【弁護士解説】飲食店における従業員の採用面接

飲食店で従業員を採用する場合、採用面接を行うことが多いと思います。採用活動を行う場合、当該店舗の営業内容・営業時間・雰囲気等の事情を踏まえて、当該店舗に相応しい人員を雇いたいと思うのが飲食店経営者の願望でしょう。

では、従業員の採用面接を行う際、注意するべきことはどのような事項でしょうか?

本稿では、飲食店が採用面接を行うに際して注意すべき事項をまとめます。

目次

採用面接にはどのような法律が関係してくるのか

飲食店において従業員の募集を行い、これに応募してきた方(以下「応募者」といいます。)の面接を行う際に特に注意しなければならないのは、①職業安定法②労働基準法③男女雇用機会均等法の3つと考えられます。
もっとも、民法やその他の労働関係法の規定も当然遵守する必要がありますが、本稿では当該3つの法律との関係について解説していきます。

職業安定法との関係

採用面接にあたっては、飲食店を経営している企業側が、応募者に対して質問を行い、応募者が質問に答えるという形式が一般的だと思います。企業側は、営業内容・営業時間・雰囲気等を考慮して、相応しい人物を採用したいと考えるため、なるべく多くの応募者の情報を取得したいと思うのではないでしょうか?

しかしながら、応募者の個人的な背景や事情にまで踏み込んだ内容の質問をすることは、応募者のプライバシー権との兼ね合いから避けるべきです。

この点、職業安定法5条の5第1項では、労働者の募集を行う者の義務として以下の内容が定められていますが、この規定は応募者のプライバシー権等の保護を趣旨とするものと考えられます。

「…労働者の募集を行う者…は、…その業務に関し、求職者、労働者になろうとする者又は供給される労働者の個人情報(以下この条において「求職者等の個人情報」という。)を収集し、保管し、又は使用するに当たっては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で、…当該目的を明らかにして求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。」

職業安定法5条の5第1項

上記規定を鑑みた場合、採用面接の場において、飲食店の業務や、雇用契約締結に関係のない事項については質問することは避けた方が良いでしょう。もっとも、個人的な事項にわたる事項について聞かなければならない場合もあると思いますが、その際には、なぜその事柄を聞かなければならないのか(どういったことを判断するために当該質問をするのか)といった点を説明したうえで回答してもらうようにしましょう。

労働基準法との関係

企業側が応募者に対して必要外の質問をするべきではないのは上記のとおりですが、逆に企業側が聞いておくべき事項はどのような事項があるでしょうか?

この点、労働基準法の定めが問題になります。例えば、労働基準法では、以下のような定めがあります。

 「使用者は、満十八才に満たない者について、その年齢を証明する戸籍証明書を事業場に備え付けなければならない。」

法57条1項

 「「酒席に侍する業務」「特殊の遊興的接客業における業務」は、満十八歳に満たない者を就かせてはならない」

法62条2・3項、年少者労働基準規則8条柱書、44・45号

 

この規定からすれば、応募者の年齢については、企業側において確認することが必須の項目といえます。
その他にも、業務に関係する範囲では積極的に企業側も確認を行うべきでしょう。例えば、経営する店舗と類似の業務の経験があるか等、企業側が求める能力を有しているか否かといった観点は是非積極的に確認するようにしましょう。後々、企業側が求めていた能力に満たないと判断する場合、それのみをもって直ちにやめさせることは難しい場合が多いです。この点は労働者の解雇等についてまとめた記事を参考にしてください。
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男女雇用機会均等法との関係

最後に説明するのは、男女雇用機会均等法との関係です。男女雇用機会均等法5条においては、以下のとおり定められています。

「事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。」

男女雇用機会均等法5条

  

 具体的には、次に掲げる事項が禁じられています。

  • 募集・採用の対象から男女のいずれかを排除すること
  • 募集・採用の条件を男女で異なるものとすること
  • 採用選考において、能力資質の有無等を判断する方法や基準を男女で異なる取扱いをすること
  • 募集・採用にあたって男女のいずれかを優先すること
  • 求人の内容の説明等情報の提供について男女で異なる取扱いをすること
  • 募集・採用にあたって、労働者の身長・体重または体力を要件とすること
  • 労働者の募集・採用にあたって、転居を伴う転勤に応じることを要件とすること

もっとも、同法は募集・採用に際して男女に均等に機会を与えることを目的としている法律であり、必ずしも同数を雇用することを求めるものではありません。営業内容によって、適正もありますので。雇用人数が男女のいずれかに偏ったとしても直ちに違法になるわけではありません。

おわりに

本稿では、従業員の採用面接に際して企業側が注意すべき点をまとめました。

ネクスパート法律事務所では、飲食店の経営のサポートに特化したチームが、採用や労務問題の対応、人材の定着支援に至るまでアドバイスをさせていただきます。

初回相談は無料で対応しておりますので、お悩みの際は是非お気軽にお問い合わせください。

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