個人再生のデメリット・メリットをわかりやすく解説
個人再生とは、裁判所を通じて手続きを行うことによって借金を大幅に減額できる制度です。減額後の借金は、原則3〜5年で返済を行います。
借金を大幅に減額できる一方、いくつかデメリットもあります。
今回は、個人再生のデメリットを中心に以下の点について解説します。
- 個人再生の7つのデメリット
- 個人再生の5つのメリット
- デメリット以外に注意したい7つのポイント
- 手続き前に確認しておきたいポイント
個人再生の7つのデメリット
ここでは個人再生の7つのデメリットについて解説します。
継続的に返済できる収入が必要
個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生の2つの種類があります。継続的に返済できる収入がなければ、個人再生は利用できません。
それぞれの手続きにおいて定められている要件は以下のとおりです。
- 小規模個人再生…将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあること
- 給与所得者等再生…給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがあるものであってかつその額の変動の幅が小さいと見込まれるもの
継続的に返済できる収入があると証明するには、職業や収入を証明できる源泉徴収票や給与証明書等の書面を提出しなければなりません。
継続かつ反復した収入があれば、正社員ではなくても個人再生を利用できます。
手続きに時間が必要
個人再生は裁判所をとおして行う手続きのため、申し立てから借金減額されるまで時間がかかります。
実際に、東京地方裁判所に個人再生を申し立てた場合、手続きの流れと必要な期間は以下のとおりです。
手続きの流れ | 行うこと | 必要な期間 |
個人再生の申し立て | 裁判所への申し立て | – |
個人再生委員の選任 | 裁判所による個人再生委員の選任 | 申し立ての即日 |
個人再生委員との面談 | 現在の財産や収入に関する質問 | 申し立てから約2週間程度 |
個人再生に関する意見書の提出 | 個人再生委員による個人再生開始決定の可否に関する意見書の提出 |
申し立てから3週間程度 |
個人再生の開始決定 | 裁判所による個人再生開始決定の判断 | 申し立てから1か月程度 |
履行テストの開始 | 返済可能かどうか判断するための履行テスト | 申し立てから1、2ヶ月程度 |
再生計画案認可についての意見書提出 | 履行テストの結果に基づいて個人再生の認可に関して意見書の提出 |
半年程度 |
再生計画案の認可 | 裁判所による再生計画案の認可 | 約半年〜1年程度 |
裁判所によって手続きの流れは若干異なりますが、おおむね申し立てから個人再生が認められるまで約半年から1年は時間が必要です。
費用が高い
個人再生を行う場合、弁護士費用と裁判所費用を支払わなければなりません。
まず弁護士費用の内訳と相場は以下のとおりです。
費用内訳 | 内容 | 費用相場 |
相談料 | 弁護士に相談する際に必要 | 無料〜1時間1万円前後 |
着手金 | 弁護士に依頼する際に必要 | 30〜60万円前後 |
成功報酬 | 個人再生が成功した際に必要 | 0~30万円 |
次に裁判所費用の内訳と相場は以下のとおりです。
費用内訳 | 内容 | 費用相場 |
予納金 | 個人再生の申し立てを行う際に裁判所に納めなければならない費用 | 13,744円 |
収入印紙 | 個人再生の申立てに必要な手数料 | 1万円 |
郵便切手 | 債権者へ通知するのに必要な費用 | 2,769円 |
その他 | 封筒代など | 実費 |
個人再生委員への報酬 | 裁判所により選任された個人再生委員の報酬 | 15〜25万円 |
債権者を選べない
個人再生は債権者を選べないので、家族や職場など知られたくない債権者にも個人再生がバレてしまうおそれがあります。
任意整理であれば債権者を選んで交渉できるため、家族や職場に借金や債務整理がバレるのを防ぎやすくなります。
保証人・連帯保証人に請求がいく
個人再生をした場合、債権者から保証人・連帯保証人に残債務の支払いをするよう請求がいきます。個人再生によって保証人・連帯保証人に及ぶ影響は以下のとおりです。
- 保証人は減額された分の借金を肩代わりしなければならない
- 連帯保証人は債権者の請求を拒むことができない
- 債務者本人に対して返済した分の請求ができない
ブラックリストに載る
カードの返済を滞納した場合や債務整理した場合などに、信用情報機関に事故情報が登録されます。
信用情報機関とは、個人の職業や年収、これまでの返済履歴や借入金などの信用情報を取り扱っている機関です。信用情報は、主にクレジットカードなどの申し込みがあった場合に、その人が信用できる人物かどうかを判断するために活用されています。
個人再生をすると、ブラックリストに載ることは避けられません。ブラックリストに載った場合、以下のデメリットがあります。
- 奨学金やローンの保証人になれない
- 携帯電話・スマホの分割購入ができない
- 契約しているクレジットカードの更新ができない
- 新規クレジットカードの作成やローンの契約ができない
- ブラックリストに載った金融機関や消費者金融はその後利用できない可能性が高い
官報に掲載される
官報とは、政府が発行している唯一の機関紙です。個人再生や自己破産をした場合、名前や住所などの個人情報が官報に掲載されます。
ただし、官報はほとんどの人が存在を知らないため、ここから個人再生したことが周りの人にバレてしまう可能性は低いです。
個人再生の5つのメリット
ここでは個人再生の5つのメリットを紹介します。
借金が減額される
個人再生最大のメリットは、借金が大幅に減額されることです。どの程度減額されるかは、民事再生法によって次のように定められています。
負債総額 | 最低弁済額 |
借金額が100万円以下 | 減額されない |
