税金が払えないから自己破産は可能?手続き中の税金の支払いや減免について | 債務整理の相談は弁護士法人ネクスパート法律事務所

税金が払えないから自己破産は可能?手続き中の税金の支払いや減免について

自己破産をしても税金の支払いは免除されません。税金は非免責債権にあたり、自己破産で免除される債権の対象外です。税金の支払いが難しい場合は、役所や税務署に分割払いや猶予の相談をしましょう。税金の支払いと自己破産の関係や、税金が払えない場合の対処法を解説します。

「税金が払えないから自己破産」は通用する?

住民税や所得税などの税金が思ったよりも高く、「払ったら生活ができない」と感じたことがある人も多いでしょう。実際、現実的に税金が払えない場合に、自己破産は選択肢になり得るのか、説明します。

自己破産で税金の支払い義務は消えない

銀行や消費者金融などの借金で自己破産をした場合、原則として借金はゼロになるため、返済の必要はなくなります。しかし、税金に関しては、自己破産をしても支払わなくてはいけません

自己破産でも免除されない債権を非免責債権(ひめんせきさいけん)といいます。つまり、「税金が払えないから自己破産をしよう」という考えは通用しません。

近年、テレワークなどの多様な働き方をする人が増え、それに伴いフリーランスの数も増加しています。自営業の人は、税金や社会保険料を給料からの天引きではなく、自分で納付するため、負担が重く感じられることも多いはずです。中には、税金が払えない状況の人もいるでしょう。

しかし、税金が払えないという問題は、自己破産でも解決できません。一方、通常の借金が原因で生活が苦しい人は、自己破産で返済の必要がなくなり、その分を税金の支払いに充てることで、生活の再建を図れる可能性はあります。

住民税や健康保険料が減免される可能性はある

税金が払えない人は、主に自営業者が多いと考えられます。自営業の場合、収入が一定ではないため、大きく減少することもあるでしょう。そういった場合、住民税や健康保険料は減免できる可能性があります。

たとえば、横浜市で住民税の減免対象になる人は以下のとおりです。

・災害によって住宅や家財が滅失等された場合
・災害によって死亡又は生死不明となった場合
・災害によって障害者となった場合
・生活保護(※1)を受けている場合、又は生活保護に準ずる場合(※2)
・前年の所得が一定額以下で、1ヶ月以上失職等(※3)によって所得がない場合
・前年の所得が一定額以下で、失職等(※3)によって前年の所得に比べて一定の割合以上所得が減少した場合

引用元:個人市民税・県民税の減免及び森林環境税の免除について|横浜市

基本的に税金は前年度の収入をもとに計算されるため、収入がいきなり落ちてしまうと、前年度分の税負担が重くのしかかります。収入が著しく減少した、病気で働けなくなった、などの事情がある人は、役所に減免や猶予の相談をしてみましょう。

自己破産で税金以外に支払い義務が消えないもの

自己破産で支払い義務が消えない債権を非免責債権といいます。税金以外にも、以下の債権は、非免責債権にあたります。

  • 租税等の請求権
  • 悪意による不法行為に基づいた損害賠償請求権
  • 故意または重過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
  • 夫婦間の相互協力扶助義務に基づく請求権
  • 夫婦間の婚姻費用分担義務に基づく請求権
  • 親族や子どもの扶養義務および監護義務に基づく請求権
  • 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
  • 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権
  • 罰金などの請求権

【参考】非免責債権とは?破産後も返済に追われないために知るべきこととは

上記の債権は、自己破産をしても支払い義務が免除されません。一般の人に馴染みがあるものとしては、養育費や交通違反の罰金などです。これらの支払いが難しい場合には、相手との交渉(養育費であれば元配偶者)などによって、負担の軽減を図る必要があります。

