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【弁護士解説】NFTアートの法的権利関係とは?

近年、デジタルアートやゲームアイテムなどの分野でNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)の活用が急速に進んでいます。しかし、その新しさゆえに、NFTや関連するコンテンツの権利関係については、まだ法的に不明確な点が多く存在します。

このような状況を受け、経済産業省が改訂した「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」(令和7年2月版)では、NFTをめぐる法律関係について新たな解説が加えられました(Ⅲ-14-2)。

本記事では、弁護士の視点から、この準則の解説に基づき、特にアート作品に関するNFT(アートNFT)を取得した場合の権利関係について、分かりやすく解説します。

出典:「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」(令和7年2月版)
   電子商取引及び情報財取引等に関する準則について
   「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」を改訂しました|経済産業省

目次

NFTとは?基本的な特徴

ここでは、NFTの基本的な性質について説明します。
参考:NFTとは|NFTの法的性質や法規制・ビジネスの法務対応を徹底解説

NFTは、ブロックチェーン技術を用いて発行される、固有の識別情報を持ったデジタルデータです。主な特徴として以下の点が挙げられます。

非代替性(固有性)

一つ一つが固有のIDを持ち、同じものは存在しません。

取引可能性

ブロックチェーン上で所有者や取引履歴が記録され、第三者への移転が可能です。

相互運用性

共通規格に基づいているため、異なるサービス間での利用が可能です。

プログラマビリティ

スマートコントラクトを利用して、取引条件などをプログラムできます。

アートNFTの場合、一般的には、デジタルアート作品自体はブロックチェーン外のサーバー等に保存され、その保存場所へのリンク情報などがNFTに記録されます。

アートNFTの取引と契約関係

ここでは、アートNFTが発行され、利用者の手に渡るまでの流れと契約関係について説明します。

アートNFTの取引は、一般的に以下のような流れで行われます。

STEP
発行

アート作品の創作者またはライセンスを受けた者(NFT発行者)が、NFTプラットフォームなどを通じてアートNFTを発行します。

STEP
販売

NFT発行者が購入希望者を募集し、購入希望者の申込みと発行者の承諾により販売契約が成立します。

STEP
対価支払

購入者は暗号資産などで対価を支払います。

STEP
記録

購入者のウォレットにアートNFTの情報が記録されます。

この過程で重要になるのが、NFT発行者とNFT保有者(購入者)との間の契約です。多くの場合、NFT発行者は利用規約等でアート作品の利用条件などを定めています。NFT保有者がアートNFTを取得する際に、この利用規約等に同意していれば、その内容が両者間の契約となります。

また、明確な同意がなくとも、NFT発行者が利用規約等を契約内容とする旨をあらかじめNFT保有者に表示しており、民法の定型約款のルール(民法第548条の2)を満たす場合には、原則としてその利用規約等が契約内容となります。

NFT保有者の権利 – 所有権と著作権

ここでは、アートNFTを取得した保有者が、NFT自体や元のアート作品に対してどのような権利を持つのかを解説します。

アートNFT自体に対する所有権

まず、アートNFT自体は、法的な「物」ではないため、民法上の所有権の対象とはなりません。NFTはあくまでデジタルデータであり、ブロックチェーン上の記録にすぎません。

したがって、NFT保有者がアートNFTを取得しても、それはNFT発行者との契約に基づいてNFTを利用する権利を得たにすぎず、NFT自体を「所有」しているわけではありません。

アート作品に対する著作権

次に、アートNFTを取得したからといって、元のアート作品の著作権まで自動的に取得するわけではありません

著作権が譲渡されるかどうかは、NFT発行者とNFT保有者との間の契約(合意)次第です。契約で著作権譲渡が明確に合意されていなければ、NFT保有者は著作権者にはなりません。

アート作品の利用権

NFT保有者がアート作品をどのように利用できるかも、NFT発行者との契約(利用許諾契約)によって決まります

契約で許諾された範囲(例えば、個人的な鑑賞のみ、SNSでのアイコン利用可など)を超えてアート作品を利用(複製、インターネットでの公開など)することは、著作権侵害となる可能性があります。

