自己破産すると家族はどうなる?同居家族や親族への影響
借金問題を解決する強力な方法である自己破産手続きですが、手続を行うことで家族をはじめとする周囲の人への影響を心配されている方は多いのではないでしょうか。
自己破産をすることで連帯保証人である家族や親戚に対する影響、手元にある大きな財産を処分するといった影響はありますが、多くの誤解もあるようです。
ここでは自己破産をすることで家族へ与える影響とよくある誤解ついて、わかりやすく解説します。
目次
自己破産で影響が出る家族と内容
以下にあげられる家族には、自己破産で影響が出ることは避けられません。
同居している家族
自己破産手続きでは、持ち家や車といった原則20万円以上の価値のある財産はお金に換えなければなりません。
そのため転居が必要になったり、自家用車を使えない生活になったりすることもあります。
そのような生活の変化は、当然ながら同居の家族に実質的な影響を与えることになります。
一方同居しているからといって、家族も破産者になるわけではありません。
破産手続きは債務を負った者の再起を図る手続きですので、家族が債務を負っていない場合、手続きの当事者にはなりません。
連帯保証人もしくは保証人となっている家族
自己破産手続きが開始すると、債権者は債務者に対し督促などの取立て行為が禁止されます。
そのため残された債権の回収を図るため、連帯保証人や保証人に請求を行います。
もし家族が連帯保証人や保証人になっていた場合、残債務に対し一括で請求されることになり影響は避けられません。
しかし配偶者や父母、子供であっても、連帯保証人や保証人でない限り債権者から請求はされません。
大昔のテレビドラマであったように「親の借金は子供の借金だ」とか、「この借金は親が面倒を見なければならない」ということは連帯保証人や保証人でない限りありません。
不動産や自動車など財産を共有している家族
財産を共有しているとはいえ家族自身は破産の当事者ではないので、家族が所有している財産は影響なく持ち続けることが可能です。
しかし破産手続きの前後に所有権を移転している場合などは、所有権移転がなかったことにされる可能性があります。
また不動産の場合、共有者の持分のみを強制的に売却する手続きがとられることがあります。
自宅の土地建物の持分2分の1だけを強制的に競売しても、入札者が現れて落札すれば売却となります。
残りの持分を所有している家族に、実質的な影響はあると言えるでしょう。
自己破産すると家族はどうなる?具体例を紹介
自己破産すると家族にどのような影響があるのか。実際にイメージしやすいように、具体例をあげて紹介します。
家や車を失う可能性がある
自己破産をすると、破産者の財産は原則として処分され、借金の返済に充てられます。家や車は財産と見なされるため、破産手続きの中で売却される可能性があります。
売却されるのは破産者が所有する車のみですが、破産者の車がなくなることで家族全員に迷惑がかかる可能性があるでしょう。
保証人であれば借金を肩代わりする
自己破産者が借金を背負っている場合、その借金の保証人や連帯保証人が家族であることが多いです。
保証人になっている場合、自己破産をしたとしても、保証人には返済義務が移行します。
家族が保証人になっていると、その借金を肩代わりすることになり、経済的な負担が家族全体にのしかかります。
最悪の場合、保証人まで自己破産することになるでしょう。
破産者名義のクレカの家族カードが使用不可に
自己破産をすると、破産者名義で持っていたクレジットカードはほぼすべて使用できなくなりますが、その家族カードも影響を受けます。
家族カードは、破産者のクレジットカードがベースになって発行されているため、破産手続き後には利用できなくなります。
家族がそのカードを使用していた場合、買い物や生活費の支払いに支障をきたすことがあります。
生命保険が解約になる可能性がある
自己破産をすると、破産者が契約していた生命保険が解約される可能性もあります。
特に、積立型の生命保険に加入していた場合、その解約返戻金が破産手続きの対象となることがあり、保険が解約されてしまうことがあります。
