【弁護士解説】飲食店で忘れ物があった場合の対応

飲食店を経営していると、お客様の忘れ物を発見する機会も多くあることでしょう。忘れ物の種類も、手袋や帽子などの衣類から、財布や携帯電話等の貴重品に至るまで様々です。

本稿では、飲食店内で忘れ物が見つかった場合、店舗に生じる法的責任の有無や忘れ物の種類ごとの注意事項をまとめていきます。

目次

忘れ物があった場合、飲食店側に生じる法的義務は?

飲食店内にお客様の忘れ物があった場合、店舗にはどのような義務が生じるのでしょうか?飲食店で保管等を行う場合、それは任意での保管だから法的責任はない、ということはありません。

店舗の中でお客様の忘れ物が見つかった場合、遺失物法の適用があります。同法によれば、飲食店の責任者は、遺失者(その忘れ物を忘れた方)に返還するか、最寄りの警察署長に届けなければなりません(遺失物法4条1・2項、13条1項)。

遺失者に返還したり、警察署長に届けたりするまでの間、店舗責任者はその忘れ物を善良な管理者の注意義務(善管注意義務)によって保管・管理しなければなりません。善管注意義務は平たく言うと、忘れ物を損壊したり、紛失したりしないよう特に注意を払って取り扱うことと理解していただいて構いません。

店舗で忘れ物を管理している間は、その忘れ物の種類・特徴や、忘れ物が見つかった日時や場所等を店舗内の分かりやすい場所に告知しておくか、それらの情報をお客様がいつでも見れるよう書面に記したうえ店舗内に備え付ける必要があります(16条1項2項、7条1項)。

具体的な対応方法

忘れ物が衣類などの場合には、損壊・汚損等しないように管理しておけば足りると思いますが、財布や携帯電話の場合の取扱いについては注意が必要です。

財布のようなものは、ともすれば本人を特定できる情報が入っている可能性が高いですが、他方で、遺失者から中の現金が少なくなっている等と言われ、別途トラブルが生じかねません。そのため、安易に中身を確認するべきではなく、

  1. 直ちに警察に届け出る
  2. 現状のまま預かり、遺失者からの連絡を待ち、遺失者の同意を得たのちに中身を確認する
  3. どうしても中身を確認する必要がある場合には、複数人で相互に監視しながら確認する

等の対応をすべきでしょう。

遺失者から連絡があり、忘れ物を返還する場合には、後に返還されていない等と言われてトラブルにならないよう、受領証等をもらっておくようにします。

忘れ物が財布等の貴重品の場合、名乗り出てきた遺失者と一緒に中身の確認等をすることも重要でしょう。

終わりに

ネクスパート法律事務所では、飲食店に関するトラブルや、クレームが発生した場合のご相談を広くお受けしております。遵守すべき法令の確認が必要な場合や、法令に即した対策をしているにもかかわらずトラブルが生じてしまった場合には、是非弊所までお気軽にお問い合わせください。

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