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税金の支払いが免除されるケース

原則として、税金の支払いは義務であり、払わなければいけないものです。しかし、例外として、支払いが免除されるケースもあります。

時効を迎えた場合

借金には時効があり、一定期間が経過すると、援用の手続きによって返済義務はなくなります。税金も同様に、原則5年の時効が定められています国税通則法第七十条)。

しかし、時効を期待するのは現実的ではありません。税金を滞納した場合は、支払いを催促する督促状が送られ、最終的には財産を差し押さえられます。

財産の差し押さえは、納期限から1~2か月程度で行われることが一般的です。時効で税金の支払いを免れることは原則できないので、別の手段での解決を図りましょう。

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生活保護を3年受けた場合

通常、税金を滞納すると財産の差し押さえになりますが、生活保護を受給した場合、差し押さえは行われません。生活保護を受給している人の財産を差し押さえると、生活を著しく困窮させるおそれがあるためです(参考:第153条関係 滞納処分の停止の要件等|国税庁)。

また、生活保護を受け、差し押さえが停止されている状態が3年間続くと、滞納している税金の納付義務が消滅します。

納税義務の消滅
(3年間の継続)

15 滞納処分の停止をした場合において、その処分が取り消されないで3年間継続したときは、その3年の期間を経過した時に、その滞納処分の停止をした国税を納付する義務は当然に消滅する(法第153条第4項)。この場合の「3年間継続したとき」とは、滞納処分の停止をした日の翌日から起算して3年を経過した日をいう。

引用元:第153条関係 滞納処分の停止の要件等|国税庁

生活が苦しいために税金の支払いができず、自己破産も考えている状況なら、生活保護の受給も現実的な選択肢です。仮に自己破産を進めている状況でも、生活保護は受給できます。自己破産の有無は、生活保護の受給に影響しません。

税金が払えず、生活がままならない状況の人は、生活保護も視野に入れて生活の再建を図りましょう。

自己破産中に税金が払えないとどうなる?

自己破産をすると、一定以上の価値がある財産は処分され、債権者に配当されます。生活の維持に必要なお金として、99万円までは手元に残せますが、そんな中で税金を支払うのは負担が大きいでしょう。しかし、自己破産中であっても、税金を滞納すると、以下のような対応が取られます。

延滞税の加算

税金を滞納すると、遅れた日数分の延滞税がかかり、本来支払うべき金額と併せて納付が必要です。延滞税は、納付期限の翌日から発生します。

延滞税は、以下の割合に乗じて計算されます。

[令和3年1月1日以後の期間に対応する延滞税の割合]
1 納期限(※)までの期間及び納期限の翌日から2月を経過する日までの期間については、年「7.3%」と「延滞税特例基準割合+1%」の いずれか低い割合
2 納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以後については、年「14.6%」と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合

引用元:延滞税の計算方法|国税庁

たとえば、100万円の所得税を半年程滞納した場合、延滞税は約3万円になります(期限内申告分。令和6年分所得税の法定納期限令和7年3月17日から半年間滞納)。

税金の滞納を続けるほど、最終的に支払う金額は増えてしまうため、可能な限り早めの対処が必要です。

督促状の送付

税金を滞納すると、税務署や役所などから督促状が送られてきます。督促状とは、納付期限が過ぎている支払いを催促するための書類です。一般的に、納付期限から1か月以内には送られてくることが多いです。

督促状には、未納になっている税金の種類や金額、納期限などが記載されています。この督促状を無視すると、次に紹介する滞納処分が行われます。

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滞納処分(財産の差し押さえ)

滞納処分とは、税金を滞納している人の財産を差し押さえ、強制的に未納分を回収する手続きのことです。差し押さえの対象になる財産は、預金や給料、不動産などです。

滞納処分は、早ければ納期限から1か月程度で行われる可能性があります。特に、給料が差し押さえられてしまうと、会社にもバレてしまうため注意が必要です。税金を支払えない場合は、放置をするのではなく、役所などに猶予や分割納付の相談をしましょう。

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自己破産の手続き中に税金の支払いをしても大丈夫?

