動産執行とは?手続きの流れや費用・回避する方法も解説! - 債務整理は弁護士に相談【ネクスパート法律事務所】

動産執行とは?手続きの流れや費用・回避する方法も解説!

債務者が借金を滞納すると、債権者が強制執行を申立てて債権回収を図ることがあります。

強制執行の代表的なものには、預金債権や給与債権の差し押さえがありますが、債務者が所有する動産(現金、絵画、骨董品、時計、宝石など)を差し押さえることも可能性です。

この記事では、動産執行について、次のとおり解説します。

  • 動産執行とは?
  • 動産執行の対象になる財産
  • 動産執行の対象にならない財産
  • 動産執行の手続きの流れ
  • 動産執行申立てに必要な書類は?
  • 動産執行に必要な費用は?予納金はいくらくらい?
  • 動産執行を回避する方法

動産執行について理解を深める参考になれば幸いです。

寺垣弁護士
寺垣弁護士
動産執行されたくない場合は、裁判になる前に返済するか分割払いの相談をしましょう。返済が困難な場合は債務整理もお考えください。

借金の返済が困難で、債務整理を検討している方は一度ご相談ください。

動産執行とは?

ここでは、動産執行の概要とメリット・デメリットを解説します。

執行官が取り扱う強制執行

動産執行とは、金銭の支払いが受けられないときに、債務者の動産を差し押さえ、売却し、その代金の交付を受けることにより債権を回収する強制執行です。

民事執行法は、民法上の動産(以下①および②)を含め、次のものを執行法上の動産と規定しています。

  • 不動産(土地や建物など)以外の物
  • 無記名債権
  • 登記することができない土地の定着物(庭石、石燈、鉄塔、建設中の建物等)
  • 土地から分離する前の天然果実で1か月以内に収穫することが確実なもの
  • 裏書の禁止されている有価証券以外の有価証券

動産執行のメリット

動産執行の主なメリットは、以下のとおりです。

  • 他の強制執行に比べて手続きが比較的簡易で費用も低額
  • 債務者に与える心理的な効果が大きい

ひとつずつ説明します。

他の強制執行に比べて手続きが比較的簡易で費用も低額

債権執行や不動産執行などと比較すると執行手続きが比較的簡易で、費用も低額です。

債務者に与える心理的な効果が大きい

動産執行では、執行官が自宅や事務所等に立ち入って差し押さえるため、債務者側に与える心理的なインパクトが大きくなります。動産執行そのものでは債権回収の成果が得られなくても、任意の支払いに応じるきっかけを与えることもあります。

動産執行のデメリット

動産執行の主なデメリットは、以下のとおりです。

  • 執行官が執行場所に入らなければ実際に財産があるのかどうかが分からない
  • 費用倒れになる可能性がある

ひとつずつ説明します。

執行官が執行場所に入らなければ実際に財産があるのかどうかが分からない

執行官が自宅や事務所等に足を踏み入れなければ、実際に財産があるのかどうかが分かりません。差し押さえられる動産が全くないケースや、動産があっても債権を満足させられるだけの価値がないケースもあります。

費用倒れになる可能性がある

債務者が自宅や事務所等に立ち入ることに協力しない場合は、費用倒れになる可能性があります。

債務者不在の場合は、開錠業者を執行場所に連れていき、施錠の解除作業をしてもらい自宅や事務所に立ち入ることも可能ですが、別途費用が発生します。

執行当日に債務者がいなかったり、執行官の呼びかけに応じず居留守を使ったりするケースも少なくありません。

動産執行の対象になる財産

ここでは、動産執行の対象となる財産を解説します。

動産執行では、主に以下のものが差し押さえの対象となります。

  • 現金(66万円を超える部分)
  • 機械・什器・備品
  • 宝石・時計・貴金属
  • 絵画・骨董品
  • 株券・約束手形・小切手・商品券
  • 家畜等の動物
  • 軽自動車・未登録または登録抹消済みの自動車

ひとつずつ説明します。

現金(66万円を超える部分)

