自己破産のやり方と自己破産したいけどお金がない場合の対処法 - 債務整理は弁護士に相談【ネクスパート法律事務所】

自己破産のやり方と自己破産したいけどお金がない場合の対処法

自分が抱えている借金が大きすぎたり、収入と返済が全く釣り合っていなかったりすると、最終的に自己破産が頭をよぎります。

自己破産=借金の返済がすべて免除される手続き、までは知っていても、手続きの種類ややり方については知らない方が多いでしょう。

この記事では自己破産の種類や特徴、手続きのやり方、お金がない場合の対処法などを紹介します。

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自己破産の手続き方法は3種類

まず、自己破産の手続きには大きく分けて2種類あることを理解しましょう。

  1. 同時廃止事件
  2. 管財事件(③少額管財事件)

基本的には同時廃止か管財事件のどちらかとなり、管財事件を簡略化したものが少額管財事件であるようなイメージです。

それぞれが適用される条件や特徴などを紹介します。

同時廃止事件

まずは同時廃止。最もシンプルな自己破産の手続きです。

日本弁護士連合会の「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査 」によると、全体の約70%が同時廃止となっています。

下記画像をご覧ください。自己破産の流れを簡単な図にしたものです。

①で必要書類の準備や作成を行い、②で地方裁判所に対して自己破産の申立て(申し込み)を行います。

地方裁判所は、申立て人の自己破産の手続き開始を認めるかを判断するための面談を実施。

②の申し立てが受理されれば、③破産手続きの開始が決定します。

同時廃止の場合、この破産手続きの開始と同時に手続きの廃止(完了)も決定します。

このように、破産手続きの開始決定と同時に借金がなくなるのが同時廃止の特徴です。

同時廃止手続きは、破産者がこれといった財産を所有していないことや、破産者に後ろめたい行為(免責不許可事由)がないことが明らかな場合に適用されます。

破産者が財産を所有している場合や、免責不許可事由がある場合、その調査や売却などの業務があるため、同時廃止とはならず、管財事件として扱われます。

管財事件

管財事件は、破産手続きが同時廃止事件として扱われなかった場合に適当されます。

上記の図をもう一度見てみましょう。

同時廃止事件の場合、③の破産手続き開始の決定と廃止(完了)が同時に決定すると説明しましたが、管財事件の場合そうはいきません。

管財事件の場合、③の破産手続き開始決定の後、裁判所が選任した弁護士(破産管財人)が、破産のための調査や業務を行います

管財事件として扱われる条件と理由は以下になります。

条件 理由
破産者が20万円以上の価値がある財産を所有している場合 破産管財人が申立人の財産の調査や売却をし、債権者に配当しなければならないため
法人や個人事業主の破産の場合 破産管財人が、会社の借入や保有株式、事業備品の整理や調査、売却をしたうえで債権者に配当しなければならないため
破産者に免責不許可事由がある場合 破産管財人が、「免責不許可事由」があったとしても、自己破産を認めるかどうか判断するため

つまり、管財事件は、④自己破産の許可・不許可を決める前に、財産の処分や調査を行わなければならない場合に適用されます。

免責不許可事由とは、これに該当すると自己破産が認められない行為のことをいいます。

例えばギャンブルや浪費で借金を作った場合、破産者がきちんと反省してギャンブルを辞めているか、収支に合った生活ができているかなどを、家計収支表や面談を通じて細かくチェックします。

