奨学金は自己破産できる?手続きした場合のメリット・デメリット - 債務整理は弁護士に相談【ネクスパート法律事務所】

奨学金は自己破産できる?手続きした場合のメリット・デメリット

「奨学金が返せなくなった場合も自己破産できる?」

「自己破産すると奨学金の保証人に請求が行く?」

奨学金が返せなくなった場合も自己破産できるのか気になる方もいらっしゃるでしょう。

奨学金が返せなくなった場合も自己破産できます。ただし、親や親族が(連帯)保証人になっている場合は注意です。自己破産で債務者の返還義務が免除されても、(連帯)保証人の返還義務は残ります。結果、自己破産をしても、結局親(保証人)が奨学金を支払うことになってしまいます。

自己破産での解決を図る場合は、このようなデメリットを把握しておかなければいけません。

この記事では、主に以下4点を解説します。

  • 奨学金は自己破産できる?
  • 奨学金を自己破産で解決するメリット
  • 奨学金を自己破産で解決するデメリット
  • 自己破産以外の奨学金の解決方法(重要

奨学金の返還にお困りの方は、ご参考になさってください。

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奨学金は自己破産できる?

奨学金は自己破産の免責の対象です。自己破産を申立て、支払不能と認められて免責を得られれば、奨学金の返還義務はなくなります。

日本学生支援機構の調査によると、同機構の奨学金返還者のうち、自己破産により奨学金が免責となった件数は、返還者本人について8,108件(うち保証機関分が475件)です(平成24~28年度)。

奨学金返還者本人(約410万人)のうち、平成28年度に新たに自己破産となった数(2,009件)の割合は、0.05%と報告されています。

参照:奨学金事業への理解を深めていただくために|JASSO

奨学金返還者の自己破産には、大きく分けて次の2パターンがあります。

  • 奨学金が返せなくて自己破産するパターン
  • 奨学金以外の借金が原因で自己破産するパターン

ここでは、各パターンの特徴と自己破産における取り扱いを説明します。

奨学金が返せなくて自己破産するパターン

奨学金が返せなくなる原因

奨学金返還者が破産に至る主な原因は、次の2つです。

  • 学費の高騰
  • 雇用の悪化

ひとつずつ説明します。

学費の高騰

奨学金が必要になる背景に学費の高騰があげられます。

(参考2)国公私立大学の授業料等の推移 (mext.go.jp)

1970年以降、授業料の値上げが繰り返され、2018年に日本学生支援機構が行った調査によると、大学生の約半数が奨学金を利用しています。

平成30年度学生生活調査 | JASSO

雇用の悪化

学費の高騰に比して、雇用情勢は悪化しています。非正規雇用の増加により、収入が低く奨学金の返還に回すお金が確保できない方が増えています。

日本学生支援機構の調査によると、2019年度末で奨学金の返還を3か月以上滞納している人は約15万人にも上ります。

令和元年度奨学金の返還者に関する属性調査結果 | JASSO

奨学金以外の借金がない場合

奨学金以外の借金がない場合、自己破産が認められない可能性があります。

自己破産の手続きは、支払不能の状態になければ開始されません。

奨学金の金利の上限は年率3%と低く、月々の返還金も平均1~2万円程度です。このため、裁判官が債務者の収入の範囲で返還を継続できると判断した場合、申立てが退けられる可能性があります。

奨学金以外に借金がない場合で、自己破産が認められる可能性があるのは、次のようなケースです。

  • 怪我や病気で長期にわたり働けない
  • 失業により収入が途絶えた
  • 奨学金の返還にあてられる財産がない
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奨学金以外の借金が原因で自己破産するパターン

奨学金の返還開始時は問題なく奨学金を返せていても、その後の事情により他の債務を抱えてしまうことも少なくありません。奨学金以外の借金がある場合は、奨学金を含めて全ての借金が免除されます。

ただし、自己破産には、非免責債権と呼ばれる免責されない債権がいくつかあります。

例えば…

  • 各種税金・社会保険料
  • 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償金
  • 故意・重大な過失により加えた人の生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償金
  • 養育費・婚姻費用
  • 罰金 など

