自己破産すると連帯保証人にどんな影響がある?
家族・親戚や親しい友人に「連帯保証人になって欲しい」と頼まざるを得ない状況もあるでしょう。自分が返済すれば連帯保証人に迷惑をかけないと考えがちですが、連帯保証人には債務者本人と同様に重い責任が生じます。
お金を借りた人が返済できなくなると、連帯保証人である家族・親族や友人とトラブルに発展することも考えられます。
この記事では、主に次の事項について解説します。
- 自己破産による連帯保証人への影響
- 連帯保証人が返済すべき借金の範囲
- 自己破産しても連帯保証人になれる?
- 主債務者が自己破産して連帯保証人も払えない場合の対処法
- 連帯保証人が自己破産した場合の主債務者への影響は?
借金が返済できず連帯保証人に迷惑をかけると悩んでいる方や、連帯保証人になることを検討している方はご参考になさってください。
目次
自己破産による連帯保証人への影響
ここでは、自己破産による連帯保証人への影響について解説します。
債権者から一括請求を受ける
主債務者(借金をした本人)が自己破産すると、債権者は連帯保証人に債務残額を一括請求します。
自己破産で主債務者の債務が免責されても、連帯保証人の保証債務は免責されません。
主債務者の破産手続開始により期限の利益(分割返済できる利益)を喪失します。そのため、債権者は連帯保証人に対し、残金を一括で請求します。
連帯保証人が一括返済できない場合、分割返済することは可能か?
連帯保証人が一括返済できない場合、債権者との交渉によっては、分割返済に応じてもらえる可能性があります。
主債務者が自己破産した状況では、債権者は債権を早期に回収したいと考えているため、分割返済の交渉が成立する可能性は低くなります。しかし、連帯保証人の連鎖破産を避けるため、債権者が分割返済に応じる価値があると判断した場合、交渉により合意を得られるケースもあります。
財産を差し押さえられる可能性がある
主債務者が自己破産すると、連帯保証人の財産が差し押さえられる可能性があります。連帯保証人は、主債務者が所有する財産から先に取り立てるよう要求できる権利(催告・検索の抗弁権)を持ちません。そのため、債権者は主債務者の破産手続きの処分・配当を待たずに、連帯保証人の財産を差し押さえることがあります。
債権者に返済をしても主債務者に求償権を行使できない
本来、連帯保証人が主債務者に代わって借金を返済した場合、主債務者に肩代わりした分を返してほしいと請求できる権利(求償権)を持っています。
破産手続開始前に保証契約を締結していた場合で、保証人が主債務者の破産手続開始をきっかけに主債務の弁済をしたときは、この求償権は破産債権になります。
主債務者が自己破産すると、この求償権も免除されます。よって、連帯保証人が主債務者に代わって借金を返済しても、その分を主債務者に請求できません。
ただし、自己破産終了後、主債務者が自発的に返済する場合は、これを受け取れます。
連帯保証人が返済すべき借金の範囲
ここでは、主債務者が自己破産した場合、連帯保証人が返済すべき借金の範囲を説明します。
住宅ローン返済中の場合
連帯保証人には、主債務者が払えなくなった住宅ローンの残金全額を返済する義務が生じます。
抵当権が設定されている場合、通常は、債権者が担保権を実行して残債務を回収し、それでも満たなかった場合は、連帯保証人に請求します。例えば、住宅ローンの残債務が1,500万円で、債権者が任意売却もしくは強制競売によって1,000万円回収できれば、その残額である500万円を連帯保証人に請求します。
しかし、債権者は担保権の実行と連帯保証人への請求のいずれを優先するか自由に選べます。任意売却や強制競売による早期回収が困難なケースでは、連帯保証人に住宅ローン残金全額を請求することもあります。
車両ローン返済中の場合
連帯保証人には、主債務者が払えなくなった車両ローンの残金全額を返済する義務が生じます。
一般に、債権者は車両ローン契約に所有権留保特約(ローンの返済が完了するまで所有権はローン会社にあること)を設けます。これにより、債権者は車を引き上げて換価することができます。
車の引き上げと連帯保証人への請求のどちらを優先するかは、債権者が自由に選択できます。車の価値が低い場合は、連帯保証人への請求が優先されるケースも多いでしょう。
奨学金返済中の場合
奨学金に連帯保証人がいる場合、連帯保証人は主債務者が返還金全額の返済義務を負います。
保証会社が保証する機関保証制度を利用している場合は、保証会社が返済するので、家族や親族に迷惑がかかることはありません。
連帯保証人が一括返済できない場合は、分割返済を交渉する余地があります。日本学生支援機構ほか奨学金の債権者に相談しましょう。
賃貸借契約期間中の場合
賃貸借契約の契約者本人が家賃を滞納した状態で自己破産すると、連帯保証人に滞納分が請求されます。
家賃の滞納がない場合は、契約者本人が自己破産しても、原則として連帯保証人に影響はありません。
連帯保証人に迷惑をかけたくない場合は自己破産以外の債務整理を検討する
ここでは、連帯保証人に迷惑をかけずに借金を解決する方法を紹介します。
任意整理
連帯保証人に迷惑がかからない債務整理の方法として、任意整理があります。
任意整理は、裁判所を通さず、貸主と借主の直接交渉により返済方法を変更する手続きです。
任意整理は、債権者を自由に選べるので、連帯保証人のいる借金を整理の対象から外せます。
特定調停
連帯保証人に迷惑がかからない債務整理の方法として、特定調停があります。
特定調停は、簡易裁判所の調停員が仲介役となり、貸主と借主の間で返済方法の変更等の合意を促す債務整理の手続きです。特定調停も、債権者を自由に選べるので、連帯保証人のいる借金を整理の対象から外せます。
自己破産しても連帯保証人になれる?