管財事件になると、自分が自己破産を依頼した弁護士の費用破産管財人の報酬の両方がかかるため、同時廃止と比べると手続き費用も高くなります。

また、負債額に応じて予納金を支払う必要も出てきます(同時廃止の場合、予納金は不要)。

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少額管財事件

少額管財事件は、管財事件の手続きを簡略化したものといえるでしょう。

具体的には、管財事件として扱うほどの財産を所有していない、破産管財人の業務内容が少ない場合などに適用されます。

通常の管財事件ほど調査や業務に時間がかからないため、手続き期間を圧縮することができますし、破産管財人への報酬や、裁判所への予納金も抑えることができます。

自分で行う場合の自己破産のやり方・流れ

なるべく費用を浮かせたいなどの理由で、弁護士に依頼せず、自分で破産手続きをしたい、と考える人もいるはずです。

自己破産は自分で手続きをすることも可能ですので、そのやり方や流れを紹介します。

①必要書類の準備

まず、申立てに必要な書類を作成や収集を行いましょう。以下に必要書類の例をあげます。

  • 申立書
  • 陳述書
  • 債権者一覧表
  • 財産目録
  • 給与明細、確定申告書、課税証明書など収入を証明する書類
  • 戸籍謄本・住民票
  • アパートの賃貸借契約書、登記簿謄本など住居に関する書類
  • 不動産登記簿謄本、預金通帳、車両売却査定書など、財産に関する書類

必要書類や記入の仕方などは、申立てをする地方裁判所によっても異なりますので、正確な情報は管轄の地方裁判所に問い合わせし、確認を行いましょう。

②管轄の裁判所へ申立て

必要書類を揃えることができたら、管轄している地方裁判所に提出し、破産の申し立てを行いましょう。

申立て手数料や予納郵券、官報掲載料が必要になります。費用の目安は、以下のとおりです。

  • 申立て手数料…1,000~2,000円程度
  • 予納郵券…数千円(裁判所によって異なる※)
  • 官報掲載料…1万~1万5千円程度

※東京地方裁判所の場合、予納郵券の金額・内訳は以下のとおりです(2024年9月24日~)。

金額 内訳
4,950円 ・500円×4枚
・180円×1枚
・110円×22枚
・50円×4枚
・10円×15枚

③裁判所で破産審尋を受ける

自己破産申立て後は、裁判所で裁判官と面談を行います。

これを破産審尋(はさんしんじん)と呼びますが、弁護士に依頼していない場合には1人で臨むことになります。

破産審尋では、申立て書類の内容の確認や、自己破産が妥当かどうか、どの手続きを適用するかなどを判断します。

破産管財人が選任されない同時廃止の場合は不要ですが、管財事件や少額管財となった場合には、裁判所に予納金を支払うことになります。

同時廃止の場合、破産審尋を省略する裁判所もあります。

④破産手続きの開始

裁判所が、自己破産をするのが妥当と判断し、予納金の支払いが済めば、自己破産の手続き開始が決定します。

同時廃止の場合は、破産手続開始決定と同時に破産手続を廃止するので、破産管財人は選任されません。

管財事件の場合は、破産管財人が選任され、以下の業務を行います。

  • 破産者の財産の調査、売却、債権者たちへの配当
  • 債権者集会(債権者への説明や報告を行う) など

⑤免責審尋

ここで2度目の面談が行われます。

免責審尋(めんせきしんじん)と呼びますが、これは、免責許可を出すための最終確認に近いイメージです。

裁判官から直接質問をされるので、正直に答えていきましょう。

  • 名前、住所、本籍地などに間違いはないか
  • 提出した書類に間違いはないか
  • 自己破産の趣旨を理解しているか
  • 免責不許可事由はないか
  • 今後の生活の債権に関する計画や心構え など

