口座の差し押さえはいきなりされるのか?流れや対処法について解説
給料の受取りや公共料金の引き落としに利用している銀行口座が差し押さえられたらどのように対応すればいいでしょうか?
今回の記事では、口座が差し押さえられる流れと対処法について解説します。
目次
口座が差し押さえられる原因は?
ここでは、口座が差し押さえられる原因について解説します。
口座の差し押さえとは何か
口座の差し押さえとは、債務の履行を滞納している人が財産(預金)を自由に処分できないように強制的に回収する手段で、債権者が裁判所に申し立てて行う手続きです。
口座がなぜ差し押さえられるのか
口座が差し押さえられる代表的な例は、税金や借金を滞納した場合です。
税金の場合
税金を滞納すると督促状が送られてきますが、何度督促しても決められた期日内に納付しなければ、滞納処分として口座が差し押さえられる可能性があります。
滞納処分による口座の差し押さえは、借金の場合とは異なり、裁判所の手続きを経ずに、役所が職権で行えます。そのため、税金を滞納すると、借金を滞納したときよりも早期に差押えを受けるおそれがあります。
借金の場合
借金を滞納すると書面や電話で督促され、それでも支払わない場合は、一括請求通知や最後通告書が内容証明郵便等で送られてきます。
内容証明郵便に対応をしなければ、最終的な手段として債権者は、裁判所に貸金返還請求訴訟の提起や支払督促の申立てをします。すると裁判所から債務者あてに訴状や支払督促正本が送られてきます。それさえも無視して裁判を欠席し、あるいは異議の申立てをせず放置すれば、債権者の主張を全面的に認める判決が言い渡され、あるいは支払督促に仮執行宣言が付されます。仮執行宣言が付されると、直ちに差し押さえを申立てられる可能性があります。
訴訟の場合、判決正本を受け取った後、控訴(判決の内容に納得がいかない場合に上訴すること)をせず、2週間経過すると判決が確定します(債務名義)。これによって、銀行の口座が差し押さえられます。
口座の差し押さえの流れは?
ここでは、口座の差し押さえがどのような流れで行われるのかについて解説します。
口座が差し押さえられるタイミングは?通知なしで実行される?
銀行口座の差し押さえは、1回の裁判所の申立てに対して一度しかできません。そのため債権者は、銀行口座に残高があるタイミングを狙って、毎月の給料日や各種引き落としがされる直前に差し押さえることが多いです。
裁判所が口座の差し押さえを認めると、まず第三債務者(差し押さえ対象の口座がある銀行)あてに債権差押命令が送達されます。差押命令が第三債務者に送達される前に債務者に送達されると、被差押債権を処分されて(預金を引き出して)執行の目的を達せなくなるおそれがあるからです。実務上は第三債務者への送達確認後に債務者に発送する取扱いになっているので、債務者はこの時点で口座が差し押さえられたことを知ります。
つまり、口座の差し押さえが実行される日時が事前に通知されることはありません。
口座が差し押さえられる期間は?
口座が長期的に差し押さえられることはありません。口座の差し押さえの対象となるのは、差し押さえられた時点で口座にある預金のみです。
例えば請求額が50万円で口座に100万円あったら、50万円が強制的に引き落とされますが、残りの50万円は引き出せます。さらに差し押さえ後に入金されたお金は対象外なので、出金が可能です。
ただし、債権者が同じ口座の差し押さえをもう一度行う可能性はあります。
口座が差し押さえられたらどうなるのか?
ここでは、口座が差し押さえられたらどうなるのかについて解説します。
口座の差し押さえが行われると、差し押さえられた日時点の残高から、請求額が別口座(差押口)に移管されます。
差押命令が債務者に送達されてから1週間が経過すると、差押債権者は差し押さえにかかる債権の取り立てができます。
差し押さえ後の口座はその後も使える?引き出しや入金はできる?
ここでは、口座を差し押さえられたら、引き続き引き出しや入金ができるのかについて解説します。
口座を使えるケース
口座の差し押さえは、請求額を限度に行われるので、預金残高が請求額を上回っていれば請求額以外は利用でき、入金もできます。給料の振込口座に指定されていれば、引き続き給料も振り込まれます。
口座を使えないケース
差し押さえにより口座が凍結されることはありませんが、当該口座がある銀行のカードローンを滞納した場合は、銀行が口座の利用を停止(口座凍結)することがあります。
差し押さえは、裁判所を通した手続きですが、口座凍結の場合は債務名義の取得や裁判所への申立てを経ずに実行可能です。銀行とのローン契約等に基づいて行われる正当な手続きだからです。口座が凍結された場合は、一定期間入出金ができず、公共料金の振替もできません。
口座が差し押さえられて生活ができない!返金は望めない?
