場にあり、取締役と会社の間は委任契約だとされています。委任について民法に規定があり、いつでも契約の解除をすることができるとされています。
そのため、取締役はいつでも辞任することができます。辞任するための方法は何ら制限はありません。しかし口頭だと後で言った言わないの争いになるおそれがあるため、できるだけ書面で辞任する意思を伝えるべきでしょう。
取締役はいつでも辞任できるが、損害賠償責任に注意
取締役はいつでも自由に辞任はできます。そうはいっても突然やめるといって会社の経営に支障が出るような場合には損害賠償責任を負う可能性があるので注意が必要です。
法律では、会社に「不利な時期に」委任の解除をしたときは損害賠償責任を負うとされています(民法651条2項本文)。仮に会社に不利な時期だったとしても、「やむを得ない事由」があったときは損害賠償責任を負わないとも規定されています(同項但書)。
例えば、取締役が重篤な病気にかかって職務を続けることが難しいといった場合には「やむを得ない」とされることが考えられます。
「不利な時期」や「やむを得ない事由」というのは漠然としたもので、裁判例や実務などを見て判断する必要があるので、お困りの際は弁護士に相談されることをおすすめします。
取締役を辞任しても職務を続けなければいけないことも
取締役が辞任することで法律や定款で定められている取締役の人数を下回ってしまう場合には注意が必要です。具体的には取締役会設置会社で取締役が3人しかいない場合に辞任する場合などです。
このときは次の取締役が選任されるまで取締役としての権利義務を引き続き有し続けます。義務も負うので取締役としての任務を怠った場合には損害賠償責任を負うこともあるので注意しましょう。
損害賠償責任を負うのを避けるためには裁判所に対して仮取締役の選任を申し立てるという方法がありますが、面倒なので会社に対して早く取締役を選任するよう求めるのが簡単です。
取締役の解任は株主総会でする
取締役の解任、すなわち強制的に取締役を辞めさせるためには株主総会を開いて決議する必要があります。定款で特別に定めていない限り、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席株主の議決権の過半数の賛成があれば解任することができます。
取締役が不正行為や法令、定款に反する重大なことをしたにもかかわらず、株主構成の関係で株主総会で解任案が否決された場合には、株主は裁判所に対して解任の訴えを提起することができます。
この訴えは株主総会から30日以内にしなければならないなど、多くの制限があるのでよく確認する必要があります(会社法854条)。
解任しても取締役報酬分を支払わなければならないことも
取締役が横領などをした場合であれば問題ないことが多いですが、解任にあたらないような理由で取締役を解任した場合、会社は取締役に損害を賠償しなければなりません。
法律上は「正当な理由」なく解任した場合に損害賠償が必要としており、「正当な理由」があるかどうかは慎重な判断が要求されます。
仮に正当な理由がなかった場合、任期満了までの取締役報酬分が損害にあたると考えられます。
損を被らないためにも早めのご相談を
取締役を辞任したと思ってても損害賠償責任を負うことになることがあります。また、取締役を解任する場合には会社内部の経営権争いなどが発生する場合があります。
手続を間違えるともう1回株主総会を開かなければいけなくなったりと面倒なことになります。
取締役自身を守るため、会社のスムーズな経営のためにも早い段階で弁護士に相談されることをおすすめします。