免責審尋は5~10分ほどで終わりますが、集団で行う(集団審尋)ことが多いため、多少の待ち時間が発生するかもしれません。

免責不許可事由がない場合には、免責審尋を省略している裁判所もあります。

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⑥免責の決定

免責審尋から1週間程度で、破産(免責)の許可に関する通知が届きます(不許可の通知が届く可能性もあります)。

ここから2週間以内で債権者から不服申し立てがなければ、正式に借金の支払いが免除されます。

自己破産の手続きを自分で行うデメリット

自己破産を自分で行う場合の流れを説明しましたが、ここでは、自己破産を自分で行うデメリットを紹介します。

費用が高くなる可能性がある

破産手続きを自分で行った場合、結果として、弁護士に依頼するより費用が高くついてしまう可能性があります。

自分で手続きを行った場合、書類の不備や内容不足が原因で、破産管財人による調査が必要(管財事件にする)と判断されてしまう場合があるからです。

管財事件になった場合、借金額に応じて裁判所に予納金を支払わなければなりません。

予納金の金額は負債額に応じて変化しますが、負債5,000万円以下の場合でも、50万円になります(東京地裁の場合)。

予納金は弁護士費用と違い、分割払いに応じてもらえない可能性も高いです。

弁護士に依頼すれば同時廃止で済むケースでも、自分で手続きをしたことで管財事件になり、結果として費用が高くなる可能性があることを覚えておきましょう。

準備の手間や手続きが大変

法律や自己破産の知識がない一般の方が、自分で手続きを行うのは簡単ではありません。

申立て前の準備も大変ですし、その後の手続きにも時間がかかります。

弁護士に依頼し、同時廃止手続きになれば、数ヶ月で手続きを終わらせることができます。

しかし、自分で手続きをしたことがきっかけで管財事件となれば、半年~1年と手続きに長期間を要することになります。

自分で手続きをすることで、結果として遠回りになってしまう可能性があることを覚えておきましょう。

債権者からの取り立てが止まらない

自己破産を弁護士に依頼すると、債権者からの取り立てがストップします。

それは、債務者が債務整理を弁護士に依頼した場合、債権者は債務者に対して取り立てに関する行為を行ってはいけない、と法律で定められているためです(貸金業法第21条 取立て行為の規制)。

弁護士に依頼をすれば、取り立ての電話や手紙がストップしますが、自分で手続きをする場合、破産手続きが開始決定するまで、取り立てが止むことはありません

手続きに手間取ってしまえばその間に裁判を起こされてしまう可能性もありますし、精神衛生上もよくないでしょう。

免責が認められない可能性がある

弁護士に相談をすれば、自己破産が認められそうかどうかの客観的な意見を聞くことができますが、1から10まで自分で手続きをする場合、その判断が難しくなります。

書類の不備で免責が認められない可能性もありますが、そもそも自己破産の条件を満たしていない、という理由で破産が不許可になる可能性があります。

免責不許可事由に当てはまる行為をしてしまっている場合は特に免責が認められにくくなりますので、事前に弁護士に相談するのがおすすめです。

自己破産したいけどお金がない場合の対処法

自己破産したいけどお金がない場合の対処法を紹介します。

弁護士に依頼する

現状、弁護士に依頼するためのまとまった費用がなくても、定期的に収入がある人でしたら弁護士に依頼することができるかもしれません。

以下、一般的な債務整理の弁護士費用の支払いの流れについて説明します。

  1. 弁護士に依頼する
  2. 弁護士から債権者へ受任通知が送られる
  3. 債権者からの取り立てがストップし、返済もしなくてよくなる
  4. 今まで返済に充てていたお金を弁護士費用として積み立てていく
  5. 破産に必要な費用が貯まったら弁護士が業務に着手する

つまり、弁護士に自己破産を依頼した時点で、借金の返済をストップさせることができるため、その間に弁護士費用を支払うことができるのです。

これから借金を清算しようとしている人が、まとまった費用を持っていないことは弁護士事務所も想定済みのため、このような支払い設計にしているケースが多いです。

別の方法で借金を整理する

同時廃止になるか、管財事件になるかによっても変わりますが、自己破産以外の手段で債務整理をすることで費用を抑えることができます。

手続き名 内容 費用
任意整理 裁判所を通さず、債権者と直接交渉することで借金を減額する 交渉1社につき2~5万円程度
個人再生 裁判所を通して、最大5,000万円までの借金を5~10分の1まで減額する 40万円~(弁護士費用)
自己破産 裁判所を通して、借金の返済を免除する ・40万円~(弁護士費用)
・20万円~(少額管財の場合)※
・50万円~(管財事件の場合)※