ここでは、口座が差し押さえられて生活ができない場合、どうすればよいか解説します。
原則として返金は望めない
口座が差し押さえられたら、原則として返金は望めません。債権者に差し押さえを取り下げてもらうようにお願いする、裁判所に不服申し立て(請求異議の訴え・執行抗告)を行う方法はありますが、いずれも現実的ではありません。
口座の差し押さえで生活ができない場合はどうすればいい?
口座の差し押さえによって預金残高がゼロになり、生活に困ったら下記の方法を検討しましょう。
税金を滞納しているなら税務署に滞納処分の停止を相談する
滞納処分の停止とは、一定の条件に該当したら滞納処分の執行を停止する制度です。停止されてから3年後に納税義務が消滅する制度ですが、適用するための要件が厳しいです。
借金を滞納しているなら差押禁止債権の範囲変更申立てをする
口座を差し押さえられて請求額が引き落とされたら、そのお金が債権者に支払われるまで1週間ほどかかります。すぐに債権者に支払われないのは、債務者が差し押さえに対して反論する機会を与えるためです。
差し押さえに不服があれば、差し押さえ禁止債権の範囲変更申立てが可能です。生活保護費や公的年金などを差し押さえられたら生活が成り立たない旨を裁判所に申し立て、差し押さえの範囲を減縮してもらいます。
しかし、この手続きは、弁護士のサポートなしで行うのは難しいです。範囲の変更を申立てても認められるとも限りません。差し押さえ禁止債権の範囲変更申立てが最善の方法なのか、債務整理を選択したほうがよいのかを含め、弁護士に相談をしましょう。
口座を差し押さえられた時の解除方法は?
ここでは、口座を差し押さえられた時の解除方法について解説します。
口座を差し押さえている相手を特定する
口座が差し押さえられた場合、明細には「サシオサエ」としか記帳されないため、通帳記入や取引履歴から相手を特定することはできません。前触れなく口座を差し押さえられることはないので、督促状や裁判所から訴状が届いていないか確認をしましょう。
税金や借金を滞納しているなら支払いをする
滞納している借金や税金を全額支払えば、借金完済を証明する弁済証明を裁判所へ提出することで、差し押さえの取消しをしてもらえます。ただし、債権差押命令が債務者に送達されてから1週間以内に執行停止文書を執行裁判所に提出して執行を停止してもらえなければ、債権者に取立権が発生するため、返金を求める手続きが煩雑になります。
自己破産をして差し押さえを中止する
債務整理の一つである自己破産の申立てをして、裁判所が破産手続開始決定を出すと、その決定正本およびこれを停止文書とする旨の上申書を執行裁判所に提出することで、差し押さえは中止されます。ただし、自己破産は原則、所有している財産をすべて処分しなければならないので、デメリットが大きいことも念頭にいれましょう。
口座の差し押さえを回避するためにとれる行動とは
ここでは、口座の差し押さえを回避するためにできることについて解説します。
税金を滞納している場合は税務署に分納や猶予・免除を相談する
税金を滞納しているなら、税務署等に分割で支払いができるか、支払いの猶予を求める相談をしましょう。支払いが難しい事情を説明すれば、相談に応じてくれる場合があります。
借金を滞納しているなら債権者に返済猶予や分割返済を相談する
借金を滞納しているなら、債権者に支払い方法について相談をしましょう。なぜ支払いができないのか、理由によっては相談に応じてくれる場合があります。
弁護士に相談して債務整理を検討する
弁護士に相談をして、債務整理を検討しましょう。弁護士であればそれぞれの状況によって最適な債務整理の方法をアドバイスできます。
口座を差し押さえられたら、弁護士に相談・依頼するメリットは?
ここでは、口座を差し押さえられたら弁護士に相談・依頼するメリットについて解説します。
滞納している借金について、的確なアドバイスができる
口座を差し押さえられた原因となっている滞納している借金について、的確なアドバイスができます。口座の差し押さえを解除するためにどう対応すべきか、具体的な行動がとれます。
代理人として債務整理に対応ができる
弁護士であれば、代理人として債務整理に対応ができます。債務整理は主に任意整理、個人再生、自己破産と3つの方法があります。それぞれメリットとデメリットがあり、どれを選択すればいいのか的確なアドバイスができます。
まとめ
借金や税金を滞納し続けると、最終的に口座が差し押さえられる事態に陥る可能性があります。債権者がこのような強硬手段に出るのは、何度督促をしてもそれに対して反応がないからです。
債権者から何度も支払いの督促をされつつも借金や税金の支払いが難しい場合、まずは債権者や役所に連絡をとって、支払いが難しい旨を相談しましょう。連絡をしたことで、少なくとも債権者が強硬手段に出る可能性は低くなります。
どうしても借金の支払いが難しい場合は、早めに弁護士に相談をして債務整理を検討しましょう。