【飲食店】賃貸借契約の中途解約について

飲食店を経営するにあたり、店舗の業績や人的リソース等の関係から閉店するという判断をすることもあるでしょう。閉店を決めたときが、店舗にかかる賃貸借契約の契約期間中であった場合、当該賃貸借契約は解約できるのでしょうか?

本稿では、賃貸借契約の中途解約についてまとめていきます。

目次

中途解約とは

賃貸借契約は、契約で定められた期間内においては、貸主・借主の間で継続することが合意されていると言えます。契約当事者間で合意がなされている以上、借主の一方的な都合で契約を終了させることは原則できません。契約を中途解約するには、貸主と借主が新たに合意をしなければならないのです。(これに対して、相手方の落ち度等により一定の事態が生じた場合に契約解除ができる場合もありますが、契約の解除と解約は別物です。)

他方、建物の賃貸借契約においては、「解約希望日の〇ヶ月前に申入れを行うことで中途解約ができる。」等の条項を定められている場合等、事前に解約権を用意している場合もあります。このような条項がある場合には、借主は当該条項によって中途解約が可能となります。そのため、まずは契約書内に中途解約について定めた条項があるかという点をチェックするべきでしょう。

中途解約に際しての違約金が定められている場合

中途解約条項が定められている場合、併せて違約金についての定めが置かれていることも少なくありません。

そもそもこのような規定が有効なのかという議論もありますが、実務上このような規定も有効とされています。(もっとも、法外な違約金を定めている場合には公序良俗に反し無効と判断される可能性もありますが、例えば契約の残存期間の賃料相当額全額程度であれば有効と判断されるでしょう。)

裁判例にも、借主にとって著しく不利な部分の違約金の定めは無効としつつも、違約金として適切な範囲の違約金の支払い義務を肯定したものがあります。

それでも中には違約金を支払ってでも即時解約が必要な場合もあります。例えば、新型感染症の蔓延により、店舗での売上げが上がらず、契約を続けることが却って業績の悪化を招くような場合です。そのような場合を想定すると、例え違約金を伴っても中途解約についての定めをおいておく必要があるでしょう。

中途解約に際して違約金の定めが置かれている場合には、その金額の多寡を併せて検討すると良いでしょう。後述のとおり後の交渉や訴訟で争う手法もないとは言えませんが、事前に納得いく金額を合意しておく方が経済的・人的な打撃が小さいと思います。

中途解約をする際に違約金の金額に納得いかないのであれば、違約金の額を減額するよう交渉し、あるいは訴訟において公序良俗違反であることを主張し、違約金に関する定めの全部もしくは一部の無効を主張することもあり得ます。

おわりに

本稿では、飲食店の店舗を借りている場合の賃貸借契約の中途解約についてまとめました。

中途解約を定めておくこと自体は飲食店を経営するにあたって非常に有効と考えます。しかし、ただ定めがあればよいということではなく、違約金の定めがないか、定めがある場合に当該違約金の金額は妥当か、といった観点も併せて検討する必要があります。

ネクスパート法律事務所では、飲食店の経営のサポートを専門に扱うチームがあり、賃貸借契約等の締結に際して契約内容等について事前にチェックし、内容や交渉方法に関するアドバイスといった業務を行っております。

飲食店経営に際してお困りごとや心配事がありましたら、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

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