契約解除に必要な書面とは?契約解除通知書・契約解除合意書について解説!

自分の都合で勝手に契約の解除はできません。相手方に何らの落ち度が無く、契約書にも解除に関する条項が無ければ、契約終了を待つか、相手方の合意を取り付けるしかありません。
では、相手方に契約違反があるなど、解除すべき理由がある場合にはどのように契約を解除すれば良いのでしょうか。
この記事では、契約の解除について及び解除に必要な書類について解説します。
契約の解除とは
契約の解除とは、契約の効力を消滅させることです。契約期間満了による契約の「終了」とは異なり、解除した場合はそもそも契約が無かった状態に戻ります。ここでは以下2点について解説します。
- 主な契約の解除理由
- 損害賠償について
主な契約の解除理由
主な契約の解除理由は、以下の3点に分けられます。
- 当事者間の合意に基づく解除
- 相手方の契約違反による解除
- 相手方が契約の履行不能になるか、履行拒否した場合の解除
当事者間の合意に基づく解除
当事者双方が契約の解除に合意している場合は、後述する契約解除合意書を作成して契約を解除します。お互いに、契約の解除・解除した場合の取り決めについて合意していることが前提ですが、後のトラブルを防ぐために契約解除合意書を作成します。
相手方の契約違反による解除
相手方に契約違反がある場合は、後述する契約解除通知書を作成して契約を解除できます。契約違反として主に該当するのは、債務不履行です。
債務不履行の場合は、相当の期間を定め、相手方に契約の履行を催告します。期間内に履行されない場合には、契約を解除できます。
相手方が契約の履行不能になるか、履行拒否した場合の解除
相手方の破産、手形や小切手の不渡りなど、契約の履行が明らかに不能な場合は、催告せずに直ちに契約を解除できます。
また、相手方が契約の履行を拒否する意思を示した場合にも、催告せずに直ちに契約を解除できます。
損害賠償について
請負契約や委任契約には、民法上、特別の解除権が認められています。自分の都合だけで契約を解除する場合、損害賠償を支払う可能性があります。
第六百四十一条
請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
第六百五十一条 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
2 前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
一 相手方に不利な時期に委任を解除したとき。
二 委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき。
引用元:e-Gov法令検索
契約解除通知書
ここでは、契約解除通知書について解説します。
- 契約解除通知書とは
- 契約解除通知書に記載すべき項目
契約解除通知書とは
契約解除通知書とは、契約の解除を求める際に作成する書面です。一般的には相手方の債務不履行や、契約違反があった場合に送ります。
契約解除通知書に記載すべき項目
契約解除通知書に記載すべき項目は、以下のとおりです。
- 解除する契約
- 解除の理由、解除する旨
- 解除するまでの猶予期間
解除する契約
どの契約を解除するのか、契約を特定できる内容を記載しましょう。契約の締結日・契約名などで特定することが一般的です。
解除の理由、解除する旨
解除する契約について、解除理由とともに、「契約を解除する。」という意思を明確に記載しましょう。解除理由は必ずしも記載する必要はないですが、相手方から解除の理由を聞かれる場合もあります。丁寧な対応をするのであれば、記載したほうが良いでしょう。
相手方の契約違反による解除の場合は、契約違反の内容を明確に記載しましょう。
解除するまでの猶予期間
契約解除までの猶予期間を記載しましょう。相手方の債務不履行を原因とする解除の場合、民法第541条で催告後に解除できるとの規定があります。
第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。
引用元:e-Gov法令検索
「相当の期間」は1週間前後で、任意に決定します。
ただし、相手方が債務の履行を拒否する意思を明確にしている場合や、履行できる状況に無い場合には、催告をせず解除できます。
契約解除合意書
ここでは、契約解除合意書について解説します。
- 契約解除合意書とは
- 契約解除合意書に記載すべき項目
契約解除合意書とは
契約解除合意書とは、当事者双方が契約の解除に合意している場合に、合意内容を書面化したものです。双方が納得しているため、必ずしも契約解除合意書を作成する必要はないですが、後のトラブル防止のために作成しましょう。
契約解除合意書に記載すべき項目
契約解除合意書に記載すべき項目は、以下のとおりです。
- 解除する契約
- 解除日
- 原状回復
- 清算条項
解除する契約
解除する契約を特定するため、どの契約を解除するのか明記しましょう。
解除日
いつ解除するのかを明確に記載しましょう。解除日については、具体的な日付を指定するか、合意書締結日とする方法があります。
原状回復
契約を解除すると、そもそも契約が無かった状態に戻るため、例えば契約中に相手方から受領した金銭などがあれば、返還する必要があります。これを原状回復といいます。
何を・いつ・どうやって返還するのかを記載しましょう。お互いに原状回復は不要で合意している場合は、その旨を記載しましょう。
清算条項
原状回復の完了後、それ以上の債権債務が無いということを確認するための清算条項を記載しましょう。
例:甲と乙は、本合意書に定めるもののほか、何らの債権債務のないことを相互に確認する。
まとめ
契約の解除について及び解除に必要な書類について解説しました。
無用なトラブルを避けるためにも、契約の解除はできる限り合意に基づくものが好ましいですが、相手方の契約違反など、解除せざるを得ない状況もあります。
契約解除通知書や契約解除合意書を作成する場合は、弁護士などの専門家に相談すると良いでしょう。