国民年金を滞納して差し押さえを受けた場合の対処法|解除するには何をすればいいか?
国民年金の第1号被保険者は、毎月分の保険料を翌月末日までに納付しなければなりません。
日本における公的年金は、支払った保険料の満額を老後に受け取れる仕組みではないため、保険料を支払うことに不満や不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、国民年金保険料を長期間滞納すると、財産が差し押さえられるおそれがあります。
この記事では、国民年金保険料を滞納した場合のリスクとその回避方法について、次のとおり解説します。
- 国民年金滞納者の差し押さえ基準|年間所得300万円以上かつ未納期間7か月以上
- 国民年金を滞納して差し押さえをされるまでの流れ
- 国民年金未納により差し押さえられる財産の範囲
- 国民年金滞納で銀行口座や給与が差し押さえられるとどうなるのか?
- 国民年金滞納による差し押さえを回避する方法はある?
- 国民年金の滞納以外に借金があれば弁護士に相談を!
未納の保険料がある方は、ぜひご参考になさってください。

ただし、国民年金以外の借金は免除されることがあります。
国民年金以外にも借金がある方は、無料相談で現在の状況をお聞かせください。
目次
国民年金滞納者の差し押さえ基準|年間所得300万円以上かつ未納期間7か月以上
国民年金の滞納処分による差し押さえ(強制徴収)の対象となる人は、どのような基準で決められているのでしょうか。
ここでは、強制徴収の対象者となる基準について、詳しく解説します。
国民年金の強制徴収の基準は、年々厳しくなっており、平成30年(2018年)からは、年間の控除後所得が 300 万円以上かつ7か月以上保険料を滞納している人全員が、強制徴収対象者に位置づけられました(日本年金機構の平成30年度の業務実績の評価)。
なお、令和2年(2020年)は、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、強制徴収が停止されました(日本年金機構の令和2年度業務実績の評価)。
年間所得300万円以上とは?給与所得者や自営業者の所得計算
所得とは、給与所得や事業所得を指します。給与所得や事業所得は、以下のとおり、収入金額から必要経費等を差し引いた金額です。
- 給与所得=給与収入(源泉徴収前の額面金額)-給与所得控除
- 事業所得=収入金額-必要経費
つまり、年収=所得ではありません。
所得金額の確認方法
会社員やパートアルバイトの方は、源泉徴収票の給与所得控除後の金額の欄を見れば、所得金額を確認できます。
自営業者の方は、確定申告書や所得(課税)証明書で所得金額を確認できます。
年間所得が300万円以内・未納期間が7か月以内なら差し押さえられない?
2022年5月20日現在、強制徴収の対象となる方の所得金額や未納月数に変更はありませんが、年々厳しくなっています。
平成29年までは、以下に該当する方が、強制徴収の対象となっていました(日本年金機構の平成29年度の業務実績の評価)。
- 年間所得が350万円以上、かつ、未納期間7か月以上の人
- 年間所得が300万円以上、かつ、未納期間が13か月以上の人
今後も対象の範囲が広げられる可能性があるため、年間所得が300万円以内・未納期間が7か月以内であれば、今後も滞納処分による差し押さえを受けないとは必ずしも言いきれません。
国民年金を滞納して差し押さえをされるまでの流れ
ここでは、国民年金を滞納して差し押さえをされるまでの流れを説明します。
保険料の滞納から差し押さえまでの流れは、以下のとおりです。
- 電話や書面で催告される
- 特別催告状が届く
- 最終催告状が届く
- 督促状が届く
- 差押予告通知書が届く
- 財産を差し押さえられる
ひとつずつ説明します。
電話や書面で催告される
国民年金保険料を、納付期限までに納付しなかった場合、年金事務所から電話や書面で納付を促されます。
この時点で、未納の国民年金保険料を納付できれば、特に問題は生じません。
特別催告状が届く
催告後も未納保険料を納付しない場合、特別催告状が送られてきます。
特別催告状は数回にわたり送付され、段階を増すごとに封筒の色が青→黄→赤と変わります。
最終催告状が届く
特別催告状が送られても納付しないでいると、最終催告状が届きます。
督促状が届く
最終催告状が送付されてもなお納付しなかった場合、督促状が届きます。督促状には、年金事務所が指定する期限内に納付しなければ、延滞金が課せられる旨が記載されています。
差押予告通知書が届く
督促状も放置すると、差押予告通知書が送られてきます。
差押予告通知書は、最後の納期限とともに期限内に納付されない場合は、財産を差し押さえる旨の予告が記載されています。
財産を差し押さえられる
