昨今、X等のSNSにおける従業員(パート・アルバイトを含む。)による情報漏洩や不適切なコンテンツの配信(所謂バイトテロですね。)が取り上げられることが多いです。
SNSを個人的に運用すること自体は個人の自由ですが、不適切な投稿等があった場合、企業としては売上や社会的信用の喪失という損害を被りますし、当該投稿を行った従業員においても企業から責任追及され、または刑事責任を負う可能性もあります。
そのため、企業、従業員双方の利益のためにも、従業員が企業に関しての投稿・配信を行うことについては両者間で一定の決まり事をしておくことが重要です。
本稿では、従業員に対する情報管理についてまとめていきます。

従業員の秘密保持義務について
会社が従業員を雇うにあたり、雇用契約を締結します。雇用契約により、従業員は会社に対して誠実に業務を行う義務を負うことになります。この義務の一環として、従業員は会社に対して秘密保持義務を負うことになり、これは雇用契約書や就業規則に秘密保持義務について明文化して定めていない場合であっても同様と考えられます。
特に飲食店においては、店舗の営業情報や提供する飲食物のレシピ、来客者・他の従業員に関する個人情報等の漏洩リスクが考えられるため、雇用契約書や就業規則に秘密保持義務について明文化しておきましょう。更には、従業員が入社するに際して秘密保持義務を負い、情報の管理を徹底することを旨とする誓約書を記載してもらい、従業員自身に秘密保持に関する意識を高めてもらうことも有効です。筆者が以前勤務していた企業では、雇用契約書、就業規則、誓約書に秘密保持義務について明記したうえで、内定を出すときに人事部の方からしっかり内容の説明をするようにしていました。
就業規則等の整備
秘密保持義務について、雇用契約書や就業規則等で明示しておくべきことは上述のとおりですが、秘密保持義務違反を理由に懲戒処分を行うには、就業規則に懲戒事由として明示しておくことが必須です。もっとも、日本の労働法においては、労働者の権利を重視する傾向にありますので、懲戒事由として秘密保持義務が明記されていればどのような懲戒も行えるわけではありません。あくまで当該懲戒処分に合理的理由があり、社会的相当な処分でなければなりませんので、秘密保持義務違反を理由に懲戒処分を行う場合には、弁護士や社労士等の専門家と相談したうえで行うと良いでしょう。
また、冒頭で昨今のニュースについて触れましたが、所謂バイトテロ対策としては、就業規則または関連規程として、従業員が企業に関してSNSで投稿する際の指針を示す「SNS管理運用規程」等を定めておくのも有効です。従業員個人の表現の自由との兼ね合いもありますが、従業員のSNS投稿は、バイトテロの問題だけではなく、景品表示法上の所謂ステマ規制に違反することを防ぐ意味でも、企業としてある程度の指針を定めておくべきでしょう。自社の就業規則やSNS管理運用規程といった関連規程に心配がある場合にも、専門家に相談すると良いでしょう。
ステマ規制については、別の記事にまとめておりますのでそちらを参照してください(当事務所、薬機法・医療法・景表法解説サイトの記事です)。

社内研修等の実施
従業員の秘密保持義務を意識づけるために、定期的に社内研修を行うことも重要です。飲食店においては、店舗ごとに責任者が従業員と全員に対して行ったり、個別で指導を行ったりすることが考えられます。
筆者が勤務していた企業では、本社に加えて全国各地に小売りの店舗がありましたが、定期的にオンライン等を用いて全体研修を行っており、各店舗でも店長やパートリーダーをはじめとした責任者が各パート・アルバイトスタッフにも研修内容を共有していました。
社内研修の中では、実際に秘密保持義務違反が生じた場合を具体的に説明すると危機意識が高まり、説得性も増すと考えられますので、企業側と従業員側のそれぞれにどのようなリスクがあるのかを説明すると良いでしょう。
おわりに
本稿においては、従業員の情報管理について、企業側でどのような対策を講じるべきかをまとめてきました。雇用契約書や就業規則、誓約書を整備するとともに、社内研修等を通じて日頃から従業員の意識づけを行うことが重要です。
ネクスパート法律事務所では、飲食店の経営サポートに特化したチームが、契約書や就業規則等の整備の他、社内研修の講師等も承っております。従業員による秘密情報の漏洩や不適切なコンテンツの配信等を未然に防ぐための対策について、初回無料でご相談をお伺いしますので、お気軽にご連絡ください。