盗撮で逮捕された!|盗撮事件に強い弁護士にご相談を

この記事は、2023年7月13日までに発生した盗撮行為に適用される法律について説明した記事です。
2023年6月23日に公布され、2023年7月13日に施行された改正刑法で新設された撮影罪については、以下の記事をご参照ください。
盗撮は階段やエスカレーター、本屋や電車内等で多く発生しています。特定の被害者を狙って被害者の自宅の窓やドアからの盗撮もあります。被害者は自分が盗撮されていることに気が付かない場合も多く、犯行を目撃した周囲の人によりその場で現行犯逮捕されるケースが多いのが特徴です。
この記事では、盗撮で逮捕されるとどうなってしまうのかについて解説します。
目次
盗撮の弁護士相談について
盗撮で捕まった場合には、可能な限りすぐに弁護士に相談しましょう。どれだけ早い時期に弁護士へ相談したかが今後の流れや結果を左右します。しかしながら、弁護士の知り合いが居ない、弁護士費用は高いのではないか等、弁護士への依頼を躊躇する人が多いことも事実です。
まずは気軽に使える無料相談について解説します。
無料相談について
弁護士に相談すると最初から高額な弁護士費用を請求されるのではないかと心配する方が多いですが、無料で相談できる場合があります。
当番弁護士
逮捕されてしまった場合に、警察からの取り調べに対しどのように回答すれば良いのか悩んだときに無料で弁護士に相談できる制度が当番弁護士制度です。
当番弁護士を呼べる条件は以下3つです。
- 逮捕・勾留されている
- 起訴前である
- 1回も当番弁護士を呼んでいない
上記3つの条件全てに当てはまれば、当番弁護士1回だけ無料で呼び相談を受けてもらえます。
当番弁護士制度は、弁護士が無料で接見に来てくれるありがたい制度ですが、その日当番として名簿に登録されている弁護士の中からランダムに選ばれた弁護士が接見に来るため、被疑者が自分で弁護士を選べないというデメリットがあります。場合によっては、刑事事件に慣れていない弁護士が接見に来ることもあります。盗撮事件を扱ったことが無い弁護士が選ばれることもあります。
当番弁護士については以下の記事をご参照ください。
法律相談センター(法テラス)
法テラスとは国が設立した法律相談センターです。経済的に余裕がない方のために、異なる弁護士と3回無料で相談できます。
法テラスの無料相談が使える条件は以下3つです。
- 収入要件を満たしていること
- 資産要件を満たしていること
- 民事法律扶助の趣旨に適すること
法テラスは「民事法律扶助」の法的サービスを提供するため、刑事事件の加害者側は利用できません。盗撮事件の場合には、被害者との示談の相談ならできます。
※なお、当事務所では法テラスの利用を希望される方からのご相談は現在受け付けておりません。
法テラスの無料相談に関しては以下をご確認ください。
参考:無料法律相談のご利用の流れ | 無料法律相談・弁護士等費用の立替 | 法テラス (houterasu.or.jp)
初回無料相談
各法律事務所では、それぞれ法律相談料を決めています。1回30分の相談で5,000円~とする事務所が一般的ですが、依頼を前提とした初回30分無料相談をしている事務所もあります。事務所のHPなどで確認し、依頼したいと思う事務所の初回無料法律相談を受けに行くことをお勧めします。
初回の相談で確認すべきこと
とりあえず相談に行く場合でも、「行けばなんとかしてくれるだろう」と何も考えずに行くべきではありません。初回の相談で弁護士に確認すべきことをお伝えします。
盗撮事件を扱ったことがあるか
当番弁護士の場合にはどの弁護士に接見に来てもらうか自分では選べませんが、私選弁護人は自分で選べます。自分で選ぶ場合には、依頼する弁護士が盗撮事件を扱ったことがあるかを確認しましょう。盗撮事件は被害者との間の示談交渉が重要ですが、慣れていない弁護士の場合、示談を急ぎすぎて被害者感情を悪化させる可能性もあります。依頼する弁護士がきちんとした被害者対応をしてくれるか否かは、今後の流れに大きな影響を及ぼします。
扱った盗撮事件で不起訴を獲得したことがあるか
盗撮事件を扱ったことがある場合でも、扱った事件が全て起訴されてしまった弁護士に依頼することはあまりお勧めしません。扱った盗撮事件全てで不起訴の獲得は不可能ですが、不起訴を獲得する可能性があるにもかかわらず全く不起訴を獲得していない場合には刑事事件にあまり熱心ではない可能性があります。
盗撮の罪および罰則について
盗撮がどのような罪に該当するのか、どのような罰則が科されるか等を解説します。
盗撮の罪とは
刑法に盗撮罪という規定はありません。盗撮で逮捕された場合に問われる可能性のある罪は、以下のとおりです。
- 迷惑防止条例違反
- 住協侵入罪・建造物侵入罪
迷惑防止条例違反
「迷惑防止条例」は各都道府県でそれぞれ制定しているため、内容に若干違いがありますが、この記事では代表的な東京都の迷惑防止条例、正式名称「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」を元に解説します。
迷惑防止条例とは、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等を防止することで、平穏な生活の保持を目的とする条例です。