66万円を超える現金がある場合は、その超えた部分だけが差し押さえ可能です。

標準的な世帯の2か月分の必要生活費として、66万円までの現金は差し押さえを禁止されています。

機械・什器・備品・商品

一般的に、事業所内のデスクや椅子などの備品や商品(出荷予定のものも含む)は差し押さえ可能です。

機械・什器については、債務者の職業に欠くことができないもの(商品の製造やサービスの提供等に不可欠なもの)以外は、差し押さえの対象となります。

宝石・時計・貴金属

宝石・時計・貴金属・ブランド用品などの高価品は差し押さえの対象となります。

絵画・骨董品

絵画や骨董品などの美術品も差し押さえの対象となります。

株券・手形・小切手・商品券

裏書の禁止されていない有価証券(株券・手形・小切手・社債券等)や商品券も差し押さえの対象となります。

家畜等の動物

ペットや家畜などの動物も差し押さえの対象となります。

軽自動車・未登録または登録抹消済みの自動車

軽自動車や未登録・登録抹消済みの自動車は差し押さえの対象となります。

※登録済みの自動車やバイクは、民法上は動産ですが、動産執行とは異なる自動車執行で差し押さえる対象となります。

動産執行の対象にならない財産

ここでは、動産執行の対象にならない財産を解説します。

差押禁止財産とは

差押禁止財産とは、債務者の生活を保障する必要性等から、法律によって差し押さえが禁止されている財産です。

差押禁止財産にはは、以下のものがあります。

  • 債務者及び同居家族の生活に欠くことができない衣類・寝具・家具・台所用品など
  • 債務者及び同居家族の1か月分の食料および燃料
  • 66万円以下の現金
  • 債務者の仕事に欠くことができない器具(職人道具、農具、漁具等)や肥料・飼料など
  • 実印その他の印で債務者の職業または生活に欠くことができないもの
  • 仏壇・位牌等の礼拝や祭祀に直接供し欠くことができないもの
  • 系譜、日記、商業帳簿およびこれに類する書類
  • 勲章等名誉を表章する物
  • 教育施設における学習用品
  • 発明著作にかかるもので未発表のもの
  • 義手、義足その他の補足具
  • 建物その他の工作物についての消防用の機械等防災器具・備品

生活や仕事に欠くことができないかどうかは、個々の執行官が判断するため、判断基準は必ずしも一律ではありません。家具家電等が2台以上ある場合は、2台目以降が差し押さえの対象となることがあります。

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動産執行の手続きの流れ

ここでは、動産執行の手続きの流れを解説します。

申立前の準備

動産執行をするには、原則として、次の3つが必要です。

  • 債務名義
  • 執行文
  • 送達証明書

債務名義の取得

動産執行をするには、一般的に裁判や民事調停・家事調停などを経て債務名義を取得しなければなりません。債務名義とは、強制執行(動産執行)によって実現されるべき給付請求権の存在や内容を公証する文書です。

債務名義には、主に以下のものがあります。

  • 確定判決
  • 仮執行宣言付判決
  • 仮執行宣言付支払督促
  • 確定した判決と同一の効力を有するもの(和解調書、調停調書、審判)
  • 執行証書(強制執行に服する旨の陳述が記載された公正証書)

執行分付与の申立て

動産執行をするには、執行文の付与を受けることなく強制執行できる債務名義を除き、執行文付与の申立てが必要です。

執行文とは、債権の存在と執行力の現存およびその内容を公証するために、債務名義の末尾に付される公証文書です。執行文付与の申立ては、債務名義を交付した裁判所に行い、申立書とともに当該債務名義を提出します。手数料は執行文1通につき300円です。

ただし、以下の債務名義に基づいて動産執行をする場合は、執行文の付与は不要です。

  • 仮執行宣言付支払督促
  • 少額訴訟における確定判決
  • 仮執行宣言付少額訴訟判決
  • 家事調停調書の乙類審判事項(婚姻費用・養育費請求等)
  • 家事審判書(ただし、確定証明書が必要)

送達証明書の取得

動産執行の前には、債務名義の送達証明書を申請して、送達証明書を取得します。動産執行に着手するには、債務名義の謄本が債務者に送達されていなければならないからです。

送達証明書は、150円分の印紙を貼った申請書を裁判所に提出して申請します。

なお、判決や仮執行宣言付支払督促は、裁判所の職権で必ず送達されますが、和解調書や調停調書は送達申請をしないと送達されませんので、債務名義が送達未了の場合は送達申請を行いましょう。

執行証書の場合は、公正証書の送達が必要です。執行証書の原本を保管している公証役場で送達申請・送達証明書申請を行います。

動産執行の申立て

執行文の付与された債務名義の正本と送達証明書、その他に裁判所から指示された書類の準備が整ったら、差し押さえるべき動産所在地の執行官に対し、動産執行を申立てます。

執行日時の調整・決定

動産執行の申立書を提出すると執行官から連絡があるので、執行の具体的な日時を調整して決定します。

動産執行の実施

動産執行の当日、執行官が債務者の自宅や事務所等に立ち入り、差し押さえ可能な財産があれば差し押さえます。

債権者が希望する際は、債権者や代理人(弁護士)も執行官に同行しますが、原則として自宅や事務所等の中に入れるのは執行官のみです。債権者と債務者の間で話をさせる必要がある場合は、執行官が債務者を外に連れ出て話をさせます。

競売・配当

動産執行が終わると、執行官が差し押さえた財産を売却して換金します。換金した代金は債権者に配当されます。

なお、差し押さえ財産の売却は、次のいずれかの方法によるのが一般的です。

  • 買取(リサイクル)業者等に買い取ってもらう
  • 債権者が自ら購入する

動産執行申立てに必要な書類は?