自己破産では、親族や住宅ローンなど一部の借金だけ返済することは禁止されています。これを、偏波弁済(へんぱべんさい)といいます。偏波弁済は、自己破産が認められない理由になり得ます。

しかし、自己破産中に税金を支払っても、偏波弁済にはなりません。税金は非免責債権にあたり、優先的に支払うべきものと考えられているためです。税金を滞納してもデメリットやリスクしかないため、払える状況なら納期限までにしっかりと払いましょう。

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自己破産手続き中に税金の支払いができない場合の対処法

自己破産の手続き中や、自己破産後に税金の支払いができない場合の対処法を挙げていきます。

役所に分割払いや猶予の相談をする

税金を支払えない場合、まずは役所や税務署に分割納付や猶予の相談をしましょう。担当の窓口に自分の状況を説明することで、分割払いや納期限の猶予に対応してもらえる可能性があります。

たとえば東京都では、納税が困難な人を対象に以下のような猶予制度を設けています。

1 徴収猶予

【条件】
例えば以下のようなケースに該当し、一時に都税を納税することが困難な方が対象となります。

・納税者が営む事業について、著しい損失が生じた場合
・納税者ご本人又は生計を同じにするご家族が病気にかかり、入院等で多額の費用を要した場合
・納税者がその財産につき、震災、風水害、火災その他の災害を受け、又は盗難にあった場合
・納税者が営む事業について、事業を廃止し、又は休止した場合 など

【対象となる都税】
全ての都税(自動車税環境性能割、狩猟税、個人の都民税等を除く)
個人の都民税については、所管の区市町村の窓口にお問い合わせください。

【猶予期間】
最長1年間

引用元:納税が困難な方に対する猶予制度について|東京都主税局

分割払いや猶予が必ず認められるとは限りませんが、滞納を放置せず、できるだけ早めに役所に相談して対応を検討することが重要です。

弁護士に相談する

自己破産を進めている場合、多くのケースでは弁護士に依頼しているでしょう。自己破産中に税金の支払いが困難になったら、弁護士にも状況を伝えるのが望ましいです。弁護士に相談することで、適切な対応についてアドバイスを受けられます。

弁護士は依頼者の状況を考慮して、たとえば弁護士費用の支払い方法を変更するなどの対応を検討してくれる可能性があります。

生活保護を受給する

自己破産の手続き中や自己破産後に税金の支払いができず、生活が苦しい場合は、生活保護の受給も選択肢の一つです。生活保護を受給するには、預金などの財産がなく、収入が最低生活費を下回っている必要があります。

自己破産をした人であれば、一定の財産を持っていないため、生活保護の要件もクリアしやすいと考えられます。自己破産と生活保護の手続きは、同時に進めることも可能です。まずは、自分が生活保護の要件を満たしているか確認し、必要に応じて弁護士に相談するとよいでしょう。

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自己破産と税金の支払いでよくある質問

自己破産後に生活保護を申請すれば税金が免除される?

自己破産後に生活保護を受給した場合、税金の滞納による差し押さえは回避できます。生活保護を3年間受給すると、滞納した税金の納付義務は消滅します(参考:第153条関係 滞納処分の停止の要件等|国税庁)。

自己破産で固定資産税は免除される?

自己破産をしても固定資産税の支払いは免除されません。固定資産税も非免責債権にあたります。

確定申告してないと自己破産はできない?

確定申告をしていないからといって、絶対に自己破産ができないわけではありません。しかし、収入や支出の状況が正確に把握できず、手続きがスムーズに進まない可能性はあります。

まとめ

消費者金融の借金や、税金の支払いなどを滞納し、生活がままならない状況の人は、自己破産が有効な選択肢の一つです。自己破産をすることで、借金の返済がなくなり、生活の安定を取り戻せるきっかけになるかもしれません。

自己破産の手続き中や自己破産後に税金の支払いができない場合、まずは役所に分割払いや猶予の相談をしましょう。支払いが困難な状況を説明することで、各自治体の猶予制度などを利用できる可能性があります。

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