奨学金を自己破産で解決するメリット

ここでは、奨学金を自己破産で解決するメリットを紹介します。

自己破産により奨学金の返還義務が免除される

自己破産最大のメリットは、免責を受けることで奨学金の返還を全額免除してもらえることです。

自己破産により奨学金以外の借金も免除される

自己破産で免責を受けると全ての債務が免除されます。

次のいずれのケースでも、奨学金を含めた全ての借金を同時に解決できます。

  • 奨学金以外の借金があって奨学金が返済できなくなった
  • 奨学金返還のために借金を抱えた

※ 非免責債権を除く

奨学金を自己破産で解決するデメリット

ここでは、奨学金を自己破産で解決するデメリットを説明します。

財産が処分される

自己破産では、原則としてその価値が20万円を超える財産は処分されます。

次に例を挙げる財産が20万円を超える場合は、自己破産により没収される可能性があります。

  • 預貯金
  • 所有不動産
  • 自動車
  • 生命保険

ただし、家具や家電を含む生活必需品や99万円以下の現金は手元に残せます。

資格や職業の制限を受ける場合がある

自己破産では、資格・職業の制限があります。

破産手続き開始決定後、免責許可決定が確定するまでの間、その資格を使用した仕事や職業に就けません。

制限を受ける代表的な資格・職業は次のとおりです。

  • 士業(弁護士・司法書士・公認会計士・税理士等)
  • 生命保険募集人
  • 警備員
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ブラックリストに載る

自己破産すると、信用情報機関に事故情報が登録(ブラックリストに載る)されます。

自己破産後、5~10年間は新規借入・カード発行が困難になります。住宅ローンや車のローンも組めなくなります。

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保証人に請求がいく

奨学金の主たる債務者が自己破産した場合、奨学金の返還残額は(連帯)保証人に請求されます。

親・親族が(連帯)保証人になっている場合

親・親族が(連帯)保証人になっている場合は、親・親族に請求されます。迷惑がかかる可能性がありますので、(連帯)保証人と相談をしてから自己破産を検討しましょう。(連帯)保証人が返済できない場合、同時に自己破産をするケースも少なくありません。

機関保証制度を利用している場合

保証会社のよる連帯保証制度(機関保証制度)を利用している場合は、家族や親族に迷惑がかかることはありません。

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自己破産以外の奨学金の解決方法【親が保証人になっている方必見】

ここでは、自己破産以外の奨学金の解決方法を解説します。

奨学金の救済制度の利用を検討する

日本学生支援機構は、次の3つの救済制度を設けています。

①減額返済制度

災害・傷病・経済困難・失業等により返還が困難な場合に利用できる制度です。

月々の返還金を2分の1~3分の1に減額し、返還期間を延長します。

ただし、減額返還制度は、既に延滞が生じている場合は利用できません。

月々の返還額を少なくする(減額返還制度) | JASSO

②返済期間猶予制度

災害・傷病・経済困難・失業等により返還が困難な場合に利用できる制度です。

返還を先送りにすることができます。1回の申請で1年間返還が猶予され、通算10年まで返還期間を延長できます。

この制度は、延滞が生じている場合も利用できる可能性があります。

返還を待ってもらう(返還期限猶予) | JASSO

③返還免除

次の場合に、残っている奨学金の全部又は一部の返還が免除される制度です。

  • 本人が死亡し返還ができなくなったとき
  • 精神若しくは身体の障害により労働能力を喪失または労働能力に高度の制限を有したとき

返還が免除となる場合(返還免除) | JASSO

他の債務整理を検討する

自己破産以外の債務整理で奨学金を解決できる場合もあります。

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奨学金は任意整理で解決できないことが多い

奨学金以外の借金がある場合、任意整理は借金減額に有効です。ただし、借金が奨学金しかない場合は、次のとおり任意整理で解決できない可能性があります。

日本学生支援機構は任意の交渉に応じにくい

任意整理とは、貸主・借主の話し合いにより、返済方法の変更を交渉する手続きです。

日本学生支援機構は、任意整理の交渉に応じないと言われています。日本学生支援機構の奨学金についても、次のとおり任意整理によるメリットが享受できません。

もともと利率が低いので任意整理の恩恵が薄い

任意整理は、主に利息のカットで借金の減額を図ります。奨学金は利息制限法の上限よりはるかに低い利率であるため、任意整理による借金減額のメリットを受けることは期待できません。

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個人再生を利用するには安定した収入が必要

安定した収入を得る見込みがある場合は、個人再生の利用を検討できます。

個人再生は、裁判所を介して借金を概ね5分の1に減額し、減額後の借金を3~5年で返済する制度です。

個人再生では再生計画案とおりの返済を継続しなければならないため、無職・収入が不安定な方は利用が困難です。

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まとめ

奨学金が返せない場合も自己破産を利用できますが、奨学金の解決方法は自己破産だけではありません。

奨学金以外の借金を整理すれば、問題なく奨学金を返還できるケースもあります。

どの方法を選択すれば連帯保証人に迷惑をかけずに済むかも含め、奨学金の返済に困っている方は、まずは弁護士に相談しましょう。

弁護士に依頼すれば、個々の事情に応じた解決方法を提案してもらえます。

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