ここでは、動産執行の申立てに必要な書類を解説します。

動産執行に必要な書類は、以下のとおりです。

  • 申立書
  • 執行文の付与された債務名義の正本
  • 債務名義の送達証明書
  • 資格証明書
  • 動産執行を行う場所の略図
  • 住民票等(債務名義上の住所と現住所が異なる場合)
  • 委任状(弁護士に依頼する場合)

ひとつずつ説明します。

申立書

差し押さえる動産の所在地を管轄する裁判所の窓口やホームページなどから、所定の申立書を取り寄せて、必要事項を記載します。

動産執行を行う場所の略図

執行場所を案内する図(住宅地図等)の提出が必要です。

債務名義の送達証明書

執行力ある債務名義の送達証明書が必要です。家事審判書に基づいて動産執行する場合は、確定証明書が必要です。

資格証明書

当事者(申立人および相手方)が法人の場合は、発行日から3か月以内の資格証明書が必要です。次のいずれかを法務局で取り寄せます。

  • 登記事項証明書
  • 代表者事項証明書

執行文の付与された債務名義の正本

執行文の付与された債務名義の正本が必要です。執行文付与の要否は、以下をご参照ください。

債務名義の種類 執行文付与の要否
確定判決
少額訴訟における確定判決 ×
仮執執行宣言付判決
仮執行宣言付少額訴訟判決 ×
間接強制のための金銭支払命令
代替執行費用前払決定
仮執行宣言付支払督促 ×
訴訟費用額確定決定
執行証書
和解調書、認諾調書、民事調停調書
労働審判書
家事調停調書
家事調停調書(乙類) ×
家事審判書 ×(確定証明書は必要)

住民票等(債務名義上の住所と現住所が異なる場合)

当事者(申立人および相手方)が自然人で、かつ、氏名又は住所が債務名義上の表示と異なる場合は、住民票の写し(発行日から1か月以内のもの)の提出が必要です。

委任状(弁護士に依頼する場合)

動産執行を弁護士に依頼する場合は、委任状を提出する必要があります。

動産執行に必要な費用は?予納金はいくらくらい?

ここでは、動産執行に必要な費用を解説します。

予納金

動産執行の申立時には、執行官の費用として裁判所に予納金を支払う必要があります。

予納金は、一般的に3~5万円程度ですが、動産執行終了後に余りがあれば返還されます。

開錠業者等への謝礼(日当)

執行当日に、開錠業者を手配した場合は謝礼(日当)が必要です。実際に開錠作業を要したかどうかで費用が異なります。

この他、差し押さえた動産を持ち帰るためにトラック等を借りたり、搬送業者に搬送を依頼したりした場合は、その費用も別途かかります。

弁護士費用

動産執行を弁護士に依頼する場合は、弁護士費用が必要となります。

弁護士に依頼した場合の費用相場は、以下のとおりです。

  • 着手金:10万円~
  • 報酬金:回収額の10%程度

動産執行を回避する方法

ここでは、動産執行を回避する方法を解説します。

裁判を起こされる前に支払う

債務者が返済を怠った場合、一般的に債権者は、法的手続き(裁判や支払督促)に移る前に電話や書面による督促・催告を行います。

債権者が法的手続きに移る前に返済すれば、債務名義を取られることを回避できます。滞納金全額を一括で払えなくても、債権者との交渉により分割返済・返済期限の猶予に応じてもらえることもあります。

借金を滞納したら、債権者からの連絡を無視せず、誠実に対応し返済の意思を見せましょう。

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債務整理を行う

借金を返済できる目途がない場合や、分割返済・返済期限の猶予に応じてもらえない場合は、債務整理を検討しましょう。早期に債務整理をすることで、債権者による法的措置を回避できる可能性があります。借金の返済が難しいと感じた場合は、なるべく早く弁護士に相談するとよいでしょう。

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訴状や支払督促が届いたら無視をしない

債権者が裁判や支払督促などの法的手続きに移ると、裁判所から訴状や支払督促が届きます。これらの書面を無視してはいけません。裁判や支払督促に適切な対応をせず放置すると、債権者の主張を全面的に認める内容の判決等が下されるおそれがあります。

裁判所から訴状や支払督促が届いたら、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。

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まとめ

借金の滞納が原因で動産執行をされるケースの多くは、債権者が提起した裁判や支払督促に適切な対応をしなかった場合です。借金の返済が厳しくなったら、なるべく早い段階で弁護士に相談しましょう。

債務整理により早期に借金問題を解決すれば、動産執行などの強制執行を回避できる可能性が高まります。すでに裁判になっている場合には、放置せずにすぐに弁護士に相談しましょう。

個別の事情については弁護士に相談するとよいでしょう。

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