差押予告通知書に記載された指定期限内に納付しなければ、年金事務所により財産調査が行われ、滞納処分(差し押さえ)が実行されます。
国民年金未納により差し押さえられる財産の範囲
国民年金の滞納処分により差し押さえられる財産の範囲は、主に以下のとおりです。
- 給与債権
- 不動産
- 預貯金債権
- 生活必需品以外の動産
- 保険金請求権
ひとつずつ説明します。
給与債権
給与が差し押さえられると、給与の満額を受け取れなくなります。ただし、差し押さえ可能額の上限は、次のとおり法律で定められています。
- 給与(手取)が月額44万円以下の場合⇒手取り額の4分の1
- 給与(手取)が月額44万円を超える場合⇒手取り額から33万円差し引いた金額
手取額から上記差し押さえ可能額を控除した残額は、受け取れます。
不動産
次のような不動産も差し押さえが可能です。
- 土地
- 建物
- マンション(居室及び土地の区分所有権)
預貯金債権
預貯金債権も差し押さえの対象となります。具体的には、債権差押命令が銀行に送達された時点での預貯金残高が差し押さえられます。
生活必需品以外の動産
法律で差し押さえを禁止された生活必需品以外の動産も差し押さえの対象となります。
差し押さえの対象となる動産は、主に以下のとおりです。
- 現金(66万円を超える部分)
- 軽自動車・未登録または登録抹消済みの自動車
- 宝石・時計・貴金属
- 絵画・骨董品
- 株券・約束手形・小切手・商品券
- 機械・什器・備品
- 家畜等の動物
保険金請求権
解約返戻金や満期金・配当金のある生命保険等も差し押さえの対象となります。
国民年金滞納で銀行口座や給与が差し押さえられるとどうなるのか?
ここでは、国民年金滞納で銀行口座や給与が差し押さえられた場合の影響について解説します。
預貯金の引き出し・送金ができなくなる
銀行口座が差し押さえられると、口座が凍結されます。
預貯金の引き出し、振り込み、引き落としなどができなくなります。
給与を満額受け取れなくなる
給与を差し押さえられると、勤務先から支給される給与の一部を受け取れなくなります。保険料を完納するまで、毎月給与の一部が差し押さえられ、国民年金の納付にあてられます。
国民年金滞納による差し押さえを回避する方法はある?
ここでは、国民年金滞納による差し押さえを回避する方法を解説します。
滞納保険料を分割して支払う
一定の要件に該当する場合、滞納保険料を分割納付できます。
差し押さえられる前に年金事務所や市区町村の国民年金担当窓口に相談をしましょう。
分割納付が認められるのは、滞納分のみであるため、今後発生する毎月の保険料を納付できない場合は、以下の納付猶予制度または納付免除制度を利用しましょう。
納付猶予を申請する
20歳から50歳未満の方で、本人および配偶者の前年所得(1~6月までに申請する場合は前々年所得)が一定額以下の場合や学生は、納付猶予制度を利用できます。
市町村役場か年金事務所に申請書を提出し、申請後に承認されると保険料の納付が猶予されます。
納付免除を申請する
国民年金保険料を納めることが経済的に困難な場合は、保険料免除制度が利用できます。
経済的にこんなな場合とは、具体的には次のような場合です。
- 失業したとき
- 所得が少なく本人・世帯主・配偶者の前年所得(1~ 6月までに申請する場合は前々年所得)が一定額以下
市町村役場か年金事務所に申請書を提出し、申請後に承認されると保険料の納付が免除されます。
免除される額は、次の4種類があります。
- 全額
- 4分の3
- 半額
- 4分の1
国民年金の滞納以外に借金があれば弁護士に相談を!
ここでは、国民年金の滞納以外に借金がある場合の解決法について解説します。
滞納保険料以外に借金がなければ弁護士に解決を依頼できない
滞納保険料以外に借金がない場合は、弁護士が法的に解決するのが困難です。国民年金保険料の納付は国民の義務であり、債務整理しても減額・免除されないからです。
他に借金があれば弁護士に債務整理を依頼すれば滞納を解消できる可能性も
滞納保険料以外に借金があり、その返済に追われて国民年金保険料が納付できない場合は、借金を債務整理することで、保険料の滞納を解消できる可能性があります。
滞納保険料以外に借金がある場合は、なるべく早く弁護士に相談しましょう。
まとめ
国民年金保険料を滞納すると、財産を差し押さえられる可能性があります。銀行口座や給与が差し押さえられると、生活に支障を及ぼすおそれがあります。
国民年金の滞納がある場合には、なるべく早く年金事務所や市町村役場の年金担当に分割納付を相談しましょう。早期に手を打つことで、差し押さえを回避できる可能性があります。
国民年金の滞納保険料以外に借金がある場合は、借金を債務整理することで、国民年金保険料の納付が楽になる可能性もあります。
国民年金保険料滞納者の方で、他の借金がある方は、なるべく早く弁護士に相談することをおすすめします。