※少額管財もしくは管財事件となった場合、弁護士費用の他に、上記の裁判所費用がかかります。

同時廃止事件となった場合、自己破産と個人再生を比較してもそこまで弁護士費用に違いはありません。

ですが、管財事件になる場合、破産管財人への報酬や裁判所への予納金を支払わなくてはなりません。

個人再生と管財事件(自己破産)の費用を比較すると、個人再生の方が安く済むのは明らかです。

自己破産のように、借金すべてを無くすことはできませんが、総合判断の上で、別の債務整理手続きを選択するのがいい場合もあるでしょう。

法テラスを利用する

現状収入がなく、必要な費用を捻出するのが難しい方は、法テラスを利用して自己破産手続きをすることができます。

法テラスは、国が設置した法的トラブル解決の総合案内所のことで、月収が一定のラインを下回る方は、自己破産の費用を法テラスに肩代わりしてもらえます。

これを民事法律扶助(みんじほうりつふじょ)といいますが、肩代わりしてもらえる上に、普通に弁護士に依頼するより安い費用で自己破産できます。

債権者数 法テラスの自己破産費用
1~10社 実費23,000円、着手金132,000円
11~20社 実費23,000円、着手金154,000円
21社 実費23,000円、着手金187,000円

【関連:弁護士・司法書士費用等の立替制度|法テラス

法テラス経由で自己破産する際の流れ

法テラス経由で自己破産をする際の流れを簡単に説明します。

  1. 最寄りの法テラス、もしくは公式HPにあるサポートダイヤルに連絡し、無料法律相談を申し込む
  2. 法テラスと契約している弁護士に自己破産について相談する
  3. 民事法律扶助を受けるのに必要な書類を集め、法テラスに提出する
  4. 法テラスの審査を通過すると、法テラスが自己破産の費用を肩代わりする
  5. 依頼した弁護士に破産手続きを進めてもらう
  6. 破産が完了したら、肩代わりしてもらった費用を分割で返済する
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自己破産の手続き中してはいけないこと

管財事件になる条件の部分で軽く説明しましたが、免責不許可事由にあたる行為はしてはいけません。

破産申し立て前でなく、手続き中(申立て後)にこれを行うと、自己破産の申し立てが却下されたり、最終的に破産が不許可になる可能性があります。

免責不許可事由の例をあげます。

  1. 自分の財産を隠したり処分したり、贈与したりする
  2. クレカの現金化や不利な条件での転売
  3. 一部の債権者にだけ返済を続ける(偏波弁済(へんぱべんさい))
  4. 浪費やギャンブルで借金を作る
  5. 返済できないのにできるふりをしてお金を借りる
  6. 自分の財産や収入に関する書類を隠す・偽造する
  7. 虚偽の債権者名簿を提出する
  8. 裁判所の業務に協力しない・嘘つく・妨害する

例えば、ギャンブルで借金を作って破産手続きをしている人が、手続き中にギャンブルをしていることが発覚した場合、破産不許可になる可能性が高いでしょう。

なので絶対にやめましょう。

まとめ

自己破産の種類や特徴、手続きのやり方、お金がない場合の対処法などを紹介しました。

自己破産は、弁護士に依頼するのが一般的ですが、自分で手続きをすることも可能です。

しかし、自分で手続きをする場合、弁護士に依頼するより時間も費用もかかる可能性があるため注意が必要です。

この記事の重要なポイントをまとめます。

  • 自己破産には3種類ある
  • 同時廃止事件の場合、破産手続き開始とともに借金の返済が免除される
  • 管財事件の場合、破産手続き開始後に、破産管財人が「破産者の財産の調査、売却、債権者たちへの売却」を行う
  • 少額管財は、管財事件を短縮、簡略化したもの
  • 管財事件や少額管財の場合、破産管財人への報酬や、裁判所への予納金が別途かかる
  • 収入が一定のラインを下回る場合、法テラスに相談をすれば、自己破産の費用を肩代わりしてもらえる

もし借金で悩んでおり、自己破産を検討しているのであれば、一度弁護士に相談しましょう。

自己破産が認められそうか、それ以外の手続きを選択すべきかなど、客観的な視点でアドバイスをくれるはずです。

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