つきまとい、痴漢、盗撮等の行為がこの条例によって罰せられる可能性があります。
東京都の場合の罰則は次のとおりです。
行為 |
罰則 |
撮影する | 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
撮影する目的で写真機等機器を差し向ける | 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
撮影する目的で写真機等機器を設置する | 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
常習としてする | 2年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
住居侵入罪・建造物侵入罪
盗撮する目的で他人の住居や店舗に侵入した場合には、住居侵入罪や建造物侵入罪が成立する可能性があります。
刑法第130条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
引用:e-GOV法令検索
盗撮行為は、建造物侵入罪等他の犯罪に付随して行われる場合もあるため、迷惑防止条例違反に該当するか、刑法の罪に該当するかは、検察官の判断に委ねられます。どの罪に該当するかにより罰則が異なるため、慎重に対応する必要があります。
補足:軽犯罪法違反
公共の場所以外での盗撮行為を迷惑防止条例違反の処罰対象とする地域と処罰対象としない地域があります。公共の場所以外での盗撮行為を処罰対象としない地域の場合には、軽犯罪法違反に該当する場合があります。
軽犯罪法第1条 左の各号の1に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
23 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
引用:e-GOV法令検索
盗撮の刑罰
盗撮とは、被害者の了承を得ずに勝手に撮影することです。盗撮行為をした場合には1年以下の懲役または100万円以下の罰金とされていますが、常習犯の場合には、2年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。
盗撮で逮捕された場合の流れ
盗撮で逮捕された場合の流れについて解説します。
警察による取り調べ
盗撮行為で逮捕されるのは以下2つの場合があります。
- 現行犯逮捕
- 後日逮捕(通常逮捕)
現行犯逮捕
盗撮行為をしている現場を被害者あるいは店員や周囲の乗客等の第三者に見つかり、その場で逮捕される場合があります。これが現行犯逮捕です。
現行犯逮捕されると警察を呼ばれ、その場で、あるいは場所を警察署に移して取り調べを受けます。
現行犯逮捕される場合には撮影機器を所持しており、その中に盗撮の証拠となる画像等が存在していることが多いです。画像確認の結果、余罪が出てくる可能性もあります。余罪が見つかると、その日のうちの帰宅は期待できません。
後日逮捕もある
盗撮現場で逮捕を免れた場合であっても、後日逮捕状を持った警察が自宅を訪れ、逮捕される可能性があります。
近年駅や店舗には防犯カメラが設置してあることが多く、盗撮の映像等が残っている場合があります。加害者の逃走経路も様々な場所の防犯カメラで特定されます。改札口をICカード等で通過した場合には個人情報が判明する可能性があります。
盗撮現場を目撃された場合には後日逮捕される可能性が高いです。
被疑者の自宅には盗撮に関する画像等の証拠が多数ある場合が多いため、後日逮捕の場合には警察官は通常、裁判所が発付した逮捕状と同時に捜索差押許可状も持参します。捜索差押許可状により携帯電話やPC等が押収されます。
逮捕されると警察官による取り調べが行われます。取り調べに素直に応じることにより、身柄拘束されることなく帰宅できる可能性がありますが、余罪の取り調べのため帰れない可能性もあります。取り調べに対してどのように対処すべきかを、すぐに弁護士に相談することをお勧めします。
検察官送致
警察は逮捕後48時間以内に事件を検察官に送致しなければなりません。検察官は事件が送致されると被疑者を取り調べ、被疑者を引き続き勾留するか身柄を解放するかを24時間以内に決定します。
勾留
被疑者を引き続き身柄を拘束して取り調べる必要があると判断すると、検察官は裁判所に勾留請求をします。裁判官は勾留の必要性があると判断すると、勾留決定をします。勾留決定がされると原則10日間、延長が認められると更に10日間、合計最大20日間勾留されます。
起訴・不起訴の判断
勾留期間満期前に検察官は被疑者を起訴するか不起訴にするか決定します。
不起訴になった場合には、事件は終了し身柄解放されます。起訴された場合には刑事裁判を受けます。
起訴されると、更に身柄拘束が続く可能性があります。起訴後勾留の期間は原則2か月で、その後は1か月ごとに更新されます。
刑事裁判
起訴されると公開の法廷で刑事裁判が開かれます。公開の法廷なので、誰でも傍聴可能です。自分のやった盗撮事件の詳細を知人等に知られる可能性があります。
盗撮で逮捕・起訴された場合|実名報道されるか?