借金額が100万円~500万円 | 100万円にまで減額される |
借金額が500万円~1500万円 | 5分の1にまで減額される |
借金額が1500万円~3000万円 | 300万円にまで減額される |
借金額が3000万円~5000万円 | 10分の1にまで減額される |
このように借金額に応じて、半分から10分の1程度まで減額できる可能性があります。実際に抱えている借金別で、どの程度減額されるのか計算してみました。
借金総額 | 借金減額後の残債務 |
100万円 | 減額なし |
300万円 | 100万円 |
800万円 | 160万円 |
200万円 | 240万円 |
2000万円 | 300万円 |
抱えている借金額が多ければ多いほど、減額幅が大きくなるのが個人再生の特徴です。
持ち家を手元に残せる
個人再生では、住宅資金特別条項制度を利用すれば、住宅ローン以外の借金を減額できます。この制度を利用すれば、持ち家を手元に残しながら借金の減額が可能です。
この制度は住宅ローン特則とも言われており、以下の条件を満たしていれば誰でも利用できます。
- 住宅資金貸付債権であること
- 本人が所有している住宅であること
- 住宅ローン以外の抵当権がついていないこと
- 住宅ローンの滞納がないまたは代位弁済から6か月以内であること
- 債権者一覧表への記載
借金の分割返済が可能
個人再生では、減額後の借金は分割返済が可能です。
分割返済は原則3年と民事再生法で定められていますが、3年での返済が困難な場合は5年以内まで延長できます。
資格・職業の制限がない
個人再生では、自己破産とは異なり手続き期間中の資格・職業の制限がありません。自己破産の場合、手続き期間中は以下の資格・職業に制限がかかります。
- 士業(弁護士や税理士、公認会計士など)
- 金融関係(貸金業者、生命保険募集人など)
- 公職関係(公証人、公務員、国家公安委員会の委員など)
- 会社の役員・取締役(商工会議所、日本銀行の役員など)
- その他の職業(貸金業者の登録者、旅行業務取扱の登録者や管理者など)
上記資格・職業に該当する場合、個人再生であれば制限がかかることなく手続き期間中も働けます。
利息が発生しない
事前に定めた個人再生計画案どおりに返済を続ければ、返済期間が5年間だとしても利息が発生しません。
個人再生のデメリット以外に注意したい5つのポイント
ここでは個人再生のデメリット以外にも注意すべきポイントを解説します。
税金は減額対象にならない
個人再生が認められた場合でも、税金は減額対象になりません。
税金は他の債権よりも優先的に弁済を受けることができるため、一般優先債権に該当します。
手続き後は残債務を返済しなければならない
個人再生は自己破産と異なり、手続き後も残債務を返済しなければなりません。
減額後の借金を返済できる見込みがない場合、個人再生ではなく自己破産を検討しましょう。
個人再生が認められないケースもある
以下のケースに該当する場合、裁判所が個人再生を認めない場合もあります。
- 個人再生の費用が払えない
- すでに破産手続きが始まっている
- 再生計画案に問題がある
- 個人再生の申立が不正な目的で行われた
住宅資金特別条項が利用できないケースがある
個人再生は、住宅資金特別条項を利用すれば住宅ローンの支払いを残しつつ借金を減額できます。しかし、以下のケースに該当する場合、住宅資金特別条項が利用できないので、持ち家を手放さなければなりません。
- 個人再生の要件を満たしていない
- 自宅に住宅ローン以外の抵当権や差し押えが入っている
- 住宅ローンが代位弁済されている
- 今の住宅ローンに前の家の住宅ローンの残債務が組み込まれている
- 自宅の価値が残債務と比較して高すぎる
- そもそも住宅ローンがない
個人再生は会社にバレるのか?
個人再生は原則会社にバレることはありません。
ただし例外的に、会社に借金がある場合は裁判所から通知が届くので、個人再生がバレる可能性があります。
個人再生をする前に確認しておきたいポイント
ここでは個人再生をする前に確認しておきたい3つのポイントについて解説します。
退職金を受け取れる可能性があるかチェックする
個人再生では、将来受け取れる退職金も財産のひとつとして扱われます。
退職金を受け取れる見込みがある場合、裁判所に退職金見込額証明書を提出しなければなりません。
他の債務整理方法も検討する
借金問題を解決する手段としては、個人再生以外にも任意整理や自己破産があります。
任意整理 | 個人再生 | 自己破産 | |
借金に対する効果 | ・利息のカット
・返済期間の調整 |
最大90%減額される | 免除になる |
手続きに必要な期間 | 2~6ヶ月 | 4~6ヶ月 | 6ヶ月から半年以上 |
裁判所へ支払う費用 | 0円 | 約30万円前後 | 同時廃止:1~3万円
管財事件:50万円 |
手続き後の返済期間 | 3~5年 | 3~5年 | なし |
官報への掲載 | 掲載されない | 掲載される | 掲載される |
再度借り入れができるまでの期間 | 5年間 | 5~10年間 | 5~10年間 |
どのような人が向いているか | 利息なければ借金の返済ができそうな人 | ・持ち家を残しながら借金を減額したい人
・借金が減れば返済の見通しが立つ人 |
・財産や資産がない人
・借金の返済見込みがない人 |
抱えている借金額や所有している財産・資産、現在の収入によって、適している債務整理は異なります。
自分がどの手続きが適しているか判断できない場合は、弁護士に相談してアドバイスをもらいましょう。
過払い金が発生していないか確認する
借金の返済が長期にわたっている場合、過払い金が発生している可能性があります。
発生している過払い金の額によっては、個人再生をせずに済む場合もあります。
まとめ
個人再生には、デメリットがありますが、早い段階で手続きをすれば、自己破産で財産を手放すことを防げます。
借金の返済に苦しんでいる人や、財産を残しつつ借金の減額をしたいと考えている人は、ネクスパート法律事務所にご相談ください。