また、そもそも著作権者から許諾を得ていない者が発行したNFTは、違法なものである可能性が高い点にも注意が必要です。

アート作品へのアクセス問題と発行者の責任

ここでは、NFT保有者がリンク先の元のアート作品を見られなくなった場合に、発行者に責任を問えるかについて解説します。

アートNFTは、多くの場合、ブロックチェーン外に保存されたアート作品へのリンク情報を含んでいます。そのため、NFT発行者の事業終了や、作品が保存されているサーバーの問題などで、アート作品にアクセスできなくなるリスクがあります。

このような場合に、NFT保有者が発行者に対して損害賠償などを請求できるかは、以下の点を考慮して判断されます。

契約内容

利用規約等で、アクセス保証の有無や、アクセスできなくなった場合の免責についてどのように定められているか。

有償性

NFTを有償で取得した場合、保有者はアート作品の継続的な利用を期待していることが多く、その期待は法的に保護される可能性があります。

アクセスできなくなった原因

  • 発行者の都合(事業終了など)
    特に有償でNFTを取得した直後に、事前の告知なくアクセスを終了させた場合などは、発行者の債務不履行として損害賠償責任を負う可能性があります。
  • システム障害など
    発行者にとって予見・回避が不可能なシステム障害などが原因であれば、発行者の責任は問われない可能性があります。

免責条項の有効性

利用規約に免責条項があっても、消費者契約法や民法の定型約款ルールにより、無効とされる場合があります(特に、発行者に故意・重過失がある場合や、消費者の権利を一方的に害する場合など)。

NFTの転々流通と利用権

ここでは、NFTが最初の保有者から別のユーザーに譲渡(転売)された場合の権利関係について解説します。

NFTは、NFTマーケットプレイスなどを通じて、保有者間で譲渡(転売)できます。この場合、アートNFTを新たに取得した譲受人ユーザーが、元のアート作品を利用できるかは、最初のNFT発行者が利用権の転々流通を認めているかによります。

転々流通を認めていない場合

最初の保有者(第一次取得者)にしか利用が許諾されていない場合、譲受人ユーザーはアート作品を利用できません(著作権法第63条第3項)。

転々流通を認めている場合

譲受人ユーザーもアート作品を利用できます。

譲受人ユーザーに対する利用条件の適用

転々流通が認められる場合でも、NFT発行者が定めた利用規約等の利用条件が、譲受人ユーザーに適用されるかは注意が必要です。

譲受人ユーザーに利用条件が適用される場合

譲受人ユーザーがNFTを取得する際に、発行者の利用規約等に同意した場合、または、発行者があらかじめ譲受人ユーザーに対して利用規約等を契約内容とする旨を表示していた場合(民法の定型約款ルールを満たす場合)は、利用条件が適用されます。

利用条件が適用されない場合とその例外

上記のような合意や表示がない場合は、原則として発行者の利用規約等は譲受人ユーザーを拘束しません。発行者は、利用規約等を根拠に利用制限や契約解除などを主張することは難しくなります。

ただし、この場合でも、譲受人ユーザーのアート作品の利用が、法律違反や発行者の権利侵害(商標権侵害など)にあたる場合は、別途、発行者から損害賠償請求等を受ける可能性があります。

まとめ

NFT、特にアートNFTをめぐる法律関係は、まだ新しい分野であり、複雑な側面があります。重要な点は以下のとおりです。

  • NFT自体に所有権はない
    NFT保有者の権利は、基本的に発行者との契約に基づきます。
  • 著作権は別問題
    NFTの取得が、元のアート作品の著作権取得を意味するとは限りません。利用許諾の範囲も契約によります。
  • アクセスリスク
    アート作品へのアクセスが将来にわたって保証されるとは限りません。
  • 転々流通
    NFTが転売された場合、新たな保有者の権利関係は、発行者の許諾や契約条件の適用関係によって変わります。

NFTの取引に関わる際は、利用規約等の契約内容を十分に確認することが不可欠です。不明な点やトラブルが生じた場合は、専門家である弁護士にご相談ください。

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