ここでは、自己破産後も連帯保証人になれるかについて解説します。
自己破産後も連帯保証人になれるケース
自己破産後も連帯保証人になれる主なケースは、次のとおりです。
- 信用情報機関の照会を行わない契約
- 保証会社を通さない賃貸借契約
ひとつずつ説明します。
信用情報機関の照会を行わない契約
審査時に貸主や保証会社が信用情報機関に照会しない契約については、自己破産後も連帯保証人になれる可能性があります。
信用情報機関に照会しない契約の具体例は次のとおりです。
- 中古車販売店の自社ローン
- 個人間の融資
保証会社を通さない賃貸借契約
保証会社を通さない賃貸借契約については、自己破産後も連帯保証人になれる可能性があります。保証会社を通さずに賃貸借契約が締結できる典型例は次のとおりです。
- 敷金・保証金を上乗せした場合
- 定期借家契約の場合
- 賃料をクレジットカード払いにした場合
ただし、自己破産者は連帯保証人になれない旨の規約がある場合は、連帯保証人になれません。
自己破産後は連帯保証人になれないケース
次の契約では、信用情報機関の照会を経るため、連帯保証契約の審査に落とされる可能性があります。
- 住宅ローン
- 金融機関との取引
- 奨学金
- 保証会社を通す賃貸借契約
住宅ローン
住宅ローンの連帯保証契約の審査では、連帯保証人候補者の個人信用情報を照会します。自己破産者は、返済能力がないと判断され連帯保証人になれる可能性は低いでしょう。
金融機関との取引
金融機関との取引における連帯保証契約では、連帯保証人候補者の個人信用情報を照会します。自己破産者は、返済能力がないと判断され連帯保証人になれる可能性は低いでしょう。
奨学金
奨学金の契約では、連帯保証人の資格として過去5年以内に自己破産していない旨定められていることがあります。自己破産者が連帯保証人になれる可能性は低いでしょう。
保証会社を通す賃貸借契約
保証会社を通す賃貸借契約では、信用情報機関の照会を得るため、連帯保証人になれない可能性があります。しかし、保証会社を通す場合は、連帯保証人を設けなくても賃貸借契約が締結できるケースが多いので、契約者本人の信用情報に傷がなければ問題となる場面はないでしょう。
主債務者が自己破産して連帯保証人も払えない場合の対処法
ここでは、主債務者が自己破産し、連帯保証人も払えない場合の対処法を紹介します。
連帯保証人も、次のいずれかの債務整理を検討する必要があります。
任意整理
任意整理は、裁判所を介さず、当事者が交渉により返済方法を変更する手続きです。連帯保証人も任意整理を利用できます。
連帯保証人による直接交渉で債権者が分割返済に応じなかった場合も、弁護士を通すことで任意整理に応じてもらえるケースがあります。任意整理では、次の方法で借金減額を図ります。
- 将来利息のカットにより返済総額を減額
- 返済期間の延長により月々の返済額を減額

特定調停
特定調停は、簡易裁判所の調停委員が仲介役となり、返済方法の変更等について、当事者間の合意を促す手続きです。
連帯保証人による直接交渉で債権者が分割返済に応じなかった場合も、裁判所を通すことで交渉に応じてもらえるケースがあります。特定調停では、次の方法で借金減額を図ります。
- 将来利息のカットにより返済総額を減額
- 返済期間の延長により月々の返済額を減額
個人再生
個人再生は、裁判所に申立てて、借金を概ね5分の1に減額し、減額後の借金を原則3年(最長5年)で返済する手続きです。保証債務のほか、連帯保証人固有の債務も対象となります。連帯保証人がマイホームを持っている場合は、住宅ローンの返済を続けながら自宅に住み続けられます。
自己破産
自己破産は、裁判所に申立てて、全ての借金の支払義務を免除してもらう手続きです(非免責債権を除く)。保証債務のほか、連帯保証人固有の債務も対象となります。
ただし、一定の財産がある場合は没収されます。
連帯保証人が自己破産した場合の主債務者への影響は?
ここでは、連帯保証人のみが自己破産した場合の主債務者への影響を解説します。
主債務者に及ぼす影響は少ない
主債務者が問題なく返済していれば、連帯保証人が自己破産しても、主債務者に影響を及ぼすことはありません。
連帯保証人は原則続けられなくなる
自己破産すると、返済能力がないと判断されますので、原則として連帯保証人を続けられません。連帯保証人の自己破産を知っても、債権者が引き続き連帯保証人になることを認めた場合は、連帯保証人を継続できます。
債権者が新しい連帯保証人を用意するよう求めた場合は、主債務者はこれに応じなければなりません。万一、別の連帯保証人を用意できない場合、契約違反となり主債務者が一括請求されることもあります。
相互に連帯保証人になっている場合は要注意
主債務者と連帯保証人がお互いに連帯保証人になっているケースは要注意です。
例えば、夫婦が個別に住宅ローンを組んで、それぞれが連帯保証人になるペアローンがあります。この場合、夫婦の一方が自己破産した場合、他方の夫婦に返済する能力がなければ連鎖的に自己破産するケースも少なくありません。
住宅ローン以外の借金を減額できれば、住宅ローンの返済を続けられるケースでは、自己破産以外の債務整理を検討できます。
まとめ
主債務者が自己破産すると、原則として連帯保証人に一括請求されます。
連帯保証人が支払えない場合、連帯保証人も債務整理を検討しなければなりません。
連帯保証人には迷惑をかけたくない場合は、自己破産以外の債務整理を利用するのも一つの手段です。
個別の事情については弁護士に相談することをおすすめします。