英文契約コラム1:英文契約書作成の重要性

本連載では、国際取引における英文契約について解説します。第一稿である本稿では、まずなぜ国際取引においてなぜ契約書が重要であると言われるのか解説します。国際取引においては、国内取引と比較して契約書作成の重要性が強調されることがありますが、その理由として以下の5点を指摘することができます。
信頼関係の欠如/構築の難しさ
国際取引では別々の国に当事者が所在します。以下のような理由から、国際取引で信頼関係を築くことは日本国内取引と比較して難しくなります。
- 国が違えば文化も異なる
- 物理的に距離あるため直接会うことは容易ではない。
- コミュニケーション手段の比重も電話やメールが大きくなる。
その結果、契約に書いていない事項を信頼関係に基づいて相手に求めることが難しくなるため、契約書において必要な事項を記載することの重要性が高まります。
物事に対する期待値のギャップ
一般論として、日本の契約書は英文契約書と比較すると短いといえます。
その理由は、国内取引においては、物事に対し「これくらいはやってくれるだろう」という共通の期待値が存在するため、国内取引では、多くを契約書に規定しなくても大きな支障は発生しないことにあります。
しかし、物事に対する期待値は国毎に異なり、国際取引ではその期待値のギャップからトラブルに発展することがしばしばあります。
このようなトラブルを防止するためにも、取引相手に望むことを網羅する形で英文契約を作成することが重要となります。
事実上/法的責任追求の困難
国際取引において契約書を作成していないと、ただでさえ高い取引相手への責任追求のハードルが格段に高くなります。また、取引相手から”いざ何かあっても責任追求される可能性は低い”と考えられ、対応優先度が下げられるおそれがあります。
契約に対する文化の違い
国際取引では、契約書に当事者の取り決めを「全て」記載することが前提とされています。
その現れとして、英文契約では「Entire Agreement 」(完全条項)という契約条項を規定することが一般的です。本条項を規定すると、例え事前にメールなどで合意していたとしても、契約書に記載されていない事項は排除されると相手方に主張されるおそれが発生します。
契約書の規定内容次第では、当然合意していたと考えていた事項が守られないリスクが発生するため、取り決め内容を網羅的に反映させる形で契約書を作成することが重要となります。
5. 海外の裁判所の契約書に対する姿勢
日本の裁判所は、契約書に記載されていない事項も積極的に斟酌します。
これに対し、(国にもよりますが)海外では契約書に書いてあることが全てであり、書いていないことはないものとして取り扱われるケースがあります。特に英米法圏でその特徴は顕著となります。
まとめ
以上のような
- 信頼関係の欠如/構築の困難
- 物事に対する期待値のギャップ
- 事実上/法的責任追求の困難
- 契約に対する文化の違い
- 海外の裁判所の契約書に対する姿勢
という側面から、国際取引においては国内取引と比較して契約書の作成が重要になります。
国際取引における英文契約書の作成やドラフトについてお悩みがございましたら、お気軽にお問合せください。

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