【弁護士解説】フランチャイズ本部がM&Aを検討する際の法的ポイント

フランチャイズビジネスは、日本において外食産業や小売業、サービス業など幅広い分野で活用されている経営モデルです。全国に展開するチェーン店の多くがフランチャイズ方式を採用しており、加盟店網を通じて効率的に拡大できる点が大きな魅力です。
その一方で、近年はフランチャイズ本部がM&A(企業の合併・買収や事業承継)を行うケースが増加しています。本部自体を売却する事例や、他ブランドを買収して規模を拡大する事例など、その形態は多様です。
しかし、フランチャイズ契約には特有の法的構造があり、通常のM&A以上に複雑な対応が必要となります。この記事では、本部の立場からフランチャイズM&Aにおけるポイントを弁護士の視点で解説します。

目次

フランチャイズ本部がM&Aを行う典型的な場面


フランチャイズ本部がM&Aを検討する背景はさまざまです。
例えば、創業者が高齢化し、事業承継のために株式譲渡を行うケースがあります。また、異業種参入や競合ブランドとの統合によってシェア拡大を図る戦略的M&Aも増えています。
さらに、経営再建の一環として本部が事業譲渡を選択する場合もあります。
いずれにしても、フランチャイズ契約という複数の加盟店との継続的契約関係が存在するため、その承継方法が大きな焦点となります。

M&Aにおける本部特有の課題


フランチャイズM&Aにおいて最も特徴的なのは、「加盟店との関係性が第三者に承継される」という点です。
本部が買収されると、加盟店から見ればフランチャイズ契約の相手方が突然別の法人に変わることになります。加盟店にとってはロイヤリティ支払い先が変わり、経営方針も変化する可能性があるため、不安や反発が生じやすい局面です。
さらに、契約条項によっては「譲渡禁止条項」や「承継に加盟店の同意が必要」と定められている場合もあり、スムーズな承継を妨げる要因となります。
また、公正取引委員会による独占禁止法の審査が必要になることもあります。

契約・法務のチェックポイント


M&Aを進める際には、必ず弁護士による契約チェックが欠かせません。
特に重要となるのは次のようなポイントです。

  • フランチャイズ契約書の確認
    譲渡禁止条項や契約承継に関する条項がどのように規定されているかを確認する必要があります。加盟店の同意を要する場合、同意取得の方法や時期が大きな課題となります。 
  • スキームの選択
    株式譲渡であれば法人格自体は変わらないため契約承継の問題は生じにくい一方、事業譲渡や会社分割では契約の再締結や同意が必要となる場合があります。 
  • 知的財産権の承継
    フランチャイズの根幹である商標権、ノウハウ、マニュアル、システム利用権などの承継が確実に行われるかを確認することが不可欠です。 
  • デューデリジェンス(法務DD)
    加盟店とのトラブル履歴、ロイヤリティ未収状況、コンプライアンス違反の有無などを事前に調査することで、M&A後のリスクを最小化できます。 

M&Aで発生しやすいトラブル事例


実務においては、M&A後に加盟店から反発を受けるケースが少なくありません。
例えば、新しい本部の方針としてロイヤリティ率を引き上げようとしたところ、加盟店が契約違反を主張して裁判となった事例があります。
また、事業譲渡スキームを用いた際に加盟店が「承継に同意していない」として契約無効を争うケースも報告されています。こうしたトラブルは、契約内容や事前説明の不備に起因することが多く、弁護士関与による事前対応が重要です。

弁護士が果たす役割

フランチャイズM&Aにおいて弁護士は、単なる契約書チェックにとどまらず、包括的な役割を担います。
まず、デューデリジェンスを通じて加盟店契約や知財権に関するリスクを洗い出し、スキーム選択に反映させます。また、加盟店への通知文書や説明資料の作成をサポートし、信頼関係を維持するための実務的なアドバイスも提供します。さらに、交渉の場面では本部の立場を法的に裏付け、加盟店の不安や抵抗を和らげる調整役を果たします。
万一紛争となった場合にも、迅速かつ的確に対応できるのは弁護士の強みです。

まとめ

フランチャイズ本部にとってM&Aは、成長戦略や事業承継の手段として非常に有効ですが、その一方で契約承継や加盟店対応など特有のリスクが存在します。更新拒絶や契約違反と同様に、加盟店との関係性を軽視すると紛争に発展し、ブランド全体に悪影響を及ぼしかねません。
したがって、M&Aを検討する際には早い段階から弁護士に相談し、契約チェック・スキーム設計・加盟店対応を包括的に進めることが重要です。
安全かつ円滑なM&Aの実現には、専門的な法的アドバイスが欠かせないのです。

ネクスパート法律事務所では、フランチャイズ本部のM&Aに関するご相談を幅広く承っております。契約書の精査、デューデリジェンス、スキーム選択の助言、加盟店への対応まで、一貫してサポートいたします。
M&Aを通じた成長戦略や事業承継を検討されている本部様は、ぜひお気軽にお問合せください。

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