この影響を受けるのは、破産者だけでなく、その家族にも及ぶことがあります。家族の保障が失われることで、家族が生活の不安を感じる可能性もあります。
子どものための貯金を失う可能性がある
破産者が子どものために貯金をしていた場合、その貯金が破産手続きの対象となることがあります。
特に、子どものために貯金している場合でも、破産者のお金だとみなされると、差し押さえられる可能性があります。
このような場合、子どもの教育資金や将来のために積み立てたお金を失うことになり、家族の生活設計が大きく狂うことになります。
破産者は家族の保証人になれない
自己破産をすると、ブラックリストに登録されるため、新たに借入をすることが困難になります。
そのため、誰かの借金の保証人になることもできなくなります。
これにより、家族が新たに住宅ローンを組んだり、クレジットカードを作ったりする際に、破産者が保証人として関わることができなくなります。
結果として、家族がローンを組む際に他の保証人を立てなければならず、手続きが煩雑になるなど、家族に対しても負担をかけてしまうことになります。
自己破産でよくある誤解
自己破産することで家族にも起こると誤解されていることを、解説します。
家財道具はすべて持っていかれる
破産手続きを行っても、99万円以下の現金(裁判所により差があります)や生活に最低限必要な家財道具や電化製品、1ヶ月分の食料や燃料などを処分されることはありません。
従って、無一文になって明日から生活できないといったことにはなりません。
近所の人に知られる
破産者自身が破産した事実は政府の機関紙である官報に記載されますが、通常の新聞に載ることはありません。
自宅に張り紙がされるようなこともありませんので、近所の人に当然に知られることはありません。
郵便物も手続きを弁護士に依頼すれば、破産関係の文書は弁護士宛に届きます。さらに知られにくくなります。
引越しや旅行ができなくなる
自己破産をすると引越しも海外旅行も出来なくなると言われているようですが、少し誤解があります。
この義務が課されるのは主に財産の配当手続を行う管財事件と呼ばれるケースで、しかも破産手続きが終了すれば制限はなくなります。
また事情があり裁判所の許可が得られれば、転居も海外旅行も可能です。
個人における自己破産の大半は、同時廃止事件と呼ばれる手続きにより行われ、管財事件とは異なり財産の処分・配当手続さえ行われないものですので、大きな誤解といえるでしょう。
戸籍や住民票に記載される
自己破産した事実は、戸籍や住民票に記載されません。
市町村に備え置かれた破産者名簿には記載されますが、第三者が勝手に見ることはできず、免責決定が確定すれば削除されます。
給料が差し押さえられる
自己破産を行う手続きと給料を差し押さえられる手続きは、全く別個のものです。
債務があることを裁判所が裁判で認めた等の場合で、債務が支払われない時に債権者は給料を一定の範囲内で差し押さえることができます。
しかし破産手続きの開始決定がされると、以後給料の差し押さえはできなくなります。
それまで差し押さえられていた場合も、免責決定が確定すれば差押は失効します。
自己破産を行うと、給料が差し押さえられるどころか給料の差し押さえはできなくなり、それまでされていた差押も効力を失うのです。
年金が受け取れなくなる・生活保護が打ち切られる
自己破産によって年金の支給がなくなったり、差し押さえられたりするようなことはなく、生活保護を打ち切られるようなこともありません。
家族全員がブラックリストに登録される
自己破産をした際にブラックリストに登録されるのは、自己破産した本人だけです。
家族の信用情報には影響がないため、借入やクレジットカードの新規作成を行ったりすることも可能です。
子どもの進学や就職に影響する
自己破産をするほどお金がないことによって進路が限定されることかもしれませんが、自己破産自体が子どもの進学や就職に直接影響することはありません。
自己破産を家族に秘密でするのは難しい?