盗撮で逮捕・起訴された場合に実名報道される可能性はあるのでしょうか?答えは「実名報道される可能性はある」です。
逮捕されるとどの事件でも実名報道される可能性があります。実名報道するか否かは各報道機関の判断です。
報道機関が実名報道するかの判断基準は明確に定められてはいませんが、以下に当てはまる場合には実名報道されやすいです。
- 重大性が高い事件:殺人や放火等
- 社会的関心が高い事件:特殊詐欺や危険運転致死傷罪等
- 公共性がある場合:公務員や有名大企業で働く方による犯罪 など
実名報道されると会社や学校、近所の人等に知られる恐れがあります。
被害者との示談について
盗撮事件で逮捕された場合には被害者との示談が重要です。
ここでは、被害者との示談について解説します。
被害者との示談交渉
盗撮事件の場合、被害者との間で示談が成立し、被害者が許してくれると不起訴になる可能性が高くなります。
警察は加害者に被害者の情報を教えることはありません。加害者本人には連絡先を教えない被害者も、弁護士になら教えても良いと言ってくれる場合があります。被害者と示談したい場合には弁護士に依頼する必要があります。
被害者が知り合いで、連絡先を知っている場合であっても、加害者本人が示談交渉をすべきではありません。
被害者は盗撮をされて精神的に傷ついています。被害者の心のケアをせずに無理やり示談交渉をしようとすると更に被害者を傷つけてしまい、示談ができなくなる可能性があります。
被害者と示談が成立する可能性がある場合でも、どのような条件で示談をまとめれば良いか、どのような書面を残す必要があるか等、法的な知識や経験が必要です。
被害者と示談をしたい場合には、必ず弁護士に依頼しましょう。
被害者不明等の場合の対応|贖罪寄付等
盗撮の場合には、盗撮に遭った被害者がそれと気が付かずに立ち去ることが多いため、被害者不明で示談ができない場合が多くあります。
また、被害者が多数いる場合には、全員と示談できればそれに越したことはありませんが、検察官の起訴不起訴の判断前という限られた時間内に全ての被害者との示談が不可能な場合があります。
示談ができないから仕方がないとそのまま放置しておくと、起訴されて有罪判決を言い渡される可能性があります。示談できない場合に何をすべきか、弁護士に相談しましょう。
被害者に示談金を支払う代わりに、全国の犯罪被害者支援のために贖罪寄付をする方法等があります。
盗撮で弁護士に依頼するメリット
盗撮をしてしまった時に弁護士に依頼するメリットをお伝えします。
接見に来てもらえる
逮捕され、身柄拘束されている時に捜査機関からの強圧的な取り調べを受けると、やっていない事件までやったと言ってしまうことがあります。
弁護士は逮捕期間中も被疑者と接見できます。取り調べ中に回答に窮した時、弁護士に相談したいと言えば回答を保留にし、どのように回答すべきか弁護士と相談ができます。自分がやっていないことはやっていませんと自信をもって回答できるようになります。
示談交渉してもらえる
盗撮の罪を認めている場合、被害者との間の示談成立の有無が今後の流れに影響を与えます。加害者は被害者との示談を弁護士に依頼できます。
被害者は加害者本人とは直接話をすることを避ける傾向にありますが、弁護士からの連絡には応じてくれることが多いです。
どのような金額や条件で示談を成立させるか、示談書に記載すべき事項は何か等、示談は法的知識があり、経験豊富な弁護士に任せるべきです。
適切な金額での示談ができる
示談金は被害者の被害感情に対して支払う金銭であるため、示談金には相場はありません。
しかしながら、実際に損害賠償請求等の民事裁判を起こした場合にどれくらいの金額が判決で認められるか、という観点から事案により相場的な金額が決まっていることも事実です。
刑事事件の経験豊富な弁護士に依頼すると、この事件の場合にはおおよそこの金額で示談が成立するという実績があるため、適切な金額で示談ができます。
早期の身柄解放が目指せる
盗撮で逮捕された場合には余罪の追及で、身柄拘束が続く場合が多々あります。
弁護士は、全ての証拠が捜査機関に提出されていれば証拠隠滅のおそれが無いと主張し、同居のご家族に身元引受人になってもらい逃亡のおそれが無いと主張し、早期の身柄解放を目指し活動します。
検察官が勾留請求をした場合には、勾留の理由が無いことを主張する書面を裁判所に提出し、勾留請求の却下を求めます。
前科を回避できる可能性が高くなる
起訴されてしまうと、日本の刑事裁判では99.9%が有罪になります。有罪判決を受けると、執行猶予が付いてその場で釈放されたとしても前科がつきます。
前科を回避するためには、不起訴を獲得するしかありません。弁護士は被害者の方との示談交渉等、不起訴を獲得するため全力を尽くします。
まとめ
盗撮事件は被害者対応が難しい事件です。対応が遅れて起訴されると前科が付き、今後の人生に大きな影響を与えます。盗撮事件を起こして逮捕された場合にはできるだけ早く刑事事件に強い弁護士にご相談ください。