飲食店においては、深夜まで営業を続ける店舗も多く、その中にはライブ等のイベントを並行して開催する店舗も少なくないでしょう。
そのような店舗においては、近隣の多店舗や住民との間で音に関する問題が生じる可能性があります。
本稿では、騒音に関する法的規制について解説し、トラブルになった場合の対策を検討していきます。

騒音に関する法規制の体系について
体系
騒音に関する規制として、騒音規制法があげられます。この法律は、事業場等における事業活動等に伴って生じる騒音について必要な規制を行うことにより、生活環境を保全し、国民の健康を保護することを目的としています。
この法律の主たる規制対象は、工場や建設工事等の機械音を伴う事業体と考えられます。
もっとも、深夜営業をする飲食店から生じる騒音については、同法の目的が妥当すると言えます。そこで同法28条で、以下のように規定されており、同上に基づき、各地方公共団体が実情に応じて規制を定めています。
飲食店営業等に係る深夜における騒音…の規制については、地方公共団体が、住民の生活環境を保全するため必要があると認めるときは、当該地域の自然的、社会的条件に応じて、営業時間を制限すること等により必要な措置を講ずるようにしなければならない。
騒音規制法28条
東京都の例
騒音規制法28条に基づき、東京都では、都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(以下「環境確保条例」と言います。)132条が定められています。
別表第十に掲げる営業を営み、又は別表第十一に掲げる作業を行う者は、規則で定める場合を除き、深夜(午後十一時から翌日の午前六時までの間をいう。)においては、次に掲げる区域内において、別表第十二に掲げる規制基準を超える騒音をその事業所の敷地内において発生させてはならない。
一 都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第八条第一項第一号の規定により定められた第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域及び田園住居地域(知事が指定する区域を除く。)
二 前号に掲げる区域に隣接する区域で、当該区域において発生する騒音が当該区域に隣接する前号に掲げる区域の静穏を害するおそれのあるものとして知事が指定する区域
環境確保条例132条
例えば、上述したライブイベント等を開催する飲食店は、環境確保条例132条の別表10の1の「飲食店営業」に該当しますから、同上の指定する区域内においては別表第12に掲げる基準を超えた騒音を発生させてはならないということになります。
その他、深夜営業ではない場合でも、日常生活等の騒音については環境確保条例136条、同条例別表13の規制を遵守する必要があります。
トラブルへの対策について
トラブルが生じないようにするために、まずは、営業する店舗の騒音に関する条例を確認し、当該規制に適合するか確認する必要があります。規制に適合していない事項があれば、直ちに規制に即すよう対策を講じてください。
規制に適合する場合にも、近隣の他店舗や住民から何らかのクレームが入ることも考えられます。そのようなクレームが入らないよう、定期的に近隣にヒアリング等を行い、規制・基準以上の対策を講じることが望ましいですが、ライブイベント等を行う店舗で完全な対策を行うことは難しいでしょう。そのようなトラブルが生じた場合には、法令等の規制を遵守していることが後の紛争に対する重要な証拠になります。普段から騒音に関する対策の記録やチェック体制を整備しておくと良いでしょう。
終わりに
ネクスパート法律事務所では、飲食店に関するトラブルや、クレームが発生した場合のご相談を広くお受けしております。遵守すべき法令の確認が必要な場合や、法令に即した対策をしているにもかかわらずトラブルが生じてしまった場合には、是非弊所までお気軽にお問い合わせください。