同居家族がいると難しい
自己破産の手続きでは、破産者の収支状況が詳細に確認されます。
生計を共にしている家族がいる場合、世帯全体の収入状況を把握する必要があるため、同居する家族の収入についても調査が行われることがあります。
たとえば、家族の給与明細や確定申告関連の書類を裁判所に提出するよう求められるケースです。
そのため、同居家族に秘密で破産手続きを進めるのは難しいでしょう。
自宅や車などの財産があると難しい
自宅や車などの高価な財産を所有している場合、それらが破産手続きの対象になることがあります。
もし、これらの財産が家族と共有しているものであったり、家族が日常的に使用しているものであった場合、秘密にすることは困難です。
家族の同意なしに財産を処分することは難しく、手続きが進むにつれてその事実が明らかになることは避けられません。
例えば、破産者が自宅に住んでいる場合、その家が売却されて新しい住居を探す必要が生じるかもしれません。
このような場合、家族に何の説明もなく引越しをすることは現実的ではなく、秘密にしておくことは非常に難しくなります。
同居していなければ秘密にしやすい
一方で、同居していない家族に対しては、自己破産を秘密にすることが比較的容易です。
破産手続きにおいて、家族に対する影響が最も大きいのは同居している場合であり、別々に住んでいる家族には、財産の処分や引越しなどの影響が及ぶことは少ないため、周囲に知られるリスクが低くなります。
そのため、自己破産を秘密にして手続きを進めることが可能な場合もあります。
しかし、別居しているとはいえ、自宅を手放して賃貸物件に引っ越したりすれば、不審に思う家族もいるかもしれません。
ですので、別居している家族に秘密にできるかどうかは、財産の有無などが影響するでしょう。
秘密にしたければ別の債務整理を検討する
自己破産を家族に秘密にしたい場合、別の債務整理手段を検討することも一つの方法です。
例えば、任意整理や個人再生などは、自己破産に比べて家族への影響が少なく、秘密にしやすい債務整理の方法です。
【任意整理】
任意整理は、弁護士や司法書士を通じて債権者と交渉し、返済条件を見直す手続きです。
この方法では、工夫次第で財産の処分を避けることができ、家族に与える影響を少なくできます。
【個人再生】
個人再生は、一定の範囲内で借金を減額し、残りを数年かけて分割返済する方法です。自己破産とは違い、自宅を残せる可能性があります。
どちらも、自己破産のように全額免除がされるわけではありませんが、家族に秘密で進めやすい債務整理方法として検討する価値があります。
自己破産するときに家族へ極力迷惑をかけないためには?
自己破産をすると、どうしても家族に少なからず影響が及びます。しかし、手続きの進め方次第では、家族への負担を最小限に抑え、スムーズに破産手続きを終えることが可能です。
以下に紹介するポイントは、必ず守るようにしましょう。
財産隠しや処分をしない
自己破産の際、破産者が所有している財産の中で、価値のあるものは売却されますが、それを防ぐために、財産隠しや名義変更などをする人がいます。
これが発覚すると、最悪の場合、自己破産が認められなくなる可能性があります。そうなれば家族に迷惑がかかるのでやめましょう。
特定の債権者を優遇しない
自己破産において、債務者はすべての債権者に対して平等に対応する義務があります。債務者は債権者平等の原則にのっとって、借金を均等に返済しなければならないのです。
自己破産前に、特定の借金だけを優遇して返済する行為は、残りの債権者に損害を与える行為であり、認められていません。
これも発覚すると、自己破産が認められなくなる可能性があるので、注意してください。
財産保護目的の離婚をしない
財産隠しや財産保護の目的で、自己破産前に離婚をし、財産分与で配偶者に財産を逃がす方法がありますが、これも不正行為ですのでやめましょう。
裁判所は、破産者の動きや口座のお金の動きを数年さかのぼってチェックできます。財産を隠すために離婚をしたことも確実にばれてしまうでしょう。
これが発覚すると、自己破産ができないだけでなく、家族も詐欺罪に問われる可能性があるため、絶対にやめてください。
正当な方法で破産をするのが、家族にとっても一番いいでしょう。
まとめ
自己破産手続きにおいて確かに家族に影響があるケースがありますが、よく誤解もされているようです。
数多くの解決経験に裏打ちされた当事務所では、ご家族への影響を含めて丁寧に